Project Case

2021.6.27

【共創パートナー募集中】Waste Surfer

あらゆる廃材をスケートボードにアップサイクルする手法を開発

ケルシー スチュワート|Kelsie Stewart

FabCafe Tokyo CCO (チーフコミュニティオフィサー), Loftwork Sustainability Executive

Covid-19の大流行の前後、新しい娯楽としてスケートボードがタイで人気になりました。コロナ禍で物資が限られていたことと、「密」にならない新しいスポーツへの需要が高かったことから、スケートのボードの価格は急上昇。一般的な完成品のスケートボードは通常400ドル程度で販売されていたものの、タイ国内の業者はすぐに市場を掌握。結果、人気の高い海外ブランドのサーフスケートボードは、元の価格の400%以上にもなる1,600ドル程度で販売される事態になっていました。

一方で、埋立地に行くはずだった廃材を活用して、ニーズの高い製品で新しい市場に参入するという手法は、FabCafe Bangkokが特に力を発揮する領域です。FabCafe Bangkokは2018年から、「Precious Plastic」が開発したプラスチックを再生する工作機械を用いて、廃棄プラスチックをクリエイティブな新素材として活用し、実験するコミュニティを実践してきました。

タイ国内で作られたスケートボードを求める市場の熱狂を目の当たりにし、FabCafe Bangkokは、廃材を活用してスケートボードを作り出す技術を開発。彼らが、どのようにWaste Surferプロジェクトを立ち上げ、高い市場価値を持つエコ製品を生み出したのか、ぜひご覧ください。

レーターと共に、アップサイクル可能な素材のクラウドソース化を目指してスタートしました。また、コラボレーターを集めるため、たくさんの廃棄物を、意図せずとも定期的に発生している方々がいないか、周囲に呼びかけました。

本プロジェクトでは、市場に参入することを目的としていたため、実験には具体的な目標が設定されました。そこで、活用する素材を決めた後に関係者全員を集めてワークショップを開き、実際にそれらを市場で販売でき得るデッキ(スケートボードの板の部分)として生まれ変わらせることができるかどうかを検討しました。

2021年4月3日、「Waste Surfer」ワークショップが開催されました。会場は、デザインの教育施設でありクリエイティブビジネスのインキュベーターでもあるThailand Creative and Design Center (TCDC) 内にあるFabCafe Bangkok。Creative Economy Agency (CEA)とMaterial Connexion Bangkok(同じくTCDC内)のサポートを受け、12社の企業、アーティスト、デザイナー、学識経験者など、さまざまな職業的背景を持つ43名の参加者が集まりました。ワークショップは、主催者のKalaya Kovidith(FabCafe共同設立者)、Asst. Prof. Dr. Prasit Pattananuwat(Chulalongkorn University, Faculty of Science)、Fakram Buasai(FabCafe)によるインプット・レクチャーでスタートしました。

「Waste Surfer」プロジェクトのパートナーの1人は、タイ南部のコークット島の人々です。タイといえば、豊かな自然や白い砂浜を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、観光地で起きてしまう問題として、旅行者が出すゴミの問題があります。たとえば、ビーチサンダル。安価な発泡スチロールのビーチサンダルを買っても、すぐに捨てられてしまいます。サンダルの泡は、埋め立て地で分解されるまでに500年以上かかると言われています。もし、この長持ちする素材を、サーフスケートのボードとして再利用できないだろうか? 実験した結果、ワークショップで試した素材の中では、この発泡スチロールのサンダルが一番適した素材であるという結果になりました。

もうひとつのパートナーは、定期的にタイ周辺の漁網を回収しているEnvironmental Justice Foundation(EJF)Thailand。彼らは海に捨てられた漁網を回収する活動をしています。EFJによると、海の中に捨てられた漁網は汚染の主な原因となり、海洋生物に大きな被害を与えるにもかかわらず、回収がまだまだ進んでいないとのこと。一方で、彼らは、漁網の廃棄物を使って何を製造すれば最もインパクトのある市場価値の高い製品になるか探している段階でした。漁網をスケートのボードにするという実験は、お互いにとって好都合なテーマだったのです。

ワークショップでは、それぞれの素材の良さを評価した上で、4つのステップを経てデッキを制作しました。

ステップ1 バインダー液の準備

まず、デッキ用バインダー液を準備します。ポリエステル樹脂または瞬間接着剤のいずれかに硬化剤を混ぜてバインダー液を作ります。バインダーの目的は、材料をつなぎ合わせることと、デッキの外側の層に耐久性と保護層を加えることです。

ステップ2:デッキの準備とバインダー液の塗布

30mm以下の素材を用意し、型枠に沿ってそれらを並べていきます。
合わせた1層目にバインダー液を流し込んだ後、プラスチックシートを使ってシート材全体を覆うようにバインダー液を広げていきます。その上に2層目の材料を置き、さらにバインダー液を重ねる。このとき、バインダー液が材料に浸透するように素早く重ねることに注意が必要です。バインダー液の気泡が入らないように注意しながら、すべての層を重ね合わせた後、スチールローラーやゴムローラーで新しい素材を均一にプレスしていきます。

ステップ3:デッキの圧着

各層の間にバインダーが均等に接着されたら、Fクランプを使って材料を圧着します。この時、素材の性質によって、反りや素材の強度、バインダーに塗布されている素材がポリエステル樹脂か瞬間接着剤かでバインダーの広がり方が異なってきます。たとえば、メープル材の場合、最初はバインダーの塗布により若干の反りが発生します。しかし、Fクランプを使って金型を継ぎ足していくと、それに応じて木が曲がっていきます。完成した製品は丈夫で柔軟性があり、カットしたり、サンディングしたり、ドリルで穴を開けたりして、デッキの製作を仕上げることができます。

ステップ4:カットと成形

デッキ製作の最終ステップは、圧縮されたデッキをおなじみのスケートボードの寸法に成形することです。圧縮されたデッキを並べ、ウッドカッターマシンを使ってボードを適切な形にカットします。続いて、デッキの上部と下部にそれぞれトラック(ホイールをつけるための土台)を取り付けるための8つの穴を開けます。最後に目の粗い紙やすりでボード全体を研磨します。

スケートボードのデッキに生まれ変わった素材は、コーヒーの出がらし、海綿(ルファ)、ビーチサンダル、電子機器の廃棄物、展示会やトレードショーで使用されたカーペット、ござ、ドリアンフルーツの切れ端、ボトルキャップ、緩衝材(プチプチ)、布の切れ端など。小さな果物の種ですら、新しいアップサイクル素材として使われました。今回実験した素材以外も、あらゆる素材がデッキとしてアップサイクルできそうです。

参加した企業やクリエイターが実験した素材(グラフィックイメージ)

使われた素材(一部)

以下に、ワークショップで作られた6枚のデッキをクローズアップしてご紹介します。

FabCafeのバンコクチームは、スケートボードのデッキにアップサイクルできる素材を引き続き探しています。(適した素材を考える際は、素材の特性だけでなく、その素材が安定して手に入れられるかも重要なポイントです。)さらに、今、自分たちの活動が実際にどのような影響を与えているのかを理解するために、このアップサイクルのプロセスとアウトプットの総カーボンフットプリント(製品のライフサイクルで排出される温室効果ガス量をCO2に換算して見える化すること)を正確に見積もることにも挑戦しています。

FabCafe Bangkokは現在、スケートボードをカスタマイズする方法をさらに探究したり、新しい領域を開拓するべく、既存のさまざまなスケートボードメーカーやスケートパークなどとのコラボレーションを模索しています。また、廃棄物を使って新しい価値を生み出すことに興味のある企業、大学、その他のプレイヤーも探しています。「Waste Surfer」プロジェクトで、私たちと一緒にアップサイクルに革命を起こしましょう。

活動に興味のある方は、FabCafe BangkokのFacebookアカウントまたはFabCafe Bangkokのカラヤ(kalaya@fabcafe.com)までお気軽に連絡ください。

Supported by:
Waste Surfer」プロジェクトは、Thailand Creative & Design Center(TCDC)、Creative Economy Agency(CEA)、Material ConneXion Bangkokの協力のもと、FabCafe Bangkokが主催しています。

2021年7月8日(木)19:00-20:00に、このWaste Surferプロジェクトを含む、Facebook Bangkokチームの最新プロジェクトを紹介するイベントを開催します。

詳細・申込:
Around the FabCafe World in 180 Days Vol.1 バンコク
バイオハック、ゴミ発電ロボット、廃プラスチックスケートボード… ほぼすべてをハックするR&D拠点の今

世界に広がるFabCafe。扱うテーマや接続するコミュニティもユニークで、プロジェクトをグローバルに展開させるロフトワークの強力なパートナーです。世界のFabCafeの最新の取り組みを紐解くシリーズ、Vol.1はバンコク。企画力に優れ、あらゆるテクノロジーを駆使して、人を驚かせるようなプロジェクトを生み出し続けています。当日は、シルクハックプロジェクトをバンコクチームと進めているパートナーで、スパ事業を始め様々な事業を手がけるDivana Wellness Co.,LTDのPattanapong Ranurak氏と、Tanet Jirasavekdilok氏も登場します。

Author

  • ケルシー スチュワート|Kelsie Stewart

    FabCafe Tokyo CCO (チーフコミュニティオフィサー), Loftwork Sustainability Executive

    入社以来、バリスタ、カフェアドバイザー、FabCafeグローバルネットワークのコミュニケーションコーディネーター、FabCafe ウェブサイトライター、デザイン思考ワークショップのファシリテーターと幅広く、業務を務める。また、FabCafe CCOとして、FabCafe Global Networkのまとめ役を務め、世界各地のFabCafeのローカルクリエイティブコミュニティの育成と、それらのコミュニティとグローバルネットワークを繋ぐことを行っている。 加えて、持続可能な開発目標の短期的な解決策を作成することを目的とした2日間のデザインソンであるGlobal Goals Jam(GGJ)の東京開催の主催者でもあり、本イベントを過去に東京、バンコク、香港の複数都市で企画・実施した。

    入社以来、バリスタ、カフェアドバイザー、FabCafeグローバルネットワークのコミュニケーションコーディネーター、FabCafe ウェブサイトライター、デザイン思考ワークショップのファシリテーターと幅広く、業務を務める。また、FabCafe CCOとして、FabCafe Global Networkのまとめ役を務め、世界各地のFabCafeのローカルクリエイティブコミュニティの育成と、それらのコミュニティとグローバルネットワークを繋ぐことを行っている。 加えて、持続可能な開発目標の短期的な解決策を作成することを目的とした2日間のデザインソンであるGlobal Goals Jam(GGJ)の東京開催の主催者でもあり、本イベントを過去に東京、バンコク、香港の複数都市で企画・実施した。

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