Event report

2020.8.24

木端から始まる。森との関わり、人との出会い。

FabCafe編集部

(この記事は、FabCafe Hidaを運営する株式会社飛騨の森でクマは踊る(ヒダクマ)の掲載記事の転載です。)

広葉樹をもっと身近に

「蔵出し広葉樹」は、単なる木材販売イベントではありません。では、どういった趣旨のイベントなのか、簡単にご説明しておきましょう。

ヒダクマは、森から新たな価値を創ることで、人と森との関係の再構築することに取り組んでいます。その手段のひとつが、様々なパートナーを巻き込んだものづくりです。空間の木質化やオフィス家具の製作、ワークショップなどを通じ、広葉樹の活用方法を探究してきました。

製作の過程では、大小さまざまな端材が生まれます。計画変更により、使う予定だった木材が残ることもしばしば。そうして生まれた端材をはじめとした木材は、決して無価値ではありません。

蔵や倉庫にあった木材を集めてみると、色も格好もバラバラな端材、新築されるカフェの天井から吊り下げる予定だった生木の枝、奇怪な曲がり木など、個性豊かなラインナップとなりました。加工しやすいものばかりとは言えません。しかし、広葉樹が持つ種そして素材としての多様性は、プロダクトの魅力として反映され得る余地がまだまだあるはずです。こうした背景の中でわれわれは、手軽に飛騨市産広葉樹に親しんでもらい、より多くの方々と森の価値を見出したいと考え、本イベントを実施しました。

価値を決めるのはお客さん

販売方法は単純明快な1g/1円の量り売りとしました。木を秤に乗せてたきに参加者の方々が見せる反応は、人ぞれぞれ。木の姿形や大きさ、色や表情、作りたいものといった要素により、感じる価値が違うからです。木を探して、興味を持って手に取り、実際に重さを確かめるまで、その木には値段が付きません。その意味で、木の価値を決めるのはお客さんです。

木と出会い、人と出会う

地元で家具製造に携わる方、木工を学ぶ学生、近所の味噌煎餅屋さん。本当にいろいろな方にお越しいただき、遠方からは埼玉県や奈良県からきた方もいらっしゃいました。中には、偶然にもイベントで大学時代の同級生に再会したという参加者も。ヒダクマとしても、たくさんの方と新たな接点を持ち、市産広葉樹を手にとっていただけたことは、喜ばしいことです。

虫食い、節ありの木が・・・

イベントで人の手に渡った木がどうなったのかーー。アーティストでstudio archēの甲斐貴大さんの作品をご紹介します。

甲斐さんが手に取ったのは、虫の食痕や節がある、通常であれば薪(焚き物)にされるような木でした。そんな素材から生まれたのは、「洞(うつろ)」と題した作品。用途や機能を求めたものではない、“木のための器”。素敵な作品にしていただき、ありがとうございました!

甲斐貴大|Takahiro KAI

1993年宮崎県生まれ。2017年東京藝術大学美術学部建築科卒業。木材を主材とした作品を制作しながら、在学中の2016年、設計から制作、施工までを一貫して管理する工房としてstudio archē設立。カトラリーから家具、什器、インスタレーション、建築に至るまで、領域とスケールを横断した制作を行う。2020年より東京藝術大学非常勤講師。https://arche.studio/

広葉樹が森から手元に届くまで

このイベントを開催したもうひとつの理由は、素材としての広葉樹を手に取る機会がとても少ないためです。ミニ講座「広葉樹が森から手元に届くまで」では、イベント企画者のひとりである広葉樹活用コシェルジュの及川幹さんに、広葉樹の流通について語っていただきました。その内容を一部抜粋しながら、最後に広葉樹流通の現状について、お伝えしたいと思います。

輸入材>国産材

山に目を向けると、飛騨の森は市面積の93.4%を覆い、そのうち広葉樹が占めるのは68.0%です。ただ、森から出てくる木材の68.0%が広葉樹かといえばそうではなく、その割合は10%程度だそう。これは全国で見ても変わらない数字です(令和元年林業白書)。

チップはパルプや燃料に

一方で広葉樹の利用について見てみると、例えば飛騨市の家具産業では、国産広葉樹の利用比率は高い場合で50%程度(「木材保存」2017)。国内の広葉樹を生かしきれずに、輸入材に頼っている現状が見て取れます。では、国産広葉樹材の用途はというと、90%以上がチップになり、パルプや燃料として消費されています(令和元年林業白書)。

小径で多様がゆえに

広葉樹がチップになる理由はいくつかあります。ひとつは、傾向として直径が細く、枝(=節)や曲がりが多いといった形状の特徴。もうひとつは、多様な種が少量ずつ存在しているという、自然本来の種構成です。針葉樹を対象に発展してきた日本の林業では、多様な広葉樹を太く大きく育て、山から切り出す術が培われてきませんでした。結果として広葉樹が木材として流通したり、建築や大きな家具になる割合が非常に小さくなっています。

さて、広葉樹をどう生かす?

「蔵出し広葉樹」で木を購入してくださった方には、”何にするかは考え中”といった方や、思いもよらない用途や製作物を考えている方が多くいました。飛騨市が豊富に有する広葉樹を持続可能な形で生かし、森づくりや地域づくりにつなげるには、まだまだ創意工夫が必要です。その意味で、イベントを通じてたくさんの方々と繋がれたことは大きな意義があったと感じています。

WOOD MARKET「蔵出し広葉樹」の次回開催は、2020年9月19日〜20日です。たくさんの方と、広葉樹の生かし方について、ともに思案を巡らせることができれば何よりです。

 

文・志田岳弥(ヒダクマ)

 

WOOD MARKET「蔵出し広葉樹」開催情報!

「蔵出し広葉樹」とは、飛騨産広葉樹の中から一般流通では見かけないユニークな木や、入手困難な規格の板材や丸太を見つけ、その場で購入できるイベントです。

■日時:2020年09月19日(土)~20日(日)/10:00〜17:00
■場所:FabCafe Hida(岐阜県飛騨市古川町弐之町6-17)
■参加費:無料
■企画・運営:株式会社飛騨の森でクマは踊る/及川幹氏(広葉樹活用コンシェルジュ)

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  • FabCafe編集部

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