雷雲プロジェクト:ふしぎな雷雲ガンモを探せ!

雷はみんなにとってどんな存在?  怖い? 嫌なもの?  実は、雷雲(らいうん)から雷が生まれる仕組みは、まだ解き明かされていません。その謎を解く鍵がふしぎな雷雲「ガンモ」。そして、雷の発生には宇宙から降り注ぐ粒子が関わっているのかもしれません。雲、雷、宇宙。そんなロマンあふれる雷雲の秘密を、皆さんと一緒に探る活動、それが雷雲プロジェクトです。

「雷雲プロジェクト」は雷の発生する原因を究明するため、各地に観測機器を設置し、落雷時のデータを広範囲で収集・分析するプロジェクト。主催は理化学研究所の榎戸先生で、FabCafe KYOTOにて活動をしているOpen Science Meetupの世話人のお一人。本プロジェクトも一般のサポーターの協力を得てデータを集める、「オープンサイエンス」型のプロジェクトの一つ。

ふしぎな雷雲ガンモを探せ!

この街の天気は、くもりばかり。3日に1回はピシャゴロロ!この世界のどこかにある、雷が鳴ってばかりのおかしな街に、一人の博士がいました。

いつもボーッと雲ばかり眺めている博士。でも、ひとたび雷が鳴ったら、小さな箱を外に置いて、ジーッと何かを待っています。

博士は「ふしぎな雷雲」を探しているのでした。

ガンモとは?

頭の上でプカプカ浮かんでいるあの雷雲。実は、その中に世にもふしぎな雷雲が紛れているのです。

博士はそのふしぎな雷雲を「ガンモ」と名付けました。ガンモは驚くことに、「ガンマ線」という目には見えないビームを地上に向けて放っているのです。見た目は他の雷雲とそっくりなのに!

雷雲の中に隠れている、ふしぎな雷雲ガンモ。そのビームを調べていると、なんと宇宙の遥か彼方で起こっている現象とつながっている可能性が出てきたのです。雲にビームに宇宙って、ますますふしぎ。

もっともっとたくさんのガンモを見つけたい。そう考えた博士は、町の人たちと協力して、雷雲の中に隠れているガンモを捕まえる作戦を立てました。

そこで、発明されたのが、このふしぎな箱「コガモ」。

コガモの使い方

コガモは、ガンモが放っているビームを捕らえる装置。ガンモがうんと空高くに浮いていても、この箱さえ置いておけば、自動でその光線をキャッチすることができます。街の人たちが捕まえたガンモのデータは研究所に集められ、時にはスーパースペシャルレアなガンモが見つかったり?雷雲の中からガンモを見つけ出す作業はまるでゲームみたいです。

博士は来る日も来る日も、研究の毎日。実は、雷がどうやって生まれるのか、まだよくわかっていません。その秘密を解き明かす鍵がガンモにあるんじゃないかと、博士は考えました。

雷ばかりのこの街では、空がゴロゴロ言いはじめると、なんだかにぎやかな声が聞こえてきます。

「あ!ガンモ、発見!」

「ガンモだと思ったけど、ちがった。ガンもどきだ!」

「今日はガンモを見つけられなかった〜!次は見つかるかな〜」

まるで雲の上の宝物を見つけるみたいに、博士も街の人たちも、一生懸命ガンモを探しています。

宇宙とつながっているかもしれない、ふしぎな雷雲ガンモ。空にきらめく一瞬の輝きの謎を解き明かすため、今日もこの街では、たくさんの人が雲を見上げています。

雷雲プロジェクトについて

雷にはふしぎがいっぱい

私たちにとって、身近な「雷」。でも、雷が何をきっかけに発生するのかは、実はまだ完全には解明されていません。ガンモの観測から、この雷発生の謎の解明に挑戦しているのが、この雷雲プロジェクトです。

ガンマ線を放出するふしぎな雷雲

プロジェクトを進めて見えてきたのは、雷雲の中で加速された電子やガンマ線が「雷発生のきっかけ」を作るのではないか、という仮説です。とはいっても、ガンモはいつどこで発生するのか予測することができず、ガンマ線は近くにいなければ観測することはできません。

そこで、雷雲から放出されるガンマ線をたくさんの観測場所から探すため、雷雲プロジェクトでは、ガンマ線を測定するための検出器「コガモ」を開発しました。 このコガモを外に設置するだけで、いつでもどこでも誰でも、雷雲から放出されるガンマ線を測定することができます。

今、この検出器での観測は、雷が多いことで知られている日本の金沢で行っています。雷雲の発生頻度、サイズ、できる位置など、好条件が重なり、金沢周辺は世界的にも数少ない恵まれた雷の観測場所なのです。

現在は金沢に住む市民サポーターの協力のもと、市街地を中心に検出器を設置し、さまざまな地点から同時に冬季雷雲の観測を行おうとしています。

雷雲プロジェクトに参加して、雷と宇宙のふしぎを一緒に探求してみませんか?

雷Q&A

Q.雷ってどうやってできるの?

実は、ぷかぷかと浮かんでいる雲の中身は、水や氷の粒。それらが擦れ合うことによって、プラスとマイナスの電気を持ち始めます。偏ってしまったプラスとマイナスの電気を中和しようとして、雲は地面に向かって放電をします。これが私たちの見ている雷です。

でも、雷が発生するメカニズムは、まだよく分からないことがいっぱいです。たとえば、プラスとマイナスの間にはたらく電場の大きさが、どうも足りません。

※電場:電気の力がはたらく場所のこと

そこで、ひとつの仮説として、雷雲の中で高いエネルギーまで加速された電子やガンマ線が雷の発生をサポートしているのではないか、という考え方があります。

Q.雷雲と宇宙ってどんな関係があるの?

信じられない話ですが、地球には宇宙から目に見えない高エネルギーの粒が絶えず降り注いでいます。それを宇宙線といい、宇宙のずっと遠くにある環境で、電子などが加速されて生み出されているのです。

※電子:電気を生み出す元になる、一番小さな粒のこと

ガンモが地上に向かって放っている特殊な光線、ガンマ線。その発生にも、この宇宙線が関わっているようなのです。宇宙線が雷雲の中に入ると、空気の中から電子を叩き出し、電気の力で高いエネルギーまで加速されます。この加速された電子が大気にぶつかって、ガンマ線を出すと考えられています。

つまり、宇宙から降ってくる宇宙線が雷雲と出会うことで、ガンモが生まれているのかもしれません。そして、この雲の中で加速された電子が、雷の発生をサポートしているのかもしれないのです。

こんな形で雷雲プロジェクトに関わってみませんか?

雷雲プロジェクトには、さまざまな形で参加することができます。

プロジェクトは、金沢の周辺がメインの観測場所ですので、そちらにお住まいの方は、ご自宅にコガモを設置して研究に参加が可能です。また、図書館や寺社などの施設も観測スポットに適しているかもしれません。

現在、雷雲プロジェクトでは、金沢市のみなさんと一緒にガンモを探す取り組みを考えています。お家に設置したコガモがガンモを見つけると、まずスマホにアラートが送信されます。その後、実際に空にスマホを向けてガンモの写真を撮影するといった流れになります。まだ未確定ですが、撮影した写真は、気象情報サービスのWebサイトにアップロードする仕組みを考えています。

 

また、時には雷雲プロジェクトのメンバーが学校で出張授業をしたり、大学の産学連携プロジェクトとして観測を始めたり、小学校の自由研究の題材にもできるかもしれません。

私たちと一緒に、ふしぎな雷雲ガンモを探してみませんか?

問い合わせ先

雷雲プロジェクト (窓口:理化学研究所 榎戸極限自然現象理研白眉研究チーム
Email:cogamo_support@ml.riken.jp 
研究者チームGROWTH コラボレーションの成果:https://thdr.info

主な活動内容

Outline

名称

雷はみんなにとってどんな存在?  怖い? 嫌なもの?  実は、雷雲(らいうん)から雷が生まれる仕組みは、まだ解き明かされていません。その謎を解く鍵がふしぎな雷雲「ガンモ」。そして、雷の発生には宇宙から降り注ぐ粒子が関わっているのかもしれません。雲、雷、宇宙。そんなロマンあふれる雷雲の秘密を、皆さんと一緒に探る活動、それが雷雲プロジェクトです。

概要

雷雲プロジェクト:ふしぎな雷雲ガンモを探せ!

オーガナイザー

Members

  • 榎戸 輝揚

    理化学研究所 
    理研白眉研究チームリーダー

    理化学研究所の科学者。X線やガンマ線で宇宙を観測する天文学をやっていたが、雷や雷雲からもX線やガンマ線も出ているということを知って、他のチームメンバーとともに2006年頃から日本でも観測を始めた。コガモ箱を使って、金沢の市街地で、ガンマ線を出す雲(ガンモ)がどういった条件で発生するのかや、カミナリの発生に関わるかを明らかにしていくことに興味がある。他にも、宇宙にあるX線で輝く星や、月への人類進出などにも興味がある。

    理化学研究所の科学者。X線やガンマ線で宇宙を観測する天文学をやっていたが、雷や雷雲からもX線やガンマ線も出ているということを知って、他のチームメンバーとともに2006年頃から日本でも観測を始めた。コガモ箱を使って、金沢の市街地で、ガンマ線を出す雲(ガンモ)がどういった条件で発生するのかや、カミナリの発生に関わるかを明らかにしていくことに興味がある。他にも、宇宙にあるX線で輝く星や、月への人類進出などにも興味がある。

  • 沼澤 正樹

    理化学研究所
    特別研究員

    駆け出しの科学者。東京都立大で博士号を取得後、理化学研究所に。メインテーマは木星など太陽系天体からのX線放射の観測的研究。無類の新しもの好きで、雷雲プロジェクトを知るやいなや新規参入。といいつつも検出器開発は未経験で、色々と苦戦しながら毎日楽しく研究 (猛勉強) している。その他、超小型衛星の開発にも携わっている。いつか自分で作った衛星を使って木星の新しい物理を見つけることがひそかな野望。

    駆け出しの科学者。東京都立大で博士号を取得後、理化学研究所に。メインテーマは木星など太陽系天体からのX線放射の観測的研究。無類の新しもの好きで、雷雲プロジェクトを知るやいなや新規参入。といいつつも検出器開発は未経験で、色々と苦戦しながら毎日楽しく研究 (猛勉強) している。その他、超小型衛星の開発にも携わっている。いつか自分で作った衛星を使って木星の新しい物理を見つけることがひそかな野望。

  • 一方井 祐子

    金沢大学
    人間社会研究域人間科学系
    准教授
    特任研究員

    サイエンスと社会の関係について知りたい研究者。最初は、動物と話ができる研究者に憧れ、鳥(セキセイインコ)の研究をしていた。次第にヒトに興味をもつように。研究資金を獲得するためのクラウドファンディングや、研究者と市民が協働するシチズンサイエンスなどの、新しいサイエンスのかたちに興味がある。他にも、数学や物理学になぜ女性が少ないのかなどを研究している。趣味は休日にカフェでのんびりコーヒーを飲むこと。

    サイエンスと社会の関係について知りたい研究者。最初は、動物と話ができる研究者に憧れ、鳥(セキセイインコ)の研究をしていた。次第にヒトに興味をもつように。研究資金を獲得するためのクラウドファンディングや、研究者と市民が協働するシチズンサイエンスなどの、新しいサイエンスのかたちに興味がある。他にも、数学や物理学になぜ女性が少ないのかなどを研究している。趣味は休日にカフェでのんびりコーヒーを飲むこと。

  • 中澤 知洋

    名古屋大学
    素粒子宇宙起源研究所
    准教授

    名古屋大学の科学者。X線やガンマ線で宇宙を観測する人工衛星に搭載する実験装置の開発をしている。雷ガンマ線は、その起源も観測方法も、X線・ガンマ線の宇宙観測の科学とつながっていることから、面白そうだと思ってこの研究に参加している。ここ数年は、ガンマ線を出す雲(ガンモ)が雲の中のどこにあるのか、どっちをむいてガンマ線をだしているのかを知るための観測を進めている。自然現象が相手の観測なので、準備万端で観測に臨んでも空振りだったりする時もあるけれど、観測が成功した瞬間は最高に楽しいですね。

    名古屋大学の科学者。X線やガンマ線で宇宙を観測する人工衛星に搭載する実験装置の開発をしている。雷ガンマ線は、その起源も観測方法も、X線・ガンマ線の宇宙観測の科学とつながっていることから、面白そうだと思ってこの研究に参加している。ここ数年は、ガンマ線を出す雲(ガンモ)が雲の中のどこにあるのか、どっちをむいてガンマ線をだしているのかを知るための観測を進めている。自然現象が相手の観測なので、準備万端で観測に臨んでも空振りだったりする時もあるけれど、観測が成功した瞬間は最高に楽しいですね。

  • 三宅 晶子

    茨城工業高等専門学校
    国際創造工学科
    准教授

    宇宙線が大好きな研究者。宇宙空間をコンピュータ上に再現して宇宙線が地球に到来するまでの様子を数値シミュレーションしたり、国際宇宙ステーションで宇宙線を観測している。宇宙線と地球上の気象事象との関係にも興味があり、このプロジェクトに参加している。日本の雷雲・雷放電に宇宙線がどのように介在しているのか、はたまたいないのか、そのヒントを得られたら楽しいなと、ワクワクしている。コガモ箱でのシチズンサイエンスを通して、一般の皆さんにもこのワクワクをお裾分けできたら嬉しい。

    宇宙線が大好きな研究者。宇宙空間をコンピュータ上に再現して宇宙線が地球に到来するまでの様子を数値シミュレーションしたり、国際宇宙ステーションで宇宙線を観測している。宇宙線と地球上の気象事象との関係にも興味があり、このプロジェクトに参加している。日本の雷雲・雷放電に宇宙線がどのように介在しているのか、はたまたいないのか、そのヒントを得られたら楽しいなと、ワクワクしている。コガモ箱でのシチズンサイエンスを通して、一般の皆さんにもこのワクワクをお裾分けできたら嬉しい。

  • 湯浅 孝行

    元理化学研究所

  • 土屋 晴文

    日本原子力研究開発機構
    原子力基礎工学研究センター
    研究副主幹

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