Column

2015.7.13

深センレポート Maker FaireとStartups

FabCafe編集部

Tokyo
FabCafeの川井です。2015/6/21と22に中国深センに訪問し、Maker Faireとスタートアップ企業ツアーに参加しました。初めての深センということでわからないことばかりだったのですが、Team Labの高須さんニコ技シンセン深圳観察会に参加させていただいたおかげで、参加者の方々からも情報が沢山得れて楽しめたツアーだった。ありがとうみなさん。
初めての深センは到着した直後から空港の大きさや、街の大きさに驚くばかり。6/18 – 6/22の期間でMaker Weekが深セン全体で開催されており、その中にPan Asiaが企画するツアーや、Maker Faireなどが開催され、深セン市をあげての街全体でのイベントとなっていました。来年度のFab Labの国際会議、Fab12が深センで予定されることもあり、Maker Faireだけでなく街全体がメイカーバブルという感じだ。今回のMaker FaireのForumにも昨年のFab11が開催されたバルセロナからトマースが招待されているなどMaker FaireとFabLabの距離はかなり近いようですね。ちょうど時期を同じくし、MITメディアラボの生徒達が6週間かけて企画からプロトタイプ、そして製品化直前のプリプロダクションまでを製作する授業が行われており、Hacker FarmのAkibaがその講師として生徒たちに深センでのマニュファクチャリングの実践授業を行っていた。

Maker Faire

日本のMaker Faireとくらべてもその規模の大きさに驚く。ソフトウェアパークというエリア一帯が閉鎖され、Maker Faireの会場になっている。もちろんIntelなど大手企業の存在感はあるが、中国の成功したStartupが存在感を持っているのが特徴だ。Maker Faireを主催しているSeeedstudioはもちろん、3Dプリンターや電子工作キット、パーソナルモビリティー系のメーカーが数多く見られた。いわゆるコピー系と思わしきものも多いが、その中の幾つかはコピーレベルを抜け出し、事業としてグローバルな展開を見せてきている。教育に力を入れてるというMakerが多く教育分野のマーケットが伸びているということだろう。

DSC01699 DJIは一等地に出展。なんと空港内にも大きな販売スペース&テストフライトスペースがあったのには驚く。

Miniはいたるところに出展。一番の存在感を放っていた。

ロボットを作るキットのよう。

中国版AgIC?この他にも中国版Little Bitsなども沢山あった。

日本だとまだプロトタイプで趣味で作ってます、というレベルのものが実際に製品として販売されているという感覚だ。それは深センならではのエコシステムの現れのように思える。ただ、ベイエリアや日本のようにDIYカルチャーをベースにしたオリジナリティーやクリエイティビティーのある展示というのはほとんど見られずビジネスショー的な印象が強い。
日本からもスケルトニクス、ニコ技、Switch Science、ワタイジュリさん、Yamaha、バンダイナムコなどが参加していた。フォーラムにはIAMASの小林先生も招待されていたようだ。

どこのMaker Faireでも一番盛り上がるのはロボット対戦!

参加者は子供連れも多く、市を上げての政策ということもあり、親が子供たちに最新の教育に触れる機会として連れてきているんだよということを出展者の人達から聞いた。

会場内にあった中国版FabCafe。主にプロモーションスペース的な使い方が多いようだが、いろんなツールが置いてあると便利な空間になりそう。

Seeed Studio

Maker Faire翌日はTeam Labの高須さんの企画しているニコ技深センツアーに参加させていただく。朝からSeeed Studioに訪問し、CEOのエリック・パンのプレゼンテーションを聞くことが出来た。彼はいま深センでもっとも注目されている若手起業家だが、そのビジネスモデルは非常に面白い。深センならではの山塞(しゃんざい)のカルチャーやエコシステムを利用し、大量生産ではなく、少量多品種生産を目指している。

Seeed Studioは常時会社見学ツアーを行っているよう。日本人だけでなく、外国人も多く参加していた。

山塞は、これまで深センが行ってきた海賊版製造などコピー文化として悪い意味で使われることも多かったが、エリック達はコピーから更に多用なマーケットに展開していく製造の仕組み、それを支えるエコシステムを用いることでオリジナルを超える安価で高機能、ニッチなニーズにも応える多様さを持った商品が生まれる、それが深センの強みであると語っていたのは面白い発想だ。
特に、エリック・パンが話していたソロホイールの話にはなるほどという可能性を感じる。ソロホイールは元々アメリカで生まれたようだが、その直後には深センで海賊版が大量に作られ、多くの人が一般的に街の中で利用するまでになった。それが独自に改良され発展しており、今では複数のソロホイールが連携して動くものまで出てきているようだ。そこで、エリックはソロホイールを4つ連携させて動かすことが出来れば、簡易的ではあるが車という形が生まれる、つまりソロホイールを作れる会社がいずれ車を作れる可能性があるかもしれないと言うのだ。確かにソロホイールの会社が車を作れる会社になるというのは誰も考えなかった発想だろう。そういったオリジナルを超えたある種のダイナミズムが深センであり山塞のパワーであろう。

Loftworkの諏訪、FabCafe TaipeiのTimとエリック(右)はサンダルで登場。とっても気さくな人です。

また、コンテンツのようにハードウェアをつくるという考え方は深センならではだろう。アプリのようにまず作って市場でニーズを確認してみる。キックスターターやSNSを利用し、そこにニーズがあれば作る。マーケットinというよりは、マーケットにある潜在的なニーズを実際のモノを見せることで換気させ、生産量を決めることで確実性のあるビジネスができるという考え方のようだ。

Seeed StudioのFusion PCBは少量からオジリナルの基盤を作成してくれるサービスで、最短24時間、通常でも4日間程度で基盤が手に入る。追加費用を払えばチップなども搭載してくれるなどサービスも手厚い。ちょうどツアー参加者が4日前に発注した基盤をツアー当日に受け取っていた。20枚作成して2000円。日本だと10万円位かかるだろうとのこと。
面白いのは、彼らは単なる受託として受けるだけでなく、企画内容が面白ければMakerをサポートしてSeeedが生産はもちろん、販売のためのマーケティングなども手伝ってくれるという仕組みだ。インキュベーションとアクセラレーションを組み合わせたという感じだろうか。高須さんいわく、会社をやめなくてもこの仕組である程度ビジネスをスケールさせることができるそう。Seeedはアクセラレーターのようにお金を目的とするのではなく、Makerの成功をサポートしたいという意思であくまで生産としての機能をサポートしたいという意思だそう。
南山の新オフィスのあとは本社件工場となるMFGセンターを訪問。最新の工場を想像していたが、少し郊外にある古い大型の工場という印象。ここにおよそ200名以上の社員が働いている。60名程度が工場の要員だそうだが、少量多品種生産を行うため、オートメーション化ではなく人力を主体として、トヨタのカンバン方式に習い、ミニセルラインなどを組み合わせて対応できる仕組みを作り上げている。

のっけからサイバーパンクな入り口。

壁にはSeeedの歴史がいたるところに貼ってある。

Seeedでは基本的に在庫を持たず、オープンパーツライブラリという各パーツごとの在庫を持ち、それらを組み合わせることでかなり幅広い基盤が即座に作れるようになっている。実際に1日で100枚程度は即座に作ってしまえるそうだ。

こういったセルラインがオーダーに合わせ適宜作られていく。

ちなみにSeeed社内にはショップボットやレーザーカッターなどが備わった工房があり、テーブルや棚などはスタッフが自作しているそう。こういった自由に提案して形にしていく文化は中国の企業としては珍しいのではないだろうか。

レーザーカッターや大型のショップボット(CNCマシン)まである。

こんな机も自分たちでどんどん作るそう。

社員は全体的に非常に若い。20代前半から中盤という感じ。またSeeedはHacker Spaceを運営しており、そのコミュニティーに対してテストマーケティングを行ったり、コミュニティーの声を商品に反映させるなども行っているらしい。こういったメーカーが自分たちのプロダクトを使う人達をコミュニティーとして育てるという流れは日本でも広がってきているが、中国ではかなり先進的な試みだろう。

Make Block

Maker Faireで個人的に気になっていたMake Blockのオフィスにも伺うことが出来た。まだ3年と若い企業だが、ロボットを作るプラットフォームを作り、キットやパーツとして販売している。ヨーロッパやアメリカで好調に販売しているようで、日本にもスイッチサイエンスを通じて販売を開始したばかりのよう。
彼らも教育市場を主として展開している。まさにレゴと非常に近いモデルだが、展開しているパーツを組み合わせることでレーザーカッターや3Dプリンタ、プロッタなどまで作れるあたりはより上級者を取り込むことが出来そうだ。
また、Maker Faire期間中にはMake Openというハッカソンが行われており、世界各国から学生を中心とした参加者がMakeblockを使ったアイデアを形にしていた。優勝者イタリアチームでホワイトボードに絵を描くプロッタだったそうだが、どれもパーツ精度の高さや汎用性の高さを利用した機能的にも十分実用的なプロトタイプだ。

優勝したイタリアチームのプロッタ。こんな大きなものも作れるとは。

CEOのJasen

全体として

Makerと呼ばれるムーブメントは非常に活気づいているが、まだまだ具体的な成功を手にしている人達が少ないことも事実だ。深セン全体を考えると、やはり大手企業の生産を担う側面は否めない。今後、人件費の高騰などを考えていくとどこまでフレキシブルに安価な製品を作り続けられるのかという疑問はあるが、深センのエコシステムに学ぶ点は多く、日本の中小企業が今後グローバルにモノづくりのパートナーや生産拠点になっていくためには参考にするところが多い。
現状は基盤や部品といったモノが中心になっていてハードを生み出す拠点としての強さを感じるが、今後ここにソフトとしてのクリエイティビティーをどう付加していき、魅力ある商品やサービスを生み出していけるのかというのは深セン全体の課題のように感じるし、そこにはFabCafe Shenzhenの可能性も大いにありそうだ。
ニコ技深センツアー参加者のみなさんのブログはこちらから。

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