Event report
2023.11.9
後藤麻衣子
株式会社COMULA コピーライター / 「句具」代表 / 俳人
2023年7月22日、FabCafe Nagoyaにて俳句と日常をもう少しだけ近くする、「句と暮らす」ための道具ブランドである句具との新しいリサーチワークショップ「看板俳句」を開催しました!こちらは本イベントのレポートとなります。(転載記事)
「看板俳句」は、今回のワークショップのための造語。
普段、何気なく目にする看板の観察をしながらまちを歩き、まちの様子はもちろん歴史や時代にも思いを馳せつつ、言葉遊びをしながら最終的に俳句にしてしまおう!という、フィールドワークを通して楽しむ新しいリサーチ・ワークショップです。
テーマは、「まちに溢れるあらゆることばを普段とは違う視点で採集して、自分だけの文学作品をつくってみよう」。
今回はFabCafe Nagoyaさんから、「看板と俳句って、どうにかつながったりしませんかね?」とアイデアの種となる部分をいただき、そこから句具として面白いワークショップがつくれないか?と組み立ててみて、今回初開催となりました!
この日の講師は、句具のふたりが担当。名古屋市内外から集まった15名で、看板俳句がスタートしました。
まず、今日使う俳号を決めるところから。決まったら、俳句の基本についてレクチャーです。
そのあとは、五七五の一部が歯抜けになっている俳句に季語をあてはめて、取り合わせの俳句をつくってみるワークを行いました。
まずは、合いそうな季語を選ぶところから。
次に、「五音の俳句歳時記」で、好きな季語を自由に選んで当てはめてみます。
どうしてその季語を選んだのかをひとりずつ発表します。
同じ12音でも、取り合わせる季語によって俳句の雰囲気が変わってきます。
ここで全員の「どうしてその季語にしたの?」というのを一言ずつ聞けたことで、いろいろな表現があることがわかりました。
いよいよフィールドワーク!
まちへ繰り出し、
看板採集へ
季語パズルで俳句づくりを体験したら、いよいよまち歩きへ出かけます!
周辺を歩いていろいろな看板を写真に撮って、全員参加のLINEオープンチャットにどんどんアップしていきます。20〜30分ほどの短いフィールドワークでしたが、15名で集めた写真はなんと全部で197枚!(驚)
想像以上にたくさんの看板が集まりました!
「俳句になりそう」「ならなさそう」といったことは一切考えず、まずは目についたものをどんどん撮影してきてください!と伝えました。
参加者からは、お店の看板から注意看板まで、新旧いろいろな看板が集まりました。(LINEの通知が鳴り止まないほど!)
「あっ、この看板さっき見た」
「ここ通ったのに、こんな面白い看板あったんだ!?」
という発見もあったようでした。
看板の言葉から、俳句をどうやって作ろう?
手元のスマホに集まった200枚弱の看板写真を眺めながら、じゃあここからどんなふうに俳句にしていこう?
ということで、看板にある言葉からどう俳句にしていくかを簡単にレクチャーしました。
先ほどの季語パズルでやった「取り合わせ」の俳句技法を使っていきます。季語は最後に考えるとして、まずは看板から拝借したことばをきっかけにして、12音の言葉を整えていく作業から。
看板にある5音の言葉を拾ってそれを7音で描写するパターン。
看板にある7音の言葉を拾って、残りの5音を考えるパターン。
面白い言葉を見つけたらどうやって整えていこう?
12音を超える言葉はどうやって短くする?
いろいろなパターンでレクチャーしつつ、「より俳句らしく完成させる」ために、12音をどう整えればいいか、その考え方やコツなどについてもお話ししました。
いよいよ、写真を見ながら俳句をつくっていきます。
自分が撮影した写真じゃなくても、誰かが撮った写真を使ってもOK。
あとから「どの看板からつくった?」と聞くこともないので、俳句を作る途中で看板の言葉が跡形もなく消えてしまっても、それはそれで大丈夫です。
看板の中にある言葉をきっかけにして、自由に12音を組み立てていきます。
12音を組み立てたら、季語を考えていきます。
五音の俳句歳時記から、合いそうな気分の季語を当てはめます。
いろんな季語を当てはめながら、最終形を探っていきます。
1人一句、たくさんできた人は最大三句まで投句可能。投句フォームに俳句を送って、しばし休憩です。
推し句を見つけて褒め合う、句会のような鑑賞タイム
さあ、投句された全33句が出揃いました。選句一覧をパッと見た時の印象は、「いい句がたくさんある!」という嬉しい驚き。
今回の参加者さんは、なんと半分以上が俳句未経験者さん。ですが、5句に選びきれないほどに、いい作品がたくさん集まりました!
いよいよここから、句会のスキームを使って、参加者それぞれの俳句を鑑賞していきます。
一覧表の中から好きな俳句を5句選び、特に好きな句(特選)をそのうち1句選びます。
選んだ俳句は、選句用紙に5句記入して提出します。
「どの句を誰が選んだか」は、画面上で記録して、全員にシェアします。
カフェの一角で、ドリンクを飲みながらゆったり。
全員の選が出揃ったら、みなさんそれぞれ、作品のどんなところが良かったのかを語り合います。
推し句のどんなところが好きかを語り合います。
たっぷり話したところで「ではこの句は、どなたの句でしょう?」と作者を明かします。
せっかくなので、作者からも一言コメントをいただきました。
看板が元ネタになっている句については、「この句はあの看板を元に作りました」と、その作った過程を披露してくださる方もいれば、
「もしかしてこの句って、あの看板かも…?」と予想をしながら鑑賞を楽しんでくださる方もいました。
対して、どんな看板が元になったかわからないけれど「作品として好き」という声も多く上がり、看板俳句の楽しみ方の広がりを感じました。
当日、投句された作品と作者はこちらです。
おもしろい作品、いい俳句がたくさん出揃いました!
点が入ったすべての句に触れつつ、全4時間の濃厚なワークショップは幕を閉じました。
「看板俳句」に参加してみて
初めて俳句に触れたという人からは、
「自分の句が読まれるとドキドキした」
「そんなふうに鑑賞してもらえるとはうれしい。自分の句じゃないみたい」
という感想も上がりました。
「自分が撮影してきた写真が、誰かの俳句のきっかけになったのがうれしい」という声も。
すでに俳句に親しんでいる方も数名、参加していただきましたが、そんなベテラン勢からも「看板をきっかけに作るのは新鮮で楽しかった!」という声もいただきました。
参加していただいた方の中に、俳人の夏井いつきさんブログへのお便りに、今回の「看板俳句」に参加したことについて紹介してくださった方がいて、夏井いつきさんご本人のブログでもご紹介いただきました!
リサーチ・ワークショップとしての「俳句」の可能性
今回はワークショップという形で、俳句をツールとして使いつつ、「吟行」や「句会」という、もともと俳句の文化の中にあるものをうまく活用しながら、はじめて俳句に触れる人にも楽しんでもらえるワークショップを目指して企画・運営しました。
実際「俳句をつくりましょう!」「句会をしましょう!」という問いかけではなく、まち歩きをしながら最終形として俳句を目指す、というかたちにしたこと、そして素材となる看板写真をみんなでシェアすることで、一歩目を踏み出しやすくしたことなど、親しみやすいスタイルになるよう、工夫をしてみました。
結果として、参加していただいた方に「俳句って、なんか面白いね!」と感じてもらえていたら、とてもうれしいです。
最後に記念撮影!(掲載の許可をいただいています)
参加してくださったみなさま、ありがとうございました!
看板俳句、次回柳ヶ瀬にて開催!
OKB岐阜中央プラザ わくわくベースG特別企画として看板俳句がやってきます。
皆さま、ぜひご参加くださいませ。
看板俳句
-まちの言葉を採集して、文学作品をつくろう-
日 時:12月9日(土)13:00~17:00
参加費:無料(句具「作句ノート」1冊、五音の俳句歳時記、ワークシート付き)
持ち物:スマートフォン、筆記具(ペンなど)
講 師:コピーライター / 俳人 後藤麻衣子
※本企画は、地元のクリエイターと、地域のみなさまを結びつける活動の一環として、OKB岐阜中央プラザわくわくベースGが皆さまをご招待し、実施いたします。
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後藤麻衣子
株式会社COMULA コピーライター / 「句具」代表 / 俳人
1983年岐阜生まれ。コピーライター・編集者。地元バス会社のバスガイド、地域情報誌の編集部を経て、2010年にライターとして独立、その後コピーライターに。工業デザイナーの夫が経営する株式会社COMULAで、商品開発やブランディング、コピーライティングに携わる。コピーライターズクラブ名古屋会員。
俳句が趣味で、2020年10月に俳句のための文具ブランド「句具」を立ち上げる。蒼海俳句会所属、現代俳句協会会員。「全国俳誌協会 第4回新人賞 特別賞」受賞、「第11回 百年俳句賞」入賞。1983年岐阜生まれ。コピーライター・編集者。地元バス会社のバスガイド、地域情報誌の編集部を経て、2010年にライターとして独立、その後コピーライターに。工業デザイナーの夫が経営する株式会社COMULAで、商品開発やブランディング、コピーライティングに携わる。コピーライターズクラブ名古屋会員。
俳句が趣味で、2020年10月に俳句のための文具ブランド「句具」を立ち上げる。蒼海俳句会所属、現代俳句協会会員。「全国俳誌協会 第4回新人賞 特別賞」受賞、「第11回 百年俳句賞」入賞。