Project Case
2022.7.31
FabCafe TokyoとFabCafe Hidaは、2018、2019年の2年間にわたってニューヨーク州立大学バッファロー校のサマープログラムを企画・実施してきました。プログラムの目的は、建築の最新技術を学ぶ学生たちが、東京で最新のデザイントレンドをインプットし、さらに、飛騨独自の大工・工芸の歴史を学び、地元の木材製造業が現在直面している課題に対する建築的ソリューションをプロトタイプ化するというものでした。
3度目となる2022年のサマープログラムでは、コロナ禍の影響で学生たちは日本に行くことができませんでした。パンデミック発生以来、世界中の国際的なチームは、さまざまな渡航制限に遭遇し、遠隔でのコラボレーションは大学や企業にとって不可欠な手段となりました。
すでに多方面で変化が生まれているように、コロナ禍が落ち着いたとしても、この傾向はなくなるどころか、一般的な働き方になるでしょう。一方で、遠隔における共創には、必要な技術やシステムのさらなる発展が必要です。そこで、2022年のサマープログラムでは、別々の場所や時差を越えて、拡張現実(AR)や3Dを使ってグローバルなチームがどのように協働できるかを検証することに挑戦しました。
FabCafe Tokyo/Hidaチームは、日本の木材加工業とアメリカの建築家が遠隔でコラボレーションできる効率的なワークフローを提案しました。まず、学生たちが3Dモデルデータを飛騨の大工職人に共有。職人はHoloLens(ARヘッドセット)を用いて、切断や組み立ての段階で木製のブロックにデータを実際に投影して加工するというプロセスです。さらに、試行錯誤した結果はオーストラリアのソフトウェア開発者へフィードバックし、設計技術、施工技術、そしてソフトウェア開発の3点において、ARや3D技術を建築設計に活用する制作プロセスを検証。将来に向けてより標準化されるためのヒントを得ました。
プロジェクトのステークホルダーマップ。3拠点の関係者が遠隔でプロトタイプするためのプログラムを提案した。ARの可能性はエンターテインメント分野で広く追求されていますが、FabCafeとニューヨーク州立大学は、このプログラムを通じて、空間デザイン、プロダクトデザイン、エンジニアリング、製造などの分野で、AR技術を用いた共創プロセスの可能性に手応えを得ました。
今回、FabCafe Hidaから提供されたLiDARデータをもとに、Fologramというプログラムで小さな構造物やパビリオン、家具、造形物などを3DとARでデザインしました。そして、そのモデルデータを飛騨の大工職人に送り、現場でHoloLensを装着してARモデルを版木に投影し、それに合わせて切断・組み立てを行いました。
その過程で、飛騨の職人たちが難点をフィードバックすることで、学生たちは設計を練り直し、データを改善していきました。このプロセスにより、机上の理論ではない、人と人との対話と共創を通した、活用可能な技術を身につけることができたのです。
学生たちが作成した3Dデータ
大工職人からの要望で、チェーンソーの3DモデルをAR投影に取り入れた
今回のプロジェクトでは、13時間の時差を活用したコミュニケーションフローを実施しました。たとえば、ニューヨークの大学生が作成したデータを、現地の夜(=日本では朝)に日本のチームに共有し、学生たちが寝ている間に職人たちが検証。そのフィードバックを日本チームが夜(=ニューヨークでは朝)にシェア、職人たちが寝ている間に学生たちがデータをブラッシュアップする、といった要領です。
結果的に、プログラム自体は24時間止まらず、実質6日分のプログラムを3日間で凝縮して実施することができました。
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FabCafeでは、ARをはじめ、幅広いテクノロジーやクリエイターとの新たな共創プロセスを開発しています。以下のようなプログラムやテーマにご興味のある方はお気軽にご連絡ください。
- AR、3D、その他のソフトウェアのビジネスへの応用テスト
- プロトタイピングによる新しい製造プロセスの検証ハンズオン
- ラーニングによる従業員のスキルアップ
- 現地/リモート、またはハイブリッドの学習・製造プログラムの導入
プロジェクト概要
- プロジェクト期間:2022年3月〜5月
- クライアント: ニューヨーク州立大学バッファロー校
- プロジェクトメンバー: Nicholas Bruscia (ニューヨーク州立大学バッファロー校)、柳 和憲(株式会社柳木材)、金岡大輝 (FabCafe Tokyo)、岩岡 孝太郎(FabCafe Hida, “森を”事業部) 、浅岡 秀亮(FabCafe Hida, “森を”事業部)
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FabCafe編集部
FabCafe PRチームを中心に作成した記事です。
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