Event report

2019.5.30

【イベント開催レポート】Fab Meetup Kyoto vol.36

2019/05/28(火)、Fab Meetup Kyotoの第36回が無事終了しました!
登壇者は下記の通り。

LT:杉本雅明(エレファンテック株式会社/ 3D回路を作る)
LT:松尾 泰貴(八尾市 / ものづくりを伝えるサイトの応援プロジェクトについて)
LT:庄本彩美(円卓 / 夏至にカレーを食べよう)
PT:三田地 博史 (YOKOITOデザイン責任者 / デジタル機器での『工芸』的な制作について)
PT:林 留美奈 (アサダメッシュ株式会社 デザインメッシュ推進部 / 究極の金属布、アサダメッシュの紹介)
PT:長﨑 陸(NKC 中西金属工業株式会社 / アイデアを量産品に変える方法, KAIMENの場合)
PT:田川 広一(和蝋燭職人・和繋ぎびと / 和の灯りを繋ぎ、人を繋ぐ)
(登壇者順/敬称略)

登壇者含めた来場者は40人弱、荒天の中、皆様ご来場ありがとうございました。
当日の様子を写真とともに登壇者を振り返ってみたいと思います。

今回のFab Meetup Kyotoは、期せずして「ものづくりの潮流 継続/進化の系譜」というようなテーマにまとまりました。

トーク内容ダイジェスト

杉本雅明(エレファンテック株式会社/ 3D回路を作る)
「僕ら、元々はfab界隈(デジタル工作機器を使用しものづくりを加速する人たち)出身のハードウェアスタートアップです」。
導電性インクを使った「手書きの回路設計」を端緒に、それをプリンター用インクにして「回路の印刷」を可能に。
「回路を自由に書く」ところから進化し、ついに「立体物に回路を描く」ところまできたエレファンテック。大手自動車メーカーでの導入も決まっているそう。
「ハードウェアスタートアップは数年たったら気づいたら消えていく、というような印象があるかも知れませんが、こうやって、進化し続けていくことが出来る。自分たちの作ったものの強みを生かしてどんどん進化し続けていくことが大切です」

元々、FabCafe Kyotoの創業時から、素材として紹介させていただいていた、導電性インクAgICや、フレキシブル基板P-Flex。店舗に展示もありますので是非見に来てください。

松尾 泰貴(八尾市 / ものづくりを伝えるサイトの応援プロジェクトについて)
「八尾市内には3300,ものづくりに携わる製造業の会社があります」。
ここ数回のFab Meetup Kyotoには八尾市の企業が連続して登壇、ものづくりの熱い話をしてくれていますが、今回は、それを「伝える」取り組みについてのお話。
「市民すらどんな工場があるのか知らない。互いの仕事を発信できる体験型施設を作りました。近鉄八尾市から徒歩1分の場所にある、みせるばやお、といいます」
オープンから1年、参画企業は100を超え、ワークショップは連日盛況。
長く表に出ることのなかった八尾の工場が、自分たちの仕事を発信する──この活動を加速させるためのプロジェクトを、この日の朝、クラウドファウンディングにて開始しました。
「工場見学なんかも出来て、普段見ることが出来ない超絶技巧の現場を見ることも可能。興味がある人は是非支援お願いします」

ワクワクするものづくりで、子どもたちに笑顔を!

庄本彩美(円卓 / 夏至にカレーを食べよう)

夏至にカレーを食べよう、という活動を推進している「夏至カレー」より、夏至にカレーを食べませんかという紹介を頂きました。
クラウドファウンディングも開催中。
イベントに参加してもよし、自宅でしっぽり食べるもよし、一年で一番昼が長い日に、元気の出るカレーで祝おうというプロジェクトです。

夏至にカレーを食べる文化「夏至カレー」を全国に広めたい!!

三田地 博史 (YOKOITOデザイン責任者)

三田地 博史 (YOKOITOデザイン責任者 )

『「Tilde」シリーズの紹介 – デジタルファブリケーションによる工芸家的商品開発 -』

個人のものづくりをがデジタル工作機器で加速できる、という事が話題になってからかなりの年月がたちました。
最近ではもはや3Dプリンターやレーザーカッターなどといった機械は珍しくもなく。

「早くきれいにお手軽に、というところではなく、これらの機械を使った次のアプローチを考える段階にきたと考えています」と、三田地さん。
「例えば、積層型3Dプリンターで造形した場合、どうしても積層痕という細かな段差が出てしまいます。であれば、と積層をデザインしてみました。あえて太く、波打つように積層してみたところ、ニットのような質感になりました。更にデザインして『織り』風の積層パターンを斜めにしたり途中で折り返したりと変え、模様を作ることも出来ます」
「造形ミスをあえて放置した結果、おばあちゃんのセーターのような、手仕事の風情が出たりも。想定外のバグによってオンリーワンの風情が生まれる事もわかりました」

「産業革命以前の『工芸の時代』が機械化され大量生産の『高度経済成長期』を経、マーケティングや企画を重視する『デジタルの黎明期』を過ぎて今、デジタルネイティブの時代は、『新工芸家』の時代といえるのではないでしょうか

機械を使いこなして更にものづくりのステップを駆け上がる、そんな三田地さんのプレゼンでした。

株式会社 YOKOITO

林 留美奈 (アサダメッシュ株式会社 デザインメッシュ推進部 )

林 留美奈 (アサダメッシュ株式会社 デザインメッシュ推進部

『産業用資材の未知なる可能性~高精細ステンレスメッシュ~

アサダメッシュは元々は河内木綿の織物メーカー。70年ほど前に、織る対象をステンレスの金属糸に変え、今や世界で唯一の高精細メッシュを世に送り出している会社です。

生産しているものも、目の細かさや線の細さ、織りの種類などで多種あり、主な用途は工業用途(スクリーン印刷用の版や篩など)。

「通気や通音、軽く薄く加工しやすい。
また布としてのうつくしさも相当なものであるのに、用途は工業製品。つまり、市場にはあまりでません」。

そのせいか社内の意識もどうも「そんなに凄いことをしている意識が薄くてもったいない」とのことで、林さんたちはここ数年、従来の用途以外の使い方で様々なクリエイティブ素材としてのコラボレーション実績を作っています。
「本来の業界以外の人に見せると、みんな褒めてくれるんですが、あまりにも知られてなくて。例えば基板のプリント用のスクリーン印刷用途などにアサダメッシュは使われてますから、みんな、知らないだけで結構うちの製品経由のものを使ってるんですけどね」。

光を透かすとプリズム現象で七色に輝き、金属のメタリックな輝きが美しいアサダメッシュ。型番によっては磁石にくっつくものもあります。ひとたび知られると展示品に対する質問が非常に多いアサダメッシュ。新たな用途を模索中とのこと。

是非FabCafeにも展示を見に来てください。
アサダメッシュ株式会社

長﨑 陸(NKC 中西金属工業株式会社 )

長﨑 陸(NKC 中西金属工業株式会社 )

Made in China, Quality Controlled by KAIMEN, Japan – アイデアを量産品に変える方法, KAIMENの場合

「プロダクトを世に生もうとするときには『アイデア』『金銭リスクの低い投資』『量産可能な設備』の3つのファクターがそろわないと難しい。僕らにはアイデアはある。なので、残りの二つの要素をどうクリアするかを考えました」。「つまり、安く大量に作れる人たちと組む、という方法です」。

プロダクトデザインのアイデアがどんどん沸いてでる、長﨑さん。アイデアを積み重ねているだけではいつまでたってもモノはできあがってきません。

「パーツの数の多寡にもよりますが、国内で新製品のテストモデルを作ろうとすると、開発費や金型など含めて1000万から、ということになる。これを海外の力を借りて超高速に回す方法があります」

「もちろん、大量生産してゴミを多量に生みたいわけじゃないので、この方法でものづくりの基礎を大量に学んで後、次の段階の話もしたいのですが、それはまた次の機会に」とのこと。

元々、大学にて「デザイン思考」の本流で諸々実践をしてきた長﨑さん。近年の「机上の空論で終わってしまいがち、企画しておしまい、なデザイン思考はデザイン思考じゃないんですよ。作るところまで行かなければ」。
長﨑さんがアイデアの即時実現の相手として選んだ国が中国。一時、安くて性能が、といわれていましたが「選べばそんなこともない」。
とにかくそこで大量の「製造ーテスト」を高速で回し、得たノウハウを武器に「ゼロから製造しなければいけない」次のステップの製品に挑みます。

長﨑さんの次のステップの話はまたの機会に。『本当のデザイン思考』についての話もいつか伺ってみたいところです。
今回もプレゼンの資料の見せ方が素晴らしかったのでお見せできないのが辛いところ。次回の登壇にもご期待ください。
NKC 中西金属工業株式会社

田川 広一(和蝋燭職人・和繋ぎびと )

田川 広一(和蝋燭職人・和繋ぎびと)

和の灯りを繋ぎ、人を繋ぐ

「私は和蝋燭を作る仕事をしています。和蝋燭見たことある人?」という切り口から始まった田川さんのお話。
ウルシ科の樹木、櫨(ハゼ)。この木の実の皮からほんの少しだけ採れる成分が蝋燭の原料。芯材には和紙と灯心草(い草の芯)を用います。
「時代とともにパラフィン(石油由来物質)で出来た洋蝋燭に取って代わられ、和蝋燭を作る店も減りました。儲かる職業でもない。私も、子供に後を継がせようとは考えていません

そんな田川さんの工房には、超大手のメーカーのデザイナーが本物を作りたいと体験しにきたり、海外のセレブが、本物の和蝋燭を買い求めに訪れるそう。

「だけど、日本人の大衆にはもう忘れられてしまった」。
蝋燭をともして、灯りを皆でみてみます。
「片方が本物の和蝋燭。片方が10%パラフィンが入ったものです。全然違うでしょう」。
確かに、パラフィン含有の方は炎が荒れ狂い、黒い煙がたなびき、よく燃える分とけた蝋がダラダラと垂れる。見るからに品がない。
「でもね、例えば関東では私、本物の和蝋燭を売ってるところを見たことがありません」。
それでも、本物と比べて知ってなければわからない。「本物とそうでないもの両方を知って安いモノを選ぶのはいい。でも知らないが故にだまされてる人もいくらでもいるでしょう。それはよくないと私は思う
本物に目が利くようになること、そのためには知識を得ることが必要です。
「今日のイベントも、皆さんが何をいってるのか、私にはさっぱりわからない。でも聞いているだけで、多分次回聞いたときには多少目が利くようになっていると思います」
ものづくりの現場でも、一代で財をなしてしまったようなクリエイターは、次世代に引き継げずに苦労します。うちにも中国などの大富豪が、どうやってお前のところは何世代にも引き継げているんだ、と聞きにこられたりします」
「よいものを本物で作ること、それを継続すること。人にも出来る方法を編み出して伝授すること。京都の絵付け蝋燭はうちが30年前にやったものです。それまでは画をシールで貼っていた。それを扇子などに絵付けをする職人さんにお願いして描いてもらい、30年。今では京もの伝統産業扱いになっています。皆さんもどんどん新しいモノを作って伝統産業化するまで進化したらいいと思います

とにかくいい話を、ずっとしてくださる田川さん。

京都にも残る日本の伝統文化はすべて蝋燭のあかりの空間で設計されたモノ。
「舞妓さんはぼんぼりがともってないと顔を塗りません。それは、蝋燭の灯りの下でこそあれが人肌に見えるから。歌舞伎の隈取りもそうです。仏様のお顔を見たときに、泣いているように見えるのであれば、揺れる蝋燭の灯りの下、うつろう表情の中泣いているような顔ばかりを拾うから。見ている人が心で泣いてるからです──そうやって日本の文化は出来ています」
日本人が忘れてしまった、灯りの空間。本物の和蝋燭の空間でもって、少し外を見渡してみるのはいかがでしょう

中村ローソク

来月のFab Meetup Kyotoは6月25日(火)を予定しています。
登壇情報も随時アップしていきます。
皆様のご来場、楽しみにお待ちしています。

Author

  • FabCafe Kyoto編集部

    FabCafe Kyotoが作成した記事です。

    この記事に関するご意見やご感想は、ぜひお気軽にこちらからお寄せください。
    お問い合わせフォーム

    FabCafe Kyotoが作成した記事です。

    この記事に関するご意見やご感想は、ぜひお気軽にこちらからお寄せください。
    お問い合わせフォーム

FabCafe Newsletter

新しいTechとクリエイティブのトレンド、
FabCafeで開催されるイベントの情報をお伝えします。

FabCafeのビジネスサービス

企業の枠をこえて商品・サービスをともに作り上げていく
FabCafeのオープンイノベーション