Column

2017.11.20

A New Scenery of Social Welfare テクノロジー×デザインから考える新しい福祉の風景 展示レポート

FabCafe編集部

今回FabCafe/MTRLでは、“2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展「超福祉展」”に連動して、テクノロジー×福祉で様々な課題発見、解決を目指したプロジェクトの合同展示を開催しました。その様子をレポートいたします。

開催情報
展示タイトル:A New Scenery of Social Welfare
期間:2017/11/07(火)~2017/11/13(月)
場所:FabCafe Tokyo
https://mtrl.com/shibuya/events/anewsceneryofsocialwelfare/

今回展示に参加したプロジェクトは3つ。

福祉×デジタルファブリケーションで渋谷ならではの“プロダクト”をつくりだすインクルーシブデザインプロジェクト「SHIBUYA “To Go”」、小さな小さな課題(XSサイズの課題)から出発して解決するアイテムをつくる「XS Design Project」、Technology × Cultureで人機一体の新たなスポーツを生み出し、誰もが楽しめる場で多様な“人の壁”を超えてきた「超人スポーツ協会」による人々の壁を超えるための「超福祉スポーツ共創プロジェクト」。

写真を織り交ぜつつ、プロジェクトごとに紹介をしていきます!

 

SHIBUYA “To Go”

渋谷で暮らし、はたらく障害のある人の描いた文字や模様を、渋谷を拠点に学ぶ学生がデザインし、パブリックデータ化する「シブヤフォント」プロジェクトのリーディングプロジェクト「SHIBUYA “To Go”」
本年度は、グラフィックデザイナーのライラ・カセム氏のディレクションにより、渋谷区の福祉作業所を利用する障害のある方、桑沢デザイン研究所でデザインを学ぶ学生が「渋谷の街並みを切り取る」をテーマに共創しました。

プロジェクト詳細はこちら
福祉×デジタルファブリケーションで渋谷ならではの“プロダクト”をつくりだす
インクルーシブデザインプロジェクト「SHIBUYA “To Go”」

 

CREATORS BOOK #SHIBUYA FONT / PATTERN

本プロジェクトで作成したフォントやパターンをブック形式にまとめました。
通りの名前やラブホ街、横断歩道…様々な視点や切り取り方で「渋谷」をフォント、パターン化しています。

どうしてデータ化する必要があるの?
作業所で行われてきた従来の手工芸的なものづくりは、「作品そのもの」を売ることができる一方で、
生産数——
つまり受注できる数に限りがあります。1つを作って1つを売る。
しかし、データはその限りではありません。
一つのデータを多くの人が利用し、また、それを素材に新たなものを作ることが出来ます。

どこでダウンロードできるの?
シブヤフォントサイト内にて「“ワンコイン”のソーシャルアクション」としてダウンロードが可能です。
使用料は渋谷区の障害者支援施設への支援金として活用されます。ONE COIN DOWNLOAD  2017 model

 

SHIBUYA FONT FabCafe version

SHIBUYA FONT FabCafe version パターン(一部)

FabCafeでは既にオープンデータのものづくりに取り組んでおり、「何か作ってみたいけど、絵を描いたりデザインするのは苦手」という方でも気軽に楽しめるよう、クリエイターのデザインパターンを利用して加工ができるサービスがあります。もちろん、パターンが利用されればクリエイターには使用料が支払われます。

今回生み出されたフォントやパターンも、オープンデータ化しどなたでも利用が可能になるよう準備中!あわせて、クリスマスキャンペーンの一環としてiPhoneケースの展示販売も行う予定です。今まで福祉施設の製品と縁遠かった人も、FabCafeを通じて作品を手に入れることができるようになります。どれも素敵な柄なのでお楽しみに!

 

48時間デザインチャレンジ プロトタイプ作品

「SHIBUYA “To Go”」プロジェクトで開催した渋谷のお土産をつくり出す「48時間デザインチャレンジ」で試作された作品。48時間デザインチャレンジとは、より多くの人に届き活用されるデザインの提案をデザイナーとデザインパートナーが協働し、コンセプトからプロトタイプまでを作りあげる短期間型ワークショップ。

障害のある方や障害支援者といった、普段はデザインの商品やサービスをつくるにあたって除外されがちな人たちがデザインパートナーとして参加し、桑沢デザイン研究所の学生と共創し仮想ブランドを設定。様々なテーマに沿って製品を制作しました。

 

48時間デザインチャレンジで生まれたブランドとプロトタイプ作品

wonder

利用者さんの描いた絵を元に、「原石」をテーマにアクセサリーを制作。
また、普段関わりのない人たちとの「繋がり」もキーワードとしています。
ブローチが作れるFabCafeでワークショップを企画中。

CAMM(カム)

渋谷の「なんでもウェルカム!」な雰囲気をテーマに、キッチンウェアを制作。
文字のようで文字でないでたらめフォントや、様々な人が行き交う様子をイラストにし、パターンとして起こしています。

reconstruct

渋谷といえば工事。壊し、再構築されていくさまをテーマに施設利用者の方が描いたイラストを再構築しています。

CMY


CMYとは色の三原色(シアン・マゼンダ・イエロー)のこと。
原宿の個性豊かな人びとを色の重なりに例え、テーマにしています。アクリルにUVプリントをしました。

MUMU

一見普通の可愛い柄。
実はこれ、よく見ると…ラブホ柄!渋谷に暮らしているからこその視点で渋谷を切り取りっており、
ラブホ柄以外にも「ムムッ?」となるデザインが楽しめます。

Qtto(キュット)


渋谷の通りの名前を渋谷の地図に当てはめたり、モヤイ像をダイナミックに描いたり。
旅先で見つけたらついつい買ってしまうようなモチーフたち。

 

一人一人の個性を引き出すプロトタイピング

利用者さんの中には「絵を描くのは初めて」という方もいましたが、ライラさんの「創造能力を開花する8つの方法」やアドバイスを受けながら、一人一人の個性を引き出す工夫を重ねることでアート作品をつくりました。どのブランドも、「この作品をさらに活かすにはどんな製品作ればいいのか」という視点で製品を作っています。

48時間デザインチャレンジの様子はレポート記事(前編後編)や、動画からもご覧いただけます。
個人的には、内容が簡潔にまとまりつつ、渋谷区障害者福祉課 原課長をはじめとした関係者それぞれの思いが知れる動画がおすすめです!

 

XS Design Project

S,M,L,XLスケールではない、自分の手の届く範囲 ─ 自分の半径1mの世界(XS)から変えるためのデザインプロジェクト。
大きなスケールの社会課題は、解決には膨大な時間と予算がかかり、終わりの見えないプロジェクトになりがち。一方、もっと日常に目を向ければ、今解決できることがたくさんあります。XS Designプロジェクトは、「XSスケールの視点」で課題を捉え直し、デザインとテクノロジーを使って「解決ツール」をつくり出します。

今回のテーマは「電車の中の悩みごと」

2017年4月6日に開催したハッカソンでは、「電車の中の悩みごと」をテーマに、妊婦や病気を持った人たちと実際に対話を繰り返しながら、XSスケールのプロトタイプをつくるハッカソンを開催。小さすぎて見過ごされたり後回しにされてきた電車の中の悩みごとに目を向け、FabCafe/ MTRLの設備を使ってアイデアを形に落とし込むところまでを行いました。

 

ゆらんこ

最終的に形になった作品がこちら。ハッカソンで赤ちゃんのいるママからの発言をきっかけに生まれたゆらんこ。
赤ちゃんや大きな荷物を持ち込んで大変な思いをしている人向けに、電車のつり革を使ってハンモックのように重さを分散するアイデア。

ツルカワ

もうひとつはこちら。ハッカソンに参加していた乳がん患者の女性と、赤ちゃんのいるママ。双方から「吊革を持つのが疲れる」「疲れている時は、なにかにもたれかかりたい」という意見が……。そこで生まれたのが吊革に引っ掛けて使えるマイ吊革「ツルカワ」。
長さも調整できるので、自分のちょうど疲れない位置に吊革をセットしたり、荷物をかけたり、小さな子どもがつかまることもできます。

動画からハッカソンの様子ご覧いただけます。
XS Designの活動はmediumFacebookで随時更新されていくので、ぜひフォローしてくださいね。

 

超福祉スポーツ共創プロジェクト

Technology × Cultureで、これまでに20を超える人機一体の新たなスポーツを生み出し、誰もが楽しめる場で多様な”人の壁”を超えてきた”超人スポーツ”は、スポーツ業界にとどまらずさまざまな業界から注目が高まっています。
今回は誰もが等しく楽しめる、新たな超福祉スポーツ開発の場を作り、11/11(土)には渋谷駅構内13番出口付近広場、原宿の丘にて体験会を実施しました。今回のプロジェクトで生まれた作品はこちら。

 

Gravity 0

重力から肉体を解き放つためのウェアラブルスーツを身にまとい、身体性を伴った拡張現実スポーツ。肉体にセットした駆動装置を操作して世界を自由に飛び回る体験が可能です。いつもの見慣れた地面や天井がGravity0のスクリーンとなります。雲海や海面などの映像が映し出されたら、SetupOK。時には大空をはばたく鳥になって、時には大海原を自由に泳ぐイルカになって現実を拡張しながらプレイ可能です。

Goon


Goon Ballは既存のホバーボードをハックして、手軽にゴーカートのような体験を手に入れることが可能な装置に乗り込み競う新時代の球技です。開発された”Goon”を操作して、ボールを奪い合い、タッチダウンを狙います。

トコトコ心拍レース

「トコトコ心拍レース」は、誰もが持つ「心拍」を用いた、誰でも参加出来る競争型の競技です。プレイヤーは、指に心拍センサーを装備し、自分の心拍数でロボットカーを制御します。心拍数が自分の平均値よりも上がればロボットカーの速度が上がり、心拍数が下がれば速度も下がります。コースに合わせてロボットカーの速度を上手く制御して、他プレイヤーより先にゴールを目指す競技です。

まとめ

「デジタルものづくり」と「福祉」——なんだか規模が大きくて難しそう、他人事のように思えますが、本展示作品は FabCafe Tokyo や FabCafe MTRLで生まれ、制作されたもの。人と人の対話から、カフェの片隅で制作されたものたちなんです。FabCafeのデジタルファブリケーション機材を使うことで、ロット数を気にせずに「まず手を動かすこと」が可能になりました。大量生産によってではなく、一人一人の暮らしに沿ったものづくりが少しずつ、でも確かにこれからの渋谷の景色を変えていくのかもしれません。

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  • FabCafe編集部

    FabCafe PRチームを中心に作成した記事です。

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