Event report
2019.5.21
FabCafe編集部
こんにちはFabCafeの藤田です。FabCafeではEverblue Technology社との協業プロジェクトとして、「A.D.A.M」というプロジェクトをスタートしました。
「A.D.A.M」は、オートデスク社による3D CAD/CAM ソフトウェア 「Fusion 360」のジェネラティブデザインを使って、自動操船ヨットのデザインをしようというプロジェクトです。近年、AIを使って解析、環境や目的に最適化した形状を生成する流れは、様々な産業で進んでいますが、このプロジェクトでは解析による最適化だけでなく、AIを使って「誰も見たことのない形をデザインする」ことにチャレンジします。
プロジェクト詳細→https://fabcafe.com/tokyo/blog/a-d-a-m-ai
第三回のA.D.A.Mは少人数ながら、杉山さんと呂さんにスケッチを持ち寄っていただき、デザインの話をじっくりとできました。今回のお題である「AIやジェネラティブをデザインとして取り入れること」がスケッチの随所に見られますので、かっこよさもさることながら、その辺りのギミックにも要注目です。
第1回レポート→https://fabcafe.com/tokyo/blog/design-with-ai-adam-report-1/
第2回レポート→https://fabcafe.com/tokyo/blog/design-with-ai-adam-report-2/
ジェネラティブな形状を機能的に利用:呂さんデザインアップデート
今回も新作を持ってきていただいた呂さんは、ジェネラティブやコンピューターにより生成される造形を単なる装飾とせず、機能的に利用するなど、デザインと機能性を両立したアイデアを提案。
adidasの4Dデザインのシューソールのように、マストの揺れをジェネラティブデザインによるパーツで吸収してはどうかというアイデアです。造形と機能性を両立させるアイデアはさすがです。
左右非対称のカタマランもデザインしてくれました。インフィニティのプロトタイプ「09」 のデザインを意識してのフロントが広がったサイドビューです。クラシカルなバランス感が好きな私としては好みのデザインです。
everblue社の掲げるクリーンエネルギーを利用したヨットは動力こそ風力ですが、制御には電力が必要です。上面の面積を最大化し、そこにソーラー発電の機能を取り入れてはどうか、という案も出ました。こちらのデザインでは上面を平にして面積を大きくするようデザインされています。
カーデザイナーはZ軸の流線型をデザインするのに対して、ヨットはマストが垂直に立っているため、デザインが難しいと呂さん。車のデザインをしていてもミラーなど同じように難しい要素はあるそうです。あえてその垂直を生かして全体を星型にしてはどうかというアイデアがこちらです。この後の杉山さんのデザインでも同様の考え方が見られ、杉山さんと呂さんは難しさやアイデアに共感した様子。
SFの世界を切り取ったような機能的デザイン:杉山さんデザイン
呂さんの直線的なデザインに対して、杉山さんのデザインはガジェットをそのままヨットにしたような、未来的なデザイン。ドローンや衛星をモチーフとしたような形をしています。
漁場調査という役割を考えて、フロントにセンサー系を搭載したデザインは、コンシューマー向けのカーデザインを手がける杉山さんならではの機能的なデザインです。
ドローンをモチーフとしたデザイン。コンパクトさや軽快さが際立ちます。漁業をアップデートするというビジョンから発想を得て、ヨットを持ち運ぶ漁師さんが、スケーターのようにかっこよく見えるデザインというコンセプトも提案されました。
ホバーリングを意識した水中翼のデザイン。水中翼はシートのような形で横から出てきて固定されます。この辺りのギミックに「メカニカル・メタマテリアル」などの可能性を感じます。
かつてのApple社のデザインも彷彿とさせる、スケルトン素材を融合したデザインが魅力的です。ひとつ上の水中翼もそうですが、柔軟に変形するパーツのアイデアが随所に見られ、呂さんもそうでしたが、生成系デザインの取り入れ方はさすがだなと感じます。
移動しないときはブイの様に停止し、波や風の影響をうけにくいデザインです。伸縮するボディに新しい素材の可能性を感じます。everblue社の目指すヨットは、高速に移動することよりも、魚群を検知し漁師さんに場所を知らせるなどの役割を持つため、ブイのように止まっていても位置がわかりやすく、スタビリティ(波や風に強いこと)を意識してのデザインです。
クリエイティブの力で未来を描く
二名のデザインを見ていると、単にヨットのデザインといっても、これほどまでに違いが出てくるものだと驚きもありながら、それぞれの全く別の方向性での提案がプロジェクトに多様さを生み出し、まだ世の中にないものをデザインする実験的な試みにおいて、クリエイティブの力が大事であることを感じました。
また今回参加しているメンバーへのお題として、タイトルにもある「AIやジェネラティブをデザインとして取り入れること」がありますが、随所にそういったアイデアを取り入れられていることはさすがです。トリマランヨットの胴体を繋ぐブリッジや、マストなどが、この後に続く生成手法を使ったバリエーション生成で、さらに進化を遂げるのが楽しみです。
ヨットのデザインにとどまらず、カーデザイナーのリファレンスを集める習慣や、モデラーとのコミュニケーション、メーカーごとのデザインに対するツールの違いについても話を伺え、カーデザインのプロセスも伺い知ることができた興味深い回でした。
デザイン案がいくつも出てきたところで、近日中に3Dプリントの実装テストもスタートする予定ですので、スケッチが実際に形になって見れるのをお楽しみに。
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