Interview
2020.9.27
FabCafe編集部
執筆:小菅達矢 / 編集:FabCafe Tokyo
FabCafe Tokyoを拠点のひとつとして活動しているTokyo Developers Study Weekend(通称TDSW)。
TouchDesignerというソフトウェアをメインに、ビジュアルプログラミングに関する技術や表現を学べるコミュニティです。
2018年に活動をスタートし、2019年には海外でもイベントを開催。FabCafe Tokyoでも100人規模のイベントを開催するなど精力的に活動しています。
今回は共同設立者であるnaruminさんに、その原動力やコミュニティづくりで大切にしていることなどをインタビューしました!
■ narumin
TDSW | Tokyo Developers Study Weekend共同創業者。ノードベースビジュアルプログラミングツールに関連した技術や表現に関するクリエイティブコミュニティTDSWを2018年春大学在学中に設立。中国やカナダなどをはじめ世界各国のソフトウェアユーザーと密接に連携しながら国内外問わずソフトウェアの普及に貢献し、「つくりたい人のワクワクをつくる」をテーマに活動を行なっている。 Twitter: @narumin256
TouchDesignerは、アーティストやクリエイターがインタラクティブかつリアルタイムコンテンツを作成できるように開発されたソフトウェアです。
ノードと呼ばれるパッケージ化された関数をつないでいくことでプログラムを実装するビジュアルシンキングという考え方が採用されています。
ライブ、舞台、プロジェクションマッピング、テーマパークアトラクション、インスタレーション、商業施設やスポーツスタジアム、VRなど様々なプロジェクトを実現するプラットフォームとして使用されています。
TDSWとは?– ニッチなソフトウェアの技術知見を共有できる、ユーザーの顔が見えるコミュニティ
TDSWをはじめたきっかけを教えてください。
narumin) テキストコードを書かずに、直感的かつリアルタイムにコンテンツを制作できるTouchDesignerに魅力を感じ、当時まだ広く認知されてない中で一緒に勉強ができる仲間が欲しくて勉強会を開催したのがきっかけです。
学生時代にインターン先で「ToughDesignerで魚が動くプログラムを作ってほしい」とソフトウェア指定での開発を任されたのがTouchDesignerとの出会い。直感的な操作が可能なことや表現できる内容の幅も広くて、その魅力・可能性にのめり込んでいきました。
当時、インターンとして一緒に働いていた同年代の人たちととも「せっかくこんなに魅力的なソフトなのにTouchDesignerが広まっていないのはもったいない!」という話がよくあがっていました。
そこで、当時の私たちと同じように独学で学んでいる人たちを巻き込んで継続的にTouchDesignerの情報をシェアできる場所を作ろうと考え、ワークショップを開催したんです。それがTDSWの活動の始まりです。
勉強会に参加して頂いた方々から「継続してワークショップを開催してほしい!」という声がたくさん集まったこともあり、月2回のペースでワークショップを開催し続けています。
具体的にはどういった活動をしていますか?
narumin) ビジュアルプログラミングに関する技術や知識の共有、クリエイター同士のネットワーキングを目的としたワークショップやイベントを運営しています。2018年にコミュニティとしての活動をスタートしてから、70回以上はイベントを開催し、通算4000人以上の参加者を記録しました。
毎回、現役で活躍する素晴らしい講師陣をお呼びして、TouchDesignerなどのビジュアルプログラミングツールをはじめ、Houdiniやnotchなどハリウッドやディズニー、大規模なライブ演出、プロジェクションマッピングや映像・映画、ゲーム等で使用されるツールの技術や表現を共有するワークショップを企画し、クリエイターがワクワクするような週末をお届けしています。
FabCafe Tokyoも会場のひとつとして使わせてもらい、初心者向けのTouchDesignerワークショップや、VJブース×ワークショップ×機材フリーマーケットを掛け合わせた「X SQUARE」というイベントを開催したこともありました。(過去にFabCafe Tokyoで開催されたTDSWイベント一覧 )
同じ分野やソフトウェアに関心のあるクリエイターの顔が見えるコミュニティを作りたいと思っていたので、あえて全てオフラインでイベントを開催してきました。ですが、この春コロナ禍をきっかけに活動形態を見直さざるを得なくなりました。現在、イベントは全てオンラインに切り替え、新しい取り組みをスタートさせました。
新しい取り組みとはどんなものでしょうか?
narumin) 「オフラインで集まるのが難しくなってしまった今、TDSWがクリエイターに貢献できることは何だろう?」
そんなことを思いながら、オフライン形式でイベントを開催していた時に頂いていた声も参考に、オンラインでもワークショップを楽しんでもらえる企画を考えたり、これまで参加していただくことが難しかった都外や海外の方、これから学習を始めたいと思っている方にもTDSWのイベントに参加して頂けるようにするための仕組み作りに着手しはじめました。
具体的には、
- YouTubeチャンネルを開設し、TouchDesigner初級講座を無料公開することで学ぶきっかけを広げる。
- 海外のTouchDesignerユーザーへのリーチも意識し、英語でのオンラインイベントを開催
- サブスクリプションサービスの提供(全てのイベントへの参加、過去のイベントのアーカイブ動画の視聴が可能)
をはじめました。
新しい取り組みをはじめたことによって、海外・地方在住者へのリーチも増え、TDSWイベントへの新規参加者もかなり増えました。
技術ワークショップをエンタメ化。おもしろいアウトプットに、素直にはしゃぎあえる場を目指す。
先日イベントに参加させて頂いたのですが、すごく温かい雰囲気が流れていると感じました。
コミュニティ形成や雰囲気を作る上で、大切にされていることはありますか?
narumin) 新しくTouchDesignerをはじめたいという人にとって一歩を踏み出しやすいコミュニティにしたいということはTDSW設立当初から思っていました。
こんなにおもしろいソフトウェアなのに、新しく学ぶ上での参入障壁が高くなってしまうのは非常にもったいないことだと思っています。技術の勉強会ってなんだか難しそうだったり、敷居が高く感じやすいなと私自身TouchDesignerを学びはじめた時に感じていました。だから、TDSWはTouchDesignerを学ぶ入り口に立ち続けるコミュニティでありたいと考えていて、その考えに基づきコミュニティ活動をしているつもりです。
それから、TDSWコミュニティに参加してくださる皆さんには、すごく優しくて、活動に親身になってくださる方が多いです。
私がTDSWの運営に困っている時に助けてくれたり、イベント中もたくさん合いの手や拍手を入れてくれたり、アンケートへの回答率もすごく良かったり…
実は、去年一時期イベントを休止していた期間もあったんですが、休止期間中も個人的に連絡をくださったり、「イベント再開したら何でも手伝うから言ってね!」と声をかけてくださる方がいました。
そんな温かい参加者の方に囲まれているからこそ、コミュニティ全体として温かい雰囲気が生み出せているんだろうなと感謝しています。
その他にコミュニティとして大切にしているのは、楽しい場であることと、カジュアルな雰囲気づくり。より心地よく、楽しみながら継続して学習できる場をつくりあげるために、技術の勉強会をエンタメ化していくことを意識しています。
私自身、音楽が大好きで毎年フェスに行っていて、音楽というエンターテイメントがクリエイティブに関わるきっかけでした。楽しいことがとにかく大好きなんです!
例えば、コロナ前も「神々の悪戯」と題したイベントで2日間に渡るワークショップを開催したり、TDSWのイベント参加者をバンドマンに見立ててみたり、何かのパロディを取り入れたりして、とにかく楽しい雰囲気作りを大切にしたイベントを開催していました!
クリエイティブツールや関連ソフトウェアに触れるときって、どうしても画面に向かってひたすら黙々何かを打ち込む姿を思い浮かべがちです。
そういった雰囲気やイメージを払拭しつつ、すごいアウトプットを見たら素直にはしゃぎあえるような(笑)、そんな場所を作りたいと思っているんです。
クリエイティブな演出を舞台裏で支えるクリエイターが集まるフェスを行いたい
これからの展望・野望はありますか??
narumin) TDSWをTouchDesignerだけでなくその周辺の技術や関連ソフトウェアを一貫して学習することができるプラットフォームに発展させていきたいと考えています。
今までTDSWはTouchDesignerメインでイベント開催をしてきたんですが、TouchDesigner以外にもまだ広くは知られていない素晴らしいソフトウェアや技術が世の中にたくさんあります。
様々な技術を学べる環境をつくることで、クリエイターへ貢献し、より多くの人にものづくりの楽しさを感じてもらう活動ができたらと思っています。
最終的には、素晴らしいクリエイティブな演出・作品をたくさん見ることができて、そういった作品を舞台裏で制作したり支えたりするクリエイターのみなさんにもっとスポットライトがあたるようなフェスを開催したいと思ってます!
それから最近強く実現していきたいと思うことができました。それがコミュニティの運営を「無理なく」継続できる仕組みづくりです。
サブスクをはじめたのは、継続していける仕組みづくりのチャレンジのひとつでもあります。
新しいソフトウェアの技術はフリーで公開すべきだっていう考え方もあって、運営側がボランティアでやることが多くなる。でもそれだと運営資金の工面が難しいし、コミュニティをマネジメントし続けるモチベーションも続きにくい。
TouchDesignerを勉強しはじめた2年前、知識を共有しているブログやコミュニティはパラパラとあったのですが、その後継続していくものは少なかったんです。
持続可能なコミュニティ運営のモデルができれば、他のソフトウェアにも展開できると思うんです。それができれば資金支援などが開発元から受けにくいリリース初期のソフトウェアでもコミュニティが育ち学ぶ機会が継続的に提供できる。もっとたくさんの面白い技術や表現が世の中にでていくきっかけになる。そんなことが実現できたらいいなと思っています。
naruminさんのお話を伺っていて、こんなに純粋にクリエイターのことを想い活動をするコミュニティ主催者がいるんだということを知り、胸が熱くなりました!本日はありがとうございました!
TDSWの活動をもっと知りたい方へ
開催日:2020年10月14日(水)
「UNREAL IN REAL」は未開拓領域への関心を無視することのできない先駆者へ向けた、対話と空想の時間を提供するプロジェクトです。初開催となる今回は人が夢の世界(非現実の世界)へ没入するために不可欠だと考えられる「感覚」に着目し、「感覚とテクノロジーは融和する」をテーマに開催します。
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