Column
2016.4.30
FabCafe Kyoto編集部
さる4/23,24日京都にて初の“マンガソン”が開催されました。
マンガソンとは私たちが慣れ親しんだマンガを共通言語として繰り広げる、ハッカソンにインスパイアされた新たな競技です。また、理解力や発想力や表現力を鍛え競うことができるクリエイティブなワークショップのメソッドでもあります。発起人の連続起業家・井口尊仁さんが、過去に2回行った「マンガ合宿」が原型となり、このたび MTRL KYOTO と共同企画により体系化されパワーアップして帰ってきました。
本邦初公開、そして今後のバージョンアップと続編開催も予定している「マンガソン」。本稿では一般公開されたディベートナイトのイベントの模様を中心にレポートします。
漫画喫茶・MTRLへようこそ
マンガソン2日目となる4/24の15時。一般参加者に向けてMTRL KYOTO が開館しました。フロアの庭側にある本気のマンガコーナーが参加者を歓迎します。これらは全て、今回の選抜プレイヤー達が事前に出されたテーマに沿って持ち寄った「私物マンガ」です。
当マンガソンのテーマは 「突然地球にやってきた宇宙人に人類のことを理解させるためのマンガ」
このテーマへの回答となり得るマンガタイトルたちを8名のプレイヤー達が持参。特設のマンガ棚に展示して主張するところから戦いは既にはじまっていました。
イベントへの一般参加者のみなさんは、17時のイベント開始までここにあるマンガを自由に読むことができます。日曜の昼下がりにスペシャリティコーヒーやビールを片手にマンガを読みふける贅沢な時間・・・!
マンガソン宣言!
17時。ディベートナイトのイベントがいよいよスタート。
先ず最初に発起人によるマンガソン宣言です。
私がマンガソンの起源、漫画合宿の発起人であります。
漫画合宿の初回は10年前の箱根強羅温泉。山奥にありったけの思いを込めて漫画を持ち込み「これを読まずに死ねるか!?」作品を読みあったことが、このマンガソンの発祥です。二回目は2015年の九十九里浜、古民家に集結した強者が語り合ったのは「日常の漫画」でした。日常の描写をテーマに日常マンガの世界を渉猟した漫画旅。
そして、記念すべき第三回はマンガソンと命名され、新たな発想術、創造的アイデアの探索手法として再発見されました。宇宙人向けの人類理解術としての漫画読破を競う旅が、いかなる新発見を我々にもたらすのか?全く予断を許さないスリリングな知的探求の旅が今始まろうとしています。
– 井口尊仁 / DOKI DOKI, INC. C.E.O.、Telepathy (テレパシー) Fellow
それではあらためて、このたびのマンガソン ディベートナイトの設定とルールを説明します。
■テーマとゴール:
「突然地球にやってきた宇宙人に人類のことを理解させるためのマンガ」1作品を決定する
■ルール:
・8人のプレイヤーは持ち寄られたマンガ群の中から自分が推すマンガ作品ひとつを決定
・「人類のピュアな側面を伝えたいチーム(ピュア・性善説陣営)」と「人類のリアルな側面を伝えたいチーム(リアル・性悪説陣営)」に所属
・前半戦は両陣営からひとり5分のディベートバトルを行い勝者4作品を決定
・後半戦は残った4作品についてプレイヤーと一般参加者(オーディエンス)がディスカッションを行い優勝作品を決定
・バトルとディスカッションの勝敗は会場参加者の投票で決定
・ディベートとディスカッションではマンガのコマを大型モニターに投映が可能
実はテーマ以外のルールは当日の15時に固まりました。集まった漫画の種類と量、そしてプレイヤーのキャラクターに応じて柔軟に、ルールを調整できるのもマンガソンのよいところです。
マンガソンに参加したプレイヤーはクリエイティブ関連のさまざまな業種から集まった8名。この日のために京都・東京・サンフランシスコから集まった漫画好きの精鋭たちです。
“ピュア陣営” (LtoR)井口さん、小野さん、永尾さん、青野さん
“リアル陣営”(LtoR)打田さん、管原さん、堤さん、上野さん
2チーム8名による熱いディベートバトルの火蓋がいま、切って落とされました!
前半戦は ピュア陣営vsリアル陣営のディベートバトル
■先鋒戦
注目の緒戦のバトルの勝敗は・・・・・
『たそがれたかこ』に軍配!
■次鋒戦
ピュアとリアルががっぷり四つに組み合ったこのバトルの行方は・・・
『徒然チルドレン』が勝利!
待望の勝利にピュアチームがハイタッチ!この辺がピュアたる所以ですね(笑)
■副将戦
同じ日常を舞台としながらも、とっても爽やかvs圧倒的ドロドロの両極対決・・・っ!
・・・は『最強伝説黒沢』が勝利!
■大将戦
起業家人生を投げ打った大演説 vs マンガソンでプレイヤー全員が読んで衝撃を受けた問題作 の雌雄は・・・・
僅差で『中2の男子と第六感』が勝利!
前半戦の結果、ピュア陣営・リアル陣営は2勝2敗の痛み分けとなりました。
後半戦は 会場を巻き込んだオープンディスカッション!
後半戦は勝ち残った4作品を巡るディスカッション。会場からの質疑を受けてさまざまな主張が激突しました。
会場「井口さんのプレゼンは、もしかして解説がうまいだけでマンガは何でもよいのではないでしょうか?」
井口「それに関しては、マンガ統一場理論がありまして・・・(中略)(ざわざわ)・・・このマンガはロジカルに描いていると思いまして・・・(中略)(笑い)・・ですから、この『中2の男子と第六感』しかない!と強く申し上げたいのです!」
会場「マンガが面白いと言うんじゃなくて井口さんが面白いんじゃないですか?」
井口「そうですね、まずは自分推しですね(キリッ」
会場「面白いマンガは名脇役がかならずいると思うんですが、みなさんの作品の味のある名脇役を教えて下さい」
永尾「(徒然チルドレンから)留学生のパトリシアとの咬み合わない会話が宇宙人との異文化コミュニケーションをよく表しています」
上野「(たそがれたかこから)同じバンドのファンの男子中学生。現実と夢想の世界の橋渡しをする大切な役割を彼が担っています」
井口「あれ、リアル陣営も、けっこうピュアじゃないですか?」
上野「つらいリアルな現実があるこそのピュアなわけです!」
司会「みなさんが推す作品は人間の思考回路や感情の紹介をしようとしている作品ばかりですが理由はありますか?」
永尾「人類史や民俗学をテーマにしたマンガも候補にあったんですが、宇宙人は「今生きているヤツ」のことを知りたいんではないかと思いまして人類と宇宙人の交流が始まった時に役立ちそうな作品を選びました」
青野「ちょっといいですか?中2バイアス理論というものがあります。本来は常識的に、中2濃度が高い人間ほど価値が低いと思われていたバイアスを覆したところにこの作品(『中2男子と第六感』)の意義があるのです。」
井口「そうか!」 会場「そうか?」
司会「ピュア陣営はとてもポジティブで好戦的ですよね」
会場「時間がない宇宙人さんのために、各マンガからひと見開きだけで説明してもらっていいですか?」
永尾「(徒然チルドレンから)『初キスで女の子がむせるシーン』このマンガ4コマなので見開きがこれしかありませんでした(笑) これこそピュアです」
堤「(宮本から君へから)『現実が怖くて夢が見れるかあ』心理を表したリアル派の真骨頂です。それよりディベートで負けたのがホント悔しいです。。」
上野「(たそがれたかこから)『光一くん。生きてる』 人間の持つ”嬉し泣き”という感情、これを宇宙人に伝えたい。」
管原「(最強伝説黒沢から)『男に必要なのは決闘だ』 そうでもしないと他人と分かり合えないリアル。黒沢が最強なわけです。」
司会「最後にご主張があれば!」
上野「音楽には国境がありません。言葉がわからない宇宙人と心を通じ合わせるために『たそがれたかこ』を推薦します」
井口「人類の半分は男性という中2である。それによってあらゆるコミュニケーションが猥屈され、複雑化されるそのプロセスこそに人間のリアリティ、逃げられないドグマがあると申し上げたいのです」
ついに勝利マンガが決定
最後にはどちらがピュアでどちらがリアルかも混沌としながらも大いにエキサイトしたディスカッション。いよいよオーディエンスによる決選投票の時間を迎えました。
その結果「突然地球にやってきた宇宙人に人類のことを理解させるためのマンガ」に選ばれた勝者マンガは・・・
上野さん推薦の 『たそがれたかこ』 に決定!!!
上野さんには、MTRL KYOTO のレーザーカッターでその場で制作された名前とマンガ名入りの盾が授与されました。
『たそがれたかこ』は晴れある第一回マンガソン勝利作品としてMTRL KYOTOに近日中に開設される「クリエイティブ本棚」に盾と一緒に展示されますのでお楽しみに!
これにてマンガソンのすべてのプログラムは終了。
プレイヤーのみなさん、おつかれさまでした。イベントにご参加いただいたオーディエンスのみなさん、ありがとうございました。
マンガソン合宿 in KYOTO の模様
実験的な試みながらも「突然地球にやってきた宇宙人に人類のことを理解させるためのマンガ」1作品が決定して、大盛況のもと終了したマンガソン ディベートナイト。
このためにプレイヤー8名は2週間前から周到な用意をして前日から京都に乗り込みひたすらマンガを読み・語り続けました。この非日常なマンガ漬け体験を通し集中力を極限まで高めていたため、ハイテンションでディベートに臨むことができたのでした。
初日はDOKIDOKI京都オフィスに集合。持ち寄られた「突然地球にやってきた宇宙人に人類のことを理解させるためのマンガ」候補作品は60以上!
ガンダムジ・オリジン / いぬやしき / 百億の昼と千億の夜 / りとるけいおす / 女子攻兵 / 暗殺教室 / 中2男子と第6感 / そんな未来はウソである / 人類ばんざい / 14歳 / 自虐の歌 / ぼくんち / シガテラ / 愛すべき娘たち / かふん昔話 / 不安の種 / 神の左手悪魔の右手 / ねがい / ネムルバカ / 殺し屋イチ / 最強伝説黒沢 / 乙嫁語り / お父さんは心配症 / オッス! トン子ちゃん / アダムとイブ / たそがれたかこ / 岳 / お慕い申し上げます / 俺はまだ本気出してないだけ / みどりのマキバオー / トリガー / テガミバチ / 宗像教授シリーズ / スプリガン / 徒然チルドレン / 死刑執行中脱獄進行中 / 変人偏屈列伝 / 宮本から君へ / 七色いんこ / ハウアーユー? / シグルイ / 諸星大二郎短編 / アイドル地獄変 / 子供はわかってあげない / 少女革命ウテナ / 闇金ウシジマくん / 藤子不二雄A作品 / 校舎裏には天使が埋められている / 日常 / 黄色い本 / 大日本天狗党絵詞 / 砂の城 / G戦場ヘヴンドア / 大阪ハムレット / PINEAPPLE ARMY / 謎の彼女X / ひばりの朝 / レベル1 / へうげもの
ディベートする作品は自分が持ってきた漫画ではなくてもOK。他のプレイヤーが持ってきた漫画にインスパイアされることだってあります。
一同、ひたすらに漫画を読みふけります。
夕食後は第二会場のMTRL KYOTO へ移動して宿泊。
力尽きるまで読む人、早起きして読む人。
翌日曜も、カフェで、鴨川で、ぎりぎりまで読書は続いたのでした。
第1回マンガソン タイムテーブル
■4/23(土)会場:DOKIDOKI京都オフィス
15:00 会場に集合〜マンガ棚作成〜自己紹介
16:00 マンガを読む
20:00 夕食〜マンガを読む
23:00 MTRL KYOTOへ移動 〜マンガを読む〜就寝
■4/24(日)会場:MTRL KYOTO
9:00頃 各自起床〜朝食〜マンガを読む
13:00 昼食 〜マンガを読む
15:00 チーム編成〜ディベート準備〜マンガを読む
17:00 ディベートナイト イベントスタート
マンガソン宣言
ディベートバトル
ディスカッション
勝利マンガ決定
21:00 イベント終了
マンガソン、再び!
マンガソンは単なるマンガ好きによるレクリエーションではありません。
マンガソンの効能
・思いもかけない漫画との出会い
・新しい漫画の読み方の会得
・漫画を通じた発想法の会得
・漫画を語り合う楽しさの発見と堪能
・漫画との出会いを通じた創造的精神の涵養と活力ゲットなどなど。実は美容とダイエットにもとても良いともされている(!)マンガソン。
次回は何をどう料理しましょうかね!?新たなる勇者たちの参加を心からお待ちしております。マンガソン発起人 井口尊仁
MTRL KYOTO では、我こそはというマンガ好きクリエイター、マンガソンを盛り上げていただけるパートナーを募集します。また、ワークショップやアイデア創出のトレーニングとしてマンガソンを取り入れてみたいという学校や企業の方がいらっしゃいましたらご連絡ください。
以上、今後に向けての前向きな課題とさまざまな可能性が実証された、第一回マンガソンのレポートでした。
マンガソンの次回作にご期待ください!
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