Column
2021.9.12
志田 岳弥
Hidakuma 森のプロデューサー
任意の形状に打ち付けた真鍮釘をはじめとした支柱に、色とりどりの糸で模様やシルエットを描いていく「糸かけアート」。その素地にはMDFボードや合板などが使われることが多いですが、Lotus工房の堀川幸子(マルポテサチコ)さんが注目したのは、有機的で唯一無二の形状を持った広葉樹の無垢板や木のコブでした。独特な素地の上で映える曼荼羅が、曲がりやコブといった木(もく)の特徴を引き立てる、そんな曼荼羅と木の関係が素敵な作品です。
天然の葉を利用したボタニーペインティングで描いた蓮の葉と、曼荼羅で糸掛けアートで表現した蓮の花や蕾つぼみが、緩やかに湾曲した無垢のトチ板に散りばめられた作品。さざ波模様が特徴的なトチが、綺麗な水に見立てられています。
仕様
材料:トチ(素地)
仕上げ:なし(研磨のみ)
子宮をイメージした作品。コブ切断面のクランク(割れ目)部分に流し入れた青く着色したレジンが、胎児のようなシルエットを浮かび上がらせています。その胎児が生を受ける世界が、白く優しい世界であるという想いを込めて、白色の糸で曼荼羅(まんだら)を製作。
仕様
材料:ホオノキのコブ
仕上げ:コブの割れ目を埋める加工としてレジンを使用
-
やすりをかけたトチの板に、ボタニーペインティングの蓮の葉を専用の接着剤で貼り付ける
-
糸掛けアートの図面に沿って釘を打ち付ける(上段の蓮のつぼみは19mmの釘、下段の蓮の花には16mmのピンを使用)
-
ボタニーペインティングで着色し、定着材を塗布
-
糸掛けによりつぼみ、花をかたちづくる。茎には3Dペイントを使用
合板で糸かけアートをつくる場合、釘を多少多く打っても割れにくいですが、天然木は木目によっては釘の本数次第で割れが生じる場合があります。そこで堀川さんは、糸掛けだけの作品に仕上げるのではなく、板の形や木目をきれいな水と見立て、釘を使わないボタニーペインティングによる蓮の葉と、糸掛けアートで形づくる蓮の花やつぼみを合わせて制作。木の特徴を受け入れ、ふたつの手法を組み合わせたことで、作品に立体感が生まれています。
堀川幸子(マルポテサチコ)
Lotus工房
神奈川県横浜市出身。旅行会社勤務、結婚、出産、離婚、ひとり親、介護職などなど経験する中で、様々な人と出会い「自分の人生は一度きり、そして自分のモノ」ということに気付く。人生の中でやりたい事を模索する中、自分の想いや見ている世界を形にしようと思い至り、何かを作るなら捨てられてしまうかもしれないものを使ったものづくりをしようと、端材を生かした作品をつくるようになる。型にとらわれず、自由にやりたい様に作りたいものを制作している。https://monodukuri-lotus-kobo.jimdofree.com/
天然木で作る作品の醍醐味は一番は香りです。
作品は全て手作業で作り上げています。制作工程は削る事からスタートするのですが、このときの木の香りを堪能しながら、作品の構成を考える時間が一番好きです。
天然木は、触れているだけでも作品が優しいエネルギーで満たされていきます。その自然の優しいエネルギーが好きで、木を使った制作をしています。
堀川幸子(マルポテサチコ)
Lotus工房
-
志田 岳弥
Hidakuma 森のプロデューサー
1991年東京生まれ。琉球大学農学部を卒業後、国際協力機構(JICA)青年海外協力隊としてペルー共和国に赴任し、国家自然保護区管理事務局(SERNANP)ピウラ事務所にて環境教育に従事。流通業界紙記者、チリ共和国でのサーモン養殖産業についての取材活動を経て、2020年6月よりヒダクマに所属。マーケティングや滞在型プログラムの企画・運営などを担当している。地元漁業組合でも活動中。北アルプスや周辺エリアを源流とする高原川流域にて、渓流魚を対象としたフィールドワークを展開している。
1991年東京生まれ。琉球大学農学部を卒業後、国際協力機構(JICA)青年海外協力隊としてペルー共和国に赴任し、国家自然保護区管理事務局(SERNANP)ピウラ事務所にて環境教育に従事。流通業界紙記者、チリ共和国でのサーモン養殖産業についての取材活動を経て、2020年6月よりヒダクマに所属。マーケティングや滞在型プログラムの企画・運営などを担当している。地元漁業組合でも活動中。北アルプスや周辺エリアを源流とする高原川流域にて、渓流魚を対象としたフィールドワークを展開している。