Event report

2020.4.11

「アクチュエータ/センサが生み出す未来」Material Meetup TOKYO Vol.8 レポート

FabCafe Tokyoを会場に毎月開催される、「素材」をテーマにしたミートアップ「Material Meetup TOKYO」。プレゼンテーションとデモンストレーションの二本立てで、カタログだけでは伝えきれない魅力を発信し、新たなコラボレーションを生み出す場として毎回好評を博しています。

2020年1月22日(水)に開催されたVol.8のテーマは「アクチュエータ/センサが生み出す未来」。アクチュエータ/センサと聞くと難解な電子機械、工学を連想しがちですが、プレゼンテーションは意外にも、私たちに身近なファッションなどの話題にまで及びました。

最先端のテクノロジーがひとつのマテリアル=素材として私たちの暮らしをより豊かなものにする日はすぐそばまで来ている、そんなことを実感するミートアップになりました。

Material Meetup TOKYO Vol.8「アクチュエータ/センサが生み出す未来」
https://fabcafe.com/tokyo/events/material-meetup-tokyo-vol-8

 

『電気で動く次世代ゴムe-Rubber』豊田合成株式会社 島田雅俊氏

Material Meetup Tokyoのイベント風景

島田さんの所属する豊田合成株式会社は、世界に誇る自動車メーカー、トヨタ自動車のゴム研究部門から発展したゴム・樹脂専門メーカーです。長年培ってきたゴムや樹脂にまつわるノウハウを活かし、新しいゴム素材「e-Rubber(イー・ラバー)」を開発しました。e-Rubberは、電気をかけることで動くアクチュエータとしての機能、また押したり伸ばしたりすることでセンサとして活用できる機能を有しており、次世代ロボットの筋肉や触覚器としての可能性や、視聴覚メディアの次を担うと注目されている「触覚テクノロジー」を活用した開発へ期待が寄せられています。

確かに触ってみるとびっくり、デモをされていた「水風船を触った触感伝送」のデモでは、「ブニブニ、ブルブル」という、なんとも表現が難しい「生々しい触感」を感じることができました。

まだ開発と改良を重ねている段階ではありますが、すでに実用化も進められています。最初の製品化モデルとして2019年10月に発表されたのは、冠動脈バイパス手術のシミュレーターです。従来は心臓を一時的に止めて行う手術が主流でしたが、患者の負担を鑑みて心臓を動かしたまま手術をするのが好ましいとされています。医師がその技術を体得するためには、なるべくリアルに近い動きを再現するシミュレータが必要なのです。

Material Meetup Tokyoのイベント風景

また、最近ではセンサ用途としての活用領域も広げています。このe-Rubberをロボットハンドにつけることによって、ロボットに触覚を与えることができます。たとえば、ロボットハンドの指先にe-Rubberを実装することによって、柔らかい卵と硬い卵を瞬時に判断し、適切な圧力で卵を握って、潰すことなく運ぶことができるのです。これまでのロボット開発では「触覚」がないことで柔らかいものを判断したり、優しく持ったりすることができなかったということに課題がありました。

ロボットハンドの指先にe-Rubberが搭載されることで、ロボットの開発可能性が、飛躍的にアップデートされるのです。「ロボティクスやIoTだけでなく医療介護、また原点に立ち返り自動車の分野でも市場を作っていきたい」と今後の展望を語る島田さん。まだまだ活躍の場は広がりそうです。

[ウェブサイト]https://www.toyoda-gosei.co.jp/e-rubber/

『E-textileがつくる未来の暮らし』株式会社Surface&Architecture 土田哲哉氏

UXデザイナーとして活躍する土田さんは、活動の原点となった「SWIPE APRON(スワイプ・エプロン)」を中心にE-textileをプレゼンテーション。タブレット端末でレシピを観ながら料理をしているとき、濡れた手でタブレットを触らないために考えられたのがSWIPE APRONでした。

これは、あらかじめタブレットとエプロンをつないでおけば、ポケット部分をスワイプすることでタブレットの画面がスクロールできるというもの。派生したものも含め、これら一連のプロジェクトを進める中で出会ったのがE-textileでした。

[スワイプエプロン/SWIPE APRON] https://www.youtube.com/watch?v=yNoWRXsTb34

E-textileとは、電気が通る布素材のこと。導電糸、布、マジックテープ、ニット配線といった素材から、それらを使ったジャケットなどまで開発されています。私たちの生活には実にさまざまな布に囲まれて生活しています。2000年以上人類の生活を支えてきた布に対し、今私たちの生活を変えつつあるデジタルデバイスは発展途上の存在で、自然に肌で接するような存在にはまだなり得ていません。布の特性を持ち、デジタルデバイスとも相性の良いE-textileは、「人とデバイスの間に立ちはだかる溝を埋められる存在に今後成長していくのでは」と土田さんは提言しました。

『「e-skin」で生み出すスマートアパレルソリューション』株式会社Xenoma 網盛 一郎氏

人とデバイスの溝という話にも繋がりますが、ヘルスケアのためにセンシングを活用する動きはテクノロジー業界で活発な一方、実用の面では「普段腕時計をしない人にとってウェアラブルデバイスはストレス」などと言った課題が山積しています。

CES 2020イノベーションアワードを受賞した「e-skin Sleep & Lounge」は、その一つの解となり得るプロダクトです。彼らの開発するスマートアパレルシリーズ「e-skin」の最新型として、高齢者も日常的に着用できるルームウェアを発表しました。

見た目や着用感は私たちが普段着用する部屋着そのものです。デジタルデバイス特有の硬さや異物感は感じられません。スマートアパレル e-skinの開発を手掛けるXenomaが持つ伸縮可能な配線技術や複数センサの連携技術を活かしたこの部屋着は、ストレスフリーで睡眠の質や転倒事故などをモニタリングできるウェアラブルデバイスとして話題となりました。

こうして「本当のウェアラブル」を実現する可能性を提示した「e-skin Sleep & Lounge」などを活用し、ヒューマンヘルスケアに関するビッグデータを蓄積していけば、将来的には疾病を事前に予測することも可能になるでしょう。

ただ、健康な人は自身の健康に関心が低い傾向にあるというのもまた事実で、それでは本当の意味でヘルスケアビッグデータのプラットフォームにはなり得ません。健康な人も日常生活の中でベネフィットを感じられる形でサービス開発を進めていく必要があります。「e-skinはポストAIになり得る」(網盛さん)。Xenomaの挑戦はまだまだ続きます。

[ウェブサイト]https://xenoma.com/
[Twitter]@Xenoma_Inc
[e-skin Sleep and Lounge]https://youtu.be/m0uc8kxGSGA

『モーター自身にロボットの機能を入れる」というアイデアから生まれた「モーターモジュール®」』株式会社Keigan 徳田貴司氏

百聞は一見にしかず、KeiganMotorのデモンストレーションを展開したのは株式会社Keiganの徳田さんです。KeiganMotorは、センサやコントローラといったロボット機能を搭載したモーターモジュール®です。

高性能モーターとコントローラ、無線モジュールやセンサーが全て一体化されており、それらをコントロールするためのソフトウェアにより、簡単に「ラピッドプロトタイピング」を可能とする、画期的なアクチュエータです。

[驚くほど簡単に、ロボットが作れる Keigan Motor]

確かに、センサとアクチュエータを分けて考えてしまいがちな我々にとっては、「モーター自身にロボットの機能を入れる」というアイデアは、当たり前のようでいて、あまり実現されていないコンセプトで、目から鱗が落ちました。

ロボットや、センサの入ったデジタル機器の開発は複雑で難しいものと思われがちですが、KeiganMotorを使えばプロトタイプもあっという間に作れてしまいます。ものづくりのハードルを下げ、プロダクト開発を加速する夢のモジュールと言えるでしょう。

アクチュエータやセンサはその性能や出力値などが気になるところです。終演後は交流会を兼ねて、各プロダクトブースでデモンストレーションを披露。参加者も最先端のテクノロジーに興味津々の様子でした。カタログやウェブサイトには載っていない情報を、展示会よりも近い距離で直接得ることができるのは、まさにMaterial Meetupならではの体験。遅くまで会場は熱気に包まれていました。


Material Meetup TOKYOは、今後もおよそ月1回のペースで開催予定です。開催が決まり次第、FabCafe Tokyo公式サイトにてお知らせしますのでご興味ある方はぜひお気軽にご参加ください。

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  • FabCafe編集部

    FabCafe PRチームを中心に作成した記事です。

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