Column
2026.5.26
FabCafe編集部
AI Dada Vol.3|OUR Common Playground “わたしたち”
FabCafe Tokyoを拠点に次世代のクリエイターが滞在制作を行うプログラム「Creative Residency」。2026年5月、アーティストDONG WENJUNさん、佐野 翠さん、森田祐輝さん、門田健嗣さんを迎え、AI Dada Vol.3|OUR Common Playground “わたしたち”の街を遊ぶを開催しました。
―― 表現の道に進もうと決めた、きっかけは何だったのでしょうか?
子どもの時代から絵を描くことが好きで、気づいたら自然に自分のアイデアをアートで表現することが当たり前になっていました。
最初は、布に触れながら自分の手で何かを作りたいという思いがあり、イギリスの大学でファッションを学びました。服は、どれほど美しく形づくられていても、人の身体が入ることを前提にしています。私にとって服をつくることは、布で形をつくること以上に、ひとりの人のために小さな空間をつくることに近い感覚でした。
一方で、実際のファッションの仕事の多くは、ブランドの製品をつくって販売するまでにたくさんの人々が分業します。私にとって、それは心からやりたい仕事ではありませんでした。最初から最後まで自分が関わりながら作り上げる仕事として、よりアーティスティックな作品制作や物語がある表現をしたいと思うようになり、パフォーマンスデザインの分野へ向かいました。
大学院では、演劇の法則や理論、技法に関する学問「ドラマトゥルギー」を勉強しました。現在ではこれらのバックグラウンドを活かして、アートプロジェクトのプロデュースやインスタレーション制作などをしています。

―― 普段はどのようなコンセプトを大切に、どんな手法で作品を制作されているのですか?
私の作品の多くは、作品のみで世界が完結するというよりも、そこに人が入りこみ・関わることで初めて立ち上がります。このことは、私がアーティストとして最初にファッションデザインを学んだことが大きく関わっています。服という小さな空間は、「皮膚」のように親密なものにもなれば、アイデンティティや社会的な役割のような、目に見えないものを受け止める「場所」にもなります。
こうした観点から、《日没待ち》というフードアートイベントでは、「待つこと」をテーマに情報デザイナーと協働して制作しました。デザイナーがつくった小さなアイコンをもとに、私はそれぞれを一つの「待ち」の場面として読み替えました。
雨上がりを待つこと、目覚めを待つこと、一服を待つこと。そうしたさまざまな待ち方を、食べ物や味、香りに置き換えていきました。私は鑑賞者と「食べる」という身近な行為を通して、誰もが経験したことがあり、かつ非常に個人的なものでもある「待つ」という感覚を、共有したかったのだと思います。

ファッションデザインのほかにも、劇場は私のもう一つの原点といえます。劇場やパフォーマンスを学ぶ中で、「物体劇場(オブジェクトシアター)」という考え方に強く惹かれました。
物体劇場では、本来俳優が担うはずの役割を、静かな物や空間の配置が引き受けます。ただ、私が最も興味深かったのは、物が俳優になること自体ではなく、その場にいる観客までが、いつの間にか舞台の一部になっていく様子でした。人がルールを理解しようとする時間、他者の動きをうかがう緊張感、偶然生まれる協力やすれ違い。それらが道具立てとなり、その瞬間、その場所にしか存在しない劇場が生まれます。
私が制作において感じる大きな喜びは、作品を通して鑑賞者自身の記憶や関係性、これまでの人生経験が、別の意味を持って立ち上がる瞬間に立ち会えることです。作品を完成したものとして提示するだけではなく、人がそこに入り、選び、迷い、他者と関わる時間まで含めて、一つの体験として組み立てていく。それが、私が制作において大切にしていることです。
―― 今回の作品に込めたメッセージを教えてください。
今回の作品は、FabCafeという渋谷のカフェを舞台にすることから、「もしこの街がコーヒーの産地だったら、どんな味になるのか」という問いかけから始まりました。インタラクティブな作品をつくるときは、いつもサイトスペシフィックな表現を目指しています。展示する場所が持つ文脈やイメージに合わせて、そこに相応しいモチーフを選んだり、物語を考えたりしています。
本作では、渋谷区の中の3つの地点を架空のコーヒー産地としてピックアップし、コーヒーを実際に味わうことができないAIに、渋谷の環境や気候、地形・地質などのデータからその味を想定・分析させました。1箇所目が、誰もが知っている場所として渋谷駅。それから、展示が行われるFabCafe Tokyo。最後に「琵琶池」と呼ばれる、青山方面にある可愛い形の池です。
琵琶池は、Googleでどこか面白い場所がないか探していた時に、たまたま見つけました。調べてみたら、ここは立ち入り禁止区域らしく、渋谷でもあまり人に知られていない場所なんじゃないかと思います。
今回、実際にこれらの地点でフィールドレコーディングを行いました。そこから得られた音源をもとに、AIがその土地で育てられたコーヒーの味をイメージして音楽を生成します。鑑賞者はこれらの音楽を、レコード型の装置を通じてヘッドフォンから聴くことができます。カフェのお客さんはコーヒーの代わりに、データと音楽からその土地で育てられた架空のコーヒーを味わうのです。

AIは味覚を持っていませんが、データを正確に分析することはできます。また、私たち人間は分析されたデータをまるで「体験の代わり」のように受け取ります。しかし、その過程では、自分が抱いている現実の都市に対する感覚と、AIによって分析・生成された感覚との間に、ズレや違和感が生まれるはずです。この作品では、そのズレを通じて、都市の日常風景を少しだけ捉え直すきっかけになればと考えています。
―― AIと作品制作をしてみて、いかがでしたか?
AIは、これまでも主に物語のアイデアを考えたり、作品のイメージや空気感を想像したりする時の対話相手として使ってきました。AIに単語を投げて、自分ひとりでは考えつかないようなアプローチでアイデアを提案してもらい、それらを整理して、もう一度自分で物語を書き直すなどのやり方で利用しています。
―― 今後の活動について教えてください。
これからも、イベントのプロデュースやクリエイティブプロデュースの仕事を続け、自分ひとりのアイデアを表現して作品を作るだけでなく、他のアーティストや企業とアイデアを合わせて、一番いい表現方法を選ぶかたちで仕事を続けていきたいです。
また将来は、自分が表現したい世界観を体現するような、オルタナティブ・スペースを持つことを目標にしています。
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DONG WENJUN
ファッションや劇場表現の背景を起点に、空間や物語の演出を横断する制作を行っている。衣服と身体の親密な関係から培ってきた感覚的なアプローチを、展示空間やワークショップ、インタラクティブな装置へと展開し、人と人、人と場所のあいだに生まれる関係性を「場」として立ち上げる実践へと発展させてきた。素材を用いたインスタレーションや参与型の試みを通して、個人の記憶や経験が交差し共有されるプロセスそのものを作品として提示している。
ファッションや劇場表現の背景を起点に、空間や物語の演出を横断する制作を行っている。衣服と身体の親密な関係から培ってきた感覚的なアプローチを、展示空間やワークショップ、インタラクティブな装置へと展開し、人と人、人と場所のあいだに生まれる関係性を「場」として立ち上げる実践へと発展させてきた。素材を用いたインスタレーションや参与型の試みを通して、個人の記憶や経験が交差し共有されるプロセスそのものを作品として提示している。

FabCafe Tokyo Creative Residency vol.3 参加アーティスト募集
デジタルとアナログを横断しながら、既存のジャンルにとらわれない表現に挑戦するアーティストを支援する「FabCafe Tokyo Creative Residency」第4回目のプログラムに参加するアーティストを募集。「AI-ダダ」をテーマに、多彩なコミュニティとの交流やデジタルファブリケーションを通して、新たな表現を探究する場を提供します。
https://fabcafe.com/jp/events/tokyo/fabcafe-Creative-residency-4/
提出期限は2026年6月1日23時59分です。
エントリーはこちらから
https://awrd.com/award/fabcafe-ai-dada-04
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FabCafe編集部
FabCafe PRチームを中心に作成した記事です。
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