Event report

2019.12.24

「進化する『染色』技術と素材」Material Meetup KYOTO vol.6 レポート

本記事は、2019年12月18日に開催された『Material Meetup KYOTO vol.6』のレポートです。(text : 南 歩実 [Loftwork])


こんにちは!ロフトワーク京都の南です。

先日、FabCafe KyotoでMaterial Meetup KYOTOが開催されました!

2019年12月18日(水)に開催されたMaterial Meetup KYOTO vol.6のテーマは 「進化する『染色』技術と素材」。

石器時代の壁画から、私たちのそばにあり続ける色を付ける「染める」という技術。今回のミートアップでは、さまざまな産業で環境や人体への負荷が大きな社会課題になっているなかでサスティナブルな染色プロダクト開発に取り組む事例や、印刷ビジネスの最新動向など、多彩なプレゼンターにご登壇いただきました。

様々な視点から見た「染色」を知り、プレゼンターと参加者で活発な交流が行われたイベントの様子をレポートします。

▼開催概要:Material Meetup KYOTO vol.06 「進化する『染色』技術と素材」https://mtrl.com/event/kyoto/191218_mmk_06/

染色メーカー、繊維メーカー、ファッションデザイナー、研究者……様々な分野のプレイヤーがFabCafe Kyotoに集結!

当日は会場は満席!約70名の方が来場し、椅子が足りなくなるほどの人が集まりました。イベントが始まる前から、プレゼンターが持ち込んだ素材を触っている人もちらほら。

今回のイベントでは、「染色」に関わる染色メーカーや繊維メーカーや、ファッションデザイナー、研究者、メディア関係者など、様々な分野で活躍されている方が集まりました。

イベント開始前から参加者同士で交流があったり、素材を興味津々に見つめている方が多く、「染めの技術」がとても注目されているということを改めて感じました。

サスティナブルな染色とどう向き合うか?「染色」について考える夜

メインプレゼンターとして今回お迎えしたのは、宮本 和友さん(京都デニム)、墨 勇志さん(株式会社 艶金 代表取締役社長)、堀江 賢司さん(堀江織物株式会社 取締役、株式会社OpenFactory 代表)の3組。

それに加えて、飛び込みショートプレゼンテーション “ライトニングトーク” では、石川 亮太さん(泉工業株式会社・営業セクション)にご登壇いただき、「染色」について様々な視点から語っていただきました。


京友禅染めを活かし、”つかい方をデザインする” デニム作り

▲ 京都デニム 宮本 和友さん

染色技術の後継者育成や新しい伝統産業の世界発信を目指して、江戸時代から着物製造を家業とするデザイナー桑山豊章さんとともに、2007年「京都デニム」を立ち上げた宮本さん。着物の友禅染めから発展し、デニムを染めています。デニム以外にも、のれん制作や、御朱印入れなどのノベルティの制作、壁紙制作など、幅広く手掛けています。

デザイナーの桑山豊章さんは、代々家業で着物を作っていく中で、「染め」を伝えていきたいと模索していましたが、洋服が主流のこの時代、「着物を着るチャンスがない」「値段が高い」「1人で着物を着ることが出来ない」など、様々なハードルが存在しました。

着物を着たことがない人は沢山いても、デニムを履いたことがない人はほとんどいない。デニムくらい簡単に身に付けるようにできたら……という想いから、「京都デニム」が誕生しました。

「ゴミをなるべく出さないでおこう」「要らないものは買わないでおこう」ということが叫ばれている時代。3R、5Rなど、いろんな切り口で「R」が定義されていますが、京都デニムでは新しい「R」として「Refurbish」を提案したいと考えているそう。

「Refurbish」というのは、「磨き直す、一新する」という意味で、着物の「染め直す」文化がキーワードになっています。京都デニムでは、自分が持っているジーンズに友禅染めで柄を入れてみませんか?という提案をしています。

「直すことで愛着が湧いたり、気に入ったものを身につけることで気持ちが豊かになったり。染色の中で受け継いでいきたいのは、人と人との間にある「想い」を受け継ぐ1つの手段として、着物の染色をデニムに活かすというのが、先人の知恵を残すことになるのでは。」と語ってくださいました。

食品製造過程の「のこり」で染めるプロダクトブランド「KURAKIN」】

株式会社 艶金 代表取締役社長 墨 勇志さん

株式会社艶金は、創業130年を迎えた衣料向け生地の染色会社です。生地を染色をするときは、生地の種類によりますが、60度から135度くらいまで水の温度を上げて染めているそう。ムラなく染めるには、大量の水の中に生地を浸けて染め上げる必要があるので、大量の水の温度を上げる為に猛烈な熱源(エネルギーを)使うのが特徴。ものすごい量の二酸化炭素を出す産業なんだとか。

染色の仕事をする以上、二酸化炭素を多く輩出してしまう事実は変えられません。染色メーカーの責任として、何か環境配慮ができるようになれるといいなあと、ずっと考えていた墨さん。2008年に、もったいないという想いを込めた「のこり染」の開発に着手し、「KURAKIN」ブランドを立ち上げました。「KURAKIN」は、暮らしの中で布巾をもっと楽しく使いたいというメッセージが込められています。

「のこり染」では、色素の出そうな食品加工会社に依頼し、様々な素材(食品残渣)を集めて使用しています。あずき、くり、ウーロン、パセリ、ワインなど、その種類と出てくる色は多岐に渡ります。

大手チェーンが大量生産をして、大量の売れ残りを出している産業になっているアパレル業界。売れ残った洋服をアウトレットやセールでで出しても売れ残りが発生していて、最終的に捨てるしかない現状だそうです。

アパレル業界でもSDGsが叫ばれていますが、「環境配慮」を一種のトレンドのようにしている気がして、どこか違和感を感じることもあるという墨さん。

「そもそもファッションというのは、それぞれの人が個々で楽しむものであり、数量限定であったり、色が限定であっても、生産者の顔が見えたり、なるべく使い捨てじゃなくて長く使えるとか、そういう価値観が出てくるんじゃないかな。そういった期待も込めて、こういった商品を作っている。」と、ブランドへの想いを教えてくださいました。



デジタルテキスタイルと市場動向】

堀江織物株式会社 取締役、株式会社OpenFactory 代表 堀江 賢司さん

「僕とジャンケンして勝った人3名に来年のカレンダーをプレゼントします!」から始まった堀江さんのプレゼンテーション。

ポリエステルなどの染色を行う堀江織物株式会社で、デジタルテキスタイルの製造を行っている堀江さん。1mからオリジナルテキスタイルを作って・買えて・売れるデジタルテキスタイルマーケットである「HappyFabric」も運営しています。

「ネットと工場では、共通言語が違うことがある。」と話す堀江さん。工場はできないハードルを考えがちで、インターネットは簡単に買える仕組みを考えがち。
その中で、どう品質を保つかという点に着目し、「今までできなかったことが、デジタルだったらできる」という部分を追求していきたいという思いで活動しているそうです。

福祉施設の方のアートを商品化したり、ボードゲームクリエイターの商品開発や、葬儀業界の棺桶へのデジタルテキスタイルなど、活動は幅広く、デジタルの可能性を感じます。

「HappyFabric」では、綿の顔料プリントを使用したいという声が多いそうですが、仕上がりのクオリティを保つことが難しいため当初あまり乗り気ではなかった堀江さん。一度お試しで2週間サービスを提供したところ、通常の製品で求められる印刷品質よりもユーザーニーズを優先したことで、満足度がグッと上がったそう。

「今までだったらこれはダメなんじゃないかっていうことも、一度ユーザーにデメリットを伝えてみることで、どういう反応が返ってくるか。そうしたら新しい可能性が見えてくる。」と自身の経験から話してくださいました。

【ライトニングトーク:後染テキスタイル用ラメ糸の世界

▲ 泉工業株式会社・営業セクション 石川 亮太さん

ライトニングトークでは、2019年11月22日に開催された『Material Meetup KYOTO vol.5』でもご登壇いただいた泉工業株式会社の石川さんが登場。

合繊繊維のフィルムを細くスリットして糸状にした特殊な糸「ラメ糸」について詳しく説明してくださいました。

ラメ糸には「先染めラメ糸」と「後染めラメ糸」があり、糸の状態だと2つの見た目はほとんど変わりません。ですが、先染めラメ糸で後染めをすると、化学変化により、ラメの煌めきや質感がなくなってしまうため、透明になってしまうそうです。一方、後染めラメ糸を使って後染めすると、独自の構造により、後染めしても変性しないそう。

「ラメ糸で何か困った人がいれば……!ラメ糸を使いたくなったらご連絡ください!」と、普段染物に関わる参加者に、新しい可能性とラメ糸の世界について話してくださいました。

様々な交流が行われたネットワーキングタイム

プレゼンテーションが終わった後は、来場された方同士での交流や、プレゼンターとの交流が活発に行われました。
新しいモノがまた生まれそうな予感……!今後が楽しみです。


*次回予告*

次回のMaterial Meetup KYOTO vol.7 は、2020年1月23日(木)に開催!

テーマは、「フレキシブルな空間のための建築と素材」。

使える機能や耐久性に加えて、人の導線に応じて自由自在にかたちを変えることができたり、設置している場所や土地に負荷をかけない仕組みもデザインされている。そんな ”フレキシブル(柔軟)” な空間について、素材を中心にした視点から考えます。

是非ご参加ください!

▼詳しくはこちら
https://mtrl.com/event/kyoto/200123_mmk_07/

Material Meetup とは

Material Meetup は、「素材」をテーマに、ものづくりに携わるメーカー、職人、クリエイターが集まるミートアップ。

  • 新しい領域でのニーズや可能性を探している、「素材を開発する」人
  • オンリーワンの加工技術をもつ、「素材を加工する」人
  • 持続可能な社会を目指して、「素材を研究する」人
  • 機能や質感、意匠性など、複合的なデザインを行ううえで様々なマテリアルを求めている、「素材からデザインする」人

…そんな人々が「デザインとテクノロジー」そして「社会とマテリアル」の観点から、業界の垣根を超えてオープンに交流し、新たなプロジェクトの発火点をつくりだす機会を継続的に開催しています。

カタログスペックだけではわからない素材の特性や魅力を知り、その素材が活用されうる新たな場面(シーン)を皆で考える。「素材」を核に、領域横断のコラボレーションやプロジェクトの種が同時多発する場。それが Material Meetup です。

2018年のスタート以降、東京・京都の各拠点ごとに、それぞれ異なるテーマを設け継続開催しています。

■ Material Meetup 過去開催情報:https://mtrl.com/projects/material-meetup/

Author

  • FabCafe Kyoto編集部

    FabCafe Kyotoが作成した記事です。

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