Column
2026.5.31
FabCafe編集部
AI Dada Vol.3|OUR Common Playground “わたしたち”の街を遊ぶ
FabCafe Tokyoを拠点に次世代のクリエイターが滞在制作を行うプログラム「Creative Residency」。2026年5月、アーティストDONG WENJUNさん、佐野 翠さん、森田祐輝さん、門田健嗣さんを迎え、「AI Dada Vol.3|OUR Common Playground “わたしたち”の街を遊ぶ」を開催しました。
―― 表現の道に進もうと決めた、きっかけは何だったのでしょうか?
大学まで18年間ラグビーをやっていましたが、ラグビーで怪我をした経験をきっかけに、自分が怪我をしたメカニズムを理解したいと思い、大学では脳神経科学の研究室に入り、見えない怪我をロジックで視覚化する研究をしました。
しかし、自分としては論文や講演、研究者同士の会話など、言語やデータを中心としたコミュニケーションで研究をしていくことに、どこか物足りなさを感じていました。 そんな時、慶應大学SFCで脇田教授のメディアアートの授業を受け、生体信号などをビジュアライゼーションする表現に出会いました。視覚表現や聴覚表現を通じて、人間の認知に働きかけることの面白さに気づき、作品作りを始めました。
ただ、一時期、映像という媒体が人の認知を操作していることに違和感を感じたことから、映像制作に取り組む意義を見失っていた時期もありました。でも今は、その頃の逡巡があったからこそ、人の認知や可能性をよりポジティブな方向へと広げることができるのではないかという発想に繋がり、インスタレーションや映像を中心にした作品制作を続けています

―― 普段はどのようなコンセプトを大切に、どんな手法で作品を制作されているのですか?
大きく2つの軸があります。まず、アートを志すきっかけとなったデータビジュアライゼーションから着想を得た、「見えないものを見える(知覚できる)ようにする」ことはずっと貫いています。そして、今一番大きなテーマとなっているのが「マッチョ性」です。
去年まではユニットで、脳神経科学の技術を使ったメディアアートなどを制作していました。その中で、自分たちが表現したいことを突き詰めた結果、スポーツを題材にすることに行き着きました。現在は、ボディビルをテーマに作品を作っています。
最適化や均質化が進む社会の中で、なぜ自ら評価されることを渇望し、表現しようとするのか。その見えない行動規範やそこに宿る規律を、ボディビルを通して顕在化させたい。
また、今回の作品のテーマでもある渋谷の街の風景や再開発のあり方にも、ある種の「マッチョ性」を感じています。消費されると分かっていても表現したくて真新しい電光掲示板の広告に出続けるモデルの存在や、人間が結託してより大きなビルを建てるという行為自体が、「強く見せたい」「成果を上げたい」という人間ならではのマッチョな行為に見えます。
―― 今回の作品に込めたメッセージを教えてください。
人間がAIとどう共存しているか、その根本的な関係性を見つめてほしいというのが一番のメッセージです。自分としては、知的探求心から、AIの進化も歴史の地続きとして捉えています。AIだけのSNSが登場して主体と客体が逆転するような状況もあるからこそ、主体と客体をはっきりさせた上で人間とは何かを追求していきたい。
また、現代ではデジタル技術によって「都合の悪いもの」を消すのが当たり前ですが、AIの浸透によってそれがさらに加速している。これまで社会の中で認知できていたものを、知らない間に認知できなくなっている側面があると感じています。そこで今回は、あえて「消しゴムマジック」で人を消しつつ、ボディビルダーが歩いている影だけを残すような、そこにいないようなものを入れる表現を取り入れています。
AIでものを消すという行為を通して、AIの使い方の前に、写真の概念や道具の使い方、人間の認知の仕方について考えるきっかけを提供できたら嬉しいです。
―― AIと作品制作をしてみて、いかがでしたか?
制作においては、レーザーカッターで透明のアクリル板に絵を彫刻しています。実際にマテリアルに触れながら削り方の薄さを調節するなどの仕事は、人間にまだ残されている表現の一つだと感じました。そうした可能性を追求しつつ、ある程度の設計図を自分が描いた上で、AIを活用しています。

―― 今後の活動について教えてください。
表現は人間にしかできないものだと信じているので、一生作品をつくり続けると決めています。 芸術には芸術の限界があり、資本主義には資本主義の限界があります。会社を使って社会に自分の世界をインストールするような資本主義の中での表現と、個人的にスポーツやマッチョ性を通して人間とは何かを問い続ける芸術活動を、うまく使い分けながら共存させていきたい。
技術を使うことは誰にでもできるからこそ、ラグビーの経験など自分にしかしていない経験を元に、人間の深層にある問いを言語化して社会に投げかけていきたいです。
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森田祐輝
ラグビーの怪我を機に脳神経科学を経てメディアアートへ転換。テクノロジーによる社会の 急速な再編成のなかで、何が「当たり前」かを問い直す制作を、芸術と科学の交差点から行 っている。スポーツがもたらす規範と関係性を主題に映像・インスタレーションを制作する ほか、近年はDIG SHIBUYA 2026への参加など渋谷の都市変容をテーマとした作品も展開。 第29回岡本太郎現代芸術賞入選。東京藝術大学大学院在籍。
ラグビーの怪我を機に脳神経科学を経てメディアアートへ転換。テクノロジーによる社会の 急速な再編成のなかで、何が「当たり前」かを問い直す制作を、芸術と科学の交差点から行 っている。スポーツがもたらす規範と関係性を主題に映像・インスタレーションを制作する ほか、近年はDIG SHIBUYA 2026への参加など渋谷の都市変容をテーマとした作品も展開。 第29回岡本太郎現代芸術賞入選。東京藝術大学大学院在籍。

FabCafe Tokyo Creative Residency vol.3 参加アーティスト募集
デジタルとアナログを横断しながら、既存のジャンルにとらわれない表現に挑戦するアーティストを支援する「FabCafe Tokyo Creative Residency」第4回目のプログラムに参加するアーティストを募集。「AI-ダダ」をテーマに、多彩なコミュニティとの交流やデジタルファブリケーションを通して、新たな表現を探究する場を提供します。
https://fabcafe.com/jp/events/tokyo/fabcafe-Creative-residency-4/
提出期限は2026年6月1日23時59分です。
エントリーはこちらから
https://awrd.com/award/fabcafe-ai-dada-04
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