Event report
2024.2.27
FabCafe編集部
東京から高速バスで1時間半の距離にある富士吉田市。緑豊かな景観と富士山から流れ落ちる清涼な水の恵みによって、1000年以上続く織物の町として栄えてきました。現在では、クリエイターやアーティストとのコラボレーションで、新たな織物の価値創造に挑んだ機屋(はたや)展示・アート展の開催など、伝統を繋ぎ革新を続ける街としても注目を集めています。
Fuji Textile Collaborative Project(フジ テキスタイル コラボレティブ プロジェクト)は、山梨県のテキスタイルの生産者と国際的なクリエイターの協業を促進することにより、テキスタイルの表現を建築や空間デザイン、プロダクトデザインやアートなど、多岐にわたる分野においてその可能性を探る試みとしてスタートしました。地域の唯一無二のテキスタイル技術と世界中のクリエイターとのコラボレーションの枠組みを構築し、地域とグローバルをつなげることを目指しています。
3ヵ年計画の1年目として動き出した今年、12月にオランダ出身のデザイナー、Samira Boonさんが富士吉田のリサーチトリップに来た様子をお届けします。
アムステルダムと東京を拠点とするテキスタイル建築スタジオ、Studio Samira Boon。柔軟でダイナミックな環境の創造に重点を置きながら、最先端の技術を生地デザインに応用することに特化してきました。ハイテクな折りたたみ技術やコンピュータ織りモデルを使うことで、独自のテキスタイルの表現を次々と生み出しています。クライアントには、HermèsやTheaters Tilburg、国際宇宙ステーション(ISS)などの有名ブランドと機関が含まれます。
Samira Boonさんは以前、日本へ留学した経験がありますが、この度初めて富士吉田の地を訪れ、地元の織物産業を知る機会を得ました。街には工場や機屋さんだけでなく、染め屋さんや糸を扱う業者、研究者、伝統的な技術の職人など、富士吉田の織物産業に関わる様々なステークホルダーが存在しています。そのため、Fuji Textile Collaborative Project事務局はSamira Boonさんの専門知識に基づいたリサーチプログラムをデザインし、実施しました。これにより、彼女は富士吉田の織物産業についてより深く理解することができました。
5日間に渡った富士吉田訪問の初日、富士山の麓で地域テキスタイル産業の研究開発・技術支援などを行っている“シケンジョ”こと“山梨県産業技術センター”に行き、富士吉田の機織り産業についてのレクチャーを受けました。
貴重な甲斐絹のアーカイブなどを見せてもらい、明日からのリサーチに向けての準備が整います。
山梨県産業技術センターを訪れた後、Samira Boonさんはプロジェクトチームと共に、富士吉田市内外でさまざまな織物の場を見学し始めました。Samiraさんは技術の重要性を理解するプロジェクトを多く手掛けてきたため、各機屋さんが持つ品質へのこだわりに感動しながら、熱心な質問が絶えませんでした。また身延市にある和紙工場、山十製紙にも訪れ、和紙の特性や和紙を使った織物について学びました。この訪問により、織物と県内の他産業とのコラボレーション商品への第一歩を踏み出すことができ、今後これらの実現に向けて可能性を大いに感じる濃密な時間となりました。
地域訪問では、Samiraさんの他に、立体形状についての研究をしている館教授率いる東大チームや、2020年東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムを手がけたアーティストの野老朝雄さんを招いての豪華なメンバーで行われました。
5日間を通して合計5社の地域産業関係者を訪問し、富士吉田の産業について、またそれぞれが持つ特徴についてを丁寧に聞かせてもらいました。毎度時間が足りなくなってしまうほどに質問が溢れ、どの機屋さんについても深く知ってもらうことができました。
また、布の芸術祭であるテキスタイルウィークもまわることができ、富士吉田が取り組むテキスタイルの新しい可能性について知ってもらう良い機会となりました。
リサーチトリップの最後は、訪問した機屋さんだけでなく、今回まわりきれなかった機屋さんたちにも集まってもらい、Samiraさんとの「Thinking Session」(アイデア発送・意見交換の会) 時間を設けました。
このセッション時間では、Samiraさんが制作しているインテリアとして使われている防音性を持つ生地や、館教授と共同で制作された、日本の折り技術から発想を得た立体性を持つ生地の紹介もあり、テキスタイルの新しい可能性を感じられる時間になりました。
産地の方と一緒にアイディアを交換し、インスピレーションを刺激し合え、今後このプロジェクトでどんな制作ができるか、期待と想像が膨らむ有意義な時間でリサーチトリップは終了しました。
今回のリサーチトリップを経て、今年から実際に制作へ向けて動き出していきます。
デザイナーと生産者の知見・経験・技術が組み合わさった時、どんなものができあがるのか、
ぜひ楽しみにしていてください。
プロジェクト概要
- インターナショナルコラボレーター: Raw Color Studio、Studio Samira Boon
- ローカルコラボレーター: 舟久保織物、株式会社オヤマダ、テンジンファクトリー、前田源商店、渡小織物、渡邊織物
- プロジェクトマネジメント: FabCafe Tokyo、株式会社DOSO、FabCafe Fuji
- クリエイティブディレクター: アリエ・ロゼン
- スペシャルサンクス: 山梨県、在日本オランダ王国大使館、オランダクリエイティブインダストリーズ基金、富士技術支援センター
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サミラ・ブーン
Studio Samira Boon 創設者
サミラ・ブーンはオランダ出身。大学で建築を学んだ後、日本の文化や建築に興味を持ち東京工業大学に留学します。4年間を日本で過ごし「Studio Samira Boon」を立ち上げました。空間やテキスタイル・プロダクトなどのデザインや制作を行っています。「素材を最優先にするとデザインは結果として生まれる」という考えで、素材や製造技術の研究から成果として作品を作る手法をとっています。Studio Samira Boon は、アムステルダムと東京を拠点とする テキスタイル アーキテクチャ スタジオで、柔軟でダイナミックな環境の作成に重点を置いています。ハイテクな折りたたみ技術をコンピュータ織りモデルに再解釈し、折り紙のパターンをそのまま生地に組み込むことで、革新的なテキスタイルの表現を生み出しています。
サミラ・ブーンはオランダ出身。大学で建築を学んだ後、日本の文化や建築に興味を持ち東京工業大学に留学します。4年間を日本で過ごし「Studio Samira Boon」を立ち上げました。空間やテキスタイル・プロダクトなどのデザインや制作を行っています。「素材を最優先にするとデザインは結果として生まれる」という考えで、素材や製造技術の研究から成果として作品を作る手法をとっています。Studio Samira Boon は、アムステルダムと東京を拠点とする テキスタイル アーキテクチャ スタジオで、柔軟でダイナミックな環境の作成に重点を置いています。ハイテクな折りたたみ技術をコンピュータ織りモデルに再解釈し、折り紙のパターンをそのまま生地に組み込むことで、革新的なテキスタイルの表現を生み出しています。
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