こんにちは。Cafeと宿泊担当の優子です。今回は、6月15日と6月22日の2回に渡って開催したイベント「林縁会議#2〜猟師の山小屋で、ヒトと森の境界を語る〜」のレポートをお届けします。
猟師・脇谷さんの山小屋を拠点に、朝から実際に山をみんなで歩き、それぞれの視点で森を観察。夜は自然の恵に感謝しジビエをいただきながら囲炉裏を囲んで語り合いました。イベントの様子とともに参加者のみなさんの森への想いを紹介したいと思います。
「林縁会議」とは?
ヒトの生活圏は、ヒトが森に働きかけることで維持されますが、人口減少や高齢が深刻化すると、森への働きかけが維持できません。近い将来、ヒトと自然の境界線(≒林縁)は、急激に書き換えられていきます。人間活動が衰退し、“林縁”の書き換えられた、20年後の飛騨地域…
ヒトはその時、どのようなかたちで自然と寄り添いながら暮らしていけるのでしょうか?
ここ、飛騨地域には、様々な立場で森に関わる方々がいます。彼らは、ヒトと森の境界(≒林縁)に立ち、境界線を維持する人たちです。林縁では何が起きていているのか?ヒトと森の境界線は、この先どのように変わっていくのか?ヒトのはたらきかけで、その境界を“書き換える”ことはできるのか?森に関わる様々な立場の人たちとこの問いを一緒に考え、話し合ってみたい。「林縁会議」は、そんな思いから2019年4月にスタートしました。
森で見つける!おもいっきり森で遊ぶ!
このイベントに参加してくれたのは、木工職人さん、林業の仕事に従事されている方、自然の香りを追求されている方、元大工さん、小学6年生のお子さん、水や土壌についての研究者など様々。
始まって数分でみなさんそれぞれに興味のあるものへとまっしぐら。みなさんの行動に目が離せません。
お昼休憩中、リュックの中からシュフォンケーキを取り出したのは、森の幼稚園をやっている元大工の天野さん。「何で切りわけるの?」という問いに、それぞれ持っていた鉈を見合って、これではさすがに…と(笑)。「それならナイフを作りましょう!」と造形作家の貝山さん。即興のグリーンウッドワークがかっこいい!
お弁当を食べた後最終地点で一度自由行動。途端に、急斜面を駆け上がるみなさん。その先に何があったのでしょうか?
どうやら「てん」という動物がいたそうです。
森で見つけた植物
森ではみなさん思い思いに過ごしました。
美味しいジビエと森で獲た恵を味わう夜
猟師が、適切に処理したジビエ肉。猪も鹿もクセや臭みが全くなく、とても美味しいです。
囲炉裏を囲んで、お待ちかねの夕食の時間です。
ジビエ料理は、飛騨狩人工房の田中さん(脇谷さんのお兄さん)が調理してくださいました。カレーも煮込みも絶品です。
山小屋の囲炉裏を囲み、美味しいものをみんなでいただく。森に住む生き物の命をいただくという大切な行為。自ずと、一体感が生まれる時間でした。
食事の後は、今日歩いた森で興味を持ったことを語り合いました。
木の枝の自然な造形を活かした家具や作品をつくる造形作家の貝山伊文紀さん。最初森に入ってみて広葉樹があまり見当たらず、細いものばかりだという印象をもったそうです。その後、森林組合の野村さんから、下草を刈り続けてやっと今出てきているのがこれくらいになっていることや、手入れをされている人の解釈の話を聞いて、森に手を入れた人がそういう気持ちだったんだなと思って見てみるとスーッと腑に落ちたことを語ってくれました。
また、造形的に面白くなる枝分かれしている部分を作品の素材として探している貝山さんにとって、今日の森は枝分かれしている部分が高すぎる位置にあったため、採取に適した森ではないと気づいたそうです。そんな中、非常に固くてねばりがありそうな、モチのような木が生えており、これを1本持ち帰って次回までにこの素材を使って何かをこの森のものとして表現したいと話してくださいました。
高山にある岐阜大学流域圏科学研究センターの研究施設(高山試験地)で、研究をされている丸谷先生。「ここで調査をするならば何ができるだろう」と森に入ったという丸谷さん。自分は研究者としてアウトリーチしていかなければいけない思っている時に、この林縁会議でみなさんと議論できたことはよかったとお話されました。
飛騨高山の森の力で、心と体に健やかな美しさを追求する会社正プラスさんで、精油を採るお仕事をされている濱本さん。香りの可能性と飛騨の森の豊かさについて、森歩きで発見したことを語ってくださいました。
「林縁会議#2を終えて」安江さんのコメント
田舎に住んでいる人にとっては、山なんて「すぐそこにあるもの」だと思います。ただ、一歩森に入ると、例え専門家でなくても、なんとなく、その質の違いがわかるのではないかと思います。私も、国府瓜巣 脇谷の森を初めて見た時、地形も、植生も、その場所を人の手で攪乱し続ける猟師一家の存在も含めて、「すごい場所が残ってる…」と感じました。この森が、皆さんにはどう見えるのか?それを聞いてみたくて開催した“林縁会議#02”ですが、様々な人の立場から、実に多様な意見と視点が出て、とても有意義な時間となりました。自然資源の利活用という可能性と、実際に現場で森に関わる人が抱えているジレンマ(のようなもの)まで含めて、開催した私自身、学ぶことが多かったです。登山やキャンプとは少し違う、森に入ること、森を使うことの楽しさ。こうしたことに興味のある方は、次回以降、是非ともご一緒しましょう!
Special Thanks!!
林縁会議に参加してくださったみなさん、ありがとうございました。
まとめ
林縁会議#2では、参加者のみなさんがとてものびのびと楽しまれていたのが印象的でした。
私は普段cafeスタッフとして、様々な職種のお客様がイベントなどを通して繋がっていくのを目にし、それがFabCafe Hidaの大事な役割のひとつだと感じています。今回の林縁会議もそのような機会となっていればうれしいです。
独自にそれぞれの目標に向かって探求されているみなさんが、個々の意見や思いを言えたり交流できる”場”をつくること、そしてそこで語られたことが森に活かされたり、森を守っていくことにつながるよう、継続して林縁会議も続けていけたらと思います。まだ参加したことがない方も少しでも興味があれば、ぜひお気軽にご参加くださいね。次回もお楽しみに!
Presented by 「YAMANOHITEN.」× Hidakuma/FabCafe Hida
■過去のレポートのご紹介
林縁会議#1レポート
https://fabcafe.com/hida/blog/20190412_rinen_meeting01_report
【告知|「山の日展」】
林縁会議をヒダクマとともに企画・運営している、猟師の脇谷さん・研究者の安江さんが参加する「山の日展」が2019年8月11日から9月7日まで高山市のHONMACHI BASEで開催されます。
https://www.yamanohiten.com/
FabCafe Hidaでは、森のレッスンvol.7 「森は食べている~山・川・海の循環のメカニズムを学ぶ」を7/25に開催します!
今回の林縁会議に参加してくれたメンバーのひとりで、高山にある岐阜大学流域圏科学研究センターの研究施設(高山試験地)で、山(森)〜川〜海の水や物質(生物の源の栄養や土砂など)の循環の研究を行う丸谷先生をお招きし、森・川・海の水のつながりとそこにいる生き物たち、その循環のメカニズムを教わる「森のレッスンvol.7」を2019年7月25日19:00から開催いたします。この機会にぜひご参加くださいませ。
デジタルものづくりカフェのFabCafe Hidaでは、美味しいコーヒーや気軽にものづくりできるだけでなく、月ごとに様々なイベントを開催しています。どうぞお気軽に遊びに来てくださいね。
お問い合せは、こちら。
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伊藤 優子
FabCafe Hida/Hidakuma 森のコミュニケーター
1986年生まれ。東濃ヒノキの産地・加子母出身。インテリア科の高校・専門学校卒業後、下呂温泉の仲居として9年間働く。2017年にFabCafe Hidaにジョインし、飛騨のまちで永く愛されるお店づくりをモットーに、cafeでのメニュー開発やイベント企画運営・宿泊を担当。定番メニューのカヌレなどを考案。地元の針葉樹の森と飛騨の広葉樹の森を繋げる架け橋になるのが夢。朝が好き。
1986年生まれ。東濃ヒノキの産地・加子母出身。インテリア科の高校・専門学校卒業後、下呂温泉の仲居として9年間働く。2017年にFabCafe Hidaにジョインし、飛騨のまちで永く愛されるお店づくりをモットーに、cafeでのメニュー開発やイベント企画運営・宿泊を担当。定番メニューのカヌレなどを考案。地元の針葉樹の森と飛騨の広葉樹の森を繋げる架け橋になるのが夢。朝が好き。