Column

関係性を築く建築をつくる大工・渡邊覚さんの魅力を探る

今から1300年前、都から派遣され、藤原京や平城京、平安京の建築にも携わったと伝えられている「飛騨の匠」。飛騨の匠の精神が息づく飛騨には、現在でも建築業に従事する人の割合が高いと言われています。美しい町並みと高い技術を持つ大工さんや職人さんがいる町に、世界中から興味を持った人が訪れています。このブログでは、飛騨で活躍するすごい技術を持つ大工さんの魅力を伝えるべく、先人の技を引き継ぎながら、今のつくり手として活躍されている現代の飛騨の匠を紹介します。フォーカスするのは、ワタナベ建築の渡邊覚さん(わたなべ・さとる)さん。書き手は、cafeと宿泊担当の優子です。


飛騨高山には、宇津江という地域があります。観光地である町中から離れた里山で、温泉施設があったり、キャンプ場を兼ねた四十八滝県立自然公園という名所もあります。近くには、地域内外の人が生活に使う水を汲みにくる湧き水が湧いていたりする、自然豊かな場所。

 

宇津江にある木工場で作業しているのは渡邊覚(わたなべ・さとる)さん。渡邊さんは、飛騨出身。修行を重ね、独立された大工さんです。

「ワタナベさんの仕事。」中には今年グッドデザイン賞を受賞した建築も。

渡邊さんの手がけられた建築は町中にあります。その建築の魅力を、そこに住まう・営む人の声、そしてそこに行ってみた時に感じたことを通じてお伝えします。

 


◯2019年に、飛騨古川駅近くにオープンしたゲストハウス・やまなみ/Yamanami

広島からの移住者であるオーナー高原さんと女将のあやかさんが、迎えてくれますよ。
オーナーの高原さんは、”えん”という尾道焼きのお店も経営されています。

ゲストハウス・やまなみのオーナーと女将はこう話してくれました。

構造とか技術の事とかを知らない素人のアイデアで「こんなふうにしたいな」って話すと、親身に聞いてくれて、受け入れ、どうやったら実現できるかを一緒に考えてくれる。またアイデアをよりよくなるための提案をオーナーのレベルのひとつふたつ上のレベルまであげてくれて寄り添いつつも、よりよいものづくりができるよう導いてくれる。覚さんにやってもらいたい。という思いには、安心とか信頼を越えたものがあるんです。

最後に仕上げたという玄関入ってすぐの床部分のデザインは、「やっぱりこの部分のデザインは斜めにした方がいいんじゃないか?」と、最後まで渡邊さんの拘り抜いた仕事がみえると高原さんはいいます。

「ちょうどいい梁があった」と急遽作ったベンチも、古材の梁を活用し、その重厚感が、空間に安定感をもたらします。今ではなくてはならない存在のひとつ。

 

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◯こだわりのサイフォンコーヒーやカレーが美味しい・閃き堂/HIRAMEKIDO

渡邊さんと浅野翼建築設計室の浅野さんとオーナーの谷澤さんが自らもDIYし、空間を作りあげました。

谷澤さんがこの空間を渡邊さんと作り上げてよかったと思うことはなんですか?

閃き堂は、渡邊覚ありき。彼がいなければ完成もしなければ、始まることすらなかったかもしれない。彼は、古材を愛し、古材に愛された男。例えば、現場で古材の板が足りなくなったとする。すると、2日以内に古民家解体の話が舞い込む。連れ立って行ってみれば、求めていたものが全てある。こんなことは1度や2度ではなかった。「仕組まれている」と思ってしまうほどに。すべては彼の人徳と、大工としての熱意・技術・信頼があればこそ。彼が遊びに来てくれた晩は、いつだって1年に渡る改装作業の思い出話に花が咲き、尽きることはない。そして、また次のアイデアが浮かび、閃き堂は進化していく。谷澤家一同、渡邊覚にはどれだけ感謝しても足りない。

玄関を入るといきなり現れる大迫力の円柱。その中に入ると2つの扉が。左に入れば住居。右に入ると店舗。余計なものはなにもないオーナーの拘りの傑作。

 

広々としたcafeスペースは、どの席に座っても居心地がよくつい長居をしてしまう。漫画大賞の選考員をしているという谷澤さんのコレクションの漫画が壁一面にずらりと。その人に合った漫画を選んでもらえるのも魅力のひとつです。

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◯移築してきた古民家。今もなお変化し続けるやわい屋の屋根裏書店

店主朝倉さんが渡邊さんに依頼した理由とは?

「俺さぁ、朝倉と出会って決めたわ。独立することにするわ。」思い出してもシビれる。なんて男泣かせなセリフなんだ。続いたセリフはさらに男泣かせだった。「最初の仕事は、やわい屋でやること決めたからさ、なんか仕事ないか?」ぼくは、即答で「あります」と答えた。物置として使っていた屋根裏に這い上がり、現場用のライトを灯りに何晩も呑み明かした。話題はいつも好きな建築家のことや、理想の暮らしについてだった。そして、やわい屋書店は出来上がった。建築という見えない「空間」を産み出す覚くんは魔法使いだ。理想とする材は不思議と集まってきた。階段も本棚も施工中に舞い込んできた。出来上がった空間は想像を優に超えていた。

本棚もテーブルも朝倉さんや渡邊さんのご縁で、集まってきたこの地域に眠っていた古材を活用しているそうです。

 

どこか懐かしく、馴染む空間。朝倉さん自身が本をゆっくり読める場所を作りたい。という個人的な願いから実現した改装。開放的な縁側で外を眺めたり、時には書斎に閉じこもるような暗く狭い場所として両面を共存させます。

 

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◯宇津江の板倉

ここは一昨年、渡邊さんが、隣町にある築130年の板倉が取り壊されそうになっていたのを聞きつけ、現在のオーナーや何人かと協力して、自ら解体、再度組み立てて改築した建築。今は別荘として利用されています。この建築は、先日(2019年)発表された、グッドデザイン賞にて、設計デザイン施工したこの移築物件が受賞されました。

1階には大きな1枚ガラスの二重窓。ダイレクトに、美しい光が入り込み、森にまるでいるかのような居心地。豊かな自然を家の中にいながら感じられます。

古いものと新しいものが融合されている空間は、外観からは想像つかないほどモダンに。

 

ヒダクマの合宿でアメリカから来た学生たちに渡邊さんが説明する様子。解体した時の方法や手順など体験談を話してくれました。

渡邊さんが受賞したグッドデザイン賞の詳細はこちら

2018年にヒダクマが実施して渡邉さんにも協力してもらった合宿レポートはこちら


 

仕事から見えてくる渡邊さんの魅力「関係性を築く建築」
その場にいなくても仕事に渡邊さんの愛情と情熱がみえるのはなぜ

「技術+コミュニケーション
 大工って身近なんだと思わせてくれる存在です。」

誰からも愛されるのは、渡邊さんが一つひとつの仕事に誠実に向き合い、愛情を込めているからだと、手がけられたどの仕事を見てもわかります。
一般的に、職人の持つイメージというのは、寡黙で言葉少なめに黙々と作業をし、どちらかというと近寄りがたいといったところではないでしょうか?

もちろん、作業中など真剣な眼差しで、かつ情熱や拘りを持たれている部分も多いです。そこが彼の信頼と美しい仕上がりに通ずるのですが、大切なのは人と人とのふれあいを大事にして生まれるコミュニケーション。
そこを表裏一体に見せる物腰の柔らかさがまず、第一印象でクラアントに安心を与えるのでしょう。
今回お話を聞いて、それぞれの施主であるお店のオーナーが一緒に空間作りに取り組んだエピソードがありました。

これから何か始めたいと思う人たちが友人という垣根を越えて、彼に依頼し、「私も渡邊さんに依頼したい。任せたい。」と、繋がり、広がりをもっていきます。

よい建築、空間を作り上げていくということで、そこから繋がったご縁はこれからもきっと続いていくことと私は思います。
今も渡邊さんは、店舗に限らず住宅も手がけ飛騨の地域でクライアントと寄り添いその力を発揮されています。


飛騨の職人がいる町に遊びに来ませんか?

FabCafe Hidaのある飛騨古川は、飛騨の匠が作った美しい町並み、そして職人たちが住む町です。飛騨古川にご宿泊の際はぜひFabCafe Hidaをご利用くださいませ。

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