Event report

2021.10.10

ネオ落語文化の産声。名古屋のクラブカルチャーと古典落語が出会った夜ー「”YOSE Nagoya” – by Z落語」イベントレポート

落語とクラブカルチャーをミックスした渋谷発新世代落語イベント ”YOSE”をFabCafeNagoyaで開催しました!

江戸時代、新しい文化や交流の生まれる場であった落語の寄席と、Z世代にとっての”寄席”であるクラブカルチャーをMIXしたZ落語のプロジェクト”YOSE”が2021年9月4日、名古屋に初上陸!
会場には落語の高座の他にDJブース、バーやショップなどが取り囲み、 世代観に根差した多様なバックボーンを取り入れた 一日限りの“YOSE”が誕生しました。
Z世代はもちろんのこと、年齢問わずあらゆる世代が集結した新しい交流の場が誕生!その様子をたっぷりレポートしていきます。

YOSE Nagoya by Z落語 アフタームービー

Z落語とは

Z世代の落語家・桂枝之進が主宰するメンバー全員21世紀生まれのクリエイティブチーム。

主催・桂枝之進は、15歳で落語界へ入門し、2021年現在弱冠20歳。演者・お客さん共に同世代がおらず、数十年後の将来に明るいイメージを持てないと考えZ落語を結成。
400年前から受け継がれる落語というカルチャーの魅力を伝えるために、Z世代(1995-2007年生まれ)の視点で再定義し、発信する複数のプロジェクトを立ち上げている。

ネオンライトが照らす中、DJの流すクラブミュージックがお出迎え

 

「いつものFabCafe Nagoyaとは別空間!!」

入り口にはZ落語のロゴが流れるのれん、天井を這うネオンの光線とDJによる4つ打ちの現代的な音楽。
この日、FabCafe Nagoyaには色気が漂っていました。

  • LUTA (NEUMA)

  • SARVA (NEUMA)

DEEPな空間を演出してくれたのは、名古屋の新星DJコレクティブ”NEUMA“のLUTAさんとSARVAさん。
テクノとエクスペリメンタルを横断しながら、ダイナミックかつ上質なプレイを披露してくれたLUTAさん。
一方、SARVAさんは重低音とビート、アンビエントを掛け合わせ、ダークとライトを行き来するようなプレイを披露。

会場のネオンとお二人のプレイにフロアは熱く盛り上がりました!

NEUMAのお二人はFabCafe Nagoyaで毎月開催中の#POPUPDJNAGOYAにも出演。本イベントでのプレイを聞き逃してしまった方は、是非毎月第一日曜日開催の#POPUPDJNAGOYAにご参加くださいませ!

伝統とモダンの融合を楽しむ空間装飾

テンセグリティ提灯は入口からメインステージまでおよそ40個並べられた

会場装飾でコラボレーションしたND3M。
ND3Mは東海地区の複数の大学の建築学生が自主的に集まり、「建築と異分野の融合」を軸とし、幅広いジャンルで活動を続けているデザインチームです。
今回、ND3Mが”YOSE Nagoya”のために制作してくれたのは、落語に欠かせない高座と提灯。
ND3MはZ落語との対話を重ね、それぞれの大事にする価値観を表すキーワードを書き出しました。そのキーワードから発想し、伝統的な落語のツールを再構成するために用いたのが、『テンセグリティ』という手法。浮遊感と緊張感の絶妙なバランスと、Zを思い起こさせるようなシャープな形状が、”YOSE”のコンセプトにピタリとはまりました。
提灯は入口からメインステージまでおよそ40個並べられ、現代のテクノロジーで新しい”YOSE”の雰囲気を演出したのに対し、高座は提灯の半分の3本のワイヤーで構成することでより、浮遊感を高めました。これを横に2つ並べ、その間に板をまたがせ、上に桂さんが座ります。

「この高座の脚の部分は接続されていないんですよ、張力で保っているんです。僕はその上に乗って、今みなさんの前で落語をしようとしているんです。正直怖いですよ。落語は落ちても、僕は落ちたくないですよ。笑」

会場は笑いに包まれつつ、テンセグリティをはじめて目にした人も多く、感動の声もいただきました。

『テンセグリティ』とは

「Tension(張力)」と「Integrity(統合)」を合わせた造語で、一般的な構造物は圧縮材同士を接続していくのに対し、『テンセグリティ』はワイヤーのような細い張力材と組み合わさることで、宙に浮いたような立体を構成します。

テンセグリティ高座に乗り、浮遊感を体現するかのように軽快に落語を演じた

また、会場にはマス席のように畳の上で鑑賞できるスペースを設置。
大野製畳株式会社様に協力いただき実現しました。
リラックスして落語やDJを楽しんでいただけるのはもちろん、落語に加えて昔ながらの畳で過ごすことの良さに改めて気づくことができたのではないでしょうか。

年齢問わずあらゆる世代が楽しめる落語

参加したZ世代をはじめ、多くの若い人は、落語を聴いたことがない人ばかり。
そんな中、桂さんが披露してくれたのは、初心者でもわかりやすい内容の演目。老若男女、会場を笑いの渦に巻き込んでいきました。

一席目と二席目の演目を紹介します!

『時うどん』

賢い兄貴分と少し抜けている弟分。夜、持ち合わせがないが、うどん屋でうどんを頼み、兄貴分は弟分を気にせずうどんを独り占めする。勘定では店主に時刻を読み上させ、勘定を誤魔化した兄貴分。それを面白がった弟分は真似をするため、昼からひとりで別のうどん屋にいく。兄貴分の何気ないやりとりまで真似した弟分は店主に不審がらながらもうどんを食べ終えた。勘定を兄貴分と同じように誤魔化そうとする。しかし、昼間ということを忘れ、勘定を誤魔化すことができなかった。

 

『お忘れ物承り所』(三枝・作)

忘れ物をしたという人々と対応する駅員。傘を忘れそうだなと思い、本当に傘を忘れたという男、大金の小切手をなくしパニックになる会社員、メガネがないと頭にメガネを乗せた老人、13年前のお土産の松葉カニを探した男、、、。忘れ物をした人々が駅員のもとにやってくる。駅員自身も妻に作ってもらった弁当を家に忘れたことに気が付く。妻に連絡をし、もってきてもらおうと頼むが、、。妻はお弁当を電車に忘れてしまった。

時うどんでうどんをすする桂さん

持ち合わせがないのにお腹が空いて、まけてくれないかな?と思ったり、何度忘れても必ず戻ってくるものがあったり。
現代でもイメージできるシチュエーションが演目の中にいくつも散りばめられていました。
現代風にアレンジされていると思いきや、桂さんが披露したのは古典落語。
時代を超えても、共感できる日常的なことがネタになっており、親近感を沸いた人も多かったのではないでしょうか。
敷居が高いと思っていた落語もテレビや動画で観ているコントや漫才とも近いエンターテインメントであることに気付かされた瞬間でした。

” 寄席 ”を再定義した”YOSE”

VJを担当したいんちょーさん(Z落語)とオープンDJを担当した空さん(Z落語)

”YOSE”は江戸時代の技芸を見せる興行小屋” 寄席 ”に由来しています。落語のみならず講談や浪曲、漫才もこの寄席から広まった文化の一つであり、毎日興行が行われて、町内の決まった面々が顔を出す集会所のような役割もありました。
交流が生まれる場として人々に愛されていた寄席を現代で再定義し、落語を起点とした新しいコミュニケーションが創発される空間して“YOSE”が生まれました。

ー”YOSE”にクラブカルチャーは欠かせません

とZ落語主宰の桂さんは話します。
Z世代の特徴として、デジタルネイティブ、アイデンティティの多様性が挙げられます。
アイデンティティが交差し、デジタルに発信して、コミュニケーションを形成していくクラブカルチャーは、現代の”寄席”と言えるでしょう。
Z落語は、伝統的な落語に、Z世代の”寄席”であるクラブカルチャーを化学反応させることで新たな文化を創出する場をつくりました。

”YOSE Nagoya – by Z落語”では、Z世代に落語の良さを知ってもらうだけではなく、落語を起点とし、Z世代のカルチャーを年齢問わずあらゆる世代に発信することで新しいコミュニケーションが生まれました。
ディープなクラブカルチャーが広がる名古屋という地での”YOSE”は非常に相性の良いものでした。

Z世代の持つ、多様なアイデンティティの可能性、それを発信していく環境を形成していくZ落語の活動にこれからも目が離せません。(執筆:加藤あん)

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