Column

2015.11.25

益山詠夢さん飛騨訪問

FabCafe Hida 編集部

こんにちは。飛騨高山に位置するFabCafe Hidaのスタッフです。

家具からパビリオン、ランドスケープまで様々なスケールのファブリケーションプロジェクトを手掛ける益山詠夢氏が飛騨を訪問されました。

益山 さんは、英国AAスクールを卒業後、ロンドンで建築事務所勤務を経てデジタルファブリケーションワークショップ、MESA Studioを2009年に共同設立。

2011年よりデジタルファブリケーションの知識を活かし大学の建築教育に携わり、ロンドンの芸術大学セントラルセントマーチンズとオックスフォードブルックス大学で2015年6月まで自らのデザイン研究室を持つ。

スタジオのモットーは“Design through making” とし、作りながらデザインを思考するアプローチに重点を置く。そして、デジタルファブリケーション技術と既存するクラフト、物/建物のつくられ方、新しい融合のあり方をリサーチ目的とし建築デザインを進めていく手法を研究テーマとしている。

ロンドン近郊にあるデジタルファブリケーション研究施設である Grymsdyke Farmにてファブリケーションワークショップのファブリケーターとして、バートレット大学、ウエストミンスター大学、イーストロンドン大学の建築科の生徒たちをサポートしてきた。現在、2015年7月に日本に帰国後、8月から慶應義塾大学SFC研究所のソーシャルファブリケーションラボ(横浜)にて文部科学省の『革新的イノベーション創出プログラム』の研究員としてプロジェクトに関わるのと同時に、慶應義塾大学の田中浩也研究室の建築チーム講師として活動している。

そんな益山さんが今回飛騨を訪れたのは、まさに、MESA Studioのモットーである、デジタルファブリケーション x 伝統技術の融合のあり方をリサーチする上で、飛騨の文化や歴史、建築や組木の技術、そして広葉樹の活用に興味を持ったから。

森(安峰山)

\まず私達がお連れしたのは飛騨を一望できる安峰山

\林業ベンチャーのバルステクノロジーを営む、森と音楽をこよなく愛する木こりの宮本さんによる森との関係性や森に対する 熱いヴィジョンを聞き、

\伐採の様子を見ました。意外とあっさりと倒れる様子にびっくり。

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この後小さく伐って山の下まで運びます。

西野製材所

\次に訪れたのは国内有数の広葉樹の扱い量を誇る西野製材所。これまでにもヒダクマを通じて様々な建築家が様々な広葉樹を買い付け、都心のオフィスやカフェのフローリングや家具に活用しています。

\西野さんから広葉樹の価値化の話を聞きます。広葉樹は針葉樹に比べて成長が20年ほど遅く、曲がってたり重かったりで使い勝手が悪く、大量生産には向かず、線路の枕木や蒔、チップなどの燃料になるしかなく製材所の端に置いてあります。それを価値化しようというのがヒダクマの試み。よく見るととっても個性豊かな広葉樹たち。クリ、クルミ、 ホオノキ、ナラ、ブナ、サクラ、ケヤキ、キリ、トチノキなど色も木目も匂いも質感も全て違います。生き物だから当然ですね!ただ、世の中の間伐利用はほとんどがスギやヒノキなどの針葉樹でが中心で、活用への知識や技術はデータ化されていません。だから西野さんの生きた知恵がとても大切なのです。天然乾燥では水含率を18%までにしかできないので、人口乾燥で10%まで落とします。(家具メーカーなどは8%まで落とします)ただ、乾燥機に入れるまでは1年ほど自然の中に置いて乾燥します。人口乾燥に入れると1週間~10日ほどで乾燥するのですから人工乾燥のほうがはるかに効率的ですが、人口乾燥だと木本来の脂分まで抜き取ってしまうのです。天然の木の脂の乗りやツヤが抜けてしまうとカサカサした表情になります。ちなみに天然乾燥中は雨が降っても大丈夫。訪れる皆さんもよく聞かれるのが、「乾燥中に雨ざらしになってもいいのか?」という問い。西野さんは「表面がカラカラに乾燥してしまうと逆に中の水分が蒸発しない。ある程度表面が濡れていたほうが内部の水が出やすい。あまりにカンカン照りが続くとむしろ水をかけるんです。」と説明します。

\そして木材なら必ずある節。節は製品画一化の大量生産時代には嫌われましたが、今はこういった節のある材をあえてデザインの表現として家具に組み込むメーカーも出てきました。これも個性と考えれば節ひとつひとつの表情も素敵に見えてきます。ただ、節から切れ目や割れ目が入ることもあるので、きちんとした対策が欠かせません。

\こんな風に曲がった材が組み合わさってフローリングになったらとても豊かな生活が送れそうな気がしますよね(^^)テクノロジーを使ってそんなことにも挑戦していきたいヒダクマです。

田中建築

\田中建築の前の田んぼには雪が積もっていました。

木をこよなく愛する田中一家にはたくさんの木材があります。もちろん広葉樹も!デザイン、設計、施工まで一貫して行い、その高い品質が評判を呼び、全国から発注が入るそうです。この日も何台もの車が停まっていました。

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木材が割れないように裂け目をあらかじめ入れた木材について丁寧に説明をする田中さん

\田中さんが現在取り組んでいる新築物件。見事な梁が家中に張り巡らされています。全て天然の無垢材で家の中はとてもいい香りがします。

\テーブルも椅子も全てがケヤキなど広葉樹でその曲がった状態のままうまくデザインとして取り込んだ仕上がり。その質感も色も木目も触った感触も見事なこと!

木工職人の工房

\次に訪れたのは飛騨古川をベースに活躍する万能な木工職人 堅田さんが営むカフェ兼工房Calm’s Cafe。突然降ってくる超変化球な注文にも柔軟に対応しそのデザインをうまく表現しプロダクトに落とし込む技と知恵を持ち合わせます。

\様々な木工機械を有し、カフェも工房の内装も家具もすべて自ら作っている超DYIな職人さんです。

\古川の美しい冬景色

匠文化館

\次に訪れたのは飛騨の匠の伝統の技、組木の博物館 匠文化館。

\組木を試してその構造に感心されている益山さん。アイデアの元になる情報を収集しているようです。

飛騨産業

\最後に訪れたのは飛騨高山をベースに高いブランド力を持つ家具メーカー。古くから飛騨地方で盛んであった伝統工芸の曲木家具からその歴史はスタートしました。

\ボイラー室。ここで工場で使う全エネルギーを生み出しています。

\これが曲げ木の技。蒸した木材を取り出してすぐに曲げていきます。

\見事に曲がってますね〜

\曲がった材がたくさん保管されています

\女性もたくさん活躍しています

\椅子の安全チェックコーナー

\

試練の製品づくりの過去があったのですね

こうして益山さんの飛騨およびヒダクマの視察を終えました。今後、飛騨の広葉樹や組木の技を活用し未来につないでいくにあたり、益山さんの知識とロンドンで養ったグローバル視点を融合し、面白い実験をスタートさせる始めの一歩となったことを願います。

最後に簡単な動画で益山さんの1日をご紹介 https://vimeo.com/158884011

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