Event report

2020.9.1

オンラインワークショップ成功の秘訣を一挙公開!

FabCafe流、オンラインワークショップでイノベーションを生み出す方法

スチュワート ケルシー|Kelsie Stewart

FabCafe CCO (チーフコミュニティオフィサー)

新型コロナウイルスの感染拡大とともに、私たちの日常生活のオンライン化が加速しました。ウェブ会議サービスを提供するZoomの利用者が爆発的に急増したのも、Wi-Fiにさえ繋がっていれば仕事ができることに多くの人が気づいたからです。

しかし、オンラインの世界ならではの課題があります。

例えば、オンラインワークショップをしている時に画面越しの人となかなか距離を縮められず、議論を発展させることができない、または、新しいアイデアを生み出すことが難しい、といったことです。

オンラインワークショップでイノベーションは生み出せるのか。

今回は、私たちが開催したオンラインワークショップの経験を元に、FabCafeがこれらの課題とどのように向き合い、イノベーションの促進を実現したかをお伝えます。

FabCafeでは2014年以降、デザイナソン* (Designathon) をはじめとしたワークショップや、ミートアップなどのカジュアルなイベントを通じて、SDGsに積極的に取り組み人たい人たちのコミュニティを育ててきました。

今までその多くはオフラインで実施してきましたが、withコロナの時代に合わせ、オンライン開催に移行することにしました。

2020年7月23日の海の日、FabCafeはオンラインワークショップ Save Our Seas Mini Jam(以下、SOS Mini Jam)を開催しました。テーマは SDGsの目標14 「Life Below Water」(海の豊かさを守ろう)です。

24人の参加者と6人のファシリテーターが Zoomで集い、デザインを通してどうやって海の豊かさを守れるかを探りました。オンラインにもかかわらず、むしろオンラインであるからこそ、イノベイティブなアイデアがたくさん生まれ、大変実りのあるワークショップとなりました。

本記事では、このデザイン・ワークショップを成功に導いた5つのポイントをご紹介します。

* デザイナソンとは? (FabCafeでは別名Jamと呼んでいます)

複数の少人数チームが与えられたお題に対し、デザインを通した課題解決策を競い合うイベントです。
詳しくは以下の記事をチェック👇
デザイン思考で考える「SDGs12: つくる責任つかう責任」 WIDDアイデアソンレポート

FabCafeはこれまで、世界中の人たちに “What do you Fab?”と問いかけ、様々な人たちの「作りたい」という気持ちを支えてきました。もちろん、その哲学はオンラインに移行しても変わりません。

オンラインワークショップを実施するに当たり、「Zoom」とオンラインのホワイトボードサービス「Miro」を使用しましたが、その際に一番配慮したのは、これらのツールを初めて使う参加者も、その「作りたい」気持ちを表現できること。オンラインツールで置いてけぼりにならないようにプログラムをデザインすることでした。

例えば、Miroについては、ワークショップのどのタイミングで、どのように使うのかを開始前に説明しました。また、参加者が各自のコンピュターでMiroボードをズームイン・アウトした時に画面がどのように変わるのか、などの動作も事前に確認してもらいました。そして、参加者がいつでもMiroの使い方を確認できるよう、操作のコツをボードの上部にまとめました。

Miroをズームアウトした状態のスクリーンショット

Miroをズームアウトすることで全体像がわかり、全チームのボードの内容を確認・比較できます。

Miroをズームインした状態のスクリーンショット

また、ズームインすると、自分たちのチームに合わせた細かい指示やリマインダーがポップアップします。
例えば、赤い旗のポップアップには、特定のタスクにどのくらいの時間をかけるべきかが書いてあります。
黄色い潜水艦はチームの目標をリマインドしてくれます。
10分間のおやつ休憩の時間が近づいていることも教えてくれます!

 

また、参加者が初歩的なパソコン操作でつまずいてしまわないよう、考慮することも大切です。例えば、私たちはZoomとMiroを同時に使ったことがない方が多いであろうと想定しました。そのため、ワークショップ開始前に、パソコンの画面のどこにZoomとMiroを開いておくべきかを、スクリーンショットを用いてアドバイスしておきました。

Miroの操作方法まとめのスクリーンショット

 

ディスプレイ上でどのようにツールを並べれば良いかを提示した画像

このような配慮とサポートをすることで、パソコン操作でつまずいてワークショップに集中できない、もしくは脱落してしまう人が出るリスクを防ぎました。

新しいことや複雑なことを理解しようとする時、紙に書き出してみると頭が整理されることがあると思います。

今回の企画の段階でも、オンラインワークショップのフレームワークをゼロからデザインするために、Miroで行いたいことをオフラインでシミュレーションしてみることにしました。

具体的には、まず大きなホワイトボードを用意しました。そこに書き込んだり、ポストイットを貼ったりして、使用するMiroボードをフィジカルに再現しました。

このプロトタイプを行うメリットは、Miroボードの全体像が一気に把握できること、そして、大事な議論を小さなディスプレイではなく、実際に指をさしながら行うことができることです。

オフラインで検証した際のホワイトボード写真

Miroボードのイントロセクション ver. 1.0

検証中のホワイトボード写真

このような初期段階のプロトタイプは、全体像を見ることが目的で、綺麗な見た目である必要は、全くありません。
SOS Mini Jam Miro Board ver. 1.0

ワークショップのフレームワークをゼロからデザインするためには、たくさんの自問自答を重ねる必要があります。どの要素が必要で、どの要素が邪魔になるのか?参加者が理解しやすいワークショップの順序はなんだろうか?など。

そのため、すぐにオンラインでMiroボードを作り始めるのではなく、まずは手元で必要な要素を書き出し、しっかりとデザインすることが重要です。

その上で、ホワイトボードと紙を用いてMiroのプロトタイプを作っていく、という手順で進めました。これは、素早く何度も繰り返して、基礎的なフレームワークを複数メンバーで構築するための簡単、かつ、楽しい方法だったと思います。

プロトタイピングを重ねた後に実際のMiroボードを作成し、今度はそれをチームメンバー以外の人たちに体験してもらいました。そして忌憚のないフィードバックを受け取り、アップデートを重ねました。

これはオフラインでも同様かもしれませんが、ワークショップを開催する時、主催側はつい、当日の流れ・スケジュールを優先事項として捉えてしまいがちです。

確かにそれも大切ですが、それよりも前にするべきことは、参加者同士の交流を促し、協業しやすい雰囲気を作り出すことです。

FabCafeのワークショップの醍醐味は、様々な国の方が参加する点にあります。今回のSOS Mini Jami はオンラインでの開催だったこともあり、その特徴が如実に現れました。

建築家、デザイナー、エンジニア、ライター、海洋保護NGOの職員、大学生、ビジネスパーソンなど、多様なバックグランドの方が国境の壁を越え、計10か国から参加してくださいました。

「多様性は名詞ではなくて、動詞」

このような多様性を生かすためには、ワークショップの冒頭に、参加者たちが交流し、お互いのことを知り合う時間を設けることが大切です。それにより、誰もが発言しやすい雰囲気を作り出し、実りのあるワークショップにしていくのです。

 

「世界各国から集まった人たちと国際問題について議論ができたのはとても貴重な体験でした。自分とは全く違う人生を歩んできて、全く違う視点を持っている人たちと話し合うことで自分自身の考えを深めることができました」– Kevin, SOS Mini Jam 参加者

 

より効果的な交流の場を生み出すためのポイントは、事前の準備にあります。

今回のグループ分けは、事前に実施した参加者の関心分野のヒアリングに基づいて行いました。似たような関心分野の人たちが同じグループに入るよう意識しつつ、似通ったバックグラウンドの人たちで固まらないようにすること。

それにより、グループ内での価値観の多様性を担保し、参加者たちが興味を持っていることについてしっかりと議論できるよう意識しました。

また、各グループには、トレーニングを受けたファシリテーターをアサインしました。彼らには事前に、テーマに関する知識を身につけてもらいました。そうすることで、全参加者が発言しやすいようにファシリテートできる体制を整えました。

 

「私のグループのファシリテーターは最高でした。音楽を流し、私たち参加者がリラックスして話せるようにあらゆる工夫をしてくれました。Miroを使うことで作業がスムースに進み、オンライン・ワークショップでも斬新なアイデアを生み出すことは十分可能だと実感しました」– Aya, SOS Mini Jam 参加者

スタッフ集合写真

FabCafe Tokyoの前に並ぶSOS Mini Jam 主催者ら

本来であれば、このようなワークショップは、会場の空間をデザインすることで、クリエイティブな発想を想起させ、かつ発言がしやすいフレンドリーな雰囲気を作り出すことができます。

しかしオンラインの世界ではそれが難しいため、代わりに私たちが注目したのは、色鮮やかなビジュアルと音でした。これらの要素を駆使することで、オンラインでも、会場の「雰囲気」を作り出すことができました。

Miroのデザイン例

Miroのデザイン例

特に音に関しては、ただ好みの音楽をかけるのではなく、流す音楽を戦略的にキュレーションしました。

例えば、参加者がアイディアを各自のメモに書き出している時は、沈黙を埋めるためのバックグラウンドミュージックとしての音楽をかけました。

また休憩時間には、テンポのいい音楽を流し、休憩の開始と終わりの気運を高める演出をしました。

逆に音を消すことも効果的です。例えば、参加者がZoomのブレイクアウトルームにいる時は、BGMを消し、全参加者が自分たちのマイクをオンにすることを促しました。そうすることで参加者同士の話し声、笑い声などが聞こえ、なごやかな雰囲気を作り出すことができます。

このような音の工夫により、全体としてメリハリを作り出すことができました。

プレイリストのスクリーンショット

テクニカル担当のRio Kudoが作ったSOS Mini Jam 専用の プレイリスト

内容が盛りだくさんなワークショップだとつい休憩時間を忘れがちですが、これは絶対に忘れてはいけない、大切な要素です。

今回のワークショップはなんと4.5時間に及びました。その長丁場の中で、休憩時間を2回設けました。

流れとしては、作業を一旦やめた参加者を所属グループ専用のZoomブレイクアウトルーム(バーチャル休憩所)に案内します。そして、休憩時間が終わったら、全参加者が集うメインのZoomルームに自動的に招集するように設定しておきました。

オンラインワークショップにおいて、強制的にでも休憩時間を作ることはとても大事です。

長時間パソコンに向かっていたことで凝り固まった目や体、頭を休ませることができます。また、全参加者が一斉に休みを取ることにも意味があります。そうすることで、各ファシリテーターが、自分のチームだけが長めに休憩時間を取ってしまうことがないよう、気を配る必要がなくなります。そして、グループによって作業時間が異なり、成果に大幅な差異が出てしまうことも防ぐことができます。加えて、休憩時間に他のチームのメンバーと交流したり、互いの進捗状況やアイディアの共有をすることもできます。

オフラインとオンラインのどちらにも言えることですが、休憩時間にほかのメンバーと交流することによって、頭も気分もリフレッシュして新しいアイディアが浮かぶことがあります。そして、オンラインだからこそ、この要素を忘れてはいけません。

これまでにご紹介した5つのポイントを導入することで、今回のワークショップは大成功に終わりました。

各グループがMiroボードにアップロードした最終コンセプト・スケッチなどの資料はこちらからご覧いただけます。
→ Save Our Seasページ(AWRD)


そしてこれからFabCafeが開催する予定のオンラインワークショップですが、今年はSDGsにデザイン思考で挑む世界的ワークショップ「Global Goals Jam」をオンラインで行います。

東京、京都+福岡、香港を拠点にして開催します。

社会の課題解決について議論したい。
私たちの生活をよくしたい。
Inequality や Sustainability の課題について世界各地の人たちと話し合いたい。
自分に何ができるのかを考えたい。

そう思われているならば、ぜひご参加ください。オンラインでイノベーションを起こしましょう。

皆さんの参加をお待ちしています!

Global Goals Jam Tokyo 2020

イベント詳細はこちら

Global Goals Jam Tokyo 2020 バナー

 

Global Goals Jam Fukuoka + Kyoto 2020

イベントページはこちら

Global Goals Jam Fukuoka + Kyoto 2020 バナー

 

また、このほかにGlobal Goals Jam Hong Kong 2020も開催予定。ただいまイベントページを準備中です!

Author

  • スチュワート ケルシー|Kelsie Stewart

    FabCafe CCO (チーフコミュニティオフィサー)

    アメリカ合衆国出身。フロリダ大学で心理学の学士課程(2009)と宗教学の修士課程(2015)を修了。 バリスタとエスプレッソトレーナーとして2008年からスペシャリティコーヒーの世界に没頭し、FabCafeオープン間もない2012年に、コーヒー繋がりの友人の紹介によってFabCafeを知る。その後JETプログラム(2014-2017)を通して、福岡県で英語を教えながら日本語を磨き、2017年にLoftworkとFabCafeに入社。

    入社以来、バリスタ、カフェアドバイザー、FabCafeグローバルネットワークのコミュニケーションコーディネーター、FabCafe ウェブサイトライター、デザイン思考ワークショップのファシリテーターと幅広く、業務を務める。また、FabCafe CCOとして、FabCafe Global Networkのまとめ役を務め、世界各地のFabCafeのローカルクリエイティブコミュニティの育成と、それらのコミュニティとグローバルネットワークを繋ぐことを行っている。 加えて、持続可能な開発目標の短期的な解決策を作成することを目的とした2日間のデザインソンであるGlobal Goals Jam(GGJ)の東京開催の主催者でもあり、本イベントを過去に東京、バンコク、香港の複数都市で企画・実施した。

    アメリカ合衆国出身。フロリダ大学で心理学の学士課程(2009)と宗教学の修士課程(2015)を修了。 バリスタとエスプレッソトレーナーとして2008年からスペシャリティコーヒーの世界に没頭し、FabCafeオープン間もない2012年に、コーヒー繋がりの友人の紹介によってFabCafeを知る。その後JETプログラム(2014-2017)を通して、福岡県で英語を教えながら日本語を磨き、2017年にLoftworkとFabCafeに入社。

    入社以来、バリスタ、カフェアドバイザー、FabCafeグローバルネットワークのコミュニケーションコーディネーター、FabCafe ウェブサイトライター、デザイン思考ワークショップのファシリテーターと幅広く、業務を務める。また、FabCafe CCOとして、FabCafe Global Networkのまとめ役を務め、世界各地のFabCafeのローカルクリエイティブコミュニティの育成と、それらのコミュニティとグローバルネットワークを繋ぐことを行っている。 加えて、持続可能な開発目標の短期的な解決策を作成することを目的とした2日間のデザインソンであるGlobal Goals Jam(GGJ)の東京開催の主催者でもあり、本イベントを過去に東京、バンコク、香港の複数都市で企画・実施した。

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