Column
2026.7.23
阪本 健吾
株式会社図図倉庫 Program Manager / Writer

JR福島駅から車で東へ1時間弱。飯舘村に辿り着いた御一行がまず訪問したのは、1,000㎡のホームセンター跡地をリノベーションした「環境と対話する実験基地」図図倉庫です。2日間にわたってメインガイドを務める代表の矢野淳が合流し、常設展示《環境世界を旅する》を丁寧にガイド。素粒子から宇宙まで、お客様をさまざまなスケールの環境世界へといざないます。
原発事故により、期せずしてさまざまな環境に関する観測のフィールドとなった飯舘村。人間と自然がいかなる共生関係を結んできたのか、結んでいくのか――思索の旅のはじまりにふさわしい視点を得た一同は、ここから地域をぐるりと巡っていきます。
腹ごしらえののちに向かったのは、避難指示解除後に村内で「飯舘牛」の復活をめざす肉のゆーとぴあ。京都での避難生活中にお肉屋さんで修行を重ね、畜産農家でありながら、精肉店をオープンさせました。

「肉のゆーとぴあ」山田豊さん(右奥)による解説
肉のゆーとぴあの特徴は、お肉を直接買うことができるということだけではありません。経産牛の放牧によって農地を荒れから守るなど、地域の環境をまなざしながら数々の試みを進めていらっしゃいます。ここでは店主の山田豊さんからお話を伺いつつ、お客様ご自身でその日の夕食のお肉を買い付けていただきました。

飯舘観測所 惑星電波望遠鏡のふもとで解説を聞く
次に訪れたのは、東北大学 惑星プラズマ・大気研究センターの飯舘観測所です。人里から離れ、街灯や人間活動による電波から影響を受けにくい飯舘村の地で、木星や太陽などの宇宙空間から届く電波を観測しています。大きな惑星電波望遠鏡を見上げながら、東北大学大学院理学研究科 准教授の三澤浩昭先生に解説いただきました。
宇宙で起きているさまざまな現象を掴むために、地表に降り注ぐ電波を捉え観測を続けている飯舘観測所。三澤先生のお話は、私たちが拠って立つこの世界に対する認識を拡張し、足元にある土と宇宙空間が不可分に繋がっていることを実感させるものでした。東北大学から駆け付けてくださった三澤先生、貴重なお話をいただき誠にありがとうございました!

東北大学大学院理学研究科 准教授 三澤浩昭先生
観測所をあとにした御一行は、「宿泊体験宿きこり」へのチェックイン。ご夕食は、飯舘村産黒毛和牛を中心とした鉄板焼きを楽しみました。お天気に恵まれ、満天の星空に見守られながらの夜の宴となりました。

肉のゆーとぴあで買い付けた和牛のステーキ
2日目は、希望者を対象とした「村民の森 あいの沢」での自然散策からスタート。このあとの行程で立ち寄る「研究者の測定小屋」で放射線を測るための資料を集めながら、森の案内人とともに朝のお散歩を楽しみました。
宿泊施設のチェックアウト後に立ち寄ったのは、周辺地域からも広く信仰を集めている山津見(やまつみ)神社です。オオカミ信仰で知られ、2025年には例大祭が新たな形で復活を遂げたことでも知られています。原発事故による避難のさなか、火災による社殿焼失という二重の苦難を乗り越えて復元されたオオカミの天井絵を眺めながら、この地で結ばれてきたヤマとヒトとの関係に思いを馳せました。

山津見神社の社殿で、オオカミの天井絵を見上げる
本殿は虎捕山(とらとりやま)の山頂にあり、希望者は山に登って参拝。この登山道=参道は、かつて源頼義が地元の凶賊 橘墨虎たちばなのすみとらを捕らえるべく、白狼に導かれたという伝説の舞台でもあります。参道の入口では、大阪・関西万博の会場からこの地に旅をしているオオカミベンチが私たちを迎えてくれました。

鴻池朋子《Animal Drawings》2025 を囲む一同
山登りを終えたら、山津見神社から程近い古民家田舎料理「気まぐれ茶屋ちえこ」で腹ごしらえ。ここから、認定NPO法人 ふくしま再生の会 の理事長 田尾陽一さんが合流し、同会が拠点としている「研究者の測定小屋」へ向かいます。

研究者の測定小屋にて、田尾陽一さん(中央)の解説を聞く
長年にわたる活動のなかで、農作物や環境中のさまざまな資料の放射線を測定してきたこの測定小屋。今回のツアーでは、あいの沢や虎捕山で採集したものの放射線量を実際に測りました。これまでの測定データも踏まえた解説によって、画面に表示される数値やグラフの背景にあるものが見えてきます。

同時に、2011年から継続的に活動している同会のあゆみや、これまでのさまざまな環境中の放射線測定に関すること、そして活動から生まれた新たな交流や挑戦などについて、田尾陽一さんからお話を伺いました。たくさんの興味深いお話、誠にありがとうございました!
地域住民と研究者、そしてボランティアたちが展開してきた草の根の活動に心を動かされた私たちは、飯舘村内を車で30分ほど南下。国による環境再生事業が進む長泥地区へ向かいました。

長泥地区にて
長泥地区は、村内の除染作業で発生した除去土壌を再生資材化し、盛土として利用する事業のフィールドとなっています。人間の活動によって里山のかたちが大きく変容したこの地域では、人間と自然の関係性を編みなおす取り組みが始まったばかりです。
さまざまな時間や空間を行き来して環境世界を旅してきた私たちは、ここ長泥でもう一度、「いま・ここ」の環境課題に直面します。

比曽の石切場跡
最後のスポットは、比曽地区にある石切場跡。石材産業が盛んだった飯舘村を象徴する風景が広がっています。
かつてここから石を切り出していた村の人々は、水の流れや大地の形状を読みながら、この環境が崩れてしまわないように手をかけていました。自然とともにあった人々の暮らしがありありと伝わるこの光景は、現代を生きる私たちに何を問いかけているのでしょうか。
FabCafe Fukushimaがプロデュースする旅は、飯舘村の環境や人々の営みだけでは成り立ちません。ご参加いただくみなさま一人ひとりに宿る好奇心が、飯舘村で過ごす日々を、より深く充実したものにしてくれるからです。
FabCafe Fukushima は、今回レポートしたような個人のお客様へ向けたラーニングツアーのみならず、アートや演劇の手法を取り入れて飯舘村の環境を探索する「環世界探索紀行」、深い対話や課題解決を志向するオーダーメイド型の団体研修など、多様なプログラムでみなさまのニーズにお応えいたします。詳しくは FabCafe Fukushima のSevisesページをご覧いただくとともに、ぜひお気軽にご相談ください。
【※1】企画旅行実施:風の旅行社 プロデュース:株式会社図図倉庫
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阪本 健吾
株式会社図図倉庫 Program Manager / Writer
2026年4月から図図倉庫に参画。兵庫県西宮市出身。 旅行代理店の営業、地域新電力、地域でのアートプロジェクトを経て、図図倉庫では各プログラムの進行と、物書きを中心に広報まわりを担当。好きな食べ物はゴーヤチャンプルー。
2026年4月から図図倉庫に参画。兵庫県西宮市出身。 旅行代理店の営業、地域新電力、地域でのアートプロジェクトを経て、図図倉庫では各プログラムの進行と、物書きを中心に広報まわりを担当。好きな食べ物はゴーヤチャンプルー。
