イベントレポート:Fab Meetup Tokyo Vol.39 —野生の創造性— 後編

Fab Meetup Tokyo Vol.39 —野生の創造性—」のレポート後編。田中先生のプレゼンテーション(前編)の後は、ゲストの田中先生、ナビゲーターの島影さん、そして参加者で、質疑応答をメインとしたディスカッションを行いました。

会場:パーソナルファブリケーションからソーシャルファブリケーションへという話があったが、どういう牽引のされ方をしてソーシャルになるのか?パーソナルは作りたい人と作る場があって、ある程度文化的なものができて、エンゲージメントでコミュニティが広がると思うが、ソーシャルファブリケーションはただコミュニティが広がるだけじゃないと思うんですよね。

田中:それはすばらしい。根本的な切り口ですね。さて、その質問は牽引者に答えてもらうのがいいと思うんですけど、今日、島影くんと竹腰さんがいて。ぼくは彼ら彼女らの実践こそがソーシャルファブリケーションだと思ってるんですけど、なぜそうなったのかを聞きたい。

竹腰:今私がやっている活動がソーシャルファブリケーションかどうかはわからないんですが、先ほど田中先生が紹介してくれたギブス以外に上肢障害を持つ人の義手を作ってます。欲しいと言った当事者の方がプロジェクトリーダーとなってデザイナーの私と組んでものづくりを行っています。一般的に「デザイナー」は、家具だったりグラフィックだったり、デザインする対象が決まっていると思いますが、取り組む領域が柔軟な雑食的なデザイナーもいてもいいんじゃないかと思っていて、実際に自分自身がそういうデザイナーだと思います。例えば、これ欲しいけどどう実現したらいいかわからない、困っているけど何を解決したら良いか分からないなど、そういった課題に対して全面的に取り組むデザイナーです。そのために、ニーズや課題があるすぐそばにデザイナーが長期的に滞在し、いつでも観察でき、いつでも試作できる体制をとって、どんどん問題の要素を見つけとりあえず形にする、ファブしてみるということをしています。そのファブしたものをユーザーの人に手渡してみると、ここちがうわっていう感じで、問題点が一気に分かりやすくなっちゃうんです。デザインの知見のある人同士のミーティングは口頭だけでも通じることが多いと思うんですけど、ユーザーの人とコミュニケーションするには、ファブしたものを見せて話しあうとスムーズになります。なので、ファブはプロトタイピングの文脈でだけでなく、コミュニティケーションにも役に立つのではないかと考えています。一方で、今後検討しているのは、ファブしたものを実際に使えるものにするにはどうすれば良いかということです。デジタルファブリケーション技術によって、ものが人に合わせられるようになった、まさに福祉分野にぴったりだなと思いますが、安心して使えることも重要ですよね。現段階で、ファブを武器にしたデザイナーはソーシャルファブリケーションにおいて、ユーザーや課題と向き合いすぐそばで試行錯誤するポジションにいると思います。

島影:デジタルファブリケーションにおけるものづくりが持っている特徴は、自分が作りたいものを勝手に作ってしまえることと、「使い手とともに作る」ことができることだと思います。でも使い手と一緒につくっていくって意味では、ユーザーリサーチという手法があるし、人間工学や文化人類学の人がやっている。そう見ると、「使い手とともに作ること」自体には特に新しさはない。でも僕としては、デジタルファブリケーションをインフラとして始まった草の根のものづくりにおいては、そのいわゆる定性的な調査とは違う「ともに作る」を実践している感覚があります。僕の場合だとこういうの作りたいから始まって、まだまだ原理的な部分しか完成していないけど、当事者の人にとりあえず使ってみてもらう。その時の感覚って、どこかの製品開発の人たちがプロトタイプを作って複数人に使ってもらって、評価して分析して結果報告っていう関係性じゃないんですよね。もっと関係性が近くなって、このプロダクトを本当にで良いものにしていきたいんですけど、どうしましょう?どうこのプロダクトに関わってもらえますか?と問いかけていく。そのときって作り手と使い手の関係が曖昧になって、どちらも作り手の立場になっていく。それがともに作るって言うところのFab、ソーシャルファブリケーションかなっていう感じがしています。

田中:実はソーシャルファブリケーションにはいくつかのタイプがあると思ってるんですけど、いま、島影君と竹腰さんが言ってくれたような、使う人と作るって言うのがひとつのタイプ、それから別のタイプとして、自分たちのものなんだけど誰もやってくれないものを自分たちで作るって言うのがあって。家の近くのバス停が壊れていたときに地域の人たちがなおすってようなことです。これから日本は行政も大変で、インフラ老朽化っていう課題がこれからくる。近くの橋とか壊れるんですよ。壊れるんだけどなおす予算とか人がいない。だったら自分たちでなおしちゃえばいいんじゃない?みたいな地域の人たちが家の中にあるものじゃなくて、外にある街のものを作るっていう話がぼくの中でひとつ大きなものとしてある。こういう話が「ファブシティ」という文脈にまとまってくるわけです。来年フランスで開催されるFab14のテーマは「ファブシティ」です。さて、質問にお答えすると、パーソナルファブリケーションに相当する具体施設がFabLabだとすると、ソーシャルファブリケーションを実践するにはFabCityが必要だと思うのです。FabLabの問題のひとつとして、敷居高すぎ問題というのがありました。FabLabにやってくる人は間違いなく超ものづくり大好きっていう。素晴らしいっちゃ素晴らしいけど、それ以外の人たちの多様な関与、ほんのちょっとだけど協力したいとか、遠くから応援したいとか、いろいろな種類の貢献をエンゲージメントできてこれなかった。これは、Techshopとかみたいに単に施設をでかくすればいいという話じゃないんです。緩やかなかかわりの度合いを水紋のようにまち全体に広げていきましょうという話。それがファブシティの計画なのです。南米のファブラボの人は市役所とか政治家がファブラボに来てるところがある。都市とか街とかを住民がエンパワーすることで良くしていこうと動き出している。ソーシャルファブリケーション自体をピンポイントに言えないのはぼくの問題なんですけど、島影さんと竹腰さんがやっているような使う人と友達のように、使う人と作る人と言えないくらいの関係になってしまうっていうのもひとつだし、街みたいな誰のものか言えないような自分のちょっと外にあるものに手を出していくファブシティのようなものもぼくの中ではぼやっと繋がっていて、それを言語化できるようにがんばります。とにかく、パーソナル(個)であることを起点としつつも、パーソナル(個)であることを超えて、自分の殻を破っていくようなエネルギーをつくりだすことが大事だ、と思っているんです。今年の世界ファブラボ会議「Fabricating Society」、来年のファブラボ会議「FabCity」、そうした世界の動きと連動して、日本でも「Fabといえばモノづくり!」という認識からの脱皮を図っていきたいです。本来、Fabというのは、もっと大きな思想のことなんです。

以上、前後編に渡る「Fab Meetup Tokyo Vol.39 —野生の創造性—」のレポートをお届けました。

イベント副題である「野生の創造性」は、YouFab Global Creative Awards 2017のテーマ「Rock it!」に受け継がれています。YouFabに応募することで、あなたの挑戦をファブの未来にぶつけてみてください。

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