Project Case

2022.8.24

身にまとう傘?傘が観光ナビ?2050年からのバックキャスティングで「未来の傘」のポテンシャルを探れ!

株式会社小川/サーキュラーエコノミーを見据えた、老舗の傘メーカーの新たな挑戦

2050年、傘は、もう、”さす”道具ではない。

身にまとうことができ、内蔵されたAIが、目的地までのサプライジングな観光案内を始める。そんな傘を、きっと、使い捨てる人はいないだろう。

8月某日、夕刻。この日、FabCafe Nagoyaでは、創業89年の老舗・傘メーカー「株式会社 小川」との共創ワークショップが開催された。

「株式会社 小川」は「傘屋」の役割を“アップデート”したいと考えている。

世紀を越えても、片手は塞がれ、進化しないと揶揄される傘。国内の年間消費量は1億2000〜3000万本(出典:日本洋傘振興協議会)と、流通量が多いが故に、簡単に使い捨てられる傘。そして、ゲリラ豪雨をはじめとする近年の異常気象など、人間がコントロールできない気候変動。

そんな、傘を取り巻く環境課題をどうクリアし、「未来」を描いていくのか。

FabCafe Nagoyaが提案したのは、“バックキャスティング”という手法だ。

プロジェクトの流れ

時は、2050年。”ゴミ”の概念がなく、モノは、原料から生産され、製品として消費された後、資源に戻るべく還元される。そんな、経済の理想形である「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」が日常となった社会を目標に設定する。

そこを起点に、時を遡りながら、各年代に起こるだろう社会的トレンドや、変化などをディスカッションする。すると、2022年の現在に取り掛かるべきアクションプランが見えてくる。

ベストシナリオを現実のものにするために、逆算して行動を具体化する、それが“バックキャスティング”の思考法だ。

プロダクトデザインスタジオ RYOTA YOKOZEKI STUDIOの横関亮太さん、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 Future Craftsプロジェクトの山岡潤一専任講師、そして大同大学情報学部情報デザイン学科の横山弥生教授の協力を得て、「株式会社 小川」のメンバーが4チームに別れ、ディスカッションはスタートした。

まず、参加者の多くが口を揃えたのが、人間の「価値観の変化」。

地球環境への配慮が進んでも、気象はコントロールできない。

しかし、近年、トレンドとなっている、“マインドフルネス”や“メタ認知”などの訓練のように、「今、起きていることを、バイアスをかけず、ただ、客観的に認識する」人が増えれば、「コントロールできないもの=サプライジングなエンターテイメント」と感じる人が増えるのではないか。

そこから、ディスカッションは、大いに盛り上がった。

2050年

  • 「身にまとう傘」が開発され、物理的な障害から身を守ってくれるセキュリティ機能が追加される。
  • 今日の景色や天候に応じて傘が観光案内する。
  • 傘自体がプラットフォーム化し、所持することでコミュニティに参加できる。
  • 傘はシェアできるアート・プロダクトで、使用する人がデザインを足していく。

2030〜40年

  • スマートウォッチの進化でモノを携帯しない生活が日常になる。
  • どうしようもない不便を受け入れるようになる。
  • 必要なエネルギーを必要な時に自家発電する。
  • デザインをシェアして楽しむようになる。

バイアスを外し、自由な角度から理想の社会を観察する作業を通して、実にカラフルなアイディアが生まれた。

では、それらを実現すべく、2022年にどんなアクションを起こすべきか?

株式会社 小川の小川恭令社長(写真右上)、AirKasaのスタンド(写真右下)

株式会社 小川の解は明快だ。

この日、「Air Kasa」と銘打った傘の「シェアリング・サービス」を始めることを発表した。

「AirKasa」は、企業の従業員や、施設や店舗の利用客をターゲットにしたサービスで、登録すれば、アプリを使って、必要な時に晴雨兼用の傘が使用できる。

また、小川の未来は、「傘」のアップデートだけにとどまらない。今後は、気候変動に対応した独自性のある商品やサービスの展開を検討している。

会社の”在り方”を、ずっと考えているんです。お客さんにとって”AirKasa”がどういう価値で見られるのか?自分たちにとって、これからの生き様をどうすべきか?皆さんとたくさん話し合いながら、サービスを育てていきたいと思っています。

株式会社小川 代表取締役社長 小川恭令

「シェアリング・サービス」から、傘は“借りられる”、雨の日も”手ぶらで移動できる”という認識の変化を生むことで、サーキュラー・エコノミーが実現するだろう2050年への、最初の一歩を踏み出す小川。

気候変動を活かした「未来のサービス」を打ち出していくという壮大なビジョンの下、名古屋・栄から、小川の挑戦は続く。

プロジェクト概要

プロジェクト期間:2022年5月〜8月(3ヶ月)

体制

  • クライアント:株式会社小川
  • PD・PM:居石有未(株式会社FabCafe Nagoya)
  • D:斎藤健太郎(株式会社FabCafe Nagoya)
  • ゲスト:横関亮太(RYOTA YOKOZEKI STUDIO)、山岡潤一(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 、Future Craftsプロジェクト)
  • 協力:横山弥生(大同大学情報学部情報デザイン学科)

※肩書きはプロジェクト実施当時

  • 株式会社 小川

    昭和8年(1933年)、名古屋・中区で創業。

    ビニール傘の開発をはじめ、キャラクター傘の製造・販売から、メンズ・レディースブランドやオリジナル傘、また、レインコート・レインシューズなどの生産も行う。

    2022年からは、「Air Kasa」と銘打って、企業の従業員や、施設や店舗の利用客をターゲットにした傘シェアリング・サービスをスタート。今後、気候変動に対応する ”お役立ち企業” として、独自性のある商品やサービスの提供を企画する。

     

    昭和8年(1933年)、名古屋・中区で創業。

    ビニール傘の開発をはじめ、キャラクター傘の製造・販売から、メンズ・レディースブランドやオリジナル傘、また、レインコート・レインシューズなどの生産も行う。

    2022年からは、「Air Kasa」と銘打って、企業の従業員や、施設や店舗の利用客をターゲットにした傘シェアリング・サービスをスタート。今後、気候変動に対応する ”お役立ち企業” として、独自性のある商品やサービスの提供を企画する。

     

  • FabCafe Nagoya

    ものづくりカフェ&クリエイティブコミュニティ

    デジタルファブリケーションマシンと制作スペースを常設した、グローバルに展開するカフェ&クリエイティブコミュニティ。
    カフェという”共創の場”でのオープンコラボレーションを通じて、東海エリアで活動するクリエイター、エンジニア、研究者、企業、自治体、教育機関のみなさまとともに、社会課題の解決を目指すプロジェクトや、手を動かし楽しみながら実践するクリエイティブ・プログラムなどを実施。
    店頭では、農場、生産者、品種や精製方法などの単位で一銘柄とした『シングルオリジン』などスペシャリティコーヒーをご提供。こだわり抜いたメニューをお楽しみいただけます。

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    カフェという”共創の場”でのオープンコラボレーションを通じて、東海エリアで活動するクリエイター、エンジニア、研究者、企業、自治体、教育機関のみなさまとともに、社会課題の解決を目指すプロジェクトや、手を動かし楽しみながら実践するクリエイティブ・プログラムなどを実施。
    店頭では、農場、生産者、品種や精製方法などの単位で一銘柄とした『シングルオリジン』などスペシャリティコーヒーをご提供。こだわり抜いたメニューをお楽しみいただけます。

Author

  • 東 芽以子 / Meiko Higashi

    FabCafe Nagoya PR

    新潟県出身、北海道育ち。仙台と名古屋のテレビ局でニュース番組の報道記者として働く。司法、行政、経済など幅広い分野で、取材、撮影、編集、リポートを担い、情報を「正しく」「迅速に」伝える技術を磨く。

    「美しい宇宙」という言葉から名付けた愛娘を教育する中で、環境問題に自ら一歩踏み出す必要性を感じ、FabCafeNagoyaにジョイン。「本質的×クリエイティブ」をテーマに、情報をローカライズして正しく言語化することの付加価値を追求していく。

    趣味はキャンプ、メディテーション、ボーダーコリーとの戯れ。



    新潟県出身、北海道育ち。仙台と名古屋のテレビ局でニュース番組の報道記者として働く。司法、行政、経済など幅広い分野で、取材、撮影、編集、リポートを担い、情報を「正しく」「迅速に」伝える技術を磨く。

    「美しい宇宙」という言葉から名付けた愛娘を教育する中で、環境問題に自ら一歩踏み出す必要性を感じ、FabCafeNagoyaにジョイン。「本質的×クリエイティブ」をテーマに、情報をローカライズして正しく言語化することの付加価値を追求していく。

    趣味はキャンプ、メディテーション、ボーダーコリーとの戯れ。



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