News & Releases
2022.3.2
居石 有未 / Yumi Sueishi
FabCafe Nagoya プロデューサー・マーケティング
FabCafe Nagoyaは、東海のさまざまな人が集うコミュニティを可視化し、「循環(サーキュラー)」を実現させる未来へ向けた手段やアプローチを共に考え、クリエイティブの力で東海エリアで新たな価値を生み出し、実装していくことを目指しています。
そんな中、店頭のデジタル工作機械を使ったFab体験も、よりサステイナブルなものにできないか、サービスを提供する現場からアクションを起こせないかと考え、素材を探すことに。
そうして辿り着いたのが、岐阜県大垣市にある染色メーカー”株式会社艶金”でした。
艶金とは
艶金は、1956年(昭和31年)に設立。「メイド・イン・ジャパン」へのこだわりを大切に、生地の染色から縫製まで染色技術を活かしたオリジナルの商品を企画・製造・販売を行っている染色メーカーです。
染色は、大量の水の中に生地を泳がせ、最大130℃まで温度を上昇させ、数時間その温度を保ち続けなければいけないため、莫大なエネルギーを必要とします。つまり、大量の水、エネルギー、染めるための化学薬品などをたくさん使用する産業になります。
そのため、染色と地球環境は、切っても切り離せない関係。艶金では、昭和62年という早い時期から、バイオマスボイラーへの燃料転換を行い、カーボンニュートラルを実現しています。また、平成28年には継続的な省エネルギーへの取り組みが評価され、ボイラー管理優良事業場として表彰されました。
2019年には、地球温暖化の原因となる二酸化炭素排出量の現状把握を行い数字を公表し、脱炭素経営の宣言を行い、2021年には温暖化ガス削減の国際認定SBTを取得し、これらを経営方針の土台としています。
そんな艶金では、現在自社製品として、着心地の良さとサステイナビリティをコンセプトとした”retricot(リトリコ)”と、食べ物や植物を加工したあとに出るのこりものを活用した”KURAKIN”という2つのブランドを展開しています。
新規事業部、応募は0人!?
”retricot(リトリコ)”と”KURAKIN”はどのようにできたのでしょうか。
墨社長にお話しを伺ったところ、工場の現場にはこれまでの文化や慣習が根付いていることにより、技術や能力に関しての安心はあるものの、新しい事業への取り組みを踏み止まってしまう傾向があったといいます。
そこで、適材適所を考え、新規事業に関しても役割分担を行うことに。技術に関しては現場のベテランに、アイデアは今の時代らしい考えを持っている若手社員に任せてみよう、ということで、新規事業や既存事業のリブランドのメンバーを募集したそうです。
実際に、2021年スタートの”retricot(リトリコ)”の立ち上げと、2008年スタートの”KURAKIN”リブランドに関わる、コンセプト設計から企画提案、Webサイト制作までを、子池さん、山田さん、若原さんら3名の若手社員が担当しています。
「ブランドにメッセージ性も入れてくれたりと、予想もしないことをやってくれるメンバーです。」と、社長も社員のみなさんも、彼女たちの事業を心から応援していることを、会話から感じ取れました。
しかし、彼女たちは、最初からこの事業にやる気だったわけではありません。やはり新規事業というものは、これまで培ってきた社内の経験や知識だけでは上手くいきませんし、通常の業務が増えてしまい、仕事が増えてしまう危機感や、先の見えない不透明さゆえの不安から、自らの意思では応募しなかったのです。
結果、応募は0人。ですが、墨社長と取締役の中山さんの意思は固く、彼女ら社員の内側の思いを受け止め、尚且つこの未来へ向けた事業を任せたいと思う3名を指名し、選抜。そうして”retricot(リトリコ)”と”KURAKIN”が大きく動き出したのでした。
KURAKINで使用されるのこり染めの元の一つである、柿の皮
若手社員のみなさまの声(Y-TEC 事業部)
- 子池さん「前の部署とは異なりますが、会社の情報発信に携われるのは自分の中でも嬉しいこと。業務を通して会社を知る機会が増えて、以前よりも成長できたかなと思っています。」
- 山田さん「最初は、部署移動してまで新規事業に力を入れるとは思ってなかったです。私たちが0から作り上げていくことばかりなので、正直まだまだお金にならないことや社会貢献だけになってしまうこともありますが、他部署の皆さんにも積極的に発信して、続けて行こうと思います。」
- 若原さん「大学では世界共生学部で海外交流やSDGsなどを学んでいて、艶金さんのことが気になり、就職しました。地域の方と交流することも多く、いいなと思ったんです。」
資源を大切にすることは、人を大切にすること
今回の工場見学により、工場にある余った布、捨てられてしまう布など、現場の課題や問題がきっかけとなり、それらを艶金のみなさまが自分事に捉えられたからこそ、自然と気持ちの”種”が生まれ、適切な土台・組織づくりを経て、新規事業という芽が出たのだという文脈が垣間見えました。
これまでの知恵と新しい知恵の融合。それらを言葉で伝えることは簡単ですが、実践するとなると、本当に事細かな、多様なコミュニケーションの壁を乗り越えなければなりません。その根っこに当たるのは、結局のところ、人の思いに真摯に向き合い、未来を見据えた思想なのかもしれません。
艶金の資源の源である、大垣の地下水。年間を通して一定の温度を保っている。
-
retricot リトリコ
アップサイクル ブランド
ライフスタイルが大きく変わった2020年、オシャレは内面に向かう時代。多くの人が外出する機会が減り、家で過ごす時間が増えたのではないでしょうか。そんな新しい日常に沿った、快適な日常着を届けたいと思いretricotは立ち上がりました。
retricotが手掛けるアイテムは、染色工場で在庫になった生地を再利用して作られています。世界的にも持続可能な開発目標(SDGs)に向かって取り組んでいく時代、あなたもretricotを着て持続可能な社会を実現しませんか。
ライフスタイルが大きく変わった2020年、オシャレは内面に向かう時代。多くの人が外出する機会が減り、家で過ごす時間が増えたのではないでしょうか。そんな新しい日常に沿った、快適な日常着を届けたいと思いretricotは立ち上がりました。
retricotが手掛けるアイテムは、染色工場で在庫になった生地を再利用して作られています。世界的にも持続可能な開発目標(SDGs)に向かって取り組んでいく時代、あなたもretricotを着て持続可能な社会を実現しませんか。
-
KURAKIN
のこり染め 染色ブランド
2008年、岐阜県産業技術総合センターより、食品会社で使い終わった余剰物を色素に再利用できないだろうか、という共同研究依頼がありました。それをきっかけに、”のこり染め”がはじまり、この”KURAKIN”が誕生しました。
食べ物や植物から出る色合いは、どこか温かくて優しい色。 日本の暮らしにもなじむ色たちです。 KURAKINでは、すべての製品にのこり染を採用しています。
2008年、岐阜県産業技術総合センターより、食品会社で使い終わった余剰物を色素に再利用できないだろうか、という共同研究依頼がありました。それをきっかけに、”のこり染め”がはじまり、この”KURAKIN”が誕生しました。
食べ物や植物から出る色合いは、どこか温かくて優しい色。 日本の暮らしにもなじむ色たちです。 KURAKINでは、すべての製品にのこり染を採用しています。
4月より!FabCafe Nagoyaとのサービス連携スタート
2022年4月より、簡単Fab体験キット『アップサイクル/のこり染め刺繍ハンカチ』のサービスを開始いたします。
店頭でのFab体験を通して、たくさんの人の思いを結び、小さなことからコツコツと、持続可能な社会(サーキュラー・エコノミー)の実現を目指していきます。
-
FabCafe Nagoya
ものづくりカフェ&クリエイティブコミュニティ
デジタルファブリケーションマシンと制作スペースを常設した、グローバルに展開するカフェ&クリエイティブコミュニティ。
カフェという”共創の場”でのオープンコラボレーションを通じて、東海エリアで活動するクリエイター、エンジニア、研究者、企業、自治体、教育機関のみなさまとともに、社会課題の解決を目指すプロジェクトや、手を動かし楽しみながら実践するクリエイティブ・プログラムなどを実施。
店頭では、農場、生産者、品種や精製方法などの単位で一銘柄とした『シングルオリジン』などスペシャリティコーヒーをご提供。こだわり抜いたメニューをお楽しみいただけます。デジタルファブリケーションマシンと制作スペースを常設した、グローバルに展開するカフェ&クリエイティブコミュニティ。
カフェという”共創の場”でのオープンコラボレーションを通じて、東海エリアで活動するクリエイター、エンジニア、研究者、企業、自治体、教育機関のみなさまとともに、社会課題の解決を目指すプロジェクトや、手を動かし楽しみながら実践するクリエイティブ・プログラムなどを実施。
店頭では、農場、生産者、品種や精製方法などの単位で一銘柄とした『シングルオリジン』などスペシャリティコーヒーをご提供。こだわり抜いたメニューをお楽しみいただけます。
-
居石 有未 / Yumi Sueishi
FabCafe Nagoya プロデューサー・マーケティング
名古屋造形大学大学院 修了。卒業後、大学の入試広報課にて勤務。2021年2月 FabCafe Nagoya 入社。
美術館 学芸員インターンシップ、教育機関でのワークショップ・プログラム企画運営、取材・広報などの多岐にわたる業務で培ってきた柔軟性と経験を活かし、関わる人の創造力や表現力を活かせる環境づくりを行う。
FabCafe Nagoyaでは、クリエイターと企業・団体が共創する『人材開発プログラム』や『アイデアソン』『ミートアップイベント』などを企画運営しながら、FabCafe Nagoyaという空間の面白さを、より知ってもらうタッチポイント設計や店頭サービス開発を、日々行なっている。
好きな食べ物はいちご。ライフワークは作品制作。名古屋造形大学大学院 修了。卒業後、大学の入試広報課にて勤務。2021年2月 FabCafe Nagoya 入社。
美術館 学芸員インターンシップ、教育機関でのワークショップ・プログラム企画運営、取材・広報などの多岐にわたる業務で培ってきた柔軟性と経験を活かし、関わる人の創造力や表現力を活かせる環境づくりを行う。
FabCafe Nagoyaでは、クリエイターと企業・団体が共創する『人材開発プログラム』や『アイデアソン』『ミートアップイベント』などを企画運営しながら、FabCafe Nagoyaという空間の面白さを、より知ってもらうタッチポイント設計や店頭サービス開発を、日々行なっている。
好きな食べ物はいちご。ライフワークは作品制作。