Interview

2022.5.19

見る観るうちに広がることへ -クリエイティブミュージアムAkeruEから覗くSTEAM教育の場-

STEAM教育を通して育まれる やわらかな学び
[プロジェクトマネージャー 越本春香さん インタビュー]

平山 亮太

FabCafe Nagoya アシスタントディレクター

ものづくりカフェ&クリエイティブコミュニティ、FabCafe Nagoya。
観る、つくる、伝える体験を通して、クリエイティブな力を育む場、AkeruE。
対象とするターゲットは違えど、近しい要素もあるのではと、この度見学させていただくこととなりました。
そこには、どこか見えているけれど見えきれていない、大切なメッセージがありました。
教える側と教わる側。双方の心地の良い距離感を探ります。

 


“AkeruE(アケルエ)”は、子どもたちの知的好奇心とひらめき力(ギリシャ語でEureka)を育む場として、”学び”と”モノ・コトづくり”の体験ができる施設。科学館の要素と、美術館の要素が行き来できるような展示がされ、モノ・コトづくりに取り組めるスペースやワークショップを展開し、子どもたちのアイデアを形にする機会を設けています。

加えて、より創造性あふれる場づくりに向けて、若者や教育関係者、近隣地域などさまざまなステークホルダーとの協働を行ったり、子どもたちを含めてあらゆる人材・世代がともに学び合う時間を作ったり、未来を築く場とコミュニティが構築されています。

子どもたちがもつ好奇心や探求心をもとに、新しいひらめきのきっかけをつくりながら、かたちつくれるようなサポートがあり、自由度の高い学びの展開を行っています。


科学・技術・工学・数学の分野に力を注ぐSTEM教育にA(Art(芸術)、もしくはArts(リベラルアーツ、教養))を足したもので、芸術や教養を足した教育方針です。

芸術や教養の枠組みはありますが、単に絵を描いたり、楽器を演奏することではなく、芸術の「何を美しいと思うのか?」「何が幸せなのか?」といった要素をテクノロジーと融合させる取り組みを指します。今や、われわれの生活はテクノロジーにあふれており、行き渡る情報がスピードアップし、便利になってきています。「でも、本当にそれだけでいいのか?心まで豊かに暮らす方法はないのか?」という疑問を浮き上がらせ、学びを現実社会の問題に生かし、解決する力がSTEAM教育では期待されています。


PMを務めたロフトワークLayout Unit CCO 越本春香さんにインタビュー

AkeruEにたどり着くまでと、プロジェクトの主軸について

越本さん:クライアントであるパナソニック創業者の松下幸之助さんが「ものをつくる前に、人をつくる」という言葉を残しています。パナソニックでは次代を担う人材の育成支援活動を通じて社会に貢献していくことを目的に、これまでRiSuPiαという理科と数学の体験型ミュージアムを運営していました。 オリンピック・パラリンピックを控えた2019年、ショールームの改装プロジェクトとしてロフトワークはSTEAM教育を軸としたミュージアムも含めた場のあり方を提案しました。

AkeruE E(イー)エリア/カフェ

目標とそこにたどり着くためのベース

越本さん:最終的にSDGsを解決するような人材を作り出すというのがゴールにあります。それってどんな人かというと、コロナだったり戦争みたいな全然予測できない時代が来た時でも突破口を開ける人が人材だ!という目線合わせをしました。そこに必要な能力はなんだろうと考えたときに、大きく言うと、イマジネーションの想像力とクリエイション創造力の2つなんじゃないかなと。それって、AIの時代が来ても人間にしか発揮できない部分だと思います。MITメディアラボのレズニック教授が創造的な学び(クリエイティブラーニング)を提唱していて、その考え方をAkeruEなりに解釈して、ふしぎにであう・つくってあそぼう・つたえてつながるという形に落とし込みました。

イメージと展望

オープンしてちょうど一年となるAkeruE 見えてきた兆し

越本さん:COSMOSというエリアでは、テーマに合わせて工作をします。例えばシーズン1は「地球を豊かにする生き物をつくってみよう」という問いかけでした。その時、大人からは「水を節約してくれるペンギン」みたいな直球が返ってくるんですけど、子どもからは「人の話をうんうんって聞いてくれる、おじいちゃん犬」みたいなものが出てくる。これって、大人は具体的な論理で語ってしまうところを、子どもはそのテーマについて自分がとらえた本質を作品の中に自然に表現してくれているんですね。なので、作品のキャプションを読んでいると私たちが泣きそうになることもあるくらいです(笑)。

–SDGsの中だけで考えると言うよりかは、そこから少し距離を置いてみることで広く考えることに繋がるのでしょうか。ありきたりな日常に転がっている部分をキャッチすることで結果、SDGs的な要素に繋がっていく可能性があります。考えさせることではなくて、自然と疑問を浮き上がらせることがちょうど良いコンテンツの作りになっているのかなと。

越本さん:「未来のため」という縛りって難しく考えちゃうんです。楽しくつくっていたら、実は未来に繋がってたって気づいて欲しい。

–そうですね。縛りはあっても良いと思いますが、蝶々結びにするのか固結びにするのか、結び方もたくさんある中で、各々が自由に選択できる結び方ができたら豊かな思考にも繋がるかもですね。

越本さん:子どもに教えるのではなく、子どもから教えてもらうことの方が多いんです。大人も子どもも共に学んで共に育つ。それがこれからの共育(きょういく)だと思います。


クリエイティブミュージアム AkeruE。一歩踏み込むとそこにはアトラクションのような鑑賞とオープンな創造の場がありました。科学館・美術館・工房が施設には組み込まれており、それぞれ単体で浮き出てしまう短所を調合することで、順繰り秀でた要素を引き出す空間が広がります。

赤い緑、黄色い青。キャンバス上の色彩の類似色が投影されると、色彩は鮮やかな発色を付け、また、補色関係にある色彩が投影されると、一変して深いグレートーンと共に絵画の色である物体色の認識に揺らぎを与える。画家の中山晃子さんの作品。『物体、光、色覚』の3要素によって、相互に関係し合う紐解きとしてサイドには、『色温度』と呼ばれる数値を調整し照らす光の色が変化する展示と、光の三原色を用いた色を重ねた時の変化を見れる展示がされていました。作品を観て興味を惹き、疑問の答えに導くよう関連した情報が配置されており、一方通行でないイメージの受け渡しが可能な導線に魅了されました。

情報を浴びせるではなく自らが浴びに行くような感覚は粘着力の高めな学びとなるのではと。そこには、教える側・教わる側というような立ち位置は薄れて、双方が行き来するような柔軟なやり取りが繰り広げられていくのでしょう。


  • パナソニック クリエイティブミュージアム AkeruE(アケルエ)

    Panasonic Creative Museum AkeruE

    「AkeruE(アケルエ)」は、子どもたちの知的好奇心と「ひらめき力(ギリシャ語でEureka)」を育む場として、”学び”と”モノ・コトづくり”の双方を体験できる施設です。

    展示作品の中では、知性を育む科学館の要素と、感性を育む美術館の要素を兼ね備えた学びを提供します。また、モノ・コトづくりに取り組めるスペースやワークショップを展開し、子どもたちのアイデアを形にする機会を設けます。

    アクセス
    パナソニックセンター東京 2F/3F
    〒135-0063東京都江東区有明3丁目5番1号
    りんかい線「国際展示場駅」徒歩2分
    新交通ゆりかもめ「有明駅」徒歩3分

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    「AkeruE(アケルエ)」は、子どもたちの知的好奇心と「ひらめき力(ギリシャ語でEureka)」を育む場として、”学び”と”モノ・コトづくり”の双方を体験できる施設です。

    展示作品の中では、知性を育む科学館の要素と、感性を育む美術館の要素を兼ね備えた学びを提供します。また、モノ・コトづくりに取り組めるスペースやワークショップを展開し、子どもたちのアイデアを形にする機会を設けます。

    アクセス
    パナソニックセンター東京 2F/3F
    〒135-0063東京都江東区有明3丁目5番1号
    りんかい線「国際展示場駅」徒歩2分
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Author

  • 平山 亮太

    FabCafe Nagoya アシスタントディレクター

    愛知の地で育ち、ひょんなことに2022年春からFabCafe Nagoyaでお世話になり始める。
    傍ら、国際芸術祭「あいち2022」ラーニングプログラムへ参加。場に固着したイメージや、儀式的しきたりを日常的営みへと掛け合わせる現場のアーカイブを遺す手法を探索・散策する。また、双方の間に現れる狭間に興味関心を寄せる。
    portfolio

    愛知の地で育ち、ひょんなことに2022年春からFabCafe Nagoyaでお世話になり始める。
    傍ら、国際芸術祭「あいち2022」ラーニングプログラムへ参加。場に固着したイメージや、儀式的しきたりを日常的営みへと掛け合わせる現場のアーカイブを遺す手法を探索・散策する。また、双方の間に現れる狭間に興味関心を寄せる。
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