Event report

2026.9.14

リペアカフェをつくってみよう。修理を通して、誰もが元気になれる場ができるまで

Repair-Able Workshop #0 レポート

モノが壊れたらどうしますか? メーカーやプロのサービスに修理を依頼しますか? それとも、買い替えた方が早いでしょうか?

実は、リペア(ケア、修理、修復)には、ものづくりやテクノロジー、そして社会の仕組みを紐解く鍵があります。

FabCafe Tokyoでは、ハックの精神と知的好奇心を携えながら、モノの手入れと修復にまつわるカルチャーを編み直すコミュニティ「Repair-Able(リペアラブル)」をスタートします。コミュニティ活動の一環として、これから定期的にリペアカフェを開催していく予定です。

オランダで発祥したリペアカフェは、壊れた家電や服、自転車など、身の回りのあらゆるものを持ち込んで、地域のリペアラー(修理する人)と一緒に修理できる場所です。修理をきっかけに、子供からお年寄りまで幅広い人々が交流できることから、地域コミュニティを再接続させる活動としても注目されています。

FabCafe Kyotoで開催した、リペアカフェの様子

リペアカフェを開催するということは、どういうことだろう? FabCafe Tokyoなら、どんな場をつくれるだろうか?

その問いを深めるために、2026年7月23日、ワークショップ「リペアカフェをつくってみよう! 修理を楽しむ場のデザイン」を開催。京都でリペアカフェを続けている、有限会社ひのでやエコライフ研究所の山見拓(やまみ ひらく)さんをお招きし、FabCafe Tokyoで実際にリペアカフェの場を立ち上げるワークショップを行いました。

リペアカフェを単なる修理のための場として捉えると、マイナスをゼロにする活動のような印象を持たれるかもしれません。しかし実際のリペアカフェは、そのイメージに留まらない創造的な場であり、人々の間に豊かな相互作用が生まれていました。

本レポートでは、ワークショップの様子と、山見さんとの実践から学んだ場づくりにおいて大切な視点をお届けします。

  • 山見 拓

    有限会社ひのでやエコライフ研究所 取締役

    省エネ、電子工作大好きMaker。オフグリッド発電、太陽熱温水器、雨水利用など、街中でもできる自然エネルギー利用を実践、研究中。エネルギー管理士、第二種電気工事士、家電製品総合エンジニア。自分の手でモノづくりやプログラミング、修理をする場「つくる、なおす、考える、月に一度の『技術の時間』」主宰。

    Webサイト:Hiraku’s Maker Share

    プロフィール写真提供:株式会社オライリー・ジャパン/撮影:ただ(ゆかい)

    省エネ、電子工作大好きMaker。オフグリッド発電、太陽熱温水器、雨水利用など、街中でもできる自然エネルギー利用を実践、研究中。エネルギー管理士、第二種電気工事士、家電製品総合エンジニア。自分の手でモノづくりやプログラミング、修理をする場「つくる、なおす、考える、月に一度の『技術の時間』」主宰。

    Webサイト:Hiraku’s Maker Share

    プロフィール写真提供:株式会社オライリー・ジャパン/撮影:ただ(ゆかい)

ワークショップは、まず、その場で集まった参加者同士でリペアカフェを「やってみる」ことからスタートしました。

参加者は自己紹介と、「何を修理できるのか」あるいは「何を直したいか」を一言ずつ話しました。それから、山見さんの「じゃあ、早速始めてみましょうか」の声をきっかけに、一気に場が動き始めます。

家電とおもちゃ、裁縫、靴・革製品など、修理するモノの種類ごとにゆるやかにテーブルを決め、お互いに会話をしながら作業にとりかかりました。

リペアラーたちの注目を集めたのは、Mさんが持参した年代物のゼンマイ式タイマーでした。リペアラーたちはドライバーなどの道具を使ってタイマーを分解し、どういう仕組みで動いているのかを確かめ、修理の方法を話し合いながら手を動かしました。

Mさんは、父親から受け継いだこのタイマーを、ゆで卵やラーメンをつくるときに使っていたそうです。しかし、ダイアルを回してもカウントダウンせず。不思議に思ったリペアラーたちの調査の結果、3分ごとに通話料が十円かかっていた時代に、通話時間を確認するために使われていたカウントアップ式のタイマーだったことがわかりました。

みんなで奮闘した結果、見事にタイマーが動くように。持ち主のMさんは「本当に直るとは思っていなかった」と驚きの声を上げました。

「そういえば昔、黒電話の横にこれが置いてあった。修理をしたことで忘れかけていた記憶が蘇りました」(Mさん)

大切な人から譲り受けたリュックサックの持ち手が壊れてしまったSさんは、洋裁を得意とするFさんに直し方を教えてもらいながら、修理に挑戦しました。同じテーブルに座ったIさんに、たまたま持っていたパーツを提供してもらい、2時間ほどで持ち手を修理できました。

充電できなくなったワイヤレスイヤホンを持ち込んだRさんは、たまたまTさんも同じワイヤレスイヤホンを持っていたことから、2台を使って故障原因を検証。完全には修理できなかったものの、片方のイヤホンを充電できるところまで辿り着きました。

他にも、傷んでしまった革靴の手入れの仕方を教えてもらう人、擦り切れてしまった服を繕う人、電気ポットの故障原因を探すために話し合う人、そして、それらの様子を興味深げに見守る人など。各テーブルで、モノの修理を介して人々がリラックスしながら交流する姿が見られました。

こうしたリペアカフェの空気は、実際に場に参加してみないと伝わらないと山見さんはいいます。

「『リペアカフェはこういう場所です』と、言葉だけで説明するのはなかなか限界があります。ですから、今日のワークショップは、お話の前にリペアカフェをやってみることから始めました」(山見さん)

リペアカフェには、立場や年齢、性別に関わらず、誰もが参加できます。修理をしなくても、コーヒーを飲みながら修理の様子を眺めるだけでもいいのです。その場で出会った同士が共に修理を楽しめる、ひらかれた場が生まれるのはなぜなのか? 謎は深まります。

リペアカフェを実践したあとは、インプットトークとして、山見さんがこれまで京都で実施してきた「技術の時間」と「リペアカフェ」の取り組みを紹介していただきました。

山見さんは9年間にわたり、生活者に向けて工作やプログラミング、修理を楽しむ場を提供する「技術の時間」という活動を京都で続けています。

「つくる〜捨てるのプロセスを、できるだけ自分の手に負える技術で行いたい」「意味のあるものづくりを行いたい」という信念を持つ山見さん。「技術の時間」は「一緒につくる、直す、考える」をコンセプトに、自分の手に負える技術を扱うための方法を地域の人々に伝え、自ら実践してもらう場です。

この活動を続ける中で、次第にリペアのために「技術の時間」に参加する人も増えていきました。近年のリペアカフェの盛り上がりにも後押しされる形で、「技術の時間」と並行して、リペアに特化した時間としての「リペアカフェ」も開催するようになりました。

リペアカフェ自体は、もともとオランダで2009年ごろに始まった活動です。その背景には、企業が生活者の修理する権利を阻んでいることを批判する「修理する権利運動」や、壊れたモノを捨てることに抵抗感を持つ人々のサステナビリティへの意識の高まりなどがありました。

一方日本では、すでにプロによるリペアサービスや、メーカーによる保証制度などが数多く存在しており、それらの価値にあまり光が当たっていない現状があります。

「海外のリペアカフェの仕組みをそのまま取り入れるのではなく、日本ならではのリペアのやり方があるのではないかと、ずっと考えています」(山見さん)

欧米のような企業と生活者の対立構造や、あるいは行政によるトップダウンでルールを決めるのではなく、生活者と企業、行政が対話しながらリペア文化を盛り上げる第3の道があるのではないか。また、すべての修理をリペアカフェで完結させるのではなく、プロのリペアラーの仕事につないであげるハブとしての役割も担えるのではないかと、山見さんは考えています。

モノに対して愛着という言葉を使うのは、日本独特の感性だと言われています。山見さんはこうした感性も大切にしながら、日本型のリペアカフェを模索したいと語りました。

リペアカフェのゴールは、壊れたものを完全に元の状態に戻すことだけではありません。山見さんは、不完全さを許容することや、自分なりの工夫を加えてみることが大切だと考えています。

以前、山見さんが大阪大学の授業で行ったリペアカフェで、ひとりの男子学生がボリュームノブの壊れたエレキギターを持ってきました。彼は壊れてしまったプラスチック製のノブを修理するのでも、新品のパーツを取り寄せるのでもなく、木の端材を削って加工したオリジナルのボリュームノブを手作りしたそうです。そのギターはリペアによって完璧に元通りになったわけではありませんが、持ち主の学生にとっては世界に一つだけのギターとなり、修理前以上の愛着と価値が生まれました。

大阪大学での授業の様子(山見さんのスライドより)

子どもや学生たちと一緒に手を動かしていると、大人には思いつかない自由な発想が飛び出す瞬間があります。修理の過程で自分なりの創意工夫やアイデアを付け加えることを、山見さんは「創造的なリペア」と呼び、これがリペアの面白さ・自由さだといいます。

山見さんが約9年間続けてきた「技術の時間」や「リペアカフェ」には、小学生からお年寄りまで幅広い世代が関わっています。最初は様子を見守るだけだった子どもが成長してリペアラーとして参加するようになったり、初めてはんだ付けを体験した女性が自ら電子工作を楽しむようになったりと、活動を通じて多くの変化が生まれてきました。

多世代が関わりあう「技術の時間」(山見さんのスライドより)

山見さんは、人々の暮らしが交差するリペアカフェを運営する上で、次の5つの視点を大切にしています。

  • 誰もラベリングしないフラットな関係の場
  • 完璧を求めない場
  • 創造的リペアを大切にする場
  • 小さなドラマを大切にする場
  • 参加者も主催者も元気になれる場(人間が回復する場)

山見さんにとって場がうまくいったと実感できるのは、開催後に主催者である自分自身も元気になれたときだといいます。

「主催者側が何かを提供する一方になってしまう場は、終わった後に疲れてしまうんですよね。場を続けていくためには、参加した人と主催者の双方が元気になれたと感じられる場をつくることが大切なんです」(山見さん)

「技術の時間」と「リペアカフェ」には運用面での違いがあります。「技術の時間」では、何をするか、どう参加するかが基本的に参加者の自主性に委ねられています。

一方で「リペアカフェ」では、無意識のうちに「直してくれるリペアラー」と「修理してもらう客」というサービス提供の構図に分かれてしまいがちです。役割が固定化してしまうと、リペアラー側に過度な負荷がかかり、参加者同士のフラットで対等な関係が生まれづらくなります。

そこで山見さんは、これまでの実践から導き出した「リペアカフェの三原則」を共有してくれました。

  • リペアをするのはあなたです。
  • リペアのプロセスを楽しみましょう。
  • リペアを通してあなたなりの価値を加えてみてください。

年齢や性別、スキルの有無を問わず、する側・される側という立場を固定しないこと。誰もが対等に関われる環境を整えることで、参加者同士の自発的な助け合いと豊かな相互作用が引き出されます。

山見さんのお話の後は、参加者全員でワークの振り返りとディスカッションを行いました。教育の場としてのリペアカフェの可能性や、リペアカフェを運営する現場の課題感、続けていくために必要なことなど、さまざまな意見が交換されました。ここでは、そのポイントをご紹介します。

  • 相互ケアの場としての効果
    修理の対象となるモノは単なる道具ではなく、人と人との間にコミュニケーションや自己開示を生み出すための大切なきっかけになります。
  • 主体性を回復する学びの場
    外部の人々と関わりながら自ら楽しみや課題を見つけ出せるリペアカフェは、日頃からサービスを受け取ることに慣れている若い世代にとって、主体性を取り戻す貴重な学びの場になり得ます。
  • 地域における新しい資源循環
    壊れたモノをすぐに処分するのではなく、一時的にストックして直せる人や次の使い手へつなぐ「直し待ち倉庫」のような拠点を地域につくるアイデアも挙がりました。
  • 既存のコミュニティ・団体との連携
    運営を支えるリペアラー人材の確保には、地域で長年活動している「おもちゃ病院」など、すでに高い技術と知見を持つ既存の団体と連携することが有効です。
  • 世代を超えた育成の循環
    リペアカフェを定期的に開催することで、かつての参加者や子どもたちが少しずつ技術を身につけ、やがて次のリペアラーへと育っていく息の長い育成サイクルが求められます。

山見さんはリペアカフェのことを、「モノを直すことでつながりを取り戻す場」だと表現します。

もともと「技術の時間」は、山見さん個人が好きなはんだ付けのための「場」をひらくことから始まった活動でした。そこからコツコツ続けるうちに参加者が増え、リペアカフェの取り組みが生まれ、大学や他地域での活動へと発展して、小さな実践にとどまらないインパクトを生み出しています。

山見さんが運営する「技術の時間」と「リペアカフェ」は、人々にモノや技術と主体的に向き合う機会を提供するだけでなく、世代や立場を超えた仲間づくりへとつながっています。資源循環という観点のみならず、関わる人々につながりと活力が回復する場を提供し続けることで、地域や社会に心地よい好循環を生み出す取り組みへ成長したと言えそうです。

FabCafe Tokyoはこれから、山見さんとのワークショップで得た学びを携えて、リペアカフェに挑戦します。どんな仲間たちと一緒に、私たちならではの場をつくっていけるでしょうか。これからの展開を、ぜひ楽しみにしていてください。

9/26(土)Repair-Able Cafe & Talk | 修復可能な未来を準備する

ゲスト:池ノ谷和盛さん(IKENOYA RADIO)、ゴールドウイン、トーキョーバイク

ハックの精神と知的好奇心を携えながら、モノの“手入れ”と“修復”にまつわるカルチャーを編み直すコミュニティ「Repair-Able(リペアラブル)」による、リペアカフェ&トークイベントを開催。リペアの実践を通じて、私たちにとって気持ちいい消費のサイクルとカルチャー、そして社会の仕組みをいかにデザインできるか。さまざまな人と一緒に手を動かし、対話しながら考える一日です。

  • 開催日:リペアカフェ 14:30-17:30 / トーク 18:00-19:45
  • 会場:FabCafe Tokyo
  • 参加費:リペアカフェ参加無料 / トーク参加 2,000円

イベントのプログラムを見る

Author

  • 岩崎 諒子

    FabCafe Tokyo

    株式会社ロフトワークで、クリエイターコミュニティLoftwork.com(現AWRD)の企画・編集・コミュニティ運営を担当。クリエイターと企業、自治体などとの共創プロジェクトの設計と事務局業務に従事した。2019年より、同社マーケティングDivで、組織体制変更に伴うリーダーインタビューシリーズをはじめ、マーケティングとブランディングを横断するコンテンツの企画・編集に携わる。2024年から地域共創に特化したマーケティング・PRに従事。2025年10月より、FabCafe Tokyoでコミュニティ運営を担当。二児の母。

    株式会社ロフトワークで、クリエイターコミュニティLoftwork.com(現AWRD)の企画・編集・コミュニティ運営を担当。クリエイターと企業、自治体などとの共創プロジェクトの設計と事務局業務に従事した。2019年より、同社マーケティングDivで、組織体制変更に伴うリーダーインタビューシリーズをはじめ、マーケティングとブランディングを横断するコンテンツの企画・編集に携わる。2024年から地域共創に特化したマーケティング・PRに従事。2025年10月より、FabCafe Tokyoでコミュニティ運営を担当。二児の母。

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