Column
2025.11.24
FabCafe編集部
街を歩いているとき、ふと立ち止まってしまう瞬間があります。ふとした匂いで思い出す場所、昔見た映画の雰囲気、聞いたことのある音。もし個人の感性を可視化し、他者へ伝えることができたなら、都市はどう見えるでしょうか。
デジタルな世の中で「本当に行きたい場所」を見つけるのは意外と難しいものです。観光地だけではない、もっと深層にある地域の魅力を発見し、一人ひとりの感性が紡ぐ新しい旅の形をつくれないでしょうか。
京阪ホールディングスは、「体・心・地域・社会・地球にとって、健康的でしあわせであること」を掲げる「BIOSTYLE」の理念のもと、地域・社会課題の解決に寄与する事業共創を進めています。「京阪電車 事業共創チャレンジ 2025」に採択された株式会社timespaceのAIナビゲーションアプリとの実証実験として、京阪ホールディングス、timespace、そしてFabCafe Kyotoが協働し、イベント「わたしの感性で、京都を編集する 伏見・宇治・八幡エリアをtimespaceと巡るワークショップ」を開催しました。
アート、デザイン、建築、音楽、食など多様な視点をもつアンバサダー4名と24名の参加者が、伏見・宇治・八幡エリアを実際に歩きながら、自分だけの「グッとくる瞬間」を記録。参加者がつくったツアーとAIが提案するツアーを比較することで、人間の感性とAI技術による新しい観光体験の可能性を探求しました。
イベント概要
- 開催日:2025年11月1日
- 会場:御香宮神社 参集館
- アンバサダー: おおしまたくろう(サウンドマン)、北澤雅彦(おこぶ北淸 店主)、杉田真理子(都市デザイナー)、山本周(建築家)
- 共催:株式会社timespace、京阪ホールディングス株式会社
- 協力:株式会社ロフトワーク、FabCafe Kyoto
- ▼ イベントページ
- https://fabcafe.com/jp/events/kyoto/251101_timespace/
どうやってツアーを作ったのか ─ 歩いて、記録して、編集する
参加者が独自のツアーをつくるまでには、3つのステップがありました。まずアンバサダーが多様な視点を提示し、それをヒントに参加者が街を歩いて記録、最後にワークショップで編集する。この一連のプロセスを振り返ります。
アンバサダーの視点
アート、デザイン、建築、音楽、食などさまざまなジャンルで活躍する4名のアンバサダーが、気になるルートを提示しました。建築家の橋本周さんは路上観察の視点から、通称「プリン山」と呼ばれる狩尾神社をキーワードに、1960年代から2020年代に至る地形の変化を衛星写真で説明。サウンドアーティストのおおしまたくろうさんはノイズや音に注目し、宇治の鉄道橋の下から静かな船着場まで、強弱のあるルートを展開しました。都市デザイナーの杉田真理子さんは、嗅覚で都市を知るプロジェクトやキュレーション経験から、ウトロ地区の歴史を紐解くルートを提案。北澤雅彦さんは伏見へのUターン経験から、産業や石碑、歴史が交差する場所、そして今しか見られないやどり木を訪ねるルートを紹介しました。

左から、アンバサダーの北澤雅彦さん、おおしまたくろうさん、山本周さん、杉田真理子さん
timespaceで街を記録する
参加者はアンバサダーと一緒に街を歩き、自由に行動します。使うのはtimespace。自分の気になる風景やポイントを、「POI(地図上の地点)」として記録し、それらを組み合わせてオリジナルのツアーコンテンツを作成します。見過ごしていた場所への気づき、視点の可視化が起きます。
客観的な観光情報ではなく、「なぜそこに惹かれたのか」という個人の感性を記録することができます。効率的に巡りたい、じっくり体験したい、歩くこと自体を楽しみたい。それぞれの移動の欲求に応じた記録が蓄積されていきます。

ワークショップで編集する
再び参集館に集まり、収集したPOIを共有。感性でツアーをコラージュしていきます。参加者がつくったツアーとAIが提案するツアーを比較検証することで、人間の感性とAI技術による新しい観光体験の可能性を探求しました。ここで起きたのは、自分の感性が何に惹かれるのかを発見する体験です。また、他者の視点を通じて、同じ場所が違って見える瞬間でもありました。感性を軸にツアーを編集することで、一人ひとりに合った移動体験が生まれます。

生まれた多様なツアー ─ 同じまち、それぞれの感性が紡ぐ異なる視点
ワークショップでは、参加者それぞれが自分だけのツアーを作成しました。どこで滞在し、何をするのか。感性を軸に要素をコラージュしていきます。ここでは、その中から特に伏見・宇治・八幡エリアを独自の感性で紐解いていた3つのツアーをピックアップします。
同じ場所を歩いても、感性が変われば移動体験が変わる。観光地として名前のついた場所だけではなく、日常の住宅街、人との会話、素材の質感や音。感性データは、客観的な基礎情報を孵化させ、新たな移動体験を生み出します。
ツアー① “誰か”の家とくらしを見せてもらう「橋本のくらし見学」
基本的には住宅街である橋本エリア。このツアーでは、通りかかる地元の人たちの生活を「お邪魔する立場」として観察することに着目しています。画一的な住まいではなく、石垣ひとつ窓ひとつとっても違いがある。家をつくった人たち、そして住んでいる人たちの暮らしを見学する視点です。知らない誰かの日常のなかに、ふと惹かれる瞬間を見つける。そんなツアーです。
▶︎ツアーに選んだスポット:西遊寺、狩尾神社、旧遊郭、石清水八幡宮
ツアー② 宇治の人々と会う「Walk&Talk」
京都で2番目に人口が多い宇治市に暮らす人たちとの交流に重きを置いています。その場を訪ね、住んでいる人と会話することで、自分の知らないことを発見する。地元の人だからこそ知っている「とっておき」を教えてもらいながら、歴史を紐解き、なぜそこに惹かれたのかを地元の人と話す。人との出会いを軸にしたツアーです。
▶︎ツアーに選んだスポット:興聖寺、シェア型書店HONBAKO、伏見の古民家、源氏の湯、ウトロ平和祈念館
ツアー③ 伏見でみつける木・鉄・コンクリ「散策と探索、そして音がある」
伏見といえば水、お酒、お寺ですが、このツアーでは建物やインフラの素材に着目しています。京阪と近鉄の近接点でもあり、水路もある伏見。散策のなかで風景を味わいながら、そこに音を楽しむ視点を加えている。そこで奏でられる音や、産業とは異なる楽しみ方を発見するツアーです。
▶︎ツアーに選んだスポット:澱川橋梁、伏見の古民家、竜馬通りの杉玉

あなたも、感性からまちを編集してみませんか
今回、参加者はそれぞれの感性でtimespaceを使いながらツアーを作成しました。自分がキュレーターやエディターになった気分だったと思います。
timespaceは現在、実証実験中です。プラットフォームとして機能し、地域のコミュニティや新しい編集軸を持った人々によって活用されることで、その価値を発揮します。あなただけの視点を投稿して、あなたの視点で旅をつくれたら、新しい移動の体験が生まれるはずです。一人ひとりの視点が新たな旅の発見につながり、地域の新たな観光価値を生み出すのではないでしょうか。何気ないその土地や場所、素材が、何かを思い出したり想起するきっかけになります。
この実証実験が広がることで、私たちの移動体験そのものが変わるかもしれません。これまでの京都のPOIが反映されています。ぜひ一緒にtimespaceをはじめてみませんか?
timespaceで、いつもの街を編集してみませんか?
timespaceは、時間を設定するとAIが現在地からのツアー内容を提案してくれるナビアプリ。従来のナビが決まった目的地に導くのに対し、timespaceは『まだ決まっていない次の行き先』を提案します。
本ワークショップでは、参加者がフィールドリサーチとワークショップを通じて街を編集する体験をしました。この感性による編集体験を、timespaceならいつでもお手元で楽しめます。あなたの感性でいつもの街を編集してみませんか。
▼アプリはこちら
https://timespace-keihan.flutterflow.app/
▼ アプリの詳細はこちら
https://ten-tub-ac3.notion.site/24ed5f4914ab80768fbfd0b872334983
クレジット
主催・協力
- 共催:株式会社timespace、京阪ホールディングス株式会社
- 企画運営:株式会社ロフトワーク、FabCafe Kyoto
アンバサダー
- おおしまたくろう(サウンドマン)
- 北澤雅彦(おこぶ北淸 店主)
- 杉田真理子(都市デザイナー)
- 山本周(建築家)
撮影:有本伶生
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