Event report

2022.2.11

飛騨の森で山猫は走るか。森への新しい関わり方を実験する「森のレッスン」と「山観日」。

(この記事はFabCafe Hidaを運営する飛騨の森でクマは踊るWebサイトの転載記事です。)

ヒダクマ/FabCafe Hidaでは、2020年9月22日の祝日に、岩手県から小友木材の小友康広さんと和同産業さんをお招きし、「森のレッスン」と「山観日」を開催しました。

デジタル馬搬『山猫』とは

デジタル馬搬「山猫」とは、和同産業株式会社と株式会社小友木材店が開発中のマイクロ林業用の小型運搬機のこと。作業道の入っていない山で少量の木材を伐って搬出する用途として考え出されました。岩手県では馬搬( 山で伐り出した木材を馬で運搬すること)が残っていて、それを機械化できないかということから考えられました。
木材の搬出だけではなく、森の中での様々な作業に使える可能性があり、全国の実地で実験しデータを取っているところです。今回はヒダクマから、ぜひ飛騨の森でその実験をおこなってもらいたいとお声がけをしました。

開発中の「山猫」。試験と改良を重ねる度に形を変え現在試作3号機だそうです。

IT×木材の経営者が考える、森と人の関わり方の未来

小友木材店は岩手県花巻市で100年以上の伝統を誇り、変わらない『信念』、変わり続ける『手段』を両立し、世界で一番「カッコいい」木材店を目指して『チャレンジ』し続けています。「IT×木材」や「花巻おもちゃ美術館」等の様々なユニークな取り組みをされています。
「森のレッスン」では、小友さんが手がけた花巻市の老舗百貨店マルカンビルの再生、デジタルデータで3D加工もできる小規模木材加工機械ShopBotの導入、「花巻おもちゃ美術館」の取り組みをおうかがいしました。

  • 山猫についてお話する和同産業の嶋さん(写真中央)

そして、山猫のこと。林業にとって木材の搬出作業は大きな課題です。当初はドローンでの搬出を考えていたそうですが、航空法の関連で断念し、岩手に残る馬搬に着目。中・大型除雪機生産高日本一のメーカーである和同産業さんにお声がけされました。
馬よりも小型なこと、猫の手も借りたい山作業に使うこと、そして花巻市は宮沢賢治の故郷であることから童話「注文の多い料理店」の山猫軒にちなんで、「山猫」と名付けたことを教えてもらいました。

森のレッスンで講義する小友さん。

小友さんは、これからの時代の「おじいさんは山に柴刈りに」の世界を実現したいと話します。単に林業作業を小型化するだけではなく、それによって個人でも気軽に山に関わる仕組みをつくり、マイクロ林業を広げていきたい。そして、Uberのような考え方でネットワークすることで、全国で多くの人が森に関わり、多様な森の活用が進むことを期待されているとお話しされました。
「森のレッスン」には、地元の森林組合の方、木工職人の方、木工の学校で学ぶ学生の方、木育活動をされている方と幅広い森や木の実践者の方にご参加いただき、意見交換を行いました。

山猫と一緒に森に行く

ヒダクマが行っている誰でも気軽に森に入れる「山観日」として、飛騨の森で実際に山猫の実験を行いました。
参加者は、山主さん、森林組合の方、木工職人、アロマの専門家、動物の研究者。小友さんや和同産業さんの他に、北海道と滋賀県で馬搬を実践されている方も参加してくださいました。

まずは、町に近い岡田さんの森に。
資材運搬のテストとして、カフェセットを森に運び込み、また、育成木施業のワークショップで伐採された木を試しに運び出してみました。

山猫を操作する山主の岡田さん。

  • カフェセットを山猫で森の中に運び込む。

  • 森の中から木を出してみる。

次に、奥山にある険しいヒダクマの社有林に。
ここでは、一昨年、大型林業機械を使わずに人の手で木を伐って運び出してみたことがあります。
(※参考記事:https://hidakuma.com/blog/181121_hidakuma_forest

その時、機械とその機械が入れる大きな道がなければ木を運び出すことはできないと思いましたが、人の力ではとても運び出せない2mの曲がり材を軽々と運ぶ山猫に一同感動しました。
大きな道をつけなくても、人が歩けるだけの道をつけることができれば、少しずつでも木を運び出すことができます。
また、山猫は、音も静かで操作も簡単で、女性や子どもも扱うこともできます。たくさんの人が森やそこにある木にアクセスすることができる、大きな可能性を感じました。

それぞれの立場から、森の中で、森との関わり方の可能性と期待を語り合いました。

  • 山猫と一緒に、静かに楽々と森に入る。

  • 曲がり木を山猫に括りつけて運び出す。引きずっておろすことで道ができます。

  • バッテリー式で音はとても静か。

  • 車に積んでどこへでも。

飛騨の森での実験と対話の価値

後日、小友さん、嶋さんから、飛騨での実験についてコメントをいただきました。

株式会社小友木材店 代表
小友康広さん

飛騨の木材業界の多様さ、山の険しさなど様々学びの場をご提供いただきありがとうございました!非常に多くのヒントを頂きました。これから更にブラッシュアップして参りますので引き続きよろしくお願い致します。

和同産業株式会社 商品開発部 商品開発課 課長
嶋大輔さん

この度は2日間に渡り、お忙しい中、細やかなご対応やご説明頂き、大変ありがとうございました。ご参加者を多数お声掛けいただき、また西野製材所様やオークヴィレッジ様など見学させて頂いたおかげで、林業や木材に関わる業態についてかなり知ることができました。木材の運搬についてまだまだ知らないことばかりですが、山猫を活用頂けるよう、また運搬車として便利にご使用頂けるよう改良を加え開発を進めて参りますので、今後ともご助力頂ければ幸いです。

山猫は来年2021年にサービスインの予定とのこと。
その時はまたヒダクマでもなにかご一緒できればと思います。

森への理解を多面的に深めること、そして多くの人がそこにアクセスできるようにすることは、森の新たな価値を発見したいヒダクマにとって、欠かせません。
ヒダクマでは現在、信州大学と森のレーザ計測と3Dモデル化の実験や、AR(拡張現実)技術を活用した加工による木の構造物の製作なども行っています。今後も、地域内外のパートナーと森を探究していきたいと考えています。「こんな最新技術を試したい」、「こんな研究を飛騨でやってみたい」といったご相談はいつでも歓迎ですので、ぜひご連絡ください。みなさまとの出会いやチャレンジをともにできることを楽しみにしています。

[Members]

小友康広|Yasuhiro Otomo
株式会社小友木材店 代表取締役
東京都新宿区のスターティアラボ株式会社の取締役、岩手県花巻市の株式会社小友木材店、株式会社花巻家守舎、株式会社上町家守舎(マルカンビル大食堂)の代表を務める。2拠点居住、6社経営、令和生まれの二児の父。
http://www.otomoku.co.jp/

和同産業株式会社|Wado Sangyo Co.,Ltd.
昭和16年5月に創業した東北資源開発株式会社から昭和21年5月に「和同産業株式会社」へと改称し、本社を花巻に移転。以来約70年、この花巻の地で多くの方々に支えられながら、現在、開発から生産・販売までを一貫システムで対応する中・大型除雪機生産高日本一(※自社調べ)のメーカーとして事業を展開。
https://www.wadosng.jp/

松本剛|Takeshi Matsumoto
株式会社飛騨の森でクマは踊る 代表取締役
環境事業会社勤務を経て、2009年、株式会社トビムシに参画。2015年、岐阜県飛騨市に飛騨市と株式会社トビムシと株式会社ロフトワークで官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る」を設立、取締役就任、2019年より現職。好きな宮沢賢治のお話は「なめとこ山の熊」。

山猫にご興味のある方
本記事を読んで山猫を知りたい方・ご興味のある方は、下記にお問い合わせくださいませ。
お問い合わせ窓口:小友木材店 info@otomoku.co.jp

 

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