Column

2025.4.4

creative city commons OSAKA 2025.05 Starting
『淀川、百年の物語』

小川 敦子

株式会社ロフトワーク, アートディレクター

Osaka

『淀川、百年の物語』

かつて、大阪の地は海だった。
そこから、隆起するように立ち上がってきたこの地は、
常にフォルム化とアンフォルム、
既成概念の破壊と再構築、変容を繰り返しながら、
出来上がってきた創造的都市でもある。

今から遡ること100年前。
国内外との交易のために、
あるいは、度重なる洪水からの解決策として、
日本とオランダの共同設計により
琵琶湖から大阪湾、瀬戸内を流れる水を
一本の道として接続し再構築された“淀川”。
水を起点に見ていくと、

大阪はすべての都市や世界を越境し合い、
つなぐ重要なネットーワークの拠点として
常に再構築されてきた都市であることが見えてきた。

百年後の今。
都市や社会の在り様をニュートラルに、
エクイティに捉え直し、
常に目の前の当たり前を覆す視点をもって、
あらゆる関係性の問い直しを大阪の地から、
私たちは再び始めていきたい。

都市に対する3つのユニークな視点を交錯させる。
新たなクリエイティブシティ・コモンズOSAKAの誕生。

Text: Atsuko Ogawa(Loftwork.Inc Art Director)
Produce: Kazuto Kojima(Loftwork.Inc / FabCafe Osaka Business Manager)

これまで大阪では、喫茶シランケドクリエイターインレジデンスプログラムChokett(チョケット・南海電気鉄道株式会社とロフトワークの共同プロジェクト)という主に難波エリア界隈での実験的活動を通して、企業やクリエイター、アーティスト、起業家、研究者など多様な人々が立場や性別や年齢や国境を越えて、エクイティに交錯する「舞台のような場や状況をデザイン」することにトライし続けてきました。参加してくれた人たちのバックボーンもとてもユニークで多様。ゆるやかな時間が流れる中で、あえて何の制約も設けないことで、それぞれが何かの“種”のようなものを個々に発見していくプロセスそのものを生み出すことが活動の軸にありました。
いわゆる短期的な“賑わい”を生み出すことではなく、街をいかに使いこなすか?ということに焦点を当て、長い目線を持ちながら活動をやり続けた結果、次第にクリエイティビティと場とまちが接続するような状況の “種” のようなものが多様な形で生まれてきました。一人ひとりのクリエイティビティの発露や循環はそのような場のデザインから生まれてくるのではないかという実験でもあったと言えます。今後、このような都市における実験は、FabCafe Osakaという新たな「LABO=場」で、さらに進化させながら、再構築を繰り返しながら行っていきたいと考えています。

このような活動体のような動きは、ある種、ニューヨークが民主主義を都市というフィールドで実装化するための一連の流れから、都市を民主化し、都市をデザインすることを社会に開いてきた動き「パブリックスペース・ムーブメント」にも、根底では通底する思想があるのではないか?という仮説を立てています。

ニューヨークと大阪。

都市に息づく人々の “私はこう思う、こう考える” という “I=私” の個人考えが多様に集結し、互いに受容し合い、他者に対しての寛容性や懐の深さを同時に併せ持ちながら、“We=私たち” という状態を構築し続けてきたという意味では、2つの都市は非常に似ています。前提として、強さと弱さが同居し合うようなスピリットを都市が携え、都市=社会を共有し合う “Sharing” の発想が人々になければ「都市独自の創造性」は、なかなか発揮することは難しくなるのではないでしょうか。

FabCafe Osakaでは、大阪ならではの「Sharing The City」の在り方への追求を前提に、Urban Design Meetingをこれまで以上に多様な領域の人々と共に展開していきたいと思います。

非人間的、自然視点から視えてくるもう一つの世界を体験する、人間が「自然に適応する」計画の源流から都市を辿り直し探求するためのプログラムです。淀川流域を起点に、滋賀、京都、大阪、瀬戸内における生態学的に意味の高い地域を選定し、自然・社会・文化的資料を収集しながら、過去から現在に至る生態系の推移を把握し、その地の自然の本質、風土を感性的に読み解いていく。“自然に適応”し、“自然と”ともにデザインされる未来のクリエイティブシティとは何か?その本質に迫りながら「淀川、百年の物語」を描いていきたいと思います。

フランスの思想家バタイユが提唱した「L’informe」アンフォルム*。無形であること、形なきものというフォルムレスの概念から、改めて、無形であることの価値に立ち返りながら、既にあることやものの前提を捉え直し、都市や社会の在り様をニュートラルに、エクイティに問い直していく。これからの未来の価値や視点がどの様に変化していくのか? 都市の在り方はどの様に変容していくのか? そのための問いをどの様に生み出していくのか? ものの見方、視点軸の進化について問い直しながら、新たな可能性について導き出していきます。

*アンフォルムとは:フランスの思想家バタイユが、形骸化された「これが美しさの正しさ」というものに対して、あえて、醜いものにフォーカスを当てながら、垂直・水平性という“構造化”された美学や認識を疑い、構造を破壊、崩していくことで、そもそも、美とは無形であるものであって、決まりのない解放性のあるものであることを問題提起として投げかけた美術批判であり、概念として、今も尚、多くの美術批評の手がかりとされ、様々な解釈がなされている。

コラム「淀川、百年の物語」「不確かな価値に対する、まなざし。」は、タブロイド「Aru Commons Media Tabloid vol.1」として全文を掲載しています。

発行日 2024.12.20
発行 株式会社ロフトワーク Aru Commons Media
〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂 1-22-7 道玄坂ピア 8F/9F/10F
Web: https://aru.org/
Contact: aru.society@loftwork.comcredit
Design & Photograph: Takahisa Suzuki(16 design Institute)
Copywrite & Text: Atsuko Ogawa(Loftwork.Inc Art Director)
Producer: Kazuto Kojima(Loftwork.Inc / FabCafe Osaka Business Manager)
AruSociety Project Owner: Mitsuhiro Suwa(Loftwork.Inc CEO)

Aru Societyについて

ロフトワークがこれまでの事業形態をさらにパワーアップさせながら、新たな都市コモンズの構築にトライする urban commons project『Aru Society』。活動について、Aru Commons Mediaをご覧ください。

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  • 小川 敦子

    株式会社ロフトワーク, アートディレクター

    ロフトワーク京都 アートディレクター。1978年生まれ。百貨店勤務を経て、生活雑貨メーカーにて企画・広報業務に従事。総合不動産会社にて広報部門の立ち上げに参画。デザインと経営を結びつける総合ディレクションを行う。その後、フリーランスのアートディレクターとして、医療機関など様々な事業領域のブランディングディレクションを手掛ける。そこにしかない世界観をクライアントと共に創り出し、女性目線で調和させることをモットーにしている。2020年ロフトワーク入社。コンセプトメイキング、組織デザイン、コーポレート・ブランディング、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)、都市戦略デザイン設計を主な得意領域とし、経産省中部経済産業局、大垣共立銀行との共同プロジェクト「東海サーキュラープロジェクト」(2021-2022)、「椙山女学園大学リブランディング設計」(2022)、文化と経済の好循環を創出する京都市都市戦略2050年都市構想案提唱(2023-2024)等。現在は、共にある社会の在り方を描くロフトワーク自社プロジェクトAruSocietyのプロジェクト設計、アートディレクションを主に担当し、京都、大阪、東京の3都市を接続する都市コモンズを醸成中。

    ロフトワーク京都 アートディレクター。1978年生まれ。百貨店勤務を経て、生活雑貨メーカーにて企画・広報業務に従事。総合不動産会社にて広報部門の立ち上げに参画。デザインと経営を結びつける総合ディレクションを行う。その後、フリーランスのアートディレクターとして、医療機関など様々な事業領域のブランディングディレクションを手掛ける。そこにしかない世界観をクライアントと共に創り出し、女性目線で調和させることをモットーにしている。2020年ロフトワーク入社。コンセプトメイキング、組織デザイン、コーポレート・ブランディング、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)、都市戦略デザイン設計を主な得意領域とし、経産省中部経済産業局、大垣共立銀行との共同プロジェクト「東海サーキュラープロジェクト」(2021-2022)、「椙山女学園大学リブランディング設計」(2022)、文化と経済の好循環を創出する京都市都市戦略2050年都市構想案提唱(2023-2024)等。現在は、共にある社会の在り方を描くロフトワーク自社プロジェクトAruSocietyのプロジェクト設計、アートディレクションを主に担当し、京都、大阪、東京の3都市を接続する都市コモンズを醸成中。

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