Event report
2026.2.11
伊藤 遥 / Haruka Ito
FabCafe Nagoya コミュニティマネジャー、ディレクター
2026年1月27日から3日間、名古屋で開催された国際的フォーラムTechGALA Japan。
第2回目の開催となるこの祭典は、「地球の未来を拓くテクノロジーの祭典」という名の通り、世界中から企業、研究者、スタートアップ、行政、クリエイター等多種多様な人々が集結。テクノロジーと社会課題、そして未来について語り合い、多くの出会いと気づきをもたらしました。
そんななか、一部で話題となっていたのが、TechGALAの2日目に開催された、小中高生を対象とした回遊スタディプログラム「TeensGALA」 です。
「地球の未来」を考える祭典が、大人ばかりの閉じられた状態でよいのだろうか?
この場を子どもたちが直接肌で感じたら、どのような気づきや学びが生まれるのだろうか?
昨年のTechGALAに参加した際に沸き起こったこれらの問いをもとに、TeensGALAは有志のメンバーにより開催に至りました。
このサイドイベントを開催してわかったことは、決してこの場は、子どもたちの気づきや学びのためだけのものではなかったということ。そこには、子どもが社会の現場に混じることで生まれた、大人だけではつくることのできない、場や人々へのさまざまなインパクトがありました。

Kick off| 小学1年生から高校3年生、そして大学生サポーターとで「チーム」になる
朝9時。高校生24名、中学生2名、小学生6名の、総勢31名が、オープニング会場である FabCafe Nagoya に集まりました。
「学校では学べないことを学びたい」
「世の中でどのようなことが行われているのか知りたい」
そんな思いをもとに、学校の課外活動公欠制度や愛知県のラーケーション制度などを活用し、自ら手を挙げて参加してくれました。
中には東京から親子で名古屋まで来て、お父さんはTechGALAに、お子さんはTeensGALAに参加しに来たという方もいました。

最初に行ったのは、アイスブレイク。
こまきこども未来館で普段から子どもたちに慣れ親しんでいるプロジェクトメンバーが考案した「オリジナルモンスターを作ろう」という自己紹介ワークに、小学1年生から高校3年生が年齢問わず一気に打ち解けました。
相手に引いてもらった1本の線から着想し、さまざまな強みと弱点をもつ、個性豊かなモンスターがたくさん誕生しました。




場があたたまったところで、本日のミッションが発表されました。

ミッションは、「印象に残った言葉(フレーズ)」と「心が動いたことを写真2枚で表現する」こと。これらのミッションをもとに、班でTechGALAをどう回遊するかの作戦会議を行いました。膨大なセッションや展示の中から、自分たちの関心や問いを起点に回る場所を自分たちで決めます。


なお、今回は、4名の大学生がサポーターとして、自ら手を挙げてボランティアとして参加してくれました。子どもたちのお兄さんお姉さんとして、寄り添い、時に問いを投げかけながら一緒に会場を回ります。
AM|TechGALA回遊 ― 教室では体験できない「生きた社会」とであう

「なんだか大人になった気分」
そうはにかんで言う高校生の表情は、どこかあどけなさを感じながらも、真剣な様子でした。目の前に広がっていたのは、登壇者によるセッション、スタートアップのピッチ、企業の展示。スケールの大きな舞台、はじめてきく言葉たち。
「スタートアップって言葉の意味が、今日やっとわかった」
「社会」という抽象概念を、目や肌で体感しながら、リアルな「現場」として捉えてました。
Lunch time|ふだんの給食とは違う、最新オフィス空間で味わう昼食

昼食会場は 、中日ビル内にある サイボウズ株式会社名古屋オフィス 。
「ここがオフィスなの?」バーやブランコ、芝生や大きなクッション、そしてカラフルなオフィス家具に、子どもたちはびっくり。社員の方にも昼食に同席いただきながら、どのような会社なのか?普段どのようなことをしているのかを聞きながら楽しく昼食をとりました。

また、昼食中に使用したのは、株式会社折兼 からご提供いただいた、バガス(サトウキビの搾りかす)を使ったカトラリー(スポーク)。自然と環境の話にもつながりました。

PM|TechGALAを回遊する子どもたちが与えた、場と人へのインパクト
大きなセッション会場。前方2列ががらりと空いていたので、2つの班の子どもたちがそこに座りました。
30〜50代がメジャー層となる会場内で、前方2列に小学生から高校生が並んで座っている様子に登壇者も思わず驚きを隠せない様子でした。
内容は「アントレプレナーシップ教育」という比較的子どもとの距離感は違いテーマではあったものの、金融ををはじめとした専門用語も使用されていました。
そのことに気づいた登壇者は、すかさず一つ一つの言葉に簡単に補足を入れながらセッションを進めるという配慮をしてくださいました。結果的に、子どもだけでなく、専門領域に明るくない大人にとっても伝わりやすいセッションになったのではないかと思います。


「今日はどうして参加しているの?よくきたね」
「聞いてみてどうだった?きいてくれてありがとう」
「(セッションの場全体で質問した高校生に対し)TechGALAで一番良い質問だったよ!」
セッションが終わるなり、声をかけに来てくれた登壇者の方々。普段は決して関わることのない大人から前向きな言葉をかけられて、子どもたちはとても誇らしげでした。

つづいて、展示ブースの訪問。
「自社の事業を小学生にも理解できるように伝えるって、結構難しいですね。いかに専門用語を使っているのかがわかりました」
どうやったら上手く伝わるか?各ブースの企業や団体が、ふだん使っているビジネス用語や専門用語を噛み砕きながら、丁寧に寄り添った対応をしてくださいました。 ふだん何気なく概念として話していることも「相手が知らないかもしれない、わからないかもしれない」という前提に立ったとき、自分の中にある「当たり前」や「思い込み」に問いが立つ。そんな小さな実感を持たれた方もいたように思います。
また、子どもたちが展示ブースを見て回っているとき、出展をしていた行政の方からこんな声もありました。
「先日TechGALAに近いイベントを開催したが、何かが足りないように感じていた。今回子ども達がこの場にいるのを目の当たりにして、これだ!と思った」
普段は大人しかいない場所に子どもがゆるやかに混じる。このことによって場と人におこるインパクトは、実は多くあったのかもしれません。
Reflection Speech|ひとりひとりの目で見た、耳できいた「わたし」 のTechGALA

最後はスノーピークカフェ久屋大通公園(株式会社折兼ホールディングス 会場提供)にて、振り返りのセッションを行いました。
今回のミッション「印象に残った言葉(フレーズ)」と「心が動いたことを写真2枚で表現すること」について、一人ずつ前で発表してもらいました。同じ会場を見ていても、それぞれが感じた、拾い上げた言葉や様子は異なっていて。
「インドのイメージが変わった。こんなに発展しているとは思わなかった」
「老舗企業が全く異なる業界の事業を開発していてとても驚いたし学びになった」
というものから
「ワークライフバランスはクソ。そんなふうに物事をとらえる人もいるんだと思って驚いた」
「35歳までに会社から声かけられなかったら負け組、ってきいて、そうなのかって思った」
大人が発した言葉に対する気づきや小さな違和感も、心の動きを丁寧に受け止めながら、素直に伝えてくれました。




「地球の未来を考える祭典」に子どもが参加することで起こったインパクト〜学校・企業・社会をつなぐということ〜

「こうやって学校の外に出てくることで、たくさんのことが得られるとわかりました。もっと挑戦します」
そう言って、TeensGALA参加をきっかけに別のイベントへすぐに申し込んだ高校生がいました。感じて持ち帰った経験は一人ひとり違いますが、その一言から確かに、子どもたちの心が動き、次の行動につながったように思います。
また、TechGALAに参加する子どもたちの姿を見たある大人は、こう語っています。
「アントレプレナーシップ教育を教室で10回行うよりも、この1日を体感する方が意欲と力が育つのかもしれませんね」
今回、通常のビジネスフォーラムではなく、地球の未来を考える「GALA(祭典)」としてプロデュースされた場だからこそ、本来の目的を侵すことなく、学校・企業・社会という異なる領域をゆるやかにつなげられたのではないかと考えています。
食べたことのない料理を「食べたい」とはならないように、社会にも教室や教科書だけでは届かない学びがあります。だからこそ、企業という“生きた現場”が子どもたちに開かれることに意味があるのだと思います。
きっと、この場を知り、感じた子どもたちは、数年後、今度は「GALA」の中心で活動していくことになるでしょう。その時に、どのようなインパクトが起こるのかは、計り知れません。
異なる領域の存在がゆるやかに交わり、相互作用を起こすことによって、共に発展する。このイベントでは、そんな気づきと実感を与えてくれたように思います。

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◆会場提供
FabCafe Nagoya サイボウズ株式会社名古屋オフィス 株式会社折兼(スノーピークカフェ久屋大通公園)
◆プロジェクトメンバー
こまきこども未来館 古谷萌子、前田守彦
株式会社LEO 古川千尋
◆当日サポーター
藤嶋知将、堀内温子
◆大学生サポーター
梅本泰希、狩野来実、天王寺浩太、松前佳音
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FabCafe Nagoya では、学校・学生連携や、学校現場および経験を活かした小学生から高校生、大学生向けプログラムの開発・実施もしています。また、SEL(Social Emotional Learning /社会性と情動の学習)をベースにしたソーシャルスキル・エモーショナルスキルの研修やプログラム設計、企画のご相談も可能です。
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伊藤 遥 / Haruka Ito
FabCafe Nagoya コミュニティマネジャー、ディレクター
大学卒業後、ReFaやSIXPADなどを手がける株式会社MTGへ入社し、新卒採用や組織開発を担当。多くの大学生と接する中で、「早期より多様な大人と経験に出会う機会が必要だ」と感じ、教育業界へ転身。2020年より名古屋市キャリア・サポート事業に参画し、高校常駐のキャリアナビゲーターとして、約5年間社会人・大学生等の外部人材を活用した探究プログラムの企画・実施や、高校生による主体的アクションの伴走支援を実施。現在はFabCafe Nagoyaのコミュニティーマネジャーとして、教育・SEL(SocialEmotionalLearning)を中心とした新しいコミュニティ形成を企画中。キャリアコンサルタント、キャリア教育コーディネーター、SELアドバイザー。1児の母。
大学卒業後、ReFaやSIXPADなどを手がける株式会社MTGへ入社し、新卒採用や組織開発を担当。多くの大学生と接する中で、「早期より多様な大人と経験に出会う機会が必要だ」と感じ、教育業界へ転身。2020年より名古屋市キャリア・サポート事業に参画し、高校常駐のキャリアナビゲーターとして、約5年間社会人・大学生等の外部人材を活用した探究プログラムの企画・実施や、高校生による主体的アクションの伴走支援を実施。現在はFabCafe Nagoyaのコミュニティーマネジャーとして、教育・SEL(SocialEmotionalLearning)を中心とした新しいコミュニティ形成を企画中。キャリアコンサルタント、キャリア教育コーディネーター、SELアドバイザー。1児の母。
