Column

コミュニティ探検記 Vol.0 川井敏昌「コミュニティの力をイノベーションにつなげる場をつくりたい」

こんにちは、FabCafeの鈴木です。今月から、FabCafeに集うコミュニティを探索するコラムをスタートしました!

多様なコミュニティとのコラボーレションを通じて、新たな価値創造をサポートしてきたFabCafeには、今20以上のコミュニティが集まり、ワークショップやイベントなどの活動をしています。

これから始まるコラムでは、FabCafeに集まるバイオ、AI、ゲーム、ドローン、人文科学、SDGsなど様々なコミュニティに迫り、彼らが何を考え、何を目指しているのか、最新テクノロジーの情報なども聞きだしながら、各コミュニティを深掘りしていきます。

初回となる今回は、コミュニティ探索の前段として、FabCafe COOの川井敏昌より「コミュニティとは何なのか」、「”共創”が声高らかに叫ばれる近年においての本当のコミュニティの価値とは」をお届けします。

肩書きに関係なく、自分が貢献できる場所が「コミュニティ」

──「コミュニティ」と一言でいっても、町内会などの地域社会から、製品のオンラインコミュニティなど範囲が広いですが、川井さんが考える「コミュニティ」はどういったものですか?

川井:FabCafeでいう「コミュニティ」とは、楽しさをシェアする「Fun Share」、知識をシェアする「Knowledge Share」、課題をシェアする「Challenge Share」を行なっているグループのことです。

僕はコミュニティとは、会社に与えられた肩書き関係なく、目的に対して自分の持てるスキルと経験を活かして活動する場所だと思っています。

日本では企業に属していると副業が禁止されている場合もあり、優秀な人同士が繋がる機会ってそれほど多くない。しかも、その人が持っているスキルのうち、今の職場で使えるのは過去、未来含めても6割行けば良いほうじゃないでしょうか。残りの3割、4割のスキルってその職場では一生使うことがない。でも、その人の興味や強みはその中にあるかもしれない。

一方、コミュニティでは、自分のやりたいことや、したい役割を担うことが出来ます。なので、普段仕事や学校では活かせないスキルを活かしたり、新たな強みを発見することも出来ます。

2014年にスタートした、ミニ四駆やドローンなどの競技を通じ、エンジニアリングやデザインを学ぶ「FAB RACERS」。

企業のイノベーションをコミュニティとの共創からつくる

──企業のイノベーションに、コミュニティはどのように関わってくるのでしょう?

川井:いま流行りのオープンイノベーションを、多くの企業が実践出来ないのはなぜかーーそれは肩書き無しで、誰かと一緒に活動したことがない人が多いからだと思っています。オープンイノベーションのスタート地点にいくのに必要なのは、バックグラウンドが異なる人、普段異なった言語を使う人と、目的を共有して活動することが必要で、コミュニティで活動することはその前提を作り上げてくれます。

コミュニティで活動している人は、肩書きなど関係なく、自分の得意なことや好きなものを通じて、人と活動しています。彼らのコミュニケーションはオープンでフラットで、好奇心優先で動くことが出来ますよく、オタクの人ってコミュ障とか言われますが、彼らは普段同じコンテキストを共有している仲間とコミュニケーションしているので、余計な言葉が不要なだけで、コミュニティの中ではそれで成立しているんです。

コミュニティがビジネスにつながらないという人も結構いますが、コミュニティのために積極的に活動する人ほど、所属する企業や組織のメリットをうまく使ってコミュニティに還元しようとします。彼らのほうが自社の客観的な価値を知っているとも言えると思います。

また、AWSやFusion360のコミュニティマーケティングの成功例もあるようにコミュニティを通じたマーケティングは今後より必要になってくると思いますし、FabCafeが実践するようにコミュニティと企業をフラットにつなげ、その創造力とスキル、経験値をプロジェクトに活かすというスタイルも増えてくると思います。

──川井さん自身もいくつかコミュニティをリードしていますね。

川井:ミニ四駆のコミュニティ「Fab Racers」をリードしています。このコミュニティを通じて、ビジネスパートナーとつながったり、プロジェクトが生まれたり、商品が生まれるなど、参加メンバーにとって楽しむ場所だけではなくなっています。コミュニティの活動を通じて、キャリアチェンジするなど人生が変わる経験をしている人もいることが、僕がコミュニティを続ける原動力になっています。

事例:300人超のコミュニティと、企業との共創プロジェクト「FAB RACERS」https://fabcafe.com/jp/projects/fabracers

川井:実は、ミニ四駆のコミュニティには自動車メーカーの人達が沢山参加しています。もともとトヨタのデザイナーだった根津孝太さんが関わっているということも大きいのですが、自動車会社は巨大であるがゆえに変化への対応が遅く、閉鎖的であるところもあり、そういった人たちがミニ四駆のコミュニティを通じて、他の自動車メーカーや異業種の人たちと触れ合う楽しさを体感したり、一般の方々にカースケッチやモデリングを教えることで、改めてカーデザイナーとしてのやりがいを感じる機会を得た人が多くいます。

その中の数名が、実際に会社の中で地道な啓蒙活動を行い、外部の人たちを招いたワークショップを実施したり、コミュニティに場所を提供したり、コミュニティメンバーと開発プロジェクトを手掛けたりといった活動が実際に起っています。

FabCafeが手掛けるeverblue technologiesの「A.D.A.M」というプロジェクトや、AutodeskのFusion360のエデュケーションプロジェクトなども、ミニ四駆コミュニティに参加していたメンバーからビジネスに発展した事例です。

コミュニティから派生しているので、クライアントとエージェントという関係性ではなく、フラットな関係性でプロジェクトも進められましたし、プロジェクトメンバーも既知の仲なのでチームビルディングも不要でした。

Everblue Technology社との協業プロジェクト「A.D.A.M」。オートデスク社による3D CAD/CAM ソフトウェア 「Fusion 360」のジェネラティブデザインを使って、自動操船ヨットのデザインをしようというプロジェクト

コミュニテイ同士を横串でつなぎ、インタラクションを増やすことで、イノベーションを起こす

毎週火曜に集まり活動するBioClub。

──FabCafeには、今20くらいのコミュニティが活動していますが、今後はどんな場所になっていくのでしょう?

川井:FabCafe Tokyoには、レーザーカッターやUVプリンターなどをおいた1Fのカフェと2FのFabCafe MTRLという、本格的にものづくりができる場所もあります。また素材メーカーの人が、クリエイターと一緒に素材の新しい使い方を探索するMTRLというサービスもあります。

そのテクノロジーを備えたFabCafeを舞台に、コミュニテイ同士を横串でつなぎ、異分野や異業種の人々がより多彩にグローバルに交わる機会を作ることで、イノベーションを起こしていく場所でありたいと思っています。

今後も、各コミュニティの成長を支援するとともに、さまざまなコミュニティを横断していく人がふえ、「FabCafeにくると何かがある」「FabCafeにくると化学反応が起こる」という状態を作っていこうと考えています。また、何か新しいことやムーブメントを起こしたいと考えている人のコミュニティづくりもサポートしていきますよ。

 


来月からは、実際にコミュニティのみなさんからのお話をお伺いします。お楽しみに!