Interview
2020.3.29
野村 善文
FabCafe プロデューサー
どうもこんにちは。FabCafe Tokyoの野村です。
感染拡大がひろがるコロナウイルス。「猛威を振るう」ってこういうことなんだなぁと日々実感しています。外出自粛の要請やリモートワーク推奨の話もありますが、どうしても外出せざるを得ないとか、人と接触しないといけないとか、必需品になるのが、そうマスクです。
僕自身が重度の花粉症ということもあって、この時期はいつもマスクをしているのですが、ちょっとくしゃみをしたり、せきをしただけで、さっと距離を置かれたり、冷たい目で見られることが今年は多い気がします。悲しいです。花粉症ですよ!と叫びたくなる気持ちを抑えております。
こうしたなか、私のような悩める花粉症ユーザーに向けた画期的なスタンプを作成されたということで、それがこちら。
この「花粉症です」スタンプを発案した和田さん。FabCafe TokyoでのFab講習会に参加しレーザーカッターの使い方を学び、ずっと作ってみたいと思ってたスタンプを作成。軽い気持ちでTwitterに投稿したところ、時代の波もありバズってしまったそう。現在まさにFabCafe Globalでは世界中のクリエイターから「未来を変えるマスク、または代用できるプロダクト」のアイデアを募集する「Mask Design Challenge 2020」を開催しておりますが、「とりあえず作ってみた」というプロトタイピング精神をまさに体現してる和田さん。とんでもない面白い人が突如現れたので、色々と話を聞いてみました。
ずっと探してたけど見つからず、もう自分で作っちゃおうと思った
ーさてさて、Twitterでバズって、今やテレビ取材とかきちゃってますけど、なんかすごいことになってますね。
和田さん いやほんとに、かなり予想外の展開です 笑。積極的にTwitterを使ってるわけではないので、せいぜい数十いいねくらいかなと思っていたのが、あっという間に拡散されて、今は1.4万いいね、8000リツイートまで伸びちゃってます。
ーすごいですね…この「花粉症なんです」スタンプって、そもそもなんで作ったんですか?
和田さん 私、花粉症が喉にくるタイプで、咳をしたりするんですけど、この季節ってインフルエンザも流行る時期じゃないですか?だから、例年インフルエンザに勘違いされるのがすごく申し訳なくて…。
メッセージTシャツってあるじゃないですか。「崖っぷち」とか「ダイエットは明日から」とか書いてあるやつ。そういう会話の糸口になったりもして面白いものが好きで。
だから、マスクに「花粉症です」って書けたら、誤解を招かないし、話のネタにもなるし良いなぁって。どっかで売ってないかなぁと思ってずっと探してたんですけど無くて、もう自分で作っちゃおうと思ったのが、去年の秋です。
ーなるほど。去年の秋に何かあったんですか?
和田さん 私の友達に趣味で作品を作っている人がいて。日曜アーティストっていう名前でブログもやってるんですけど、その人がゴム版でスタンプ作ったのを見せてくれて、「え、こんなの自分で作れるの!?」ってびっくりしたんですよ。
作り方を聞いたら、イラストレーターでデータ作って、レーザーカッターで出力するだけで、意外と簡単だったって話してくれて。私もできるかなぁと思ったのがきっかけです。
ーそれでFabCafeに?すごい行動力ですね。
和田さん いやいやそんなことなくて。はじめは諦めたんですよ。こういう機材使おうとすると、会員になったりしないといけなかったりして、あくまでも出来心で作りたいだけなのに初期費用かかりすぎちゃうなぁって。
それで、FabCafeであればデータと素材を持ち込むだけでいいと知って、これなら行けるかもと思いました。せっかくなのでまずは Fab講習を受けて色々と学んで、実践してみようということで今回のスタンプ制作に至りました。
そんな和田さん、Twitterのプロフィールには「運営サイトの広告収入で暮らすミニサイト作り職人」とあります。聞いてみると、東京都内の温泉の情報をまとめた「東京温泉」や、もしもの時のための「備蓄.com」といったような情報ミニサイトを作成して運用をしているそう。今回のスタンプのようなものづくりをするのは初めて、その「つくってみた」に対しての周りからの反応も面白いという。
大喜利みたいに、いろんなアイデアが広がっていくイメージ
話題のTweetはこちら
花粉症の私が本当に欲しかった「花粉症なんですゴム判」、作っちゃいました。ちょっと多めに作ったので、あとでどっかで売ります。 #マスク #花粉症 #花粉症なんですゴム判 #レーザーカッター @fabcafe_com pic.twitter.com/2Ke8qvPI23
— わだ:そうだ房総半島へ行こう (@wada_akiko) March 2, 2020
ーTwitter見ているとポジティブな反応が多いですよねぇ。普段作ってるウェブサイトとかに関しても、こういう風なユーザーとのコミュニケーションってあったりしますか?
和田さん いやぁ…ウェブサイトは滅多にないですねぇ。PV数はあるので見ている人はかなりいると思うんですけど、メッセージをくれたりとか送られてくるのは、ほとんどないです。年に1回、「この情報古いので更新してください」みたいなメッセージをいただく位です…。
ーそうなんですね 笑。それでいうと同じ「つくる」行為でも、スタンプとウェブサイトだと全然違いますか?
和田さん そうですね。正直なところ、ウェブに比べてスタンプって面倒だなぁとも思ったんですよね 笑。注文もらって、作って、発送して。やっぱり手間になるじゃないですか。でも、その分すごく楽しいなとも思いました。受け取った人から「使ってみたよ!」って写真を送ってもらったり、そういうのすごく嬉しいです。まだしっかりコメントとか返せてないんですけど、初めてこういう「ものづくり」を通じて人とつながってみて、ハマりそうです。
ー色々と反応見ていて「使ってみたよ!」もそうですけど、「こういうの作って!」とか「こうしたらいいよ!」とか、「マスクスタンプ」をテーマに大喜利状態になってるのも、すごく面白いなぁと思いました。
和田さん ほんとそうですよね。布用のインクでスタンプして「洗っても落ちませんでした!」とレポートしてくれたり。「咳喘息なんです」とか「猫アレルギーかもしれません」みたいな、すごいニッチなアイデアも生まれてきていて。全部カバーすることはできないんですけど、それこそ、大喜利みたいに、いろんなアイデアが広がっていくイメージで面白いです。
ーそれこそメッセージTシャツみたいになってますもんね。
和田さん そうなんですよ。コロナが収束したとしても、マスクを使う文化ってなくならないですよね。それこそメッセージTシャツみたいに、毎日カスタマイズすることだってできるし、例えばワンポイント柄を入れてお洒落として使うこともできるし、そもそもマスクのイメージを変えるみたいなこともできそうだなぁって、みなさんの反応見ていて思いました。
ーなるほど。最後の質問になるんですが、スタンプの次に作ってみたいものとかってありますか?
和田さん 私、カブというバイクに乗っているんです。後部のところに荷物入れのカゴがあるんですけど、蝶番の仕様で、駐車すると横に傾いて、蓋が外れちゃうんですよね 笑。些細なことではあるんですけど、他のカブ友達に聞くと同じような需要ってすごいあって、3Dプリンターとかで作れないかなぁと思ってます!
ー正直、言っている意味があまりわかりませんが 笑、多分作れそうなので、ぜひ3Dプリンターで作りましょう。
和田さん はい、是非お願いします!
野村 こちらこそ!今日はお時間、ありがとうございました!
今回マスクスタンプをきっかけに、話を聞いてみようとインタビューの時間をいただいた和田さん。話してみると、物腰の柔らかさからは想像しない、とてもユニークなバックグラウンドとピュアな行動力に溢れる方でした。
次回、「カブの後ろのカゴの蝶番の部分3D出力してみた」であいましょう。(本人確認取れてないけど平気かなぁ…?笑)
編集後期
今回Twitterで話題になったことがきっかけで、和田さんとお話しする機会を得られましたが、何度も強調していたのはこのバズりが「予想外」であったこと。周りの友達にシェアするくらいの気持ちだったのが、思った以上に大きな反響を呼んでしまっただけだそう。
「バズらせたい」とか「バズワードをうみたい」とかってたまに聞いたりしますが、そもそも「バズる」みたいな予測不可なアクシデントを目標にすることはできないし、できたとしても不健康そうだなぁと思いました。それよりも、純粋に作ってみたいという気持ちを応援する、そういう文化みたいなものを作っていきたいんだなぁ。そこには多かれ少なかれ、人が集まる気がしている。FabCafeはそんな場でありたいなと改めて思う野村でした。
【終了】「Mask Design Challenge 2020」とは?
コロナウイルスの影響により、世界中の主要都市で医療用のマスクの需要が高まると同時に価格が跳ね上がり、「マスク不足」が社会問題となっています。
変わりゆく世界と深刻化する課題に対し、FabCafe Globalは世界中のクリエイターから「未来を変えるマスク、または代用できるプロダクト」のアイデアを募集します。
ジャンルは不問。自由な発想から生まれた、マスクに関する新しいアイデアをお待ちしています!
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野村 善文
FabCafe プロデューサー
米国東海岸、ペンシルベニア州ハバフォード大学に4年間の学部留学をし、演劇学部舞台芸術学科卒業。米国東海岸を中心に舞台美術家・彫刻家としてフリーランス活動を行い、日本に帰国。何かを作ることを通して人が集まり、コミュニティが生まれることで、芸術やものづくり文化を日常生活にどう浸透させていくことができるかという興味から、FabCafeに入社。
FabCafeプロデューサーとして、企業のサステイナビリティ関連事業のサポートや、海外企業の新規事業の機会領域リサーチなどの企画立案を行っている。また、音楽イベントや教育ワークショップなど幅広く活動している。趣味は、写真と映像観賞。
米国東海岸、ペンシルベニア州ハバフォード大学に4年間の学部留学をし、演劇学部舞台芸術学科卒業。米国東海岸を中心に舞台美術家・彫刻家としてフリーランス活動を行い、日本に帰国。何かを作ることを通して人が集まり、コミュニティが生まれることで、芸術やものづくり文化を日常生活にどう浸透させていくことができるかという興味から、FabCafeに入社。
FabCafeプロデューサーとして、企業のサステイナビリティ関連事業のサポートや、海外企業の新規事業の機会領域リサーチなどの企画立案を行っている。また、音楽イベントや教育ワークショップなど幅広く活動している。趣味は、写真と映像観賞。