Column

2026.2.12

ネオンを「絵の具」に、現象と認知の境界を描く|市川 大翔

FabCafe Tokyo Creative Residency「AI-ダダ」アーティストインタビュー

FabCafe編集部

FabCafe Tokyoを拠点に次世代のクリエイターが滞在制作を行うプログラム「Creative Residency」。2026年1月、アーティスト 武信朱璃さんと市川大翔さんを迎え、成果展「AI-ダダ|織り交ざるランドスケープ」を開催しました。

デザイナー出身の市川さんは、技術的な制約の多いネオンをあえて自らのメディウムとして選び、職人的な手わざと最新のテクノロジーを融合させています。彼が、今回のプログラムで制作した新作《False Texture》で問いかけたのは、デジタルとリアルの境界にある「現象の連続性」です。AIやCGが演算で再現する表層と、現実の光が持つ物理的な奥行き。その対比から、私たちが何をもって「実存」を感じているのかを紐解きました。アートと技術、そして知覚の仕組みが交差する、市川さんの独創的な視点に迫ります。

 

 

―― 表現の手法としてネオンを選んだ理由は何でしょうか?

ネオンで制作しようと決めた理由は、一番は好奇心からでした。ネオンを扱う中で、デザイン、アート、科学技術、工芸といった多様な分野を包括的に探求できるその奥深さに惹かれ、表現の道へと進むことになりました。

もともと私はデザイナー出身ということもあり、お題や制約がある中での表現が得意でした。ネオンは看板(サイン)として広く利用されていた歴史がありつつ、同時に素材的にも工学的にも非常に制約が多いメディアです。その制約を乗りこなしつつ、自分の描きたいものを描くための「絵の具」として転用できる。その職人とアーティストの両義性が、自分には非常に合っていると感じています。

 

―― アーティストとして活動を続ける原動力を教えてください。

アーティストとして活動する原動力となっているのは、自分自身のオリジナリティを持ちながら、別の視点やオリジナリティを探求している表現者の方々に出会えることです。思考と表現を循環させている人たちに興味があり、自分も同じ表現する立場として関わっていきたいと考えたことが、今に繋がっています。

 

―― 作品制作する中で大切にしている考え方はなんですか?

ネオンは100年以上の歴史があり、実は、コンテンポラリーアートの世界でも使い尽くされてきた素材とも言える。だからこそ、「今この時代に自分が表現する意味」を常に考えています。

特に、デジタルやAIが密接になる現代だからこそ、あえて物質感や手わざの質感をクローズアップすることに意味があるんじゃないかと。例えば、ネオン管の表現を拡張するために他のガラス技法を組み合わせるほか、真空技術や高電圧といった科学的原理を深く理解するために機材から自作するなど、実験的なアプローチを積極的に取り入れています。

 

―― ネオンというマテリアルへのこだわりを教えてください。

ネオンには質感の魅力、そして現象の連続性があります。透明なガラスの中にガスがあり、そこで光が放電しているという多層性も魅力です。

これまでの作品では「現象の標本」としてネオンそのものを主役にしてきましたが、最近は他のメディアとの組み合わせにも挑戦しています。エンジニアリングの観点から職人として素材に向き合う「作る」視点と、それをどう新しい表現に昇華させるのかという「使う」視点の両方を大切にしながら模索しています。

 

―― 今回の作品に込めたメッセージを教えてください。

まずはネオンの光を直感的に感じてもらいたいです。その上で、私たちの「知覚」が何によって成立しているのかを問いかけたいと考えました。

私は、人間が美しさや安心感を感じる背景には「現象の連続性」があるという仮説を立てています。今作では、CGや生成AIが作る演算による仮想的・表層的な連続性と、現実のネオンが持つ物理的な連続性を対比させています。

CGは演算によって連続性を再現しようとしますが、AIは必ずしもロジックとして連続性を理解しているわけではありません。デジタルとリアルが交差する表現を通じて、私たちが「何をもって実存を感じているのか」をメタ的に感じ取ってもらえれば嬉しいです。

―― 今回の滞在は、ご自身の創作にどのような刺激を与えましたか?

FabCafe Tokyoという場所に集まる人の熱量に、とても刺激を受けました。渋谷の喧騒から少し抜け出た場所にあるクリエイティブなカフェが、どのような機能で発展しているのかをミクロに体感できたんじゃないかと思います。

また、共にレジデンシーを過ごした武信さんとの出会いも大きかったです。異なる「認知の仕方」を持つ方々と過ごし、生身のフィードバックをもらえたことで、SNSなどのデジタル空間上だけでは得られない「世界との繋がり」を体感できました。

 

  • 市川大翔

    アーティスト / デザイナー

    1991年、東京生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。
    主なメディウムであるネオン管を、特有の放電発光を内包する「現象の標本」としてとらえ、外形を形作るガラス工芸から、真空や電気などの科学技術のエンジニアリングまで一貫して手がける。近年の受賞歴に、2024年 / SICF25 EXHIBITION部門 廣川玉枝賞、2024年 / Brillia Art Award 2024 入選。

    1991年、東京生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。
    主なメディウムであるネオン管を、特有の放電発光を内包する「現象の標本」としてとらえ、外形を形作るガラス工芸から、真空や電気などの科学技術のエンジニアリングまで一貫して手がける。近年の受賞歴に、2024年 / SICF25 EXHIBITION部門 廣川玉枝賞、2024年 / Brillia Art Award 2024 入選。

FabCafe Tokyo Creative Residency vol.3 参加アーティスト募集

デジタルとアナログを横断しながら、既存のジャンルにとらわれない表現に挑戦するアーティストを支援する「FabCafe Tokyo Creative Residency」第3回目のプログラムに参加するアーティストを募集。「AI-ダダ」をテーマに、多彩なコミュニティとの交流やデジタルファブリケーションを通して、新たな表現を探究する場を提供します。
https://fabcafe.com/jp/events/tokyo/fabcafe-Creative-residency-3/

提出期限は2026年3月1日23時59分です。
エントリーはこちらから
https://awrd.com/award/fabcafe-ai-dada-03

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  • FabCafe編集部

    FabCafe PRチームを中心に作成した記事です。

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