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2022.1.25
FabCafe編集部
FabCafe Globalと株式会社ロフトワークが主催するグローバルクリエイティブアワード「YouFab Global Creative Awards 2021」(以下、YouFab 2021) は、最終審査結果を発表しました。
2012年にFabCafeに集うクリエイター向けのコンテストとしてスタートした「YouFab Global Creative Awards」は、クリエイターと社会が繋がるグローバルなプラットフォームを目指すアワードです。第10回目となるYouFab2021では、審査委員長に伊藤亜紗氏(東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長)を迎え、“民主的なものづくりと私たちの実験”を意味する「Democratic experiment(s)」をテーマに世界中から作品を募りました。
2021年8月1日から10月31日までの応募期間中に、過去最多の335作品(26ヶ国)応募があり、伊藤亜紗氏、編集者・キュレーターの塚田有那氏、オランダを拠点に活動するアーティストネットワークCascoland、東アフリカのDJ カンピレ・バハナ氏による審査を経て、グランプリ、学生賞、特別賞「Panasonic Prize」など19点の受賞作品が選ばれました。
グランプリは、異例の2作品同時受賞となりました。これからの民主的なものづくりには、人間レベルの視点、非人間レベルの視点の二つが必要不可欠だということが、審査会で結論づけられたためです。
ラテンアメリカの都市部におけるジェンダーバイオレンスに対する抗議を鮮やかに増幅させる「Public Voice」と、無機物や有機物といった人間以外の存在との関係を結び直すヒントを与えてくれる「the Museum of Edible Earth」が、二つの視点を体現する作品としてグランプリを受賞しました。
作品名:Voz Pública (Public Voice)
作家名:Dora Bartilotti(Mexico city, Mexico)
ラテンアメリカの都市部におけるジェンダー・バイオレンスに対する抗議の声を増幅させようとする参加型アート作品。3つのパートから構成されています。
1つ目はオンライン参加型プラットフォームで、個人によるジェンダー・バイオレンス体験談が匿名テキストで共有されます。2つ目は、音声合成装置によってストーリーに「声を与え、増幅させる」電子テキスタイルで、公共空間における物理的な存在感を示しています。そして最後に、「The Textile Rebellion」と名付けられた一連のラボラトリーでは、街頭でのパフォーマティブなアクションを通じて、これらの電子テキスタイルの集団的な創造と活性化を図るとともに、和気藹々とした体験談への内省を可能とさせます。
作品名:the Museum of Edible Earth
作家名:masharu studio (Amsterdam, the Netherlands)
土を食べるという伝統の背景には何があるのか?食べられる土はどこから来るのか?土を食べることの利点と危険性は?私たち人間は、環境や非人間に対してどのような関わり方を確立しているのか?the Museum of Edible Earthは、地球上のさまざまな人々がさまざまな理由で食べている土のサンプルのコレクションを中核とする、分野横断的なプロジェクトです。見る者に環境と地球との関係を物理的に問いかけ、食と文化的伝統に関する知識を創造的思考で見直すよう促します。
https://www.youfab.info/2021/winners/the-museum-of-edible-earth?lang=ja
作品名:RHIZA
作家名:Noor Stenfert Kroese, Project technical supervisor: Laurent Mignonneau, Mycology supervisor: Taro Knopp (MNS-STWSTnode) (Austria)
Rhizaは異種間をつなげるもので、彼女の菌糸の上に観客が素足を置くように誘います。外界を感じる最大の器官である皮膚を通して、菌糸の電気的なコミュニケーションに接続することができるのです。このキノコと菌糸のハイブリッドな感覚は、触覚のインパルスを通して、あなたの体にフィードバックされます。
作品名:embrace
作家名:Silke Hofmann(Germany / UK)
embraceは、乳がんに罹患した女性、つまり乳房切除後に異なるサイズの乳房、片方だけの乳房、あるいは乳房のない状態で生活する女性のニーズからインスピレーションを得て、従来のブラに代わる思索的なブラジャーです。
その他のファイナリストについては、 こちらをご覧ください。
審査員長 伊藤 亜紗氏による総評
「つくること」は、いまおそらく逆風にさらされています。大量生産大量消費がもたらした環境への影響は深刻であり、製造業にまつわる搾取的な労働の問題も切実です。つくることは悪である。そんなふうに言われる時代が早々に来るかもしれません。
だからこそ、今回のYouFabアワードでは「つくること」の原点に帰りたいと思いました。本来、ものをつくるということは、人間社会の内部と外部の境界に位置する営みです。それを「製品」と呼べば人間的な経済活動の取引の対象になりますが、その素材は、もともとは誰のものでもなかったはずの自然に由来しています。
26の国と地域から集まった335の作品を審査するなかで見えてきたのは、この境界線上にある営みとしての「つくること」の可能性でした。人間社会という「中」の問題を、いかに「外」とともに考えるか。そのためには、私たちの便利な生活が何に依存してきたのかを自覚し、外へと排除してきたものたちの声を聞くことが必要です。それはまぎれもなく民主主義について考えることでしょう。
*一部抜粋。全文はこちら
YouFab2021では、特別賞として、同時エントリーが可能なパナソニック株式会社の主催による「Panasonic賞」が設置されました。YouFab 2021と同じ「Democratic experiment(s)」を踏襲したテーマで、社会やくらしをより良くする作品を募集。パナソニック株式会社 執行役員 CTO小川立夫氏、クリエイティブディレクター アリアネ・コエク氏、ロフトワーク 共同創業者 取締役会長 林千晶が審査を行い、照明やコンピューターなどのインターフェースに、地域の素材や伝統工芸を取り入れた作品「Home Grown」が受賞しました。
作品名:Home Grown
作家名: Emma Wright location (London, UK)
Home Grownは、私たちが現在使用している家電製品に代わる、持続可能な選択肢を提供する、バイオベースのeプロダクトのコレクションです。テクノロジーに使用される素材の調達やリサイクルに関するマインドフルネスの欠如にインスピレーションを受け、Home Grownはイギリスとアイルランドから地元の素材を調達し、伝統的な工芸技術を使って制作されました。
Panasonic 特別賞 審査員長 小川立夫氏コメント
人間が、生きていくためにエッセンシャルなものは何か?
人にとってなくてはならないものは、エネルギーと水、そして食糧がある。さらにそれらと密接に関連し、見えないものも含めた様々な世界とつながっている。当社もその領域でものづくりをしており、エッセンシャルな領域であるからこそ、実装への社会的責任も大きい。つまり、当社は「人間の」社会とくらしを理想にしていくだけではなく、エネルギーや地球環境、動植物や微生物、さらに鉱物といった非生物といったステークホルダーとどのような関係性を結び、共生していくのか?という問いかけに直面していかなければならない。特別賞に集った168の作品が提示するアイデアやソリューションは、この問いかけに対する人類の叡智であり、作品に触れることを通じて、ものづくりの課題と責任、また同時に可能性とアイデアに溢れる体験であったように思う。PanasonicのCTOとして、ものづくりとの向き合い方にいろいろなヒントを頂くことができたとても幸運な機会だった。特別賞に応募頂いた方や関係者全ての方々に感謝申し上げたい。
授賞式および審査員と受賞者を交えたトークセッションを開催いたします。
- 日時
2022年3月17日 18:00〜20:00 (予定) - 会場
オンライン開催 - 登壇者
審査員、受賞者、YouFabアワードチェアマン / 福田敏也
詳細は、後日YouFab2021 Webサイトにてお知らせします。
本年のテーマ「Democratic experiment(s)」に基づき、受賞上位作品を中心とした展示を2022年春、都内にて開催します。
2012年にFabCafeに集まるクリエイター向けのコンテストからスタート。10年の歳月をかけ応募される作品の幅は大きく広がり、バイオテクノロジーからファッション、メディアアートまで、毎年世界各地から300点を超える多様な作品が応募されるまでに成長。国際的アワードとして成長を続けています。
パナソニックは、「事業を通じて社会の発展に貢献する」という創業以来の経営理念を体現したブランドスローガン「A Better Life, A Better World」のもと、多様な領域でさまざまなパートナーとともに事業を展開しています。事業を通じて、理想的なくらしや社会の実現、地球環境保護といったグローバルでの社会課題の解決に大きな貢献を生み出し続けることを目指しています。
オープンコラボレーションを通じてWeb、コンテンツ、コミュニケーション、空間などをデザインするクリエイティブ・カンパニー。グローバルに展開するデジタルものづくりコミュニティ「FabCafe」、素材の新たな可能性を探求する「MTRL(マテリアル)」、オンライン公募・審査でクリエイターとの共創を促進する「AWRD(アワード)」などのコミュニティやプラットフォームを運営。様々な才能と共創することで、幅広いクリエイティブサービスを提供します。
https://loftwork.com/jp/
FabCafeは、世界中に拠点を持つクリエイティブコミュニティです。人が集うカフェに、3Dプリンターやレーザーカッター等のデジタルものづくりマシンを設置。“デジタル”と“リアル”の壁を自由に横断し、未来のイノベーションを生み出します。地域のクリエイターやアーティスト、企業とともに、食、アート、バイオ、AIから教育まで、ものづくりの枠を超えたラボ活動も行っています。
https://fabcafe.com/
AWRD は、株式会社ロフトワークが運営する、クリエイティブなコンペティションやハッカソンを世の中に届けるプラットフォームです。プロジェクトを通して「主催者」と「クリエイター」をつなぎ、多彩なクリエイティブ・アワードや共創プロジェクトを展開します。
https://awrd.com/
ロフトワークについて
オープンコラボレーションを通じてWeb、コンテンツ、コミュニケーション、空間などをデザインするクリエイティブ・カンパニー。
グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材と向き合うクリエイティブサービス「MTRL(マテリアル)」、クリエイターとの共創を促進するプラットフォーム「AWRD(アワード)」を運営。世界中のクリエイターコミュニティと共創することで、幅広いクリエイティブサービスを提供します。
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