Event report
2026.9.26
阪本 健吾
FabCafe Fukushima Staff / Writer
株式会社図図倉庫(ズットソーコ)Program Manager
FabCafe Fukushima を運営する株式会社図図倉庫(ズットソーコ)は、2026年6月に東京・下北沢の BONUS TRACK で開催された「環境の六月」に参加しました。BONUS TRACK を運営する株式会社散歩社と協働し、展示やワークショップ、トークセッション等を展開。「手をかける、練習。」をテーマに多様なコミュニケーションが交わされた1か月間を振り返ります。

会期中無休で開催されたのは、下北沢と飯舘村、それぞれの現場から「環境にどう関わるか」という問いをひらく展示企画「手をかける、練習。」です。BONUS TRACK を設計した株式会社ツバメアーキテクツ、そして飯舘村・図図倉庫のリノベーションを設計した一般社団法人コロガロウ/佐藤研吾建築設計事務所によるふたつの建築模型を中心として、それぞれの場の生成過程や現在地、場づくりに関わる人々などを紹介しました。
鉄道の地下化によって都市に生まれた余白ともいえる BONUS TRACK と、震災・原発事故を機に営業停止となったホームセンター跡地を改装した図図倉庫。展示空間には、ふたつの異なる場を運営する人々による往復書簡の記録が配置され、それらの共通点と差異がゆるやかに示されました。また、小さな鉱石から放たれる放射線、広場を行き交う人々のコミュニケーションなど、目には見えない領域の「環」(まわり)と「境」(さかい)にまで思いを巡らせるしつらえは、来場者一人ひとりの日常にある「環境」へと意識をひらいていきました。
展示「手をかける、練習。」の関連企画として開催されたのは、全3回にわたるトークセッション。散歩社の編集者 小林野渉さんと図図倉庫代表の矢野淳がモデレートし、多様なゲストを迎えて人と環境の関係性について語り合いました。
Session 1 は「環境と、場と、対話する人々―実践者たちの手のかけ方」と題し、様々なフィールドで活動する人々の環境との関わり方に焦点を当てました。ゲストに迎えたのは、金澤聡子さん(金澤バイオ研究所 ディレクター)、松島宏佑さん(Earth Sensing Technologies Inc.)、金子結花さん(一般社団法人シモキタ園藝部 理事)です。豊かな自然環境に身を置いて受け取る情報量、対象に手をかけて没入することによって生まれる感覚、ともに実践することで生まれる「生き残るためのコミュニティ」…… 多様な話題が飛び出し、現場で身体と心を動かしながら活動を続けるゲストたちだからこそのセッションが繰り広げられました。
Session 2「復興と開発の現場から―共創の場のデザイン」では、下北沢と飯舘村のそれぞれの現場で、行政や企業、そして市井の人々がどのように関わりを持ち、ことを前に進めてきたか/進めていくかということを主題として言葉が交わされました。ゲストは、関橋知己さん(一般社団法人シモキタ園藝部 理事)、木村義彦さん(東急不動産株式会社 環境エネルギー事業本部)、折口直也さん(環境省 環境再生グループ 福島再生・未来志向プロジェクト推進室 室長)。客席には世田谷区長の保坂展人さんも駆け付け、下北線路街【※1】が生まれた過程や、立場を超えた共創を可能にする様々な要素について振り返りました。飯舘村で進行している発電事業や環境再生事業のこれからについても意見が交わされ、顔が見える関係性のなかで立場の異なる人々がいかに共創を進めていくか、示唆に富む議論が展開されました。
Session 3 では、都市・アート・産官学を横断するプロジェクトを数多く手がけるパノラマティクス主宰の齋藤精一さん、BONUS TRACKの運営を通じて人々の「小さな声」をすくい上げてきた株式会社散歩社 代表取締役の内沼晋太郎さんをゲストに迎え、「小さな営みから社会を動かす―都市と地域の再編集」をテーマとして語り合いました。文化と経済の動きをつくり、あたりまえの風景をアップデートするためには――「分断のデザイン」や「フィクションの力」といった数々のキーワードが飛び出す、刺激的かつ人間への愛に満ちたセッションとなりました。
「環境の六月」最後の週末には、Earth Sensing Technologies によるワークショップ「Connecting in 下北沢 – 見えない繋がりを歩く時間 -」、そしてマーケット企画「環境市庭」が開催されました。
「Connecting」は、環境を構成する離れた物質どうしが水を媒介につながっていることを、光によって可視化する作品です。6月26日(金)に開催されたワークショップでは、アスファルトやコンクリートといった人工的な構成物のある都市環境で「つながり」を体感しながら歩きました。散歩社の小林野渉さんによる下北沢のまちあるきが併せて展開され、多様な視点から下北沢の環境にふれる時間となりました。
6月27日(土)、28日(日)に実施したマーケット企画「環境市庭」では、飯舘村をはじめ福島県浜通り地域からたくさんの仲間が駆け付け、それぞれの場所で/それぞれの仕方で「環境と対話する」人々の試みが下北沢で一堂に会しました。飲食やZINE、自然由来のプロダクトから「がらくた」まで。多様な環境へのアプローチが、BONUS TRACK の広場に満ちたひとときとなりました。
また、1か月間の会期全体を通して、「環境と対話する ZUTTOトレーラー」が下北沢の各スポットに出現。内部には、各地で採集した環境音、Earth Sensing Technologies による放射線を可視化する作品《素粒子の鼓動》、シモキタ園藝部によるスワッグ、Pimlico Arts JAPAN による海洋プラごみを素材とした作品など、飯舘村および下北沢で出会った多様な営みがインストールされました。金澤バイオ研究所による”地消地産”型コンポスト「微生物あつあつ体験」と併せて、多くの皆さまに多様な「環境との対話」にふれていただきました。
1か月間の取り組みを通してみえてきたのは、「環境」ということばがもつ多義性だったように思います。風景をぼんやりと眺めてみること、聞こえてくる音に耳を澄ませてみること、みんなで食事を囲むこと、何かを建てて築くこと。そのすべてが、環境との対話なのかもしれません。
石ころひとつから、他者と交わす会話まで。ふだんは素通りしてしまうような何気ないものごとの中にこそ、環境と「私」のささやかな関係性を考えるヒントが詰まっているのではないでしょうか。
図図倉庫の公式ポッドキャスト「図図ラジオ ZUTTO RADIO」では、全3回にわたって開催されたトークセッションのアーカイブエピソードを公開中です。Spotify または YouTube からお聴きください。
会期:2026年6月8日(月)〜6月30日(火)
会場:BONUS TRACK
住所:世田谷区代田 2-36-15(下北沢駅南西口 / 世田谷代田駅 徒歩5分)
主催:株式会社散歩社 / 環境の六月
助成:アーツカウンシル東京[地域芸術文化活動応援助成]
展示「手をかける、練習。|図図倉庫 × BONUS TRACK」助成:HAMADOORI CIRCLE PROJECT
【※1】下北線路街:小田急電鉄 東北沢駅から世田谷代田駅までの線路跡地に広がる再開発エリア。BONUS TRACK はそのひとつにあたる場所で、下北沢駅と世田谷代田駅の間に位置している
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阪本 健吾
FabCafe Fukushima Staff / Writer
株式会社図図倉庫(ズットソーコ)Program Manager1996年兵庫県出身。旅行代理店での営業職、地域新電力での総務・広報職、福島県双葉郡葛尾村のアートプログラム「Katsurao Collective」スタッフを経て、2026年4月より同県相馬郡飯舘村に転居し現職に従事。LAWS(ロウズ:Local Art Writers’ School)1期生。
1996年兵庫県出身。旅行代理店での営業職、地域新電力での総務・広報職、福島県双葉郡葛尾村のアートプログラム「Katsurao Collective」スタッフを経て、2026年4月より同県相馬郡飯舘村に転居し現職に従事。LAWS(ロウズ:Local Art Writers’ School)1期生。























