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2024.1.28
FabCafe編集部
ロフトワークと、クリエイティブコミュニティFabCafe Globalは、循環型経済をデザインするプロジェクトやアイデアを世界から募集するアワード「crQlr Awards (サーキュラー・アワード)2023」の受賞プロジェクト28点を発表しました。
「crQlr Awards」は「直線型ではなく循環型の評価を行う」 「名声ではなく、行動のためのアワード」「グローバル視点を獲得できる」の3つの理念を掲げ、循環型経済の実現を目指す⼤規模なプロジェクトから計画中のアイデア、活動、アート作品など幅広く募っています。
応募プロジェクトは「クリエイティブであるか?サーキュラーエコノミーへの洞察があるか? – For People」「資源循環だけでなく、環境に対してポジティブな影響を与えられているか?- For Planet」「循環型経済を目指す社会、企業の課題に対し、解決策を示しているか?- For Profit」との3つの審査ポイントのもと、審査員個々の視点を反映し総合的な評価のもと選出。選ばれたプロジェクトは、世界にインスピレーションを与えるプロジェクトとして讃え、活動のさらなる後押しに繋がるサポートを行っています。
本アワードは、回を重ねるごとに世界中へと広がり、3回目の開催となる2023年は、過去最多の参加国数を更新し、43カ国、140のプロジェクトが集まりました。
審査は、2度目の参加となる、デンマークのイノベーションラボ「SPACE10」の共同創業者のGuillaume Charny-Brunet氏をはじめ、東日本旅客鉄道株式会社 イノベーション戦略本部 デジタルビジネスユニット マネージャー入江洋氏、建築家成瀬友梨氏ら、イノベーション、デザイン、AI、アート、モビリティ、建築、コミュニティ、テクノロジー、バイオなど、多様な分野で実績を持つプロフェッショナル8名が参加。さらに世界に拠点を持つFabCafe Globalから2名が加わり、マテリアル、製品とサービス、アート、教育、まちづくり、仕組みという6つの観点からサーキュラーなアイデア・プロジェクトを選出しました。
選ばれたプロジェクトには、審査員から贈られる独自の賞と評価コメントをはじめ、事務局発行の認定ロゴが授与されます。
そして2024年3月には、受賞プロジェクトの展示イベント「crQlr Awards Exhibition」をFabCafe Tokyoで開催いたします。イベントでは展示のほか、受賞者や審査員を招いてのクロストークなど、受賞プロジェクトを通してサーキュラー・デザインをより身近に感じていただけるプログラムを展開いたします。
※ サーキュラー・デザインとは…循環型経済(サーキュラーエコノミー)を目指す、製品やサービスのデザインのこと。デザインは仕組みの設計も含む。
crQlr Awards 2023
応募期間:2023年9月19日〜11月13日
応募総数:140点/世界43カ国
審査員賞:28点
特別賞:3点
今年の応募作品の多様性とプロジェクトの質の高さを目の当たりにし、感激しています。循環型経済におけるバリューチェーンは、経済合理性の結果、長く複雑なものになっています。そんな中、サプライチェーン上のバリューをその「表」や「裏」でつなぐだけでなく、既成の社会規範やビジネス規範そのものを問い直すようなプロジェクトが増えていることに興奮を覚えました。
そして、今回の特別賞のテーマである「新しい関係性のデザイン」というレンズを通して表現された「ソフト」と「ハード」の両方のアプローチにも刺激を受けました。
廃棄物と私たちの関係を深く問いかけ、時には私たちの身体を新たなリサイクルマシンとして、観客の心を揺さぶるアーティストの姿を垣間見ることができました。一方では、新たな「Internet of Waste」(IoTのように、廃棄物がインターネットに接続され、データの収集・分析・活用がされるシステム) の到来が間近であり、テクノロジーをより効果的に活用し、優れたデザインと拡張性を備えたうえで自己完結するシステムを構築できる、希望に満ちた未来も見えてきました。
3回目を迎えたcrQlr Awardsでは、社会との接続もさらに強化し、今年は、東京、バルセロナ、バンコクのFabCafeでも「crQlr Awards Exhibition」がオフライン開催で開催されることが決定しました。各地で本コミュニティがリアルで集まることで、どのような交流が行われるのか楽しみでなりません。皆さんもぜひ、コーヒーを片手に、私たちの共通の未来をつくるサーキュラーデザインの力をその目で確かめてください。
Kelsie Stewart (FabCafe CCO/株式会社ロフトワーク Sustainability Executive)
審査員には、2度目の参加となる、デンマークのイノベーションラボ「SPACE10」の共同創業者のGuillaume Charny-Brunet氏をはじめ、東日本旅客鉄道株式会社 イノベーション戦略本部 デジタルビジネスユニット マネージャー入江洋氏、建築家成瀬友梨氏ら、イノベーション、デザイン、AI、アート、モビリティ、建築、コミュニティ、テクノロジー、バイオなど、多様な分野で実績を持つプロフェッショナルが参加しました。
審査員がそれぞれの視点で選出したプロジェクトには、独自の賞と評価コメントが贈られ、事務局が発行する認定ロゴが授与されます。認定ロゴは、企業の取り組みをより広く周知するためのプレスリリースをはじめコーポレートサイトや印刷物など、広報ツールとして幅広く活用いただけます。
まずは応募者、プロジェクトに関わる全ての方々、審査員の皆さまに心からのお礼を申し上げます。
廃棄物の課題に取り組む様々なアイデアをはじめ、その他にも空気、水、土といった環境インフラに着目したプロジェクトが印象に残った、crQlr Awards 2023。多くのケースで「過程の透明化」と「個人/市民の参加」が重視されていたのも特筆すべきことだと感じています。
FabCafe Global Prize/特別賞では、「地域社会への価値還元」「生物多様性へのポジティブな影響」「新しいパートナーシップのデザイン」を評価基準に掲げ、3つのプロジェクトを選出しました。
日本の食文化を支えてきた「海藻」に新しい価値をもたらし、持続可能な産業と海洋環境の改善の両立に挑戦する『Sea vegetable Circulation』。「森林資源の活用」を軸に技術継承と雇用創出を実現し、地域の経済活動を駆動させる仕組みとして循環を社会実装した『森林循環‧林業創生‧REWOOD』。私たちの廃棄物に対する固定観念を変容させ、人工物を生態系のなかに位置付け未来の「共生」を想起させる問いを投げかける『Guilty Flavours』。
いずれも、従来の産業構造やシステムの枠組みを越えた新しい関係性の構築を通して、目の前の課題解決に留まらず、100年、1000年と続く社会のデザインを目指すものといえるのではないでしょうか。
木下 浩佑(MTRL/FabCafe Kyotoブランドマネージャー)
プロジェクト概要:「Guilty Flavours(ギルティ フレーバーズ)」は、人間が自分たちの体を機械として活用し、プラスチックを永遠に排除するための画期的な提案です – 食べることで。新しい生化学的なプロセス、例えば消化酵素などが、人間が安全にプラスチックを摂取できるようにするかもしれません。バニリン(バニラの香りの分子)から始まり、この研究プロジェクトは、生きた生物によって変換された完全に食べられる分子を創造するためにこのプロセスを現実的にどのように活用できるかを探っています。その結果、『ギルティ フレーバー)』アイスクリームが生まれました – プラスチック廃棄物から変換された成分を含む、初の本物の食品サンプルです。
「Guilty Flavours(ギルティ フレーバーズ)」は、プラスチックごみから変換された成分を使って初めて作られたアイスクリームです。バニラフレーバーの分子であるバニリンから始まったこの研究プロジェクトは、この作用を現実的に利用して、生命体によって変換された完全に摂食可能な分子を作成する方法を探求しています。消化酵素などの新しい生化学的作用によって、人間が安全にプラスチックを消費できるようになるかもしれません。人間の消化機能を機械のように活用し、プラスチックを永遠に排除するための画期的な提案です。
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審査員:Darlene Damm
コメント:私たちは今、バイオテクノロジーを使って世界を再構築し、再設計しようとしています。このことは、環境や社会的課題の解決に大きな期待を抱かせる一方で、新たな疑問も投げかけます。何が自然で何が不自然なのか?何が生物的で何が物質的なのか?何が健康で何が不健康なのか?物事を変えることの結果とは?変えないことの結果は?私たちはどれくらいのリスクを負うべきか?どの程度のリスクを他人に求めるべきか?過去とはまったく異なる未来を恐れないためには?このプロジェクトは、このような問いを私たちに優しく投げかけるものでした。世界の多くがテクノロジーと倫理をめぐる対立的で破壊的な議論に明け暮れている中、このプロジェクトは別の道があることを示しています。完全に安全でありながら、変化と未来への可能性を体験し、見ることは可能なのです。Guilty FlavoursプロジェクトのElenoraさんには、テクノロジーと倫理の交差点で、より多くの人々が優しく安全に私たちの未来の選択を探求できるようなプロジェクトを他にも生み出してほしいと願っています。
ほか選出審査員:
- 廣末 幸子
- 成瀬 友梨
- David Tena Vicente
プロジェクト概要:私たち合同会社シーベジタブルは、磯焼けにより減少しつつある海藻を採取して研究し、環境負荷の少ない陸上栽培と海面栽培によって蘇らせ、海藻の新しい食べ方の提案を行っています。
地上の植物は探求し尽くされ、様々な栽培技術や調理方法が確立していますが、海藻の世界はその途上、と言うよりはじまってすらいないものばかり。過去から受け継がれる海藻食文化を守っていくと同時に、新たな海藻食文化をつくっていきたい。その先には海にも人にも良い未来が広がっていると信じて、私達は日々活動しています。
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審査員:Guillaume Charny-Brunet
コメント:合同会社シーベジタブルの包括的なアプローチは、賞賛と高い評価を受けています。海藻を陸上養殖する独自技術とノウハウの開発により、海水温の上昇や生息環境の変化によって絶滅の危機にある美味しい海藻の安定的な生産を可能にし、自然繁殖を促進したからです。同社は、科学者、漁師、地元のお年寄り、シェフなどさまざまな人々を結びつけ、生物多様性と地域社会の両方に貢献するだけでなく、創造性と味覚をはるかに刺激する、生産的で回復力のあるエコシステムを作り出しています。加えて、彼らのすばらしい美的センスと、ストーリーやレシピを訴求する力がこの取り組みを伝染させているのです。これらの成果と今後の可能性を考慮し、シーベジタブル社には「ビッグブルーな循環賞(Big Blue Loop Prize)」がふさわしいと考えます。
ほか選出審査員:
- Darlene Damm
- Lucy Lu
- 入江 洋
- 成瀬 友梨
- David Tena Vicente
プロジェクト概要:台湾の全体的な林業産業チェーンを分析した後、チームは国産木材の利用率がわずか1%であることを発見し、公共部門や学校などを訪問した結果、台湾では年間1000万トン以上の人為的な剪定や自然による風倒木や枯れ木が発生しているにもかかわらず、直接焼却炉へ送られたり、低効率な方法で処理されていることがわかりました。そこで、チームは各機関のコミュニケーションの橋渡しとしての役割を担い、7Rのゼロ廃棄原則に基づいて木材利用の可能性を再考し、「REWOOD森林循環湖口創生」システムを構築しました。工作ステーションでは次世代への技術伝承を行い、台湾が自給自足の完全な林業産業チェーンを築くことを目指しています。
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審査員:Lucy Lu
コメント:このプロジェクトは感動的なストーリーであり、親の苦労を理解し、木炭産業を引き継いだだけでなく、産業全体に革命的な変革をもたらしました。また、このプロジェクトはかなり野心的であり、台湾の竹材生産が急速すぎて処理できなかったり、国産木材が伐採された後に利用できずに滞っているといった問題に対処し、さらには行道樹の剪定後の廃材にまで取り組んでいます。上記の問題に対する包括的な解決策を提案しており、異なる戦略や異業種との協力を通じて、台湾の外来種の生態系への影響さえも、人々のニーズや生活に密接に関連する商業戦略に変換できる可能性があります。技術の転送と開発がこれからさらに期待されます。
ほか選出審査員:
- Aining Ouyang
審査員 | プロジェクト ( ) 内は国名 |
Guillaume Charny-Brunet(SPACE10 共同創業者&ストラテジーディレクター) | ・Sea vegetable Circulation (Japan) ・Ananas Anam (Philippines, Spain, Bangladesh, Ivory Coast, UK) ・MATR-a circular economy mattress solution for hotels (Austria, Europe) ・DiFOLD Origami Bottle (Europe, US) ・Co-producing value-added, biodegradable plastics and additives from agricultural byproducts (US) |
Anni Korkman(プログラムディレクター:Helsinki Design Week & Weekly、Fiskars Village Art & Design Biennale、Luovi Productions Ltd) | ・TATAMI ReFAB PROJECT (Japan) ・Infinity Toy Box (Bulgaria) ・Dodola (Slovenia) ・Seaweed Dialogues (Iceland) ・記憶のえんぴつ (Japan) |
Darlene Damm(Singularity University 学部議長、Community and Impact部門 元部長) | ・Sea vegetable Circulation (Japan) ・TATAMI ReFAB PROJECT (Japan) ・Guilty Flavours (UK) ・An Enlichenment (UK) ・CirculaRElectronics by VERTMONDE (Spain) |
Lucy Lu(台湾 嘉義市文化局 局長) | ・Sea vegetable Circulation (Japan) ・森林循環‧林業創生‧REWOOD Forest Circulation‧Forestry Revitalization‧REWOOD(RE-WOOD) (Taiwan) ・Transparent Solar Windows (US) ・プロジェクト「TSUMUGI」 Project “TSUMUGI” (Japan) ・“捨てないくらし”をかなえる。「くらしのサス活 Circular Action」 (Japan) |
入江 洋(東日本旅客鉄道株式会社 イノベーション戦略本部 デジタルビジネスユニット マネージャー / モビリティ変革コンソーシアム 事務局長) | ・Sea vegetable Circulation (Japan) ・TATAMI ReFAB PROJECT (Japan) ・Transparent Solar Windows (US) ・プロジェクト「TSUMUGI」 (Japan) ・The Mother Reef (The Netherlands) |
Aining Ouyang(REnato lab COO) | ・MATR-a circular economy mattress solution for hotels (Austria, Europe) ・re:Mix, the circular kitchen mixer for your own glass jars (Germany) ・MateRe – 資源循環DXプラットフォーム(Japan) ・森林循環‧林業創生‧REWOOD Forest Circulation‧Forestry Revitalization‧REWOOD(RE-WOOD) (Taiwan) ・サステナブルなEC配送サービス [comvey シェアバッグ®︎] / Reusable packaging bags and an operation system :comvey Share-Bag (Japan) |
廣末 幸子(株式会社大阪鉛錫精錬所 代表取締役社長) | ・Guilty Flavours (UK) ・re:Mix, the circular kitchen mixer for your own glass jars(Germany) ・MateRe-資源循環DXプラットフォーム (Japan ) ・Hair Recycle (Benelux) ・Lalaloop Reusable cup system for a circular city (Korea) |
成瀬 友梨(建築家/成瀬・猪熊建築設計事務所 共同主宰) | ・Sea vegetable Circulation (Japan) ・Dodola (Slovenia) ・Guilty Flavours (UK) ・Tejiendo la calle (Spain) ・re:Mix, the circular kitchen mixer for your own glass jars (Germany) |
木下 浩佑(MTRL/FabCafe Kyoto マーケティング&プロデュース) | ・MATR-a circular economy mattress solution for hotels (Austria) ・Dodola (Slovenia) ・One Stop Solution for Circular Electronics (Ecuador) ・Bio-invasive Textile Library (UK) ・MateRe-資源循環DXプラットフォーム(Japan) |
David Tena Vicente(FabCafe Barcelona CEO) | ・Sea vegetable Circulation (Japan) ・Guilty Flavours (UK) ・The Mother Reef (The Netherlands) ・Briiv Air Filter (UK) ・Gravity Wave – Plastic Free Oceans (Greece, Italy, Egypt, and Spain, extending to the Cantabrian and Atlantic areas) |
2024年3月1日から24日まで、FabCafe Tokyoで「crQlr Awards Exhibition」を開催します。イベントでは、受賞したプロジェクトの展示のほか、受賞者や審査員をはじめとする多様なゲストを迎えてのクロストーク「crQlr Summit 2024 TOKYO」や展示ツアー「crQlr Awards Exhibition Tours」など多彩なプログラムを展開します。
サーキュラー・エコノミーに興味のある方々にとって、第一線の専門家や他の参加者と交流できる絶好の機会となります。イベント詳細は、2024年2月初旬にFabCafe公式ウェブサイトで公開いたします。
crQlr Awards (サーキュラー・アワード)は、循環型社会を目指す世界中のプレイヤーたちを、集めてつなぎ、活動を後押しするグローバルアワードです。サーキュラー・デザインを実践するプロダクト、サービス、アート、教育、システムデザイン、都市計画など、幅広いプロジェクトがアワードに集まります。国や産業を超えたコラボレーション通じて、社会的・ビジネス的規範に挑戦し、レジリエントで公平でリジェラティブな未来の実現を目指します。
ロフトワーク広報
Email:pr@loftwork.com
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