Interview

2022.6.28

未来を見据えた”その先”のSTEAM教育とは -SonoSakiインタビューレポート-

FabCafe Nagoya Players Interview vol.3 /2022.06.29

小沼亜未

FabCafe Nagoya アシスタントディレクター

 FabCafe Nagoyaでは、様々なクリエイターや企業が出会い、プロジェクトを生み出しています。
今回はその一例としてFabCafe Nagoyaでみらいのおねんどの開催をするSonoSakiさんにフォーカスし、FabCafe Nagoyaとの出会いや教育価値観について探っていきます。

 

左から小沼、戸田勝也さん、戸田かえでさん


  • 株式会社 SonoSaki

    (戸田勝也さん、戸田かえでさん)

    愛知を拠点とし、子供達を対象に創造力を育む3DCG✖️ものづくり教室としてみらいのおねんど教室を3パターン(オフライン・オンライン・サテライト)に展開。みらいのおねんど教室では、デジタル彫刻ソフトウェアである「ZBrush」をメインソフトとして使用し、実際の粘土のように伸ばしたり、削ったり、平らにしたりと自由な発想で制作し思考力や創造力など様々な力を身につけることができます。
    各地で開催される特別教室では「ZBrush」で3Dモデルを作り、そのモデルを3Dプリンターで出力して実際に形にするイベントを行っています。
    FabCafe Nagoya、日本科学未来館、なごのキャンパス、けいはんな学研都市 精華町、名古屋市主催先進技術体験イベント等で特別教室を開催。

    Webサイト

    愛知を拠点とし、子供達を対象に創造力を育む3DCG✖️ものづくり教室としてみらいのおねんど教室を3パターン(オフライン・オンライン・サテライト)に展開。みらいのおねんど教室では、デジタル彫刻ソフトウェアである「ZBrush」をメインソフトとして使用し、実際の粘土のように伸ばしたり、削ったり、平らにしたりと自由な発想で制作し思考力や創造力など様々な力を身につけることができます。
    各地で開催される特別教室では「ZBrush」で3Dモデルを作り、そのモデルを3Dプリンターで出力して実際に形にするイベントを行っています。
    FabCafe Nagoya、日本科学未来館、なごのキャンパス、けいはんな学研都市 精華町、名古屋市主催先進技術体験イベント等で特別教室を開催。

    Webサイト


かえでさん:実は、初めてみらいのおねんど教室を開催したのが、2021年1月23日のFabCafe Nagoyaなんです。これがSonoSakiとしての初めての活動でもあります。

開催に至った経緯としては、ZBrushの伝道師でもある故・福井信明さんとの出会いがきっかけです。福井さんは、3Dの普及活動の一環として、FabCafe Tokyoで大人向けのワークショップや個展を開催しており、「名古屋にFabCafeがオープンしたらぜひ手伝ってほしい。」という福井さんの意思を受け継ぎたいと考えました。私たちは大人向けだけではなく、未来への子供達に向けた3D教育をしていきたいと思い、FabCafe Nagoyaが設立される際に「子供に向けた3Dの普及活動を行いたい!」と伝えました。

こうした縁から、現時点でFabCafe Nagoyaではみらいのおねんど教室を6回開催し、その他、なごのキャンパスや日本科学未来館など、様々な会場で開催しています。また、メディアに特集される機会も増え、多くの方々に3DCGを知ってもらうきっかけもできました。

勝也さん:SonoSakiのロゴに載っているレッドクローバーの花言葉には“学び”という意味があります。

SonoSakiでの3D普及活動として、子供たちに未来を見据えた教育を行うことが私たちの役目でもあると考えています。しかし、課題として3DCGというもの自体がまだまだ普及されていない現状があります。そのため、3Dのモデルを様々なテクノロジーに発展させていくことで、新たなものを創造する”学び”へと繋げていきたいと考え、みらいのおねんど教室ができました。


勝也さん:「子供たちが作った作品を、FabCafeNagoya前のレイヤードヒサヤオオドオリパークの芝生上に配置して見てみたら面白そう!」という軽い冗談がきっかけでした。

それが、FabCafe Nagoyaなどで新しい人と繋がっていくうちに「本当にできるかもしれない!」と思うようになり、AR畑というコンテンツが成り立ちました。FabCafeはやりたいことが実現可能になる場でもあり、アイデアを提供する場でもあります。FabCafeをハブとして様々な人に出会い、興味のある人たちでコミュニティが出来上がる。FabCafeを通して行えることは無限にあると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デジタルこども祭りイベントページ
今年 5月6日〜8日の3日間、FabCafe Nagoyaで行われたデジタルこども祭りの様子。

QRコードをかざすと子供達が作った「おねんど(3DCG)」がAR上に現れます。


勝也さん:みらいのおねんど教室では、「ZBrush」という、粘土のように直感的にモデルを作れる、プロも使用するデジタルスカルプティングソフトを使用しています。これは、ディズニーやマーベルなどゲームやアニメーションの制作現場で実際に使用されており、プロが使う制作ツールを使ってもらうことで、世界で活躍できる子供たちを教育していきたいと考えています。

また、「ZBrush」だけでなく、3Dの総合制作ソフトである「Blender」やゲームエンジンの「Unreal Engine」のように、世界標準で使われているソフトも使用しています。

小沼:私も3Dのソフトを何度か使ったことがありますが、覚える量が多いですよね。大人になってくるとどうしても時間が限られてきますが、時間に余裕のある子供の頃からプロが使うような環境で制作できるのは羨ましいですね。

勝也さん:そうですよね。子供の頃からプロ同然のツールを使うことによって、ある程度の基礎を身につけることができますし、他のソフトに対しての対応力も身につきます。また、世界標準のソフトを使うことで、これからの未来で広く活躍できるようになるとも思っています。

名古屋市主催先進技術体験イベント


 

 

 

勝也さんSTEAM 教育とは科学(Science)技術(Technology)工学(Engineering)芸術(Art)数学(Mathmatics)5つの頭文字をとった造語です。その中でもみらいのおねんど教室では、”Art”に着目しています。デジタルの空間に触れながら制作することにより、自分の頭の中にあるアイデアや3Dのモデルを設計する創造力や、空間認識能力等も必要になっていく。これらが、いわゆるSTEAM教育に当てはまるのではないかと考えています。


かえでさん:日本にありがちな暗記型の教育は、社会に出た際には役に立ちづらいと思います。ですので、SonoSakiでは、ヒントだけを与え、答えを出すのは子供たちに委ねるなど、自分で考えて問題解決に繋がるような思考の構築を大事にしています。

例えば、子供たちは生き物の制作時に、指の数を5本にするなど、自分の知っている知識の範疇やルール内で作り上げてしまうことが多いです。ですが、世の中にあるものは、たくさんのリファレンスや形あるものから成り立っています。それらを想像させるために「指の数は何本だっけ?」と問いかけてみることで、骨格の構造の知識を自分で習得しようとします。そこに”自分で考える力”が働きます。


小沼:なるほど、自ら考えさせる機会を設けることで思考力を養うことができるのですね。ちなみになんですが、子供たちはどんなところに苦戦するのでしょうか?

勝也さん:平面的な捉え方になってしまうことが多々あります。例えば、キャラクター制作の際、前からみると立体だけれど360度を通して見ると、横は平面構造になっています。そういう意味では、みらいのおねんど教室は立体的に物事を見る力を伸ばす場でもありますね。様々な角度から物事を捉える力をつけていくことで空間認識力や、3D構造の捉え方を学ぶ力を身につけるようにしています。

また、「ZBrush」は直感的に作品を作ることができます。3DだとどうしてもCADや数学的知識、プログラミング等を学ばなけれいけないというイメージが多いかもしれません。

しかし、「ZBrush」は粘土をこねるように物作りをすることができるので、絵を描くことが苦手な生徒さんでもクオリティの高い作品を制作できるようになる方が多いです。

かえでさん:3Dの認知度向上のためにも、メディアに出ていきたいですね!積極的にプレスリリースを出したり、取材を受けたりしたいと思います。また、みらいのおねんど教室としては3Dをきっかけとして子供たちに様々な企業の技術や知識を伝承させていきたいと考えています。
例えば、
3DCGからSDGsの取り組みに興味を持ってもらうとかですかね。あくまでも3DCGは手段としての立ち位置で、そこから異業種の企業さんたちと一緒に制作することで子供たちが、新たな価値観に触れる場を提供したいと思います。

また、3DCGは作って動かすだけでなく、それぞれの物を捉える力を養います。動態デザインがその一例ですね。車やバイクの動きにはデザインがあり、強そう、速そう、どっしりしている等の特徴があります。それぞれのコンセプトにあった動きはそれ相応の心理的なデザインで構成されています。

小沼:つまり、車やバイクの動態デザインは、人の共有認識をデザインしていくことと近いのでしょうか?

かえでさん:車のデザインにおいても、一瞬で可愛いもの、かっこいいものと感じるデザインは、デザイナーが人に対して心理的な理解を介して制作しています。そうしたデザインを3Dと掛け合わせることで、子供たちの観察力にも繋がって欲しいと考えています。

SonoSakiさんの思い出の品である。作品を持ってきていただきました。
かえでさんは鵜が好きなんだそう。鵜をベースとして、足は鷭(バン)という鳥を用い、尻尾はトカゲの要素を入れ、羽干しするポーズをしているそうです。クリーチャーは、さまざまな動物の要素をコラージュして新たな生物として成り立っているのですね。

みらいのおねんど教室は、3Dを手段として様々な分野への興味、ものを形にすることの思考力や創造力等が”学び”として子供たちに身につく場所だと思います。

FabCafe Nagoyaはこうした様々な分野と人が繋がることで、アイデアを形にすることが実現可能な場でもあります。今後も、多様なネットワークを生み出しコミュニティの形成を築くための場として、FabCafeを利用していただけたらと思います

 


「ZBrush」といったプロが使うソフトを使って粘土のように伸ばしたり、平らにしたりと直感的に制作することができます。また、自分で作ったキャラクターを3Dプログラミングで動かしたり、3D上に配置したりと自由な発想で創造力や思考力を身につけることができます。みらいのおねんど教室では、オンライン、オフライン共に無料体験会を実施中です。ぜひ一度覗いてみませんか?

 

Author

  • 小沼亜未

    FabCafe Nagoya アシスタントディレクター

    最近、FabCafe Nagoyaに漂着。名古屋学芸大学大学院 メディア造形研究科 修士課程在籍
    人と人のコミュニケーションを軸とした映像表現を模索中。

    最近、FabCafe Nagoyaに漂着。名古屋学芸大学大学院 メディア造形研究科 修士課程在籍
    人と人のコミュニケーションを軸とした映像表現を模索中。

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