Project Case
2020.9.20
堀之内 里奈
FabCafe Hida マネージャー・Fabディレクター
飛騨の森でクマは踊る 森で事業部
Outline
テーブルで過ごす時間がワクワクするノベルティ
新型コロナウィルスの影響によりリモートワークや家族で集まる機会が増え、お家のテーブルで過ごす時間も増えたのではないでしょうか。テーブルで過ごす時間をより豊かなひと時にするために製作したのが、飛騨の広葉樹を使ったコースター「Hida Wood Coaster」とスマホスタンド「Hida Wood Stand」です。これらは、飛騨の家具メーカー株式会社イバタインテリアでテーブルなどの家具を購入した方に贈られるノベルティです。イバタインテリアさんはヒダクマが行う合宿での訪問先としていつもご協力をいただき、大変お世話になっています。ニューヨーク州立大学バッファロー校の飛騨合宿では、学生達に間近で曲げ木技術を見せていただいたり、学生の研究題材として圧縮曲げ木を提供いただきました。
製作は木材の豊かな知識と高い加工技術を持つ職人の田中清雄さん(田中建築)、ディレクションをヒダクマ /FabCafe Hidaが担当しました。ノベルティのロゴは、FabCafe HidaのFabマシン「レーザーカッター」と「UVプリンター」を使って施しています。このブログではイバタインテリアさんのノベルティに込められた気持ちや、田中さんの職人技が詰まった製作の裏側をご紹介します。
株式会社イバタインテリア
HP:https://www.hida-ibata.com/
プロジェクト概要
支援内容
ノベルティの開発・製作ディレクション
期間
2020年4月〜2020年6月
体制
・クライアント:株式会社イバタインテリア
・ノベルティデザイン・製作ディレクション:松本剛・門井慈子(ヒダクマ)
・ノベルティ製作:田中清雄(田中建築)
・レーザー彫刻・UVプリント加工:堀之内里奈(FabCafe Hida)
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FabCafe Hidaのコラムをご覧いただいたことがきかっけで、井端社長からノベルティ開発のご相談をいただきました。
Column
“飛騨らしさ”を形に込めた「HIDA HOUBA CUTTING BOARD」
ニューヨーク州立大学バッファロー校の飛騨合宿の詳細はこちら。
Event report
かやぶきやかご編み、曲げ木に宿る職人の技術を学ぶ ニューヨーク州立大学バッファロー校の飛騨合宿
Output
「Hida Wood Coaster」
<仕様>
樹種:クリ・ミズメ・ホオ・ケヤキ(製造時期、季節によって樹種が変わります)
サイズ:W100×D100×H50 (mm)
仕上げ:オイル塗装
「Hida Wood Stand」
<仕様>
樹種:ケヤキ・クルミ・サクラ・アカシア・チャンチュウ・ホオ・ジンダイニレ・トチ・キハダ(製造時期、季節によって樹種や組み合わせパターンが変わります)
サイズ:W80×D65×H70 (mm)
仕上げ:オイル塗装
Process
どんなノベルティにしよう?アイデアのブレーンストーミング
製作はアイデアのブレーンストーミングから始まりました。例えばテーブルと一緒に使える木製の鍋敷きや箸置き。お家時間を楽しめるスプーンなどの工作キット。イバタインテリアさんの曲げ木技術を使った物など、イバタインテリアさんと一緒にアイデアを膨らませていきました。再考しながらデザインを固めていきます。
ヒダクマ製作チームが提案したアイデア
イバタインテリアさんからの提案で「どんな方でも気に入っていただけそうな実用的な物」という方向性が決定。お家で過ごす時間はもちろん、来客を出迎える際に使ったり、家族が集まるテーブルでのひと時をより楽しんでいただけるような物が良いと考え、コースターとスマホスタンドを作ることにしました。コースターは輪じみ(冷たいコップに付いた水滴の跡)がテーブルに残ってしまうことを防ぐ機能があり、テーブルをより長く、綺麗に使っていただけます。スマホスタンドは家族がテーブルで団らんする際の、ちょっとしたコミュニケーションツールになりそうです。また、材料にはホオノキやミズメ、ケヤキなど広葉樹を数種類使うことで、より様々な飛騨の木に親しんでいただいたり、森の多様性を感じていただける仕様となっています。
デザイン
作るものが決まったら、次はデザインです。どんな形が喜ばれるか、イメージを膨らませます。コースターは2~3種類の広葉樹を寄木(様々な種類の木を組み合わせて接着してくっつける)にするアイデアや、形はシンプルな四角やイバタインテリアさんが使用する椅子の座面を模した形などを考えました。製作を担当した田中清雄さんと再現が可能であるか確認をしていただいたり、イバタインテリアさんにデザインを見ていただきながらブラッシュアップを重ねました。
スマホスタンドはスマホを置いた時の画面の見やすさ、大きさや重さを確かめるために、紙で模型を製作。田中さんにサンプルを作っていただき、実物を確認しながら細かな微調整をしていきました。
最初はスマホスタンドに充電器が通せるデザインを考えました。しかし、穴を開ける大きさを確保すると、コストがかかり過ぎたり、何となく重たい印象になってしまうことが実際に作ってみることで分かったので、充電器用の穴を無くして寄木の組み合わせ方を変更。このことで見た目もより軽く、コロンとした形が思わず手に取りたくなるようなスマホスタンドになりました。
スマホスタンドと寄木のマウスパッド、カッティングボードをFabCafe Hidaのスタッフに見せにきてくださいました
木材加工
木材の加工は田中清雄さんが担当してくださいました。田中さんはFabCafe Hidaのリノベーションにも携わっていただいた腕ききの大工さんです。ヒダクマの合宿プログラムでも組み木を作る様子を学生たちの目の前でデモンストレーションしていただいたりなど、日頃からとてもお世話になっています。
田中さんは端材にしてしまうのには勿体ない木を再利用し、コースターやメガネかけなどをご自身の仕事の合間に作っていらっしゃいます。
田中さんからのご提案により、コースターの表面を凸凹にし、コップが水滴でくっ付かないように加工しました。田中さんの長年の経験と感覚で、一度のカットでこの凸凹を作ります。不思議なことに、正面からは溝が見えないのに、触ったり、少し角度を変えて目を凝らすと加工されていることが分かります。この程よい凹凸はレーザーカッターマシンで上から彫刻しても、彫刻面が滲んだり歪んだりすることもなく、洗練された田中さんの技術に感動しました。
スマホスタンド
スマホスタンドはクルミ、サクラ、ケヤキなど約5種類の木を寄木にして製作。近くで見ても木と木の継ぎ目が全く分からないほどのとっても綺麗な仕上がりです。今回は特別に田中さんが持っている少しレアな飛騨の広葉樹も混ぜて納品してくだいました。経年変化でより深い色合いになるクワや、長年土の中に埋まっていることで綺麗な青色に変色したジンダイニレなどが混ざっています。
今後も作る時期によって寄木に使う樹種の配分が変わるので、一年を通じて少しずつ雰囲気が異なるコースターやスマホスタンドをお届けすることができそうです。
Fabマシンを使った仕上げの彫刻&カラープリント
ロゴデザインはイバタインテリアさんにサンプルを確認していただきながらデザインを検討。最終的には飛騨の広葉樹を使っていることをお伝えするため、「ibata interior」と「飛騨の広葉樹で作りました。」という言葉をロゴのように配置することにしました。このロゴはコースターとスマホスタンドの両方にプリントしています。
完成!
イバタインテリアさんと試行錯誤を重ねて完成したデザインと、田中さんの技術が詰まった飛騨の木で作る贅沢なノベルティが完成しました。スマホスタンドはランダムに並んだ広葉樹が見せる表情やコロンとした手に馴染む大きさがとても愛らしくて、いつも使いたくなるような仕上がりになりました。コースターは結露したコップが全然くっ付かず、特にこの夏は大活躍!このコースターやスマホスタンドを通して、木について興味を持っていただいたり、新しいテーブルで過ごす時間がより豊かなになったら嬉しいです。
Member’s Voice
飛騨産の木でノベルティをつくるのは初めてになります。飛騨のメーカーからこのテーブルを買ったということをお客様にも実感してもらえるように、今回は飛騨の木をつかったノベルティを製作することに拘りました。
このノベルティを来客の方に使用していただくことで自社や飛騨のPRにも繋がると思います。
完成品を見て、飛騨に沢山の種類の木があることに驚きました。中にはこれまで知らなかった木もありました。普段は海外のオークやタモといった黄色っぽい木を使用しますが、ホオノキの緑色やケヤキのオレンジ色などが面白く、私たちの普段見ている木は一部であって、もっと見せるべき色は沢山あるのだと感じました。
これまでは飛騨のお菓子などをノベルティとしてお渡ししていましたが、形に残ることで飛騨のメーカーから購入したことを思い出してもらえたらうれしいです。
井端大介 イバタインテリア 取締役社長
端材のような価値がないとされている物も普段から木を扱っている自分にとってはとても可愛らしい存在です。小さな端材も自分の仕事の合間の時間を使って、一人前にするお手伝いをしてあげたい。新たに誰かの手元で喜んでもらえたら嬉しく思っています。
田中清雄 田中建築 創立者
広葉樹の森の豊かさと、飛騨の職人さんの技を、今回のノベルティを通じて多くの人に知っていただけること楽しみにしています。端材を使用することは”もったいない”も理由にありますが、端材ならでは節や割れ、虫食い穴など、まだ活かし方は模索中ですがポテンシャル高めの魅力が詰まったものがいっぱいあるので、もっとチャレンジしていきたいなと思います。
門井 慈子 森のクリエイティブディレクター
FabCafe HidaやHidakumaでは飛騨の木を使ったワークショップイベントや、一般流通では見かけないユニークな形の木、入手困難な規格の板材や丸太をその場で購入できるイベント「WOOD MARKET 蔵出し広葉樹」などを定期企画・開催していますので、ぜひFabCafe Hidaに遊びにきてくださいね。イバタインテリアさんの工場や、田中清雄さんに撮影ご協力いただいたヒダクマのブランドフィルム2020もぜひご覧ください。
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堀之内 里奈
FabCafe Hida マネージャー・Fabディレクター
飛騨の森でクマは踊る 森で事業部飛騨古川出身。飛騨市内の飲食店や奥飛騨温泉郷で仲居の経験があり、接客を活かしながら飛騨とものづくりに関わる仕事がしたいと2016年11月にFabCafe Hidaにジョイン。仕事を通して木工やFabを経験。地域に寄り添いながら、FabCafe Hidaを訪れる方々に飛騨のさまざまな魅力を楽しく、わかりやすく伝えることを目指しています。Diversity on the Arts Project 5期生。京都芸術大学 通信教育部 洋画コースに在学中。森の地衣類の色が好き。
飛騨古川出身。飛騨市内の飲食店や奥飛騨温泉郷で仲居の経験があり、接客を活かしながら飛騨とものづくりに関わる仕事がしたいと2016年11月にFabCafe Hidaにジョイン。仕事を通して木工やFabを経験。地域に寄り添いながら、FabCafe Hidaを訪れる方々に飛騨のさまざまな魅力を楽しく、わかりやすく伝えることを目指しています。Diversity on the Arts Project 5期生。京都芸術大学 通信教育部 洋画コースに在学中。森の地衣類の色が好き。