Event report
2018.8.13
FabCafe編集部
今回が関東での初開催となる「未来の渋谷の運動会」。これまで山口県のYCAMにはじまり、京都、大阪と開催地を広げ、ついに東京での開催となりました。
- 未来の渋谷の運動会:https://undokaishibuya.com/
- 一般社団法人運動会協会:http://www.undokai.or.jp/
「未来の運動会」とは、事前の運動会ハッカソンで作った競技で運動会を行うという全く新しい運動会。スポーツを作る楽しみと遊ぶ楽しみ、そして共有する楽しみを生み出すという未来志向の考え方で行う仕組みが盛り込まれた運動会なのです。
自分たちで競技を生み出すことで、運動能力の優越に限らない、広い層の参加者が一緒に競技できたり、地域性などを競技に取り込むことができ、新たな地域コミュニティの活性化や健康促進につながったり、新しい競技を通じたスポーツ産業振興の可能性も生まれる試みです。実際にYCAMの運動会で生まれたYCAMボールは商品化され、地域の運動会などで利用されています。
(中にスマホが入れられ、振った数がカウントできるYCAMボール)
今回、渋谷区での開催ということで、國學院大學、渋谷区、みずほ銀行渋谷支店などが協力。また、渋家(SHIBUHOUSE)という若手アーティストたちのシェアハウスのメンバーが運営に関わるなど、地域コミュニティとのつながりで運動会を盛り上げています。
FabCafe Tokyoももちろん渋谷ということで、未来の運動会の事前イベントの1つ「運動会テックワークショップ」の実施に協力し、FabCafeコミュニティを通じたエンジニアたちの紹介と会場提供、店頭での告知協力を行いました。
運動会テックワークショップの実施
8月本番の未来の渋谷の運動会に先駆け、6月14日と7月12日にエンジニア向けのワークショップをFabCafeで実施。
前回のYCAMで開催された未来の運動会に参加して、MVDP賞を受賞したIMSRCのメンバーがアドバイザーとして参加。運動会ハッカソンに初めて参加する人たちに向け、どんな道具が求められているのか、使われやすいのかなどを過去の事例をもとにインプットし共有し、開発するエンジニアたちをサポートします。
(FabCafe MTRLで20名ほどのエンジニアたちが集まり、運動会に向けアイデアをディスカッションした)
毎回様々なデバイスやアイデアが持ち込まれますが、それが使いやすい状態になっていない、アイデアを発想しやすい状態になっていないとハッカソン参加者が利用方法を想像できなかったりと使ってもらえないケースが出てきます。また、運動会という大人数の耐久性が求められる環境でのデバイスのあり方は他のハッカソンとは大きく異なります。
また、「未来の運動会」が毎年開催されるYCAMとの違いはやはり会場設備。劇場設備が充実しているYCAMでは大型プロジェクターを使ったプロジェクションマッピングや釣り上げるリフトなどを使った高い場所への設置なども容易です。実際、今年開催されたYCAMの未来の運動会では半分以上の競技にプロジェクションマッピングが使われています。しかし、他の施設ではそういった設備を揃えることが難しく、テクノロジーの利用方法においても、アウトプット方法と制作の難易度やコストを考える必要があります。
そういった状況を予め伝え、できるだけ手間をかけたデバイスたちが使ってもらえるようにするのがテックワークショップの目的です。
(どんなデバイスが使ってもらえそうか、どういう機能が必要化などのアイデアをみんなで考える)
未来の渋谷の運動会 運動会ハッカソンの様子
(壁中に張り出された競技のアイデア。付箋が貼ってあるものは投票で得票したアイデア)
テックワークショップから1ヶ月、いよいよ8月10日のハッカソン当日を迎えました。
17時30分からスタートした運動会ハッカソンには44名の参加者が集まりました。
東京で初のハッカソンということで、どんなメンバーが集まるかも楽しみ。当日はハッカソン経験豊富なエンジニアや地元の方や学生まで多彩なデベロップレイヤーが参加しました。ちなみにデベロップレイヤーとは、競技をつくり、プレイをする人を指し、まさに未来の運動会の主役となる人達です。
(当日使える道具や、持ち込みデバイスを各自プレゼン)
運動会ハッカソンでは、まずどんな道具があるのか、またいろいろな器具やセンサーなどを持参する参加者たちによるプレゼンが行われ、それらをヒントに競技アイデアをどんどん考えていきます。また、ハッカソンでは毎回その地域にちなんだ競技が開発されます。今回もアイディエーションでは、渋谷ということでハチ公のぬいぐるみや、渋谷の名所、渋谷にちなんだ曲などから発想された競技案がたくさん出てきました。その中から少人数でできるものから、大人数でできるものなど、運動会全体のバランスも考えながら競技が絞り込まれていきます。
(デベロップレイ真っ最中。競技性やルール、参加人数などを何度も実施してみて決めていきます)
次にそれらの競技の遊び方や細かいルールなどを実際に考えていきます。それが未来の運動会の醍醐味でもあるデベロップレイです。作ったスポーツを実際にプレイしながら、競技内容やルールを調整していきます。
センサーやプロジェクターなどテクノロジーを使うものから、アナログな道具を使ってシンプルに楽しめるものまで幅広い競技を用意しつつ、参加者同士がアイデアを出し合い、助け合って競技を作っていきます。
今回の渋谷の運動会ハッカソンでは、ハッカソンなどの経験者も多く、アイデアやその実現性、イベント進行もいつも以上にスムーズに行われ、1日半と普段より短い時間にもかかわらず7つもの競技が誕生しました。
ただ、一方で持ち込まれたデバイスなどのテクノロジー利用頻度は低くなってしまったことは、テックワークショップでも課題となっていたアウトプット方法が限られていることも要因のようです。
会場設備が限定される場所では、アウトプットにプロジェクターや大型モニターが使えないため、ポータブルで、且つ視認性が高い(見た目が派手)なものが有効なようです。YCAMで使われたエアダンサーなどはまさにいい例ですね。こうしたノウハウが蓄積され、次回の運動会に活かされていきます。
(YCAMの未来の運動会で生まれた「ゆめゆめバブルフラッグ」で使われたエアダンサー)
未来の渋谷の運動会当日の様子
8月12日(日)は、午後から雨が予想されましたが無事に天気も良くなり、約160名の参加者が参加。親子での参加も多く見られ、老若男女が参加する賑やかな運動会となりました。各競技は誰もが初めて目にするもの。そこで初めに競技のプレゼンテーションとデモプレイが行われ、実際の競技が行われます。子供でもすぐにルールが分かる、それも競技が成功する大事な要素となります。
今回生まれた7つの競技たち
第1種目:快便ゲームで運気UP
荷重方向をトラッキングするセンサーを使ったゲーム。まるで便器に座って排便するような体勢で、体重移動でバランスを取りながら的を狙います。ただ、的を表示したモニターはプレーヤーの背後にあり自分では確認できないため、スイカ割りのようにチームメンバーがその位置を教えてあげます。的に5秒間留めることができればクリア。早く10人がクリアしたチームが勝利です。
このゲームで使われた荷重を取るセンサーは、テックワークショップでPoi Poiさんが出していた巨大なボタンのアイデアを応用したもの。テクノロジーが見事競技に変身した瞬間です。
第2種目:今日は渋谷で文字合わせ
床に散らばるパネルに書かれた言葉の一部を、一つの言葉になるように参加者同士で組み合わせる競技。協力しあって言葉をつくり、ハチ公前で記念撮影するという今風の要素を取り入れつつ、対戦が基本の運動会に相手チームとの協力という新しい視点を取り入れた面白い競技となりました。
第3種目:ごろ寝玉入れ
未来の運動会ならではの、ごろ寝しながら玉入れするというスポーツマンシップに反したゆったり感が楽しい競技。背の高さや、運動能力に囚われず、小さな子供から大人までまったりと競技が一緒に楽しめるのがポイント。最後には全員でごろ寝玉入れも楽しみました。
ラップバトル
未来の運動会恒例のラップバトル!DJたちが盛り上げるなか、各チームリーダーがラップでチームを鼓舞します。
第4種目:パチットモンスターズ
モンスターボールと呼ばれる大きなボール(中にハチ公が入っている)を神輿で担ぎ、パイロンの間を縫って進みます。折り返し地点ではわっしょいの掛け声でボールを大きくバウンドさせ、一定回数をクリアすると折り返してゴール。2チームでの対戦で早くゴールしたチームが勝利するトーナメント方式です。
GOON
ホバーボードを改良してゴーカートのようにしたGOONという乗り物を使ったタイムトライアル。チームに関係なく、全員が参加できる競技で最速を狙います。レバー型のハンドルでの荷重で操作する新しい感覚と、低い姿勢でのスピード感がこれまでにない感覚で男女問わず楽しんでいました。
第5種目:押せ!
運動会でいう騎馬戦的な肉弾戦を楽しめる競技。各チーム2名がバブルボールに入り参加。4チーム、8名が1つの巨大なボールを押し合って勝敗を決めるスポーツです。ボールが押し込まれたチームが負け。負けたチームはなんと50点マイナスという減点方式で行われました。
他の競技に比べて、体当たりなど肉体をぶつけ合う激しい競技ですが、バブルボールのおかげで飛ばされた人がゴロゴロと転がっていく様子などが笑いを誘い、大いに盛り上がりました。
第6種目:出前ハチ公
まさに渋谷というハチ公のぬいぐるみを使った競技。2名1組となり、片方のメンバーが目隠しをしてハチ公を持ち、もう1人がサポートしてコースを回ります。早く全員がコースを回れたチームが勝ちです。
今回、この競技に初導入された、最下位チームが1つだけゲームルールを変更できるという制度が導入されました。最下位だった赤チームは、子供が多いチームの特性を活かし、子供がいるペアはパイロンを一周しなくていいというルールを設定。しかしながら、結果は最下位に(涙)。でもゲームルールを考えるという試みは運動会のみ参加のメンバーにとって、スポーツ共創に参加できたいい試みだったようです。
第7種目:スクランブル交差玉
こちらも渋谷の象徴、スクランブル交差点をテーマにした競技。160人全員が一斉に行える画期的な競技です。参加者は頭に玉入れの球を乗せ、4チームが交差する交差点を超えて枠の中に球を入れていきます。犬を頭に乗せたり、デカパンで二人三脚をしたりなど、ハンデを課せられるメンバーも。頭に玉を乗せた160人が交差する様子は圧巻です。
閉会式
閉会式では、MVDP(most valuable developlayer)とMVP(most valuable player)の表彰や、各賞受賞者の発表が行われました。参加者たちもいつもの運動会と違った体験を通じて、初対面のチームにもかかわらずメンバー同士がとても仲良くなれるのも未来の運動会の特徴です。作って遊ぶを楽しむ運動会。次回もどんな競技が生まれるか楽しみです。
主催している運動会協会は、スポーツをプレイするだけでなく、スポーツを生み出すという新たな文化を作ることで、多くのデベロップレイヤーを生み出そうとしています。彼らが日本各地や世界に出ていき、各地で未来の運動会を実施して新たな競技を生み出すことで、スポーツ競技人口を増やしたり、新たに生まれる道具や設備などが商品化されることで、地域の産業振興にもつながるなど、スポーツ共創を通じた新たな社会づくりを目指しています。
今後2020年に向けて、未来の運動会で使われた競技や、そこで生まれた道具や設備などをアーカイブして共有していく取り組みも進んでいます。それにより、過去の競技などを改変したり、道具を改造して競技に取り入れたりと、スポーツ共創がより加速していきます。そうすれば未来の運動会が日本各地で開催される日も遠くなさそうです。
関連リンク
- 未来の渋谷の運動会:https://undokaishibuya.com/
- 一般社団法人運動会協会:http://www.undokai.or.jp/
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