2025年1月、FabCafe Nagoyaで「菌糸でつくるマテリアルづくりワークショップ」が開催されました。このイベントは、環境に優しい未来を夢見る人たちが集まった、ちょっと特別な一日。菌糸というユニークな素材を手に取って、自分だけのプロダクトを作る体験ができました。
関連企画
展示:分解可能性都市 https://fabcafe.com/jp/events/nagoya/2025-decomposition-city-nagoya/
MycoDarumaを展示しており、この展示がきっかけでワークショップ開催に至りました。
イベント募集ページはこちら
https://fabcafe.com/jp/events/nagoya/250118_mycoworkshop/
菌糸は、キノコの根っこのような存在。自然界では有機物を分解して土を豊かにする「分解者」として活躍しています。さらに、植物や土壌をつなぐネットワークのような役割も果たしているんです。今回のワークショップでは、この菌糸を使ったプロダクトづくりに挑戦しました。
使ったのは、オオヒラタケというキノコ由来の菌糸。おがくずや麦芽、米ぬかといった材料と一緒に育てられたものです。この基材は他の菌が入り込まないよう滅菌されていて、菌糸が元気に成長できる環境が整っています。
この日のワークショップは、菌糸について知ることからスタート。自宅でさらに育てて仕上げるための準備や手順もしっかり学べる構成でした。
14:00-14:25 菌糸レクチャー
菌糸の特徴や可能性について講師が解説。軽くて強い、撥水性がある、環境に優しい…菌糸が持つ魅力がたっぷり語られました。
食パンのような菌糸ブロックを参加者のみんなで崩していきます。他の菌が混入しないように滅菌したゴム手袋の着用が必須です!
14:30-14:40 ものづくりの準備
提供された菌糸ブロックをほぐして、好きな型枠を選びます。この時点でワクワクが止まりません
シャーレの中にクッキー型を入れることで星型の穴を開けるようなワザも発明されていました。
14:45-15:35 ものづくり作業
選んだ型枠に菌糸を詰めていく作業です。クマの形をしたオブジェやシャーレ型のコースターなど、自由な発想で楽しめました。
持ち帰るために乾燥しないようにラップをした上から光が当たらないようにアルミホイルを巻きました。光が当たるときのこが生えてくることもあるそう。
15:40-16:00 案内事項の共有
自宅での育て方や乾燥方法を丁寧に説明。菌糸の成長を見守るのもこのワークショップの醍醐味です。
菌糸は、環境にやさしい未来を形作るヒントが詰まった素材。例えば…
- 断熱性と撥水性:熱を遮断する効果が高く、表面は撥水性があるので器や建材としても使えるかもしれません。
- 強度と軽さ:軽量なのに強度が高く、建築資材としての可能性も広がります。
分解性:使い終わった後に土壌微生物に分解されると、土壌をさらに豊かにしていきます。
色付していないダルマ(左)と色付されたもの(右)。MycoDarumaはFabCafe Nagoyaで開催していた展示「分解可能性都市」でも展示していました。
ワークショップでは、こうした特性を活かしたプロダクトがたくさん紹介されました。特に印象的だったのがだるま型の作品『MycoDaruma』。願いが叶った後、土に還して他の生き物の糧となり自然の一部に戻るという新しい考え方が提案されていました。
このワークショップを企画した岩沢エリさんは、「菌糸素材は、面白い!」と語ります。
「菌糸は、『きのこ』だから、自然界の循環の中でも分解者の役割を担い、死骸や落ち葉を分解してくれます。生分解性プラスチックなど、分解可能な素材の多くは、適切な分解をするのに手間がかかることが多い。でも、分解者そのもののきのこを素材として活用すれば、簡単に分解するだけでなく、他の素材の分解も手助けしてくれる可能性もある。また、菌糸が生長するのを見届ける時間があるのも楽しい。生きている素材ならではの楽しみ方ですよね。」
このワークショップを担当したのは、微生物の多様性を活かした都市づくりを進めるベンチャー企業「株式会社BIOTA」の代表、伊藤光平さん。「菌糸は自然からの贈り物を最後に自然に返す素材。そのプロセスには大きな可能性があります」と話してくれました。
参加者からも「菌糸が成長していく過程を見守るのが楽しみ」「環境に優しいものづくりのアイデアに感動した」という声が多数寄せられ、自然と未来を考えるきっかけになったようです。
ワークショップ後には、参加者同士がオンライングループを通じて菌糸の成長を共有し合う場も生まれています。「育てている菌糸がどんな風に成長するのか、お互いに報告し合えるのが面白い」「ワークショップが終わった後も、みんなで見守る時間が楽しい」という声もあり、単なるイベントに留まらず、コミュニティとしての広がりも感じられる取り組みとなっています。
企画者のエリさんも育成にチャレンジ!コメントでのBIOTAのみなさんからの手厚いサポートも。
FabCafe Nagoyaでも育成にチャレンジしていました!かなりきれいにできました。
3Dプリンターで作った自作の型に詰め替えて「菌」を作られる方も
菌糸を使ったプロダクトづくりは、地球にやさしいだけでなく、ものづくりの楽しさや新しい価値観を生み出します。FabCafe Nagoyaでは、今後もこうした実験的でクリエイティブなワークショップを続けていく予定。菌糸や微生物といった目に見えない存在を通して、持続可能な暮らしのあり方を考える機会を提供していきます。
菌糸の可能性は、プロダクトデザインだけに留まりません。建築、インテリア、農業、さらには都市づくりへと広がる未来も見えてきます。自然の循環とともに生きるライフスタイルは、これからどんな形で私たちの生活に根付いていくのでしょうか? これからの展開もぜひチェックしてみてください!
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伊藤 光平
株式会社BIOTA 代表取締役
慶應義塾大学卒業。高校時代から慶應義塾大学先端生命科学研究所にて特別研究生としてヒト常在菌のゲノム解析に従事。学部生時代には都市の微生物コミュニティのメタゲノム解析に従事。大学卒業後、株式会社BIOTAを創業し、微生物研究を主軸に建築・ランドスケープデザイン、素材開発によって微生物多様性を高める都市デザイン事業を行っている。個人では循環をテーマとしたスペキュラティブデザイン作品を制作・展示している。
慶應義塾大学卒業。高校時代から慶應義塾大学先端生命科学研究所にて特別研究生としてヒト常在菌のゲノム解析に従事。学部生時代には都市の微生物コミュニティのメタゲノム解析に従事。大学卒業後、株式会社BIOTAを創業し、微生物研究を主軸に建築・ランドスケープデザイン、素材開発によって微生物多様性を高める都市デザイン事業を行っている。個人では循環をテーマとしたスペキュラティブデザイン作品を制作・展示している。
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株式会社BIOTA
生活空間の「微生物多様性」を高め、健康で持続可能な暮らしを目指すバイオテクノロジーベンチャーです。環境マイクロバイオームのゲノム解析を基にした研究開発を行い、バイオインフォマティクスを用いた受託解析や共同研究を提供。さらに、研究成果を活かし、建築設計、ランドスケープデザイン、都市計画に関するコンサルティングも展開しています。
生活空間の「微生物多様性」を高め、健康で持続可能な暮らしを目指すバイオテクノロジーベンチャーです。環境マイクロバイオームのゲノム解析を基にした研究開発を行い、バイオインフォマティクスを用いた受託解析や共同研究を提供。さらに、研究成果を活かし、建築設計、ランドスケープデザイン、都市計画に関するコンサルティングも展開しています。
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岩沢 エリ
株式会社ロフトワーク Culture Executive/マーケティング リーダー
東京都出身、千葉市在住。大学でコミュニケーション論を学んだ後、マーケティングリサーチ会社、不動産管理会社の新規事業・経営企画室を経て、2015年ロフトワークに入社。マーケティングチームのリーダーとして、ロフトワークのコミュニケーションデザイン・マーケティング戦略設計、チームマネジメントを担う。2022年4月からCulture Executiveを兼任し、未来探索と多様性を創造力に変えるカルチャー醸成に取り組む。最近では、「分解可能性都市」をテーマに、生産・消費に加えて分解活動が当たり前となる都市生活へシステムチェンジするためのデザインアプローチを探究している。1児の母。
東京都出身、千葉市在住。大学でコミュニケーション論を学んだ後、マーケティングリサーチ会社、不動産管理会社の新規事業・経営企画室を経て、2015年ロフトワークに入社。マーケティングチームのリーダーとして、ロフトワークのコミュニケーションデザイン・マーケティング戦略設計、チームマネジメントを担う。2022年4月からCulture Executiveを兼任し、未来探索と多様性を創造力に変えるカルチャー醸成に取り組む。最近では、「分解可能性都市」をテーマに、生産・消費に加えて分解活動が当たり前となる都市生活へシステムチェンジするためのデザインアプローチを探究している。1児の母。
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FabCafe Nagoya
ものづくりカフェ&クリエイティブコミュニティ
デジタルファブリケーションマシンと制作スペースを常設した、グローバルに展開するカフェ&クリエイティブコミュニティ。
カフェという”共創の場”でのオープンコラボレーションを通じて、東海エリアで活動するクリエイター、エンジニア、研究者、企業、自治体、教育機関のみなさまとともに、社会課題の解決を目指すプロジェクトや、手を動かし楽しみながら実践するクリエイティブ・プログラムなどを実施。
店頭では、農場、生産者、品種や精製方法などの単位で一銘柄とした『シングルオリジン』などスペシャリティコーヒーをご提供。こだわり抜いたメニューをお楽しみいただけます。デジタルファブリケーションマシンと制作スペースを常設した、グローバルに展開するカフェ&クリエイティブコミュニティ。
カフェという”共創の場”でのオープンコラボレーションを通じて、東海エリアで活動するクリエイター、エンジニア、研究者、企業、自治体、教育機関のみなさまとともに、社会課題の解決を目指すプロジェクトや、手を動かし楽しみながら実践するクリエイティブ・プログラムなどを実施。
店頭では、農場、生産者、品種や精製方法などの単位で一銘柄とした『シングルオリジン』などスペシャリティコーヒーをご提供。こだわり抜いたメニューをお楽しみいただけます。
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FabCafe Nagoya 編集部
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