Interview
2021.9.2
居石 有未 / Yumi Sueishi
FabCafe Nagoya プロデューサー・マーケティング
ドリッパーに豆を入れる音、お湯がコーヒーを透過してサーバーに落ちる音、サーバーからカップへコーヒーを注ぐ音。それらの”音”が一つの演奏になったら、どんな新体験になるんだろう。
そんな思いつきが発端の実験イベントを経て、コーヒーを”聴覚”で楽しむ実験ユニット Drip Drop Dope [Cafe next gen performance] 青山、浅井は何を得たのか?
FabCafe Nagoya プロデューサーのスエイシ(居石)がお話を伺いました。
-
青山 祥
嗜好品プランナー/嗜好品FESTA 主催
愛知県豊橋市出身、中京大学経済学部卒業。カフェの定額制サービス“カフェパス“で拠点立上げ等を行ない、2020年10月よりフリーランスへ転向。
日常の中で気軽にコーヒーや嗜好品を楽しむ社会になるよう、イベントやプロデュースを行う。
現在は、ドリップパックの定期便サービス“BLAN.CO”の事業運用や、新しい嗜好品の楽しみ方を提供する“嗜好品FESTA”のイベント運営などを行なっている。愛知県豊橋市出身、中京大学経済学部卒業。カフェの定額制サービス“カフェパス“で拠点立上げ等を行ない、2020年10月よりフリーランスへ転向。
日常の中で気軽にコーヒーや嗜好品を楽しむ社会になるよう、イベントやプロデュースを行う。
現在は、ドリップパックの定期便サービス“BLAN.CO”の事業運用や、新しい嗜好品の楽しみ方を提供する“嗜好品FESTA”のイベント運営などを行なっている。 -
浅井 睦 / あさい・むつし
Metalium llc代表
コンセプトデザイナー / Vibes研究者1991年大阪府生まれ。舞鶴工業高等専門学校機械工学科修了。IAMAS 博士課程前期在学中
メタ思考から捉えることのできる感覚を「Metalium」という素材として捉え、日常にそっと置きたくなる不思議な感覚の日用品と、特別な体験ができるイベントや体験会などの非日用品を制作する事業を展開するMetalium llcを創業。
代表的な事業として、メタ思考から発生する事象を素材として捉え、活用技術の探求を行うオープンラボ高次素材設計技術研究舎 Melt.の運営を行う。Metalium llc. https://scrapbox.io/metalium/
高次素材設計技術研究舎 -Melt. https://scrapbox.io/meltarchives/
1991年大阪府生まれ。舞鶴工業高等専門学校機械工学科修了。IAMAS 博士課程前期在学中
メタ思考から捉えることのできる感覚を「Metalium」という素材として捉え、日常にそっと置きたくなる不思議な感覚の日用品と、特別な体験ができるイベントや体験会などの非日用品を制作する事業を展開するMetalium llcを創業。
代表的な事業として、メタ思考から発生する事象を素材として捉え、活用技術の探求を行うオープンラボ高次素材設計技術研究舎 Melt.の運営を行う。Metalium llc. https://scrapbox.io/metalium/
高次素材設計技術研究舎 -Melt. https://scrapbox.io/meltarchives/
実験イベント当日の様子(FabCafe Nagoya)
お二人の普段の活動やコンセプトについてそれぞれ教えてください。
浅井:まだ手に触れることのできない未知の素材を、メタ思考(物事を一つ上の視点から考える思考)から生まれ出るこの世の存在する全てを材料として取り扱い、様々な人に提供することを目指して、とりあえず色々面白そうなことを触れるようなものをつくったり、企画したりしています。
青山:僕は、コーヒーなどの嗜好品に関する事業の運用やイベント企画を行なっています。様々なジャンルの方と一緒に活動をすることで、美味しいだけでない、新しい嗜好品の楽しみ方を模索し続けています。
Drip Drop Dope [Cafe next gen performance](通称:D3)はどのような経緯で思いついたのでしょうか?
浅井:元々、FabCafeのスタッフと3Dプリンターでコーヒードリッパー作っていたんだよね。そこを起点にして新しい何かをやってみたくて。どうしようかなと図を書いていたら、段々形が見えてきたのでちゃんと企画たてようってなったのがキッカケです。
そしたら、インダストリアル.jp(https://idstr.jp/jp/)っていう、工場の環境音や機械の動作音をフィールドレコーディングするのがピンときた。やりたいことのアウトプットが近いかなと思ったんだけど、でも目的は違っていて、僕らは「どうやってお客さんと淹れてる人の思いをつなげるか?垣根を超えるか?」っていうことが軸にあった。音を録音して使いたいっていうのは手段で、パフォーマンスによってバリスタとお客さんのコミュニケーションを新しくしたかったんだよね。
青山:だから、当初は”Cafe Next Generation Performance”ってそのまんまの意味で呼んでいて(笑)ロースターとかコーヒーのいろんな過程のところの音を録っていました。そこから徐々に、音を録るだけじゃなくてその場でライブ演奏するとか面白いんじゃないかと思い始め、今回のライブパフォーマンス形式に辿り着いた、というわけです。
そんな経緯があったんですね!ですが、パフォーマンスというと、もっと躍動感あるものやビジュアルで見せるものも思い浮かぶと思うのですが、なぜ”音楽”に着目したんでしょうか?
青山:今のコーヒーって、味を極める段階から一歩先の見た目の面白さや美しさを極めることに目的が着地してる。ラテアートとかまさにそう。だけど、そこでしばらくずっと止まっているんだよね。だからこそ、この次はどうするべきか、そろそろ新しい着地点を自分たちで見つけたいと思った。味覚から視覚に来てるなら、これからは聴覚じゃないかと。
浅井:見ている側からしても、コーヒーを淹れる時の一つ一つの動作って、なんとなく専用器具っていう楽器を使って演奏しているような雰囲気を感じていたんだよね。ここから音をとったら、曲として成立するんじゃないかと。それで実験してみたら、これは新しいパフォーマンスになりそうだなぁって。
実験イベント当日ワークショップ風景(FabCafe Nagoya)
実際にドリップ音を録音するのは、どのような機材を使用しているのでしょうか?
浅井:今はMac(PC)とマイクだけでやってます。Macを使う理由は、初期設定で入っているガレージバンドという作曲ソフトを使いたいからですね。録音したコーヒードリップの動作音から、ビート、所謂音楽でいうところのベースやドラムなど基礎となるリズムを作りたいんです。ビート作るときは、ガレージバンドに入っているプリセット(最初から使える音やリズムの見本)を使いながら、音を録ったバリスタに「どれが好き?どんな雰囲気がいい?」とヒアリングして個々の思いを引き出しています。青ちゃん(青山)はメローなベースに陽気なピアノが合わさるゆったりとした明るい雰囲気、ちゃりさん(FabCafe Nagoya カフェマネージャー 甲斐さん)は遊び心溢れるシンセサイザーが特徴的な、ちょっとトリッキーな感じ。
青山:けれども、当日イベントに来る方々は、そもそもこんな実験的な体験を初めて経験するお客さんばかりなので、個性的なビートばかりだと選ぶのが難しいんじゃないかと思い、王道なドリップを元にしたテンポが掴みやすいスタンダードなビートも用意しました。豆も一般的なものを選んでいます。
今回のワークショップは、人、音、豆の順番で設計されていたんですね。実際にやってみてどうでしたか?
浅井:全体的にアットホームな感じで和気藹々と楽しめたと思いました。親子で参加していた人がいたんだけど、お母さまめちゃくちゃノリノリで、あれよかったよね〜。めっちゃ安心した(笑)
青山:僕らのことなんて、全く知らない、初対面なのにね。ドリップしながら踊るバリスタお母さま、最高だった!俺らはあの光景を見たかったんだよ。勇気もらった(笑)
浅井:このコーヒードリップパフォーマンスを極めた先には、こんなコミュニケーションが待っているんだって期待させてくれたよね。イヤホンで2人だけの世界をつくって、お客さんを置き去りにしないパフォーマンス。そういうサイレントフェスとか新しいプロジェクトの可能性を感じる実験イベントでした。
青山:俺らはめっちゃ楽しかったけど、他の人楽しいのか?という疑心暗鬼な気持ちを消してくれましたね。コーヒーワークショップと聞くと、形式的に淹れ方を習うか、いろんな知識を吸収するイメージが強かったけど、そんな枠を壊せたんじゃないかなと。音楽とコーヒーの可能性を実証できたかな。
浅井:コーヒーカウンターを隔てたお客さんとバリスタの関係にも可能性があることを実感したよね。
青山:そうそう。カフェって、割りとバリスタその人に会いたいと思って立ち寄るお客さんが増えてるじゃん。だからこそ、もっと個性を音で体現したい。どんどん尖った方が、より面白いものになりそうだなって思ったかな。
良い面も見えたと同時に、様々な課題も浮き彫りになってきたと思います。例えば、ドリップする時の音が拾いきれないとか、音を立てて淹れようとすると味が落ちてしまうとか。そのような問題点の改善は、現在検討されているのでしょうか?
青山:今は、あえて音を立てる淹れ方を模索しています。通常のドリップ方法では音がでないところも、音を出すように工夫してみて、抽出したコーヒーを飲んで、出来上がったコーヒーに合うアレンジを検討しています。
浅井:あとは、あおやまくんの淹れ方を動画で撮って、技名つけるとかやりたいね(笑)ゲームの説明書や攻略本みたいに、高いところから淹れるドリップを”ウォーターフォール”とか技名つけちゃってさ。
青山:技名(笑)そんな感じで、まずは音にフォーカスして、音をつくるために味を調整しています。コーヒーは、豆や淹れ方は勿論ですけど、シロップだったり、チャイみたいなジャグも、器具の幅も広げていけば、アレンジは無限大なので。
浅井:あとは、ハードウェアのアプローチも考えても良いと思っています。そもそも、音を鳴らすためのコーヒー器具をつくっちゃえばいいんじゃないかとか。この2つで走ってみようと思っています。
今後、FabCafeとどのような取り組みを検討していますか?音を活かしたドリップ練習(レッスン)など、とても可能性を感じたのですが…
浅井:最高。
青山:かなり実用的に活かせるね。音を聴くことは耳だけでできる。通常、コーヒーを淹れる時って、タイマーの確認、お湯の確認、豆の確認を全て目で確認しないといけないんだけど、そのタイマーの確認がいらなくなるよね。
浅井:回して淹れる時のリズムを1ビートで作ってあげるとタイミングが体感で掴めて良さそう。
青山:いくらでも研修、レシピ調整次第で可能性あるよね。やろう!
ぜひ、よろしくお願いします(笑)では最後に、今後の目標を教えてください。
浅井:イベントなどは決まっていないですが、今回のイベントを動画でまとめたので、これを活用してまずはバリスタ・パフォーマーを集めていきます。集まったらみんなで大会をやりたい!フリースタイルの大会というか、オリンピックのスケボーの試合みたいな感じ。ああいうカルチャーを目指したいです。
青山:公園でコーヒードリップしてるのもいいよね、若宮大通高架下で急にドリップはじめるみたいな。誰しもが楽しめる遊び。
浅井:勝ち負けじゃなくて、「そのドリップでこれ入れるの?やば!」「あの技出してんじゃん!すげえ!まじそのチャレンジは激アツ!」みたいな。綺麗な型じゃなくて、ジャンキーな感じ。
青山:これがコーヒーカルチャーの進化なのか!って思えるものを目指して、引き続き探求していきたいです。
コーヒーを注文し出来上がるまでの三分間、もしも、バリスタたちの奏でるリズムに我々が気付くことが出来たとしたら、退屈だった待ち時間が最高のショーの時間へと魔法のように変わるだろう。
カウンター越しに隔絶されたバリスタとカスタマーの距離は、バリスタが奏でる音楽によって緩やかに境界が滲み出し、手元にコーヒーが渡される頃には、きっと、あなたの目には今までとは違う景色が広がっている。
次世代のコーヒードリップパフォーマンスを堪能せよ。Let’s try Drip Drop Dope!!
イベント・ワークショップの場、クリエイターやアーティストをお探しの方へ
当店では、地元企業さまや次世代を担うクリエイター、アーティストの皆さまとともに、魅力あふれる展覧会、イベント、ワークショップを企画開催しております。ご希望の方は、まずはお気軽にお問い合わせくださいませ。
-
居石 有未 / Yumi Sueishi
FabCafe Nagoya プロデューサー・マーケティング
名古屋造形大学大学院 修了。卒業後、大学の入試広報課にて勤務。2021年2月 FabCafe Nagoya 入社。
美術館 学芸員インターンシップ、教育機関でのワークショップ・プログラム企画運営、取材・広報などの多岐にわたる業務で培ってきた柔軟性と経験を活かし、関わる人の創造力や表現力を活かせる環境づくりを行う。
FabCafe Nagoyaでは、クリエイターと企業・団体が共創する『人材開発プログラム』や『アイデアソン』『ミートアップイベント』などを企画運営しながら、FabCafe Nagoyaという空間の面白さを、より知ってもらうタッチポイント設計や店頭サービス開発を、日々行なっている。
好きな食べ物はいちご。ライフワークは作品制作。名古屋造形大学大学院 修了。卒業後、大学の入試広報課にて勤務。2021年2月 FabCafe Nagoya 入社。
美術館 学芸員インターンシップ、教育機関でのワークショップ・プログラム企画運営、取材・広報などの多岐にわたる業務で培ってきた柔軟性と経験を活かし、関わる人の創造力や表現力を活かせる環境づくりを行う。
FabCafe Nagoyaでは、クリエイターと企業・団体が共創する『人材開発プログラム』や『アイデアソン』『ミートアップイベント』などを企画運営しながら、FabCafe Nagoyaという空間の面白さを、より知ってもらうタッチポイント設計や店頭サービス開発を、日々行なっている。
好きな食べ物はいちご。ライフワークは作品制作。