Column

2020年 FabCafe Tokyoより新年のごあいさつ

あけましておめでとうございます。本年もFabCafe Tokyoをよろしくお願いします。

代表メンバーから2020年の抱負とご挨拶をお届けします。

 


金岡 大輝 / FabCafe CTO

 

2012年3月にFabCafe Tokyoができて、今年でもう8年。

オープン当初はいわゆる「メイカースペース」という枠組みの中で自分たちを説明していたけれど、活動の幅の広がりと共にその枠には収まらなくなって行き、毎年のように自分たちの存在を再定義し直し、気づけば8年が経ちました。

今では世界10拠点に広がり、年初にはマレーシア・クアラルンプールに11番目のFabCafeが誕生する予定です。

FabCafeとは何か。それを一言で定義するワードは結局のところいまだにありませんが、そのキーワードは「コミュニティ」にありそうです。多彩なバックグラウンドや専門性をもつ個人がカフェという開かれた場を通じて集まり、すでに40以上のコミュニティ (バイオ・ハプティクス・ドローン・VR….etc) が発生し、日々実験的なプロジェクトが生まれています。

国や社会、民族など、背負うべきアイデンティティがより流動的で軽やかになっていく昨今、ガバメントや社会システムといったトップダウンで変えられることがどんどん少なくなるほどニーズが膨大化していく中で、コミュニティという、従来の組織とは異なる新しいかたちが、これからの課題を解決していくための一つの答えかもしれません。

家族、仕事、居住地といった既存の概念が加速度的に流動化するなかで、その地に存在するコミュニティを束ねるHUB的存在 (=FabCafe) がプリミティブなインフラの一つになるかも? と思っています。

FabCafeは、コミュニティドリブンの実験場。
2020年のFabCafeもよろしくお願いします。


Kelsie Stewart / FabCafe Global コミュニケーションコーディネーター

今からちょうど100年前のアメリカは「狂騒の20年代」と呼ばれる時代を過ごしました。このようなニックネームが付けられる時代というのは、アメリカの歴史の中で唯一この10年間だけです。この10年間で、最初の商用認可を受けたラジオ局が誕生し、1920年の米国大統領選挙の選挙結果を生放送することで、全国の聴衆に大統領の声を直接届けることができるようになりました。これこそが、今日私たちがマスメディアとして知る媒体の誕生でした。

それから100年が経った今、2020年。SNSが社会的、政治的、そして環境的問題に関する情報を発信し、そしてSNSを通じて私たちは強い繋がりを生むようになりました。例えばこのコラムを執筆する3日前、オーストラリアでの深刻な森林火災に対して、オーストラリア人コメディアンのセレステ・バーバーがフェイスブックで:「どんな形でも構いませんので、ご支援をお願いします。本当に恐ろしい事です。」と投稿をすると、たったの48時間以内で、ニューサウスウェールズ州の地方消防局と旅団寄付基金に2,000万米ドル以上が寄付されました。

こういった強力なオンラインチャンネルを通じて、ユーザーはニュースを読み、共感し、知識を共有し、そして寄付をし、そして解決に向かうための一員であること、または少なくともそのプロセスの一部であるという肯定感を得ることはできます。しかし、現代の活動家にとって最も重要な社会的および環境的問題を適切に消化し、発信し、行動を起こすための起爆剤というのは、これだけで充足するのでしょうか?SNSは確かに社会の変化に関して注目の集まるリソースを提供し続けるでしょう。しかしだからこそ、オフラインのスペース、集会、行動は、2020年において意味のある社会的変化に対して、重要な機会を提供すると私は信じています。

地元のクリエーター、教師、エンジニア、アーティストなどの繋がりが広く、深くなるこの寛容的な場には、複雑な課題に対するソリューションを迅速に行動をおこしプロトタイプを作るための知識と道具があります。FabCafeは、こういった挑戦を支えるための理想のプラットフォームであると、信じています。2020年のFabCafeのビジョンとして、多様な発起者と実行者を集めて、国内外問わず有意義な影響を与えるための協業の場でありたいと考えています。

これからの10年には呼び名がつくでしょうか?2020年は、100年前の「狂騒の20年代」に肩を並べることができるような20年代にできるでしょうか?この10年を終えた時、あなたはその狂騒の一部であったと確かに、感じることができるでしょうか?そうでありたいと願うあなたに、ぜひFabCafeで私や熱い仲間たちに会ってほしいと願っています。共に声を上げ、この新しいミレニアムの「狂騒の20年代」として、歴史に意味刻みましょう。


諏訪 光洋 / FabCafe CEO

 

9年前、日本に最初に生まれたFabLab鎌倉 (*1) とそのファウンダーの田中浩也氏と共に、デジタルファブリケーションの可能性を感じ、ロフトワークのクリエイターコミュニティと一緒にワークショップを行った。それは今で言うメイカソン (Make-a-thon) 、だったのだけどその頃まだこの言葉はなかった。

今では当たり前の連携になっているデザインの世界とデジタルファブリケーション。当時はこの2つは建築家を除くとほとんど繋がっていなかった。僕らがワークショップに招いたのはグラフィックデザイナーやデジタルクリエイターだったのだけど、デジタルファブリケーションに接した彼らは狂喜して新しいアイデアを次から次へと生み出しレーザーカッターで切られた海苔のおにぎりなどその当時はヘンテコなものが沢山つくられた。 (今では普通に売ってるよね)

FABとクリエイティブの出会いの可能性を感じた僕らは、ちょうど当時サードウェーブコーヒーが生まれ再び街のカフェがコミュニティとして再注目されていた中、FabLabよりもっとオープンに人が集うカフェを通してFABとクリエイティブコミュニティをつなげたいと考えた。

FABの概念を生み出したMITのニールガーシェンフィールド教授 (*2) にFabCafeのアイデアを伝えると、彼は笑いながらOKをしてくれた。こうしてFabCafeがスタートした。(そしてその誕生後、彼は僕らに「FabLabは息子だけど、FabCafeはその妹だねって笑って話をしてくれた」)

それから8年。今世界に10箇所のFabCafeが存在し、2020年中には (多分) 3つのFabCafeが誕生する。

誰でも気軽に入ることが出来るクリエイティブのコミュニティ。そこはいつも建築家が模型を広げ、カッターで工作をするグラフィックデザイナーもいれば、併設されたバイオラボでピクルスを醗酵させているバイオアーティストもいる。スタートアップの打ち合わせも、パラメトリックデザインやアルゴリズムデザインの勉強会も行われている。よく「わからない」「知らない」デザイン、クリエイティブ、エンジニアリングも美味しいコーヒーと一緒に眺めているだけで、その世界は近づき知ることが出来る。

街から街へ。才能から才能へ。カフェというリアルな場所を通して繋がるクリエイティブコミュニティ。

今年もFabCafeをよろしく。

*1: FAB https://en.wikipedia.org/wiki/Fab_lab
*2: https://en.wikipedia.org/wiki/Neil_Gershenfeld

FabCafe Tokyoを今年もどうぞよろしくお願いします!