Project Case
2022.6.8
FabCafe Nagoya 編集部
2022年5月27日、お香文化をすべての人々へ、そして未来へ届けることを目指す『株式会社菊谷生進堂』さまとの合同プロジェクトとして、FabCafe Nagoyaにて『5世紀からの味覚と香りの調合』というリサーチイベントを開催しました。
本プロジェクトでは、日本人に親しまれてきた”お香”を、現代である21世紀ならではの背景や価値観をベースに再解釈し、実験を通して、今までにないお香の楽しみ方や未来の文化を体感することを目的としています。
本レポートでは、お茶とお香の掛け合わせから生まれる新たな価値・文化創造を試みる様子をお伝えします。
忙しなく、多様なモノやコトで溢れている現代ならではの意識に、そっと寄り添うことができるものの一つ、お香。現代人にとって、お香はただの道具ではなく、心身を整えるもの、気持ちを高めるものとして、まるで薬のように扱われています。最近では、瞑想やヨガなどは勿論、ライブパフォーマンスやDJイベント、パーティーなどでも、お香が振舞われています。
このように、多様な年代の人々に楽しまれ、愛されてきたお香の歴史を知り、文化を再構築するため、『お香』とともに日本の文化として体系化されてきた『お茶』を組み合わせるリサーチイベントを行うこととなりました。
厳選された3種のペアリングから選択
ホップ×玄米茶
ホップは、爽快な苦味と柑橘系の爽やかさが味わったビール特有の香りです。組み合わせる玄米茶は、茶葉の豊かな風味とお米(あられ)の香ばしさが心地よい、誰にでも飲みやすい、お茶漬けを思い起こす風味のお茶です。
スモーキー×ほうじ茶
スモーキーとは、ウイスキー特有の燻製のような香ばしい香りです。組み合わせるほうじ茶は、煎茶や茎茶、番茶などを強火で焙じて製造した、香ばしくさっぱりした風味。異なる香ばしさの掛け算はどんな風味を生み出すのでしょう。
エステリー×和紅茶
エステリーとは、熟成による甘く華やかで、リンゴや西洋梨のようなフルーティーな香りです。 組み合わせる和紅茶は、外国産の紅茶とは違い、渋みが少なく柔らかな風味を味わえるのが特徴のお茶です。
ペアリングが決まり次第、順にお茶が提供され、先にお茶単体の試飲へ。今回使用したお茶は、美濃加茂茶舗から提供協力いただきました。
試飲でお茶の味わいを記憶に残しながら、各テーブルに置かれたお香セットを取り出して、お香を焚きます。
火を消す方法としては、縦軸に真っ直ぐ下へ降ることがコツ。それにより、灰が飛び散らずに、安全に火を消すことができます。
お香を立てたらグラスの中へ潜り通し、手を添えて蓋をします。今回は”アロマグラス”という、飲み口が窄んだスタイルのグラスを使用。このグラスで香りを閉じ込めることで、なるべく香りを口元に留められるようにしています。
10秒程煙がグラス一杯に充満するまで待機した後、手を離すと、容器の中に香りが充満します。そして、香りが漂う中、グラスに入ったお茶を口に運びます。
ホップ×玄米茶(似たような香り・味覚の組み合わせ)
- クラフトビールのような風味を感じるお茶になった
- 同じような香りの組み合わせだったので、味の変化は感じ難かった
- 香ばしさの中にほのかに甘味が増した
スモーキー×ほうじ茶(似たような香り・味覚の組み合わせ)
- ほうじ茶単体の飲みやすさが少し弱まったが、味の変化を強く感じた
- ほうじ茶単体で飲むよりも、かなり強く香ばしさを感じた
エステリー×和紅茶(異なる香り・味覚の組み合わせ)
- お菓子のような組み合わせだった
- 口の中で甘い果実と紅茶が合わさったように感じた
- 違う種類の香りだが、すごく相性が良いと思った
- 味の層ができた
その他全体の疑問・感想
- 熱い状態ほど、味への変化が大きく感じられた
- お茶の燻製のような味わいになった
- 渋味が薄れてお茶の甘みをより一層感じられた
- お香と飲み物を一緒に楽しむことに、今後の新しい飲食サービスの可能性を感じた
- 人により感じ方にムラがあるのはなぜか
このような様々な意見をいただきました。
今回は、お香とお茶による日本文化をベースとしたペアリングを行いましたが、変化の振り幅にムラが出たことでの課題感や、異なる飲み物と合わせてみたいという声も上がっており、今後の新たな展開を見据えた結果が得られました。
「ガスの匂い」や「焦げた匂い」「腐ったものの匂い」など、体に入れると害のある危険物を「臭い」「危険な匂い」と判断するように、人間は嗅覚で危険性の排除をしています。
アメリカの研究によると、もし、嗅覚脱失になってしまった場合、健常者の死亡リスクを1とした場合の5年後のリスクが3.5倍にも上るという数値が出ています。これは、様々な生活習慣病のリスクよりも大幅に高く、いかに嗅覚が重要な感覚器官なのかを指し示しています。
しかし、嗅覚や味覚は、他の感覚器官よりもまだまだ未発見の部分が多い領域。菊谷生進堂では、このような感覚の研究を”お香と異分野を組み合わせる実験や商品開発”を通して行っています。
ぜひ、私たちと共に、香りや味覚の研究を行ってみませんか?気になる方は、こちらよりご連絡ください。
プロジェクト概要
プロジェクト期間:2021年11月〜5月(3ヶ月)
体制
- クライアント:株式会社菊谷生進堂
- PD・PM:居石有未(株式会社FabCafe Nagoya)
- ペアリング監修:甲斐慶太(株式会社FabCafe Nagoya)、菊谷勝彦(株式会社菊谷生進堂)
- 監修協力:伊藤尚哉(美濃加茂茶舗)、浅井睦(Metalium llc)
※肩書きはプロジェクト実施当時
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お香リカレント学院
お香にまつわる歴史(日本と世界)や原料や調合について学び、お香の先生を目指すための学院です。『日本のお香文化を、未来の子供たちへの贈り物として伝えていくこと』に共感していただける方に、日本に1500年にも繋がってきたお香文化を継承していってもらいたいという思いの下、設立しました。
また、卒業後の先生たちへの情報提供や講座内容の相談、原材料の仕入れなども全面的にサポートしております。
お香にまつわる歴史(日本と世界)や原料や調合について学び、お香の先生を目指すための学院です。『日本のお香文化を、未来の子供たちへの贈り物として伝えていくこと』に共感していただける方に、日本に1500年にも繋がってきたお香文化を継承していってもらいたいという思いの下、設立しました。
また、卒業後の先生たちへの情報提供や講座内容の相談、原材料の仕入れなども全面的にサポートしております。
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美濃加茂茶舗
日本茶
「日常に、小休止を。」をコンセプトに、岐阜県東白川村産の茶葉と、日本茶を現代の暮らしに取り入れるための器を取り扱う日本茶ブランド美濃加茂茶舗。 美濃加茂茶舗が生まれた美濃地方は、お茶文化の聖地。千利休や古田織部に代表される茶の湯文化の隆盛期、美濃は茶碗の一大ブランド産地でした。 栽培限界と言われる標高600mに位置する岐阜県東白川村の茶畑で生産された茶葉は、格別の香りと深い味わいが特徴。 日本茶を現代の人がうまく休むための「道具」と捉え、次に進む原動力としての日本茶の在り方を提案しています。
「日常に、小休止を。」をコンセプトに、岐阜県東白川村産の茶葉と、日本茶を現代の暮らしに取り入れるための器を取り扱う日本茶ブランド美濃加茂茶舗。 美濃加茂茶舗が生まれた美濃地方は、お茶文化の聖地。千利休や古田織部に代表される茶の湯文化の隆盛期、美濃は茶碗の一大ブランド産地でした。 栽培限界と言われる標高600mに位置する岐阜県東白川村の茶畑で生産された茶葉は、格別の香りと深い味わいが特徴。 日本茶を現代の人がうまく休むための「道具」と捉え、次に進む原動力としての日本茶の在り方を提案しています。
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