Project Case
2022.8.31
東 芽以子 / Meiko Higashi
FabCafe Nagoya PR
さあ、バイアスのない世界へ、飛び込もう。
止まることのないテクノロジーの進化。過去の常識が通用しなくなる時代への突入。こうした「未知」が、思考や態度を硬直させることが、しばしばある。
そんな心理状態=“現状維持バイアス”を打破すべく、FabCafe Nagoyaは、これから5回に渡ってワークショップを開催し、東海エリアの企業3社と、新時代に必要な「デザイン思考」やその「態度」に理解を深めていく”人材育成プログラム”を実施する。
第1回目は「価値の再定義」をテーマに、ワークを実践した。
- アイスブレイク「人間ビンゴ」
- インスピレーショントーク「ものづくりとごみづくり」
- アイデアプロトタイプ ワークショップ
- プロトタイプ発表・講評会
- ラップアップ
アイスブレイク「人間ビンゴ」
ワークショップに参加したのは、成形加工メーカー「名古屋樹脂工業株式会社」、建設会社「株式会社 淺沼組名古屋支店」、電材商社「田澤電材株式会社」の3社のメンバー。業種のみならず、技術研究者、事業開発者、販売担当者など、役職もそれぞれ。
しかし、ある、共通の「課題」を抱えている。
名古屋樹脂工業は、64年の歴史があり、樹脂シートの加工技術を用いて、店舗の看板や自動車関連部品などを製造している。受注生産を脱却する次なるアクションを起こすべく、社員の意識改革に取り組もうと、今回のワークショップにジョインした。
中堅ゼネコンである淺沼組は、昨年、建設残土をアップサイクルしたブロックなどを使い、名古屋支店をリニューアルした。今後も、環境に配慮したビジネスを実装していく構えだが、より“柔軟”な発想力を求め、FabCafe Nagoyaへ辿り着いたという。
今年で創業88年を迎える田澤電材は、岐阜市に本社を構え、大手電機メーカーなどへ電気設備資材を卸している。年々拡大するEC市場に脅威を感じているが、ワークでエクササイズした後に、新たな事業展開を企画したい、と意気込んでいる。
新しい時代と共に歩みを進めるべく、“現状維持バイアス”を一掃したい!そんな共通の思いを胸に、アイスブレイクのあと、ワークショップはスタートした。
インスピレーショントーク「ものづくりとごみづくり」/FabCafe Nagoya 斎藤健太郎によるサスティナブルな店内設計の解説
ワークショップ冒頭、FabCafe Nagoya店舗の天井の「梁」について、説明が始まる。「サーキュラーエコノミー」をクリエイティブに実装する、FabCafe Nagoyaを象徴するデザインだが…?
梁の材料は、大量生産に向かない飛騨の広葉樹の中でも「耳材」と呼ばれる“切り端”。端材をデザインに昇華させることができたのは、FabCafe Nagoyaが持つ「東海エリアの素材を無駄なく循環させたい」という“思い”、そして「サステイナブル×デザインをコンセプト」とした“ストーリー”があってのこと。
発想を活かして、何を“実現”したいのか。そこが、スタート地点だ。
ワークショップ/対話から始まり、アイデアを生み出していく
今回のワークショップでは、サーキュラーエコノミーへシフトすべく、広義の「循環」を“実現したいテーマ”に設定。
では、自分達ができる具体的アクションは何か?3チームに分かれ、ディスカッションが始まった。
しかし…
「経験上、100人中99人はリサイクル材を採用しない」
「JAS 、JISなど、建材には規格がある」
もっともである事実認識や長年の経験などが、自由な発想を阻む。だが、 実は、こうした局面こそ、ブレイクスルーに通じる最良のエクササイズの材料となる。
ロフトワーク クリエイティブディレクター 加藤修平が、あることを指摘した。
「…が、難しい」
「…だから、難しい」
何かが生まれそうな流れがあっても、そのアクションを実行不能と早々に“思い込ませて”しまう言葉が、“難しい”という形容詞。私たちは、ディスカッションのあちこちから聞こえてきたこの言葉を、「一度、禁句にしよう」と提案した。
この一言が、空気を変える。
ワークショップ/人へ説明するため、アイデアを簡単な図で記載
その後のペアワークでは、“ごみ”を“価値”に変えるためのアイデアフレームワークの実践を通し、アイデア出しやプロトタイピングを、「デザイン思考」のプロセスを取り入れて行った。
観察 共感 |
“相手の”困り事を解決する設定で、広い視点からインタビュー |
定義 着想 |
客観的に「本質」を見抜き解決策の方向性を決定し、アイデアを練る |
試作 | アイデアを形にする |
「難しい」を封印すると、不思議と手がよく動き、メモが増えた。そして、笑顔も見え始める。
ワークショップ/限られた時間内で、プロトタイプを作成する
皆、童心に帰ったかのように、色紙やモールなどを手に、試作=プロトタイプの制作に夢中になった。
プロトタイプに、完成度は求められない。あくまで、相手に解決策をビジュアルで伝え、評価を得るためのもの。まず手を動かし、アイデアを形にしてみることで「一歩」を踏み出し、“現状維持バイアス”を打破する「態度」を身につけることが目的だからだ。
ワークショップ/講評とフィードバック
そうして出来上がったプロトタイプは…
- 使用済みペーパータオルを圧縮し、再生紙化できるごみ箱
- お釣りの小銭を募金やポイント化できる自動販売機
- プラスチックごみからおもちゃ作りや自家発電できる3Dプリンタ
- 吸い殻やフィルターが吸収されるたばこホルダー
- 油汚れを吸収するロール式スポンジ
ワークショップ開始時の「難しい」という自己暗示から抜け出した参加者は、皆、高揚感に包まれていた。新しい価値は、こうしたステップを重ねた先にあるのかもしれない、と思わせる。
“最初は緊張したが、一緒に手を動かすことで、段々と打ち解けていった。次回からはもっと自分らしくチャレンジしたい。”
“子供のような目線が大切なのだと感じた”
”いろんな人の意見を受け入れることを、このプログラムを通して学んでいきたい”
(参加者のコメント)
「ゲームチェンジ」へ覚悟を決め、“現状維持バイアス”を外すためのワークショップ。第1回目終了後、そこには、確かな手応えを感じ安堵した参加者の笑顔があった。
変革の旅は、まだ、始まったばかりだ…!
〜第2回へ続く〜
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株式会社 淺沼組
建設会社
淺沼組の歴史は明治25年(1892年)、悠久の都「奈良」からはじまる。
以来、互いを尊重し、理解しあう「和の精神」、何事に対しても正直に、熱心に、独創的な考えを以て挑戦する「誠意・熱意・創意」の創業理念のもと、誠実な仕事が信用を生み、次の仕事に繋がる「仕事が仕事を生む」の精神に則り、神社仏閣や学校建築を通じ、培い、磨いてきた“技術”を礎に、人々の建物に対する想いに真摯に向き合う誠実なモノづくりの精神は、決して色褪せることなく、今もなお脈々と受け継がれています。「ヒト」からの発想で、深みと広がりのある人間環境、そして、次世代をも考慮した人間環境を提供します。
ASANUMAは「創環境産業」として、社会の発展、生活文化の創造に寄与します。淺沼組の歴史は明治25年(1892年)、悠久の都「奈良」からはじまる。
以来、互いを尊重し、理解しあう「和の精神」、何事に対しても正直に、熱心に、独創的な考えを以て挑戦する「誠意・熱意・創意」の創業理念のもと、誠実な仕事が信用を生み、次の仕事に繋がる「仕事が仕事を生む」の精神に則り、神社仏閣や学校建築を通じ、培い、磨いてきた“技術”を礎に、人々の建物に対する想いに真摯に向き合う誠実なモノづくりの精神は、決して色褪せることなく、今もなお脈々と受け継がれています。「ヒト」からの発想で、深みと広がりのある人間環境、そして、次世代をも考慮した人間環境を提供します。
ASANUMAは「創環境産業」として、社会の発展、生活文化の創造に寄与します。
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加藤 修平
株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター
ケープタウン大学サステナビリティ学修士。アフリカ地域での鉱物資源開発に伴う、周辺コミュニティへの影響調査をエスノグラフィ調査手法によって実施。また、同大学内Hasso Plattner Institute of Design Thinking (通称d-school)において、デザイン思考コーチとして学生、社会人の指導を行う。過去に携わった案件は、民間金融機関内にて、多部署横断型のチームを率いて新サービスの開発及び、デザイン思考の社内への浸透を促すためのプロジェクト等多数。
ケープタウン大学サステナビリティ学修士。アフリカ地域での鉱物資源開発に伴う、周辺コミュニティへの影響調査をエスノグラフィ調査手法によって実施。また、同大学内Hasso Plattner Institute of Design Thinking (通称d-school)において、デザイン思考コーチとして学生、社会人の指導を行う。過去に携わった案件は、民間金融機関内にて、多部署横断型のチームを率いて新サービスの開発及び、デザイン思考の社内への浸透を促すためのプロジェクト等多数。
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斎藤 健太郎
FabCafe Nagoya コミュニティマネージャー
名古屋における人ベースの土壌を育むためにコミュニティマネージャーとしてFabCafe Nagoyaに立ち上げから携わる。電子工学をバックボーンに持ち科学技術への造詣が深い他、デジタルテクノロジー、UXデザインや舞台設計、楽器制作、伝統工芸、果ては動物の生態まで幅広い知見で枠にとらわれない「真面目に遊ぶ」体験づくりを軸とした多様なプロジェクトに携わる。インドカレーと猫が好き。
名古屋における人ベースの土壌を育むためにコミュニティマネージャーとしてFabCafe Nagoyaに立ち上げから携わる。電子工学をバックボーンに持ち科学技術への造詣が深い他、デジタルテクノロジー、UXデザインや舞台設計、楽器制作、伝統工芸、果ては動物の生態まで幅広い知見で枠にとらわれない「真面目に遊ぶ」体験づくりを軸とした多様なプロジェクトに携わる。インドカレーと猫が好き。
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居石 有未 / Yumi Sueishi
FabCafe Nagoya プロデューサー・マーケティング
名古屋造形大学大学院 修了。卒業後、大学の入試広報課にて勤務。2021年2月 FabCafe Nagoya 入社。
美術館 学芸員インターンシップ、教育機関でのワークショップ・プログラム企画運営、取材・広報などの多岐にわたる業務で培ってきた柔軟性と経験を活かし、関わる人の創造力や表現力を活かせる環境づくりを行う。
FabCafe Nagoyaでは、クリエイターと企業・団体が共創する『人材開発プログラム』や『アイデアソン』『ミートアップイベント』などを企画運営しながら、FabCafe Nagoyaという空間の面白さを、より知ってもらうタッチポイント設計や店頭サービス開発を、日々行なっている。
好きな食べ物はいちご。ライフワークは作品制作。名古屋造形大学大学院 修了。卒業後、大学の入試広報課にて勤務。2021年2月 FabCafe Nagoya 入社。
美術館 学芸員インターンシップ、教育機関でのワークショップ・プログラム企画運営、取材・広報などの多岐にわたる業務で培ってきた柔軟性と経験を活かし、関わる人の創造力や表現力を活かせる環境づくりを行う。
FabCafe Nagoyaでは、クリエイターと企業・団体が共創する『人材開発プログラム』や『アイデアソン』『ミートアップイベント』などを企画運営しながら、FabCafe Nagoyaという空間の面白さを、より知ってもらうタッチポイント設計や店頭サービス開発を、日々行なっている。
好きな食べ物はいちご。ライフワークは作品制作。
バイアスを外す
「合同プログラム」
二期生募集中!
デザイン思考×社会課題
クリエイティビティあふれる、手触り感を大切にした実践的なワークを通し、未来の価値基準である「サーキュラー・エコノミー」や「ダイバーシティ」などについての理解を深め、組織の視座を高める合同ワークを開催しております。
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東 芽以子 / Meiko Higashi
FabCafe Nagoya PR
新潟県出身、北海道育ち。仙台と名古屋のテレビ局でニュース番組の報道記者として働く。司法、行政、経済など幅広い分野で、取材、撮影、編集、リポートを担い、情報を「正しく」「迅速に」伝える技術を磨く。
「美しい宇宙」という言葉から名付けた愛娘を教育する中で、環境問題に自ら一歩踏み出す必要性を感じ、FabCafeNagoyaにジョイン。「本質的×クリエイティブ」をテーマに、情報をローカライズして正しく言語化することの付加価値を追求していく。
趣味はキャンプ、メディテーション、ボーダーコリーとの戯れ。
新潟県出身、北海道育ち。仙台と名古屋のテレビ局でニュース番組の報道記者として働く。司法、行政、経済など幅広い分野で、取材、撮影、編集、リポートを担い、情報を「正しく」「迅速に」伝える技術を磨く。
「美しい宇宙」という言葉から名付けた愛娘を教育する中で、環境問題に自ら一歩踏み出す必要性を感じ、FabCafeNagoyaにジョイン。「本質的×クリエイティブ」をテーマに、情報をローカライズして正しく言語化することの付加価値を追求していく。
趣味はキャンプ、メディテーション、ボーダーコリーとの戯れ。