Event report

2020.3.16

【イベント開催レポート】京都にジャンルの垣根を超えイノベーターが集結。『SXSW 2020』直前ミートアップ

FabCafe Kyoto編集部

FabCafe Kyoto より

新型コロナウイルス感染症への対応から中止が発表された2020年のSXSW(サウスバイサウスウエスト)。その直前に、京都ではイノベーター達によるミートアップが実施されました。「温故知新・異業種攪拌から産まれ出る化学反応」をテーマに、企業/公的機関/スタートアップ/アカデミア/ローカルクリエイターが業界の垣根を超えて集いディスカッションを繰り広げた1日の熱気をお届けします。(Text by Yuko Nonoshita / Photo by Kosuke Kinoshita [FabCafe Kyoto / MTRL])
※注: 本イベントは、政府によるイベント自粛要請の発表以前に、会場の衛生管理と来場者への予防策アナウンスのもと実施いたしました。


「京都にはSXSWが足りない。SXSWには京都が足りない。」をキーワードに立ち上がった、新しいムーヴメントを生み出す実験空間を応援する人たちのコミッティ『Ten Thousand Eight Hundred Forty One (10841) Kyoto』のローンチイベントが2020年2月23日にFabCafe Kyoto (MTRL KYOTO) で開催されました!

SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)は、「Interactive(テクノロジー)」「Music(音楽)」「Movie(映像)」というクロスする3つのジャンルにおいて世界を変えるアイデアとインパクトを持つ人たちが一堂に会し、約10日間にわたり2000を越えるイベントを行う地上最高のフェスティバルとして、世界中から注目を集め続けています。

この数年で日本からの参加者が増え、各地で関連イベントも開催されていますが、残念ながら京都とSXSWとの接点は今のところほとんどありません。そこで立ち上げられたのが、SXSWの会場であるテキサス州オースティンと10,841kmの距離にある京都・関西のイノベーターたちをつなぎ、未来社会を変える自由なアイデアを実現したい人たちが集うコミッティ『10841 Kyoto』なのです。

活動スタートを記念するイベントには、国内外から多くの有志や支援者が駆けつけ、様々なテーマによるセッションや座談会、そして学生たちによるアイデアピッチも行われ、約10時間にわたるプログラムを大成功させることができました。ここでは最初から最後まで大いに盛り上がったイベントの模様をレポートでご紹介します!

◎ 当日のプログラム、登壇者およびコミッティメンバーについては https://fabcafe.com/kyoto/events/10841-KYOTO  からご覧ください。

CONTENTS

・なぜ京都にはSXSWが必要なのか? – オープニングセッション
・京都とSXSWをつなぐ日本文化とフードとソーシャルデザイン
・実験空間としてのSXSWと関西 – 大阪万博2025、オルタナティブメジャー、そして
・Road to SXSW – 私たちの人生を変えたSXSWの魅力とは / 覆面座談会〜私たちが毎年オースティンへ飛んでいく理由
・世界を変えたい! 14の熱い思いが生まれたアイデアピッチ
・10841Kyotoコミッティのこれから

なぜ京都にはSXSWが必要なのか? – オープニングセッション

京都でなぜいまSXSWを結ぶコミッティを立ち上げることにしたのか。会場に集まった人たちのそんな疑問を解消すべく、オープニングセッションに京都とSXSWに対して誰よりも熱い思いを持つ2人のキーマン、DOKI DOKI, INCの井口尊仁さんと立命館大学の野中朋美さんが登壇しました。

自らを「連続起業家」と言う井口さんが初めてSXSWに参加したのは2011年のこと。当時開発していたソーシャルマッチングアプリ「Domo」を世界にお披露目するのが目的でした。「TwitterがブレイクしたSXSWでDomoを話題にしようと勇んでオースティンに降り立ったのですが、直後に飛び込んできたのが東日本大震災のニュースだったんです。そこから急きょ予定を変更し、日本を応援する活動をはじめようとしたものの、初参加で何ができるのかもわからない。そんな自分たちをサポートし、支えてくれたのがSXSWに参加する人たちで、とにかく思ったのが”オースティンやばい!”でした」

とにかくSXSWの素晴らしさを伝えたいと思った井口さんは、おそらく日本初となるSXSWのイベントを2012年に渋谷で開催しました。目標だった “10年で日本からの参加者を1000人にする” はあっという間に達成し、今では毎年1,000人以上が参加するほどになりました。日本のクリエイティビティと迫力は存在感を増し、大手メーカーや大学などからも出展があります。

2013年にウェアラブルグラス “Telepathy” を発表した時は、Google Glassの競合になると話題になり5億円を調達したのもSXSWならではの逸話です。今年は、「Dabel」という声で人がつながる新しいサービスをオースティンの仲間たちと一緒に発表するという井口さん。「京都独自の文化やモノづくりはSXSWでも絶対に注目を集めるにちがいない」そう思っていた時に声をかけてくれたのが野中さんだったそうです。

フードテック分野の研究者である野中さんは、2018年に初めて参加したSXSWの経験を「とにかくすさまじかった」と言います。「SXSWの存在は7年前から知っていて、参加する人たちの話をうらやましく聞いていたところ、とうとう運良く参加できる機会が訪れたんです。そこで思ったのはすごい人も多いけれど、そうでない人もチャレンジする場であること。それを実践したくて今年も再びSXSWに参加します」

昨年のSXSWに江戸未来フードシステムデザインラボで出展した “日本酒ゼリー” を再び出展する予定で、カンファレンスへの登壇も決まっています。「カンファレンスに一緒に登壇する一人は、昨年カンファレンスで質問したのを憶えてくれてたスピーカーから紹介で一度も会ったことがないんです。それでも一緒にやろうとなるのがSXSWなんですよね」

そして意気投合した2人はコミッティを立ち上げ、本イベントを開催することに。「SXSWを通じて世界につながるチャンスをつかんでもらうため、どんどん面白い人たちを巻き込んでいきます!」という井口さんらしく、セッションの後半ではSXSW Japan Officeの曽我浩太郎さんやパナソニック株式会社の福井崇之さんといった人たちを次々巻き込み、オープニングにふさわしい盛り上がりをみせていました。

井口 尊仁(DOKI DOKI, INC. ファウンダーCEO)

「コミッティの名前はとにかく憶えにくいものにしたかった」という狙いが見事に成功(?)してセッション中も何度も確認していた井口さん。そんなユニークな発想がぴったりなのがSXSWなんだといえそうです。本イベントを振り返った井口さんによるブログ「10841キロメートルの愛。京都にはSXSWが足りない。SXSWには京都が足りない。」もぜひあわせてご一読ください。

野中 朋美(立命館大学食マネジメント学部 准教授)

普通のOLからなぜか食の研究者になって、とうとうSXSWで発表するという「すさまじい経験」をすることになったという野中さん。セッションでもそのワクワクぶりが十分に伝わっていました。


京都とSXSWをつなぐ日本文化とフードとソーシャルデザイン

日本でSXSWはTwitterやGoogle、Appleといったテクノロジー企業の出展がクローズアップされることや、interactive部門への出展が多いため、テック系イベントと捉えられがちなところがありますが、ITとは関係なくカルチャーやクリエイティブを紹介する展示やイベントもたくさん開催されています。

京都市と博報堂関西支社がタッグを組み、京都を代表する伝統文化の一つ、西陣ブランドを世界に発信する職人や起業家を支援する「西陣connect」も来年のSXSW参加を予定していて、ショートセッションでは進行中の2つのプロジェクトが博報堂の佐伯研さんと北川佳孝さんから紹介されました。

一つは西陣織の技術を用いたウェディングドレスの製作で、海外の著名アーティストの衣装などを手掛ける大阪のROGGYKEI(ロギーケイ)がコラボでデザインを担当します。もう一つは、一室をまるごと京都西陣でコーディネートするというもので、シンガポール発の家具専門店「SCANTEAK」と一緒にサステナビリティを重視した家具を開発する教育学習プログラムの成果として発表することを予定しています。「京都市長からも “自由にやっていい” とお墨付きをもらっていて、SXSWの出展を目指すことで参加モチベーションを高めていきたい」ということでした。

食や貧困に関わるテーマもSXSWではトピックとして世界中から様々なアイデアが発表され、議論が行われています。セッション「FOODを通して世界に発信するサステナブルカルチャー」では、モデレータ役の立命館大学野中朋美さんをはじめ、2人のイノベーターがそれぞれの活動への思いを熱く語りました。

実家のお寺で副住職を務める福井良應さんは、お寺にお供えされた食べ物を”おさがり”として、子どもをサポートする支援団体を通じて”おすそわけ”するNPO法人「おてらおやつクラブ」の理事として活動しています。地域と貧困に悩む家庭、そして支援者をつなぐ活動は、社会課題を解決するソーシャルデザインとして2018年のグッドデザイン大賞に選ばれ、デザイン業界にも大きなインパクトをもたらしました。

「フードロスと子どもの貧困は日本でも身近な問題として、協力者も増えています。お寺が持つポテンシャルを知ってもらう機会でもあり、さらに活動を拡げるためにも規制の問題を解決して社会インフラとして認められるようにしたい」という福井さんのメッセージに、会場の参加者からも大きな賛同が寄せられていました。

インドネシア産カカオ豆の生産とチョコレートを製造販売するDari Kの吉野慶一さんからは、カカオ栽培農家が抱える不条理な環境を変えるチャレンジが紹介されました。「生計の安定にはチョコレートビジネスそのものを改革する必要があると考え、まず最初に生産する豆の品質を高め、次に市場全体を拡大するため豆から1分でチョコレートドリンクを抽出できるオリジナル機器を家電メーカーさんと一緒に開発しています」とのこと。

Dari Kさんの活動ですでに8割の農家で収入がアップし、子どもの教育に投資したという家庭が増えているそうです。吉野さんは来年のSXSWに向けてチョコレートドリンクメーカーを出展することを目指しており、会場では試作品を使った試飲会も行われました。「私たちのビジョンに共感する人たちを増やしたい」という期待を込めたメッセージで、会場へ支援と協力を呼びかけていました。

立命館大学の野中さんは現在研究している日本酒100%ゼリーについて紹介。最初はシステム工学の視点から始めた研究が、社会課題を解決するポテンシャルを持つことに気づき、SXSWの展示会トレードショーへ出展する道へとつながっていったと話します。

「材料の風味を保ったまま常温保存できる新しい製造システムは、日本酒のようなこれまで考えられなかったものがゼリーに加工できるようになります。高級食材にも応用できますし、保存食や非常食にしたり、飲み込むのが難しい人たちに美味しいものを食べてもらうこともできます。今回は日本酒を通じてゼリーの素晴らしさを世界に伝えたいと思っています」

本セッションでは食を通じた社会課題解決にも様々なアプローチがあり、文化や思いを伝える世界共通言語として大きなポテンシャルを持っていることが伝わってきました。ここでの発表がSXSWでどのように受け入れらるのかがとても楽しみなところです。

京都市X西陣プロジェクト

博報堂関西支社の佐伯研さんは本プロジェクトを「文化のスタートアップスタジオです」と紹介し、グローバルに活躍の場を拡げることを目標にしていると言います。北川佳孝さんは以前の仕事で井口さんと接点があり、コミッティを通じていろいろな人たちとの縁がこれからつながっていきそうです。

福井良應(おてらおやつクラブ)

お寺を通じてフードロスと子どもの貧困家庭をサポートする取り組みは世界でも関心が高まっていて、台湾やシンガポール、タイなどに呼ばれて出展や講演をすることもあるそうです。

吉野慶一(Dari K)

学生時代からバックパッカーとして約60カ国を旅しており、創業後も「努力が報われる社会」を目指して世界を飛び回っている吉野さんは、さらにカカオの殻を使ったバイオマス発電にも挑戦中です。


実験空間としてのSXSWと関西 – 大阪万博2025、オルタナティブメジャー、そして

今回のイベントではそれぞれの分野で京都と関西で社会にインパクトを与える取り組みをしている人たちがスピーカーとして登壇し、チャレンジしている境界や限界を紹介。SXSWに参加する人たちへ様々な刺激を与えてくれました。

政府や大学関係者を迎えたセッション「SXSWから万博へ。次に破られる”常識”は何だ?」では、世界に発信する舞台を目指す大阪万博や、そこに続くアイデアをSXSWという場で実験している人たちが参加し、それぞれに対する期待を語り合いました。

モデレーターを務める博報堂のビジネスデザイナー福田卿也さんは、大阪大学と共同で光る知育玩具ブロック「SHAKE SYNC」を開発し、2018年のSXSWトレードショーに出展しています。「ゆらぎのある自然な光は自閉症のパニック症状を抑えるなど新たな効果もわかり、次は電気に頼らずに光る街路樹を作り、大阪万博へ出展することを目指しています」と言い、実現のためにもSXSWや参加する人たちとアイデアを検討していきたいと話します。

経済産業省で2025年国際博覧会統括調整官を担当する岩田泰さんは1970年に開催された大阪万博について、半年で6400万人が訪れ、多くの海外の文化に触れたことで海外に出る日本人が増えるなど、他にもたくさんの影響をもたらしたと紹介。「SXSWもそうですがたくさんの人たちが参加する万博はイノベーションと行動変容を生み出す場であり、次の大阪万博は会場の中だけでなく日本全体で歴史の転換点にしたい」と言います。

今年のSXSWに野中さんをはじめチームで参加する立命館大学の仲谷善雄学長も登壇し、イノベーションについて熱く語りました。「イノベーションとはやりたいことを最後までやりきることで、最後に乗り越えるのは自分自身だと思っている。SXSWに参加するというのもそうだが、熱い思いと信念を持ったアイデアを実現しようとするならとにかく続けるべき。それも一人では始めるのも続けるのもしんどい。だから仲間をつくって巻き込んだ方がいいで」とSXSWに挑む人たちにエールを送りました。

京都大学総合博物館に所属する塩瀬隆之さんは、「今やっているのは子どもの機会を奪う大人たちを壊すこと」として、現在取り組んでいるロボット店員と電子マネーとIoTを駆使したこどもの街を体験するワークショップ「ミニフューチャーシティ」を紹介しました。「新しい技術を大人が選別する前にこども達に渡して使ってもらうのが大事」と言います。また、自ら未来を創り出すために、大阪万博をこどもたちが自分ごととして参加する場にするのがいいのではないかとも提案しています。

他にも登壇者からは、大阪万博は様々なイノベーションへの挑戦を生で見られる場であり、SXSWと同じく見る側ではなく仕掛ける側になる方が楽しいので、ここにいる人たちといろいろな意見を提案してもりあげていきたいといったコメントが寄せられていました。

岩田 泰(経済産業省 2025年国際博覧会統括調整官)

東京からわざわざこのイベントにためだけに駆けつけてくださったという岩田さん。「大阪万博はいろいろな人たちが何かやるきっかけにするマジックワードとして使ってもらうことを目指している」と5年後に向けた思いを語ってくださいました。

仲谷 善雄(学校法人立命館 総長 / 立命館大学 学長)

立命館の建学の精神である「自由と清新」はイノベーションであり、自由な気風を大事にしているという仲谷学長。「挑戦をもっと自由に」を学園ビジョンに掲げ、常にイノベーティブであろうとする立命館のこれからの動きにも注目です。

塩瀬 隆之(京都大学総合博物館准教授)

コミュニケーションロボットの開発者でもあり、共著「問いのデザイン」を執筆中という多忙な中でセッションに参加してくださった塩瀬さん。100年前に執筆された『百年後の日本』という書籍の紹介から科学の歴史、アートの価値まで幅広い話題でセッションを盛り上げてくださいました。予想よりも、理想と空想こそが時代を突き動かすのだそうです。

福田 卿也(株式会社博報堂 ビジネスデザイナー)

名だたるスピーカーが参加するセッションで素晴らしいモデレーターぶりを発揮した福田さん。SXSWや大阪万博を目指すクリエイターとしてのこれからの活躍にも注目です。

国際的メジャーな万博をテーマにしたセッションに対し、「『オルタナティブメジャー』会議 世界的ニッチをSXSWとKYOTOから考える。」では、SXSWを開催するオースティンではじまりつつある変化や京都との関わりをこれからどう生み出していくかについて、コミッティ発起人の井口さんをモデレーターに様々な意見が語り合われました。

2011年からSXSWに参加している井口さんは、SXSWとは世界と直接対話する場所であり、これからの世界の動きが感じられる場だと言います。「SXSWでは単なるメジャーよりもミニマムで繊細なものやその国では当たり前だけれど外から見るとニッチな”オルタナティブメジャー”と称されるものが響くことがある。それはモノだけでなくサービスや社会活動でも取り入れようとされているのを感じる」とも話します。

小野直紀さんは広告代理店ではこれまで成立しなかったモノづくりを博報堂monom(モノム)で実現し、SXSWやミラノサローネに出展しています。「そうした場所に参加して感じるのは、社会課題への取り組みがマーケティング的に行われていた時代から次のレイヤーに移り、態度といえるものにまでなってきたこと」と言う小野さんは、様々なアイデアが一堂に会し、意見を出し合える場があり、さらにどんな人たちが集まるかも大事になってくるのではないかと言います。

鴨志田由貴さんはビジネスプロデューサーや投資家、京都造形芸術大学マンガ学科長という複数の顔を持ち、日本esports促進協会の立ち上げにも関わっている多彩な人物です。今は世の中に無いものを新しい価値にしてメジャーにするのがかっこいいとも。「やったことが無いことなのに人にアドバイスするような仕事をするのは嫌だし、できればやりたくない。時間は限られているので、良いと思われることに面白い方法でコミットできるのが大事だと思っているし、それには自分から動いて関わっていくしかない」とコメントしました。

最後に井口さんからの「コミッティはSXSWだけの活動では終わらせない。京都で、日本で起きていることをSXSWというキーワードをを通じて発信、共有する場にしていきたい」とコメントでセッションは締め括られました。

小野 直紀(雑誌『広告』編集長 / 博報堂monom代表 / デザインスタジオYOY主宰)

セッションでは2019年編集長に就任した季刊誌「広告」についても紹介されました。国際的に活躍するクリエイターでもあり、手掛けた作品は国際的なアワードを多数受賞しています。

鴨志田 由貴(作戦本部株式会社 代表取締役 作戦本部長 / 京都造形芸術大学 マンガ学科長 兼 准教授)

新事業・新商品・新店舗開発など「0」から「1」を生み出すことを得意とし、阿佐ヶ谷アニメストリートのプロデュースなども手掛けられています。


Road to SXSW – 私たちの人生を変えたSXSWの魅力とは / 覆面座談会〜私たちが毎年オースティンへ飛んでいく理由

本イベントでは「Road to SXSW」と題された、SXSWにこれから参加しようという人たちに向けたセッションも行われました。

まず最初に今年からSXSW Japan Officeの公式スタッフとして活動をスタートする曽我浩太郎さんから、運営に関する基本的な話や日本からの参加者に対するサポート、情報発信などについてお話がありました。熱心なSXSW参加者から正式なスタッフとして活動することになったいきさつや、オースティン在住を含む3人のメンバー紹介などがあり、SXSWに挑戦する日本人挑戦者をまとめたWEBサイト「Japan Challenge@SXSW2020」を公開し、日本からの情報発信を増やしていきたいということでした。

続いて京都のスタートアップStroly(ストローリー)から、2年連続でSXSWの公式マップスポンサーになったことや、SXSW インタラクティブの中でも最も注目されるイベントの一つである「SXSWピッチ」に日本企業として2019年は唯一のファイナリストとして登壇した話が紹介されました。イラストマップや古地図をオンライン地図として使えるようにするプラットホームを開発するStrolyのサービスはSXSWがこれまで配布していた公式マップをそのまま活かすことができ、スポンサーの話もスムーズに進んだそうです。CEOの高橋真知さんは「SXSWの参加は2019年が初めてでしたが、最初からがっつり参加しようと思ってピッチに登壇し、トレードショーにも出展しましたが、ピッチ参加者だけのパーティーがあったり、ピッチを見た人たちが展示ブースに来てファンになってくれたり、うれしい相乗効果がたくさんありました」と話します。

同じくStrolyの明主那生さんは展示会のトレードショーへ参加した印象について「IT系の展示会とはちがって技術よりビジネスモデルに関心が高く、厳しい質問もけっこうありました」と話していました。「ブースに話をしに来る人が多いのもSXSWならではの特徴だと思いました。対応でへとへとになるけれど密度の濃い情報交換ができて、サービスのアップデートにもつなげられた」と言い、今年のトレードショーでは新しい機能を出展するということでした。

曽我浩太郎(SXSW Japan Office)

2019年6月にSXSW Japan Officeを設立したVISIONGRAPH Inc.の創業者でもある曽我さんは、コミッティの立ち上げメンバーとして東京からイベントに駆けつけ、これからも京都の活動を応援していくということでした。

Stroly

CEOの高橋真知さんは他にも数多くの国際イベントやピッチコンテストに参加していますが、初参加したSXSWについて「他にはない貴重な体験だった」と話しています。トレードショーに参加した明主那生さんも「サービスにアドバイスをしてくれる人たちも少なくなかった」と言い、今年はもっといろいろ対応できるように準備していきたいということでした。

Road to SXSWのもう一つのセッション「WeirdなSXSWに魅了される人々」では、テキサス州オースティンのスローガン”Keep Austin Weird”でもあり、おかしな人や現象をあらわす “Weired” をキーワードに、SXSWを愛するあまりに人生まで変わってしまったという人たちによる座談会が行われました。SXSW歴5回というナビゲーターのSさんからの質問に、20回のAさん、3回のYさん、2回のTさんが回答していくという流れで、覆面ならではのぶっちゃけトークで会場を盛り上げました。

もともと音楽イベントとして始まったSXSWに早くから注目し、日本人アーティストを集めたライブイベント「Japan Nite」を1996年から開催しているAさんは、日本からSXSWに参加した2人目の日本人として、オースティンにもたくさんの仲間たちがいます。「参加するならお客さんとしてではなく一緒に盛り上げるために行くべき。他に価値観が置き換えられないすごいセッションがたくさんあるし、何よりもライブで現地の空気を感じるのが大事」だと言います。

2017年にプライベートで参加してから毎年SXSWの空気をインストールするためにオースティンへ飛んでいくというYさんは、翌年から公式に仕事としてトレードショーに出展し、今年で4回目の参加です。会社をどうやって説得できたの?という質問に対しては「これまで参加した企業さんのお話を紹介したり、国内でSXSWに参加したことで得られたものを実績として見せるためにワークショップもやったりしています」とコメント。「ビジネスにもつながるし、すごい人たちともフラットに話せる機会は日本ではそうそう無いので、とにかく参加してみるべし」とAさんと同じく参加することが大事だと言います。

Tさんはもともと音楽が好きで映像関係の仕事していたことからSXSWに興味があったそうですが、出張申請が認められなかったので自費でバッジを買って参加したのが2017年でした。そこでYさんやAさんと出会ったそうですが、SXSWは女性の参加比率が上がっていて今では半分近くを占めているとのこと。「最初は自腹でもいいから絶対に参加したほうがいい。私はそれで人生が変わりました」と、まだ参加を躊躇している人たちにメッセージを送っていました。


世界を変えたい! 14の熱い思いが生まれたアイデアピッチ

SXSWで大事なのは自分のアイデアをぶつけて、議論して、実現に向けて動くこと。会期中にはアイデアを支援するピッチコンテストも行われ、賞金が授与されるだけでなく、世界的に有名なVCからの支援やメンターのアドバイスを受けられるチャンスもあります。

日本には多くの素晴らしいアイデアがあるものの、残念ながら伝えるのが下手なせいでせっかくの機会を失っていることが多々あります。そんな状況を克服するため、イベント最後のプログラムではプレゼンのコツを紹介するピッチ講座と、豪華なプレゼントが贈られるピッチコンテスト「10841 Kyoto To SXSW ピッチバトル vol.1」が開催されました。

最初にTEDxHimiのオーガナイザーで京都造形芸術大学准教授の川向正明さんからTED仕込みのピッチ講座が行われました。効果的な伝え方を知るための講座だけに内容はとてもわかりやすく、「最初に結論をもってくる」「いいたいことだけを残して内容をそぎ落とす」といった、心がけるべきポイントもシンプルにまとめられています。

「いいたいことがたくさんあるからと内容をてんこもりにしたり、説明から始めるとピッチは失敗してしまいます。必要なのはイントロダクション、背景、コンセプト、影響、結論の5つで、それぞれで必要なことだけを話すという法則をあてこむだけでプレゼンは簡単にできます。自分のアイデアを広めたいならシンプルに伝えられるようにすることが大事です。」

続いて行われたピッチバトル本番は、SXSWのピッチコンテストではメンターの指導が行われることから、1分という短い持ち時間で「世界に向けて提案したいこと」「今やってること」「本当にやりたいこと」の3点を伝え、その後に参加者からアドバイスを元に内容を修正したり変更したうえで、再び簡潔に発表するというルールで競われました。

学生を中心に飛び入りも含めて14チームが参加。会場参加者による投票の結果、5つのアイデアが勝者に選ばれました。


10841Kyotoコミッティのこれから

約10時間にわたる長いプログラムを締め括るクロージングが行われ、発起人の井口さんと野中さんから再び会場へコミッティにかける思いが伝えられました。

井口さんはあらためて自分の話をする代わりに、SXSWで発表する「Dabel」の打ち合わせで訪れていたオースティンから京都に向かう途中で、WIRED Japanの創刊編集長でSXSWにも度々参加している小林弘人さんと交わしたオンラインビデオの内容を会場へのメッセージとして紹介しました。

「SXSWは多くの人が集まり、つながりをつくる場として日本人が参加する価値があります。会場ではセレンディピティがたくさん生まれ、ライブやカンファレンスに参加するために並んでいる待ち時間さえもピッチタイムにできるチャンスがあります。また、これまではすでに価値があるものを持っていく場でしたが、今は”オルタナティブ”なアイデアを求められている。そして、次のアクションをどう起こすかが大事なのです」

野中さんは、関西を盛り上げたいという熱いものがあるタイミングだから今回のイベントが実現できたと話し、参加者全員にあらためて感謝の言葉をおくりました。これからのアクションについて「テクノロジーで新しいものが生まれてるのに世の中は何となく後ろ向きでいるのをなんとかしたい。そういう点でゼリーは悪いところが全くないし、幸せをつくることができると本気で信じています。成果が出るまでガチの語り合いをお願いしたい。私もとことんやります!」とコメントし、イベントの最後を締め括りました。

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  • FabCafe Kyoto編集部

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