Event report
2024.4.29
一色寛登
FabCafe Nagoya アシスタントディレクター
fab meetup nagoyaとは
“Fab Meetup Nagoya”は、多種多様なバックグラウンドの人たちが、ゆるーくアイデアやプロジェクトをシェアするMeetupシリーズ。様々な”つくる”に関わる方たちにご登壇いただきショートプレゼンテーションを行います。
登壇者のルールはたった一つ、10分でプレゼンテーションすること。スライドを使っても、作品を見せても、体で表現してもOK。また、成果を発表するだけでなく、アイデアを発表して作る仲間を探すなんていうのも大歓迎です。
気軽に参加できる、初めての方も大歓迎のイベント。ドリンク片手に、異分野との交流を楽しみませんか。
トークダイジェスト
イントロダクション
“新しいアイデアを思いつくにはどうしたらいいのか?”
その答えの肝となる物事の見方として、既存の正解の枠ではない、別のありうるかもしれない正解の枠に目を向けるという考え方があります。
今までにはなかった正解の枠を見つけ、新しいアイデアの種を生み出す。
その一つの手段である産学連携について、FabCafe Nagoya斎藤から説明がありました。
今回のmeetupでは、IAMASの地域連携・産学官連携の事例から「冴えたアイデアの種のみつけかた」を根掘り葉掘り聴いてみました!
IAMASってなに?
まず、鈴木学長からIAMASの全体像や特徴についての説明がありました。
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鈴木 宣也
情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] 学長・教授
1969年東京生まれ。情報通信技術を用いたメディアやプロダクトに関するプロトタイプ制作とそのインタラクションデザインあるいはサービスデザインを研究対象とする。アート、デザイン、工学などの複合領域を横断する活動と、それらの展示運営なども実践。
”三人 三脚”が Prix Ars Electoronica 96 入賞、”本阿弥光悦マルチメディア展示プロジェクト”がマルチメディアグランプリ2000展示イベント部門最優秀賞など。
1969年東京生まれ。情報通信技術を用いたメディアやプロダクトに関するプロトタイプ制作とそのインタラクションデザインあるいはサービスデザインを研究対象とする。アート、デザイン、工学などの複合領域を横断する活動と、それらの展示運営なども実践。
”三人 三脚”が Prix Ars Electoronica 96 入賞、”本阿弥光悦マルチメディア展示プロジェクト”がマルチメディアグランプリ2000展示イベント部門最優秀賞など。
IAMASとは、「科学的知性と芸術的感性の融合」を建学の理念として、総合的な知性を探究し、新しい文化を提案する岐阜県立の大学院大学。専攻はメディア表現研究科の1専攻(博士前期課程[修士]+博士後期課程[博士])のみ。
自ら手を動かし、モノをつくっていく。そしてそのモノをつくる過程を通して、多分野・多領域を結びつけていき、その関係性から得られる「制作の知」を社会に醸成させていく方法を学べるそうです。
IAMASには色々なバックグラウンドや専門性を持った学生や社会人が全国各地から集まって来るそう。
卒業後は、大学などの研究機関や公共施設、民間企業に就職する方が多いが、起業する方も一定数いるとのこと。
NFTアートで有名な高尾俊介さん、食をテーマに様々な活動をされている平塚弥生さん、メディアアーティストの真鍋大度さん、データビジュアライズデザイナーの山辺真幸さんなど、様々な分野で活躍している人を輩出しています。
多分野の教員によるチームティーチングを行っており、1人の教員の専門分野だけでなく、複数の教員の専門分野を跨ぎながら研究できるのが特徴。また、学生1人1人にAdobeなど各種ライセンスが付与されたMac Book proの貸し出しも行っているほか、光ファイバーのネットワーク環境の整備、学生寮が教室の上(徒歩1分)にも新しくできるなど制作へのバックアップも手厚く行っています!
IAMASとはどんなことができるの?
次に、IAMASの学外諸機関との連携を担う産業文化研究センター(以下”RCIC”)のセンター長、赤羽先生に今年度実施された産学連携・地域連携プロジェクトのご紹介をしていただきました。
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赤羽 亨
情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] 産業文化研究センター長・教授
インタラクションデザインに焦点をあてて、
メディアテクノロジーを使った表現についての研究を行なっている 。また、メディア表現を扱ったワークショップ開発や、 その内容を共有するためのアーカイブ手法の研究にも取り組んでい る。主な活動に、「メディア芸術表現基礎ワークショップ」( 文化庁メディア芸術人材育成支援事業)「3D スキャニング技術を用いたインタラクティブアートの時空間アーカ イブ」(科研費 挑戦的萌芽研究)がある。 インタラクションデザインに焦点をあてて、
メディアテクノロジーを使った表現についての研究を行なっている 。また、メディア表現を扱ったワークショップ開発や、 その内容を共有するためのアーカイブ手法の研究にも取り組んでい る。主な活動に、「メディア芸術表現基礎ワークショップ」( 文化庁メディア芸術人材育成支援事業)「3D スキャニング技術を用いたインタラクティブアートの時空間アーカ イブ」(科研費 挑戦的萌芽研究)がある。
岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(以下”空宙博”)との共同研究プロジェクトでは、子ども向けのワークショップ「ジュニア宇宙博士認定講座」のトータルデザインをRCICが担当したとのこと。実際の展示物にARを重ね合わせることで展示内容を拡張し、学習効果を高めることを目的にしたコンテンツの作成や、卒業生のデザイナーと共同で、プログラムに沿った修了証のデザインなどを行なったそうです。
衛星の太陽光パネルに採用されているミウラ折りを模したデザイン
地域連携では、大垣市と「イアマスこどもだいがく」を開催し、遊びを通じてプログラミングについての学びを深める体験の提供を行なったそう。また、岐阜市とはメディアコスモス(岐阜市立中央図書館)に設置する屋外用のメディアラボを、市民ワークショップを通して制作したそうです。この事例では、在学生の他、卒業生が共同でワークショップの運営を行い、ワークショップで出たアイデアの種を元にした実物の作製まで実施したとの紹介がありました。
産学連携では、東京コンピュータサービス株式会社と行なった、ポスターにスマートフォンをかざすだけで音声案内が流れる音声AR技術の開発事例や、IAMAS独自のアイデアスケッチ手法を活用し、新商品や新企画の開発に取り組んだ三菱鉛筆株式会社との事例を紹介していただきました。
IAMASの産学連携・地域連携の特徴は、様々な分野で活躍している卒業生もプロジェクトに参画してくれる点だといいます。今後はさらに卒業生とのネットワーク構築に力を入れ、連携を強化していくそうです。
IAMASは教育研究活動の理論を周知しながら、研究成果を地域の発展に活かすことを求められており、県内外の企業、自治体、教育機関、非営利団体、地域コミュニティなど、さまざまな団体との連携を模索しているそうです。興味のある方は、ぜひIAMASのRCICへご相談ください!
RCIC産学連携お問い合わせフォーム(https://www.iamas.ac.jp/rcic/contact/)
IAMASはどうやってアイデアを形にするのか?
最後に、IAMAS卒業生でユニークな事業展開をする木村さんから、アイデアを形にする方法について、実際に行われている事業での経験に基づきながらお話をしていただきました。
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木村亮介
株式会社GOCCO. 代表取締役
1979年名古屋出身、2006〜2007年に中国からアジア、インド、中東、ヨーロッパ、北米、アフリカとバックパッカーとして夫婦でさすらう。帰国後IAMAS入学、在学中に株式会社GOCCO.(ゴッコ)を岐阜県大垣市に設立。「楽しさぞくぞく開発中」をコンセプトに、いろいろなものづくり事業を展開。
GOCCO.のプロジェクトでは、バルーンを使った成層圏への取組み事業、リラックスをテーマにしたSNSの開発運営などたくさん。
1979年名古屋出身、2006〜2007年に中国からアジア、インド、中東、ヨーロッパ、北米、アフリカとバックパッカーとして夫婦でさすらう。帰国後IAMAS入学、在学中に株式会社GOCCO.(ゴッコ)を岐阜県大垣市に設立。「楽しさぞくぞく開発中」をコンセプトに、いろいろなものづくり事業を展開。
GOCCO.のプロジェクトでは、バルーンを使った成層圏への取組み事業、リラックスをテーマにしたSNSの開発運営などたくさん。
まずは、GOCCOってどんな感じの会社なのかという紹介から始まりました。「絵に描いた餅って言葉があるじゃないですか。この餅を描く人たちがGOCCO。アイデアってまずは絵に描いた餅から始まる」と木村さん。
アイデアを形にした産物の一つとして、実際に事業を行なっている成層圏へものを飛ばすプロジェクト「shuttleD」の説明がありました。
「アイデアって形にしなきゃ意味ない。絵でいうと、もちだけじゃ意味ない。なんとかかんとかどうにもこうにも、もちを形にするしかない。」
そんな思いで、「空をつかう。宇宙を拓く」というコンセプトで始まったプロジェクト。アイデアを形にする方法として、実現性と事業性の観点が大切とのこと。それを考慮し、どんなものを飛ばすのかを考えているそうです。
大学と共同プロジェクトで成層圏の微生物を捕獲するプロジェクトから、人気youtuberからの依頼でマクドナルドのバリューセットを飛ばしたり、テレビ番組の企画で干物を飛ばしたりすることも。
打ち上げをするごとに機体の改良を行い、ハブと呼ばれるモノを入れる容器部分の機能を向上させ、色々なことができるように。ビール酵母を成層圏に運び、その酵母を使ってビールを作ってみたり、発酵茶から抽出した乳酸菌を成層圏に打ち上げ、その菌から晩茶を作るなど、新しい食体験を追求していく試みも実践しているそうです!
トークセッション
アイデアはどこから生まれるのか?
トークセッションでは「アイデアの源泉はどこにあるのか」というテーマで登壇者のみなさんからお話を伺いました。
やるしかない
成層圏にiphoneやipadを打ち上げ、撮影する実験をしていた大学時代の先輩からの「iphoneない?」との一言から始まったプロジェクト。
「会社でやっている以上、給料を払わなければいけないので、やれないかもしれないけど、ガンガン営業する。そうすると面白いねっといってもらい、テレビ系から打ち上げていくようになって、仕事になっていった」と木村さん。
仕事にする以上は絶対に成功させなければいけない。やるしかない。そんな思いでブラッシュアップを重ね、今まで進んできたそう。まずは、アイデアの源泉を探るために「shuttleD」が生まれた経緯からスタート。
できる人を巻き込む
やるしかない状況で事業を実現させてきた木村さん。
一方で、「僕なんて、ほんと全然ダメダメ。何もできない。」「他にできるすごい人がいて、そういう人と繋がって一緒にやると全然違うレベルに実現性が高まる。自分ができなくても全然良くて、できる人を探す。」
また、「IAMASは学生も先生もバックグラウンドや専門性が違う人だらけ。違う人たちがお互いにリスペクトしあう環境がIAMASにはあった。」とのお話がありました。
どうやら、他者を尊敬し信頼する関係や環境がアイデアを生み出すきっかけになりそうな予感。
そんな流れで、IAMASの先生方へ、リスペクトしあう関係性の育み方を探ることに。
リスペクトしあう関係性を育む
鈴木先生から「IAMASができた当初は授業さえもどうすればいいのかわからなかった。教員の専門領域がアートやデザイン、工学などの異なる分野だったため最初は話が全然通じなかった。しかし、毎週日を跨ぐまで会議をしていくうちに、だんだんお互いがどういう状態なのかわかるようになった。」とのお話。
このような経験を元に、IAMASでは学生が入学してからはじめに”お互いにうまく対話ができる状態にする”といったことを大事にしているそう。お互いのバックグラウンドや専門分野の違う状況で、初めは意見の衝突が起こることも。しかし、どのような共通言語を使えば相手に伝わるのかといった姿勢を持って対話を行うことで、お互いの共通言語が形成され、アイデアを提供し合う関係がだんだん育まれていくとのお話がありました。
デザインの本質を問う産学連携の形
話は少し変わり、連携をする上でのIAMASが心がけている姿勢のお話に。
「(連携の)相談があって、希望を直接実現することになると意味がない。実際に希望されていることに対して、こういうものが本当は必要とされているのではないか?といった提案をする」と赤羽先生。
空宙博との共同研究の事例では、始まりは、修了証のデザインのみのお願いだったそう。そこから、ワークショップのそもそものデザイン関係を見直すところまでコミットできるのであれば一緒にやりましょうという提案を行い、自分たちの持つノウハウを駆使した学習機会の創出を行なったとのこと。この時IAMAS側には、「任せてもらえれば、結果でダメだと言われることはない」といった自信があったそう。
このように、アイデアを形にする前段階である「どんな問いを立てるのか?」そして、相手を巻き込んでいくことが大切といった視点のお話も伺うことができました。
編集後記
「冴えたアイデアの種のみつけかた」と題し始まったmeetup。
アイデアの種は異領域・異分野の組み合わせから生まれると感じました。一方で、異なるバックグラウンドや専門性を持った人はなかなか相容れないということも。
そこでアイデアを生み出したい人が持つスタンスとして、分かり合えなさを受け入れた上で、「相手の意見を尊重すること」と「自分ができないことは相手に信頼して任せること」が重要だと学びました。また、チームとして自分たちの創造力に自信を持つことが、プロジェクトを前に進めるためのエネルギーになるのだと感じました。
アイデアって形にしなきゃ意味ない。絵でいうと、もちだけじゃ意味ない。なんとかかんとかどうにもこうにも、もちを形にするしかない。-木村さん
アイデアは種で終わらすのではなく、種を発芽させ、茎や葉の成長を促し、実をつけさせる。
仲間や資金を集め、試行錯誤を繰り返しながら成長することで、アイデアの種が事業という実になるのだと思いました。一方で、実を収穫するには時間がかかり、すぐには結果がでないことも。
「桃栗三年柿八年」といいますが、時間をかけ、ゆっくりと美味しい価値のある実を育てる姿勢と自信を、もどかしさを感じながら持ち続けることも大切だと学びました。
アイデアの種が大きな実になる可能性を高める一つの手段として産学連携があります。
また、FabCafe Nagoyaもアイデアの種探しから、実をつけるまで、様々なお手伝いができます。コーヒーを飲みに、気軽に尋ねてみてください!
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一色寛登
FabCafe Nagoya アシスタントディレクター
名古屋市出身。九州大学大学院統合新領域学府ユーザー感性学専攻 修士課程に在籍
「まちを楽しむ人を増やす」そんな想いをもとに、ヒトとマチを結ぶ場所や仕組みを研究しています
なんだか楽しそうな場所だなっと思い、最近FabCafe Nagoyaに入り浸るようになりました名古屋市出身。九州大学大学院統合新領域学府ユーザー感性学専攻 修士課程に在籍
「まちを楽しむ人を増やす」そんな想いをもとに、ヒトとマチを結ぶ場所や仕組みを研究しています
なんだか楽しそうな場所だなっと思い、最近FabCafe Nagoyaに入り浸るようになりました