Column

2026.5.19

小さな違和感から世界の見え方を転換する 建築起点の映像づくり|門田健嗣

FabCafe Tokyo Creative Residency「AI-ダダ」アーティストインタビュー

FabCafe編集部

AI Dada Vol.3|OUR Common Playground “わたしたち”

FabCafe Tokyoを拠点に次世代のクリエイターが滞在制作を行うプログラム「Creative Residency」。2026年5月、アーティストDONG WENJUNさん、佐野 翠さん、森田祐輝さん、門田健嗣さんを迎え、AI Dada Vol.3|OUR Common Playground “わたしたち”の街を遊ぶを開催しました。

――  表現の道に進もうと決めた、きっかけは何だったのでしょうか?

大学では建築設計を学んでいたのですが、そこでは土から建築を考える人がいて、その人の影響を強く受けました。そのせいか、建築を建てること自体が人以外の生物にとって暴力的な振る舞いであり、人間があらゆる行為で間接的に暴力を振るっているという罪悪感を抱くようになりました。自分にとって作品を制作することは、その罪悪感を払拭し、生きていることを許してもらうための免罪符だと考えています。そのため、僕は表現というより課題解決的な思考で制作に取り組んでいます。
大学卒業後は設計事務所に勤めていました。長く残るようにきちんと良いものを作らないと、自分が関わった建築が産業廃棄物になってしまうという思いで日々仕事をしていました。しかしコロナ禍で、設計に携わった店舗が潰れる経験をします。その時、構造など、物理的にどれほど健在であっても、社会的な需要を失えば、建築はあまりにも容易くゴミと化してしまうことを痛感しました。この経験が、アートへ目を向けるきっかけの一つになりました。

―― 普段はどのようなコンセプトを大切に、どんな手法で作品を制作されているのですか?

建築の表面に無関係な映像が張り付いていることに違和感を覚え、現代の都市空間における建築と映像の関係性に課題意識を持ちました。建築が単に映像の支持体になるのではなく、建築自体が映像を生み出すメディアになるのではないかという観点から、両者の「共生関係」を探っています。
例えば、自転車の荷台に360度カメラを備えた建築模型を乗せて走らせ、空間から生まれる映像を記録する「自転車建築」という作品を作ってきました。今回のレジデンシープログラムで制作したのは、この自転車建築から派生した作品です。
建築や空間と関わりを持つ映像作品はたくさんありますが、建築設計者が持つような美意識や価値観を基盤にした作品にあまり出会ったことがありません。僕は建築的な感性に軸足を置きながら、映像表現を建築に歩み寄らせる方法を探求しています。

Title:Light on Earth、Bicycle Architecture:Sphere   Photo:fumio kohama

―― 今回の作品に込めたメッセージを教えてください。

作品を見る人に一番感じてほしいのは、「人間は環境の一部である」ということです。生成AIの出現によって、人間の知性の相対的な強度が揺らいでいる時代において、人間を環境の中に溶け込んだ一つの「物質」として肯定的に捉えたいと考えています。

僕の作品は家具やBGMみたいなものだと思っています。どちらかというと、明快なストーリーを提示するというよりは「問題を投げっぱなしにする」タイプです。ですので、鑑賞者によって感じることはバラバラなんじゃないかと思っています。個人的な感覚としては定食屋の店主のようなもので、皆さんに僕が美味しいと思うものを食べて帰ってもらえれば十分です。

―― AIと作品制作をしてみて、いかがでしたか?

 AIは表面上、人間らしく振る舞い、わかりやすく事務処理能力のようなものを発揮してくれる存在です。また、AIの画像生成については、PCのスペックにもよりますが輪郭が曖昧で分類以前の感じや、雑味を纏っている感じを作れるのは面白いと感じています。

―― 今後の活動について教えてください。

最近は、自転車建築の他に、対象のあり方を建築的な視点で再構築することにも興味があります。髪の毛が抜けると、それまで大切にされていたものが途端にいらないものとされてしまいます。この違和感から、抜け毛の地位を復権させることを目的とした「抜け毛建築」に取り組んでいます。これは、3Dプリンターで造形した頭皮に抜け毛を植え直して、小さな建築物を作るというものです。また、今回の延長線上の作品として、建築模型を街中で散歩させるような作品も作っていきたいです。
モチベーションの根源は、自転車建築などの自身の作品に対する「面白い」という確信と、それを多くの人に知ってもらい、より魅力的なものにしていくことです。また、所属していた大学院の研究仲間がいつも面白いものを作るので、そこから受ける刺激も、制作を続ける原動力です。
最終的な目標は、自分が培ってきた映像やメディアアートの技術・価値観を建築の世界にインストールすることです。建築業界は、ある意味で価値観が固まっているところがあると感じています。そこに自分が培ってきた映像や世界観を建築業界にインストールすることで、新しい提案ができたらと思っています。
作品や活動を通して建築の可能性を広げるような流れを生み出せたら、僕は門田という物体がこの世に存在していても良いと思えるようになるかもしれません。

  • 門田健嗣

    映像と建築の共生をテーマにプロダクトデザインや空間設計などを行う。建築の映像性やメディア性に興味があり、設計業務で学んだ環境と人の関係を調整する建築的手法を軸に、映像に接続するための構法の実験や映像のための小さなスケールの建築・インテリアデザインを展開してきた。本レジデンシーでは、人間を環境化する存在としてAIを捉え、制作に取り組む。第27回空間デザイン・コンペティション最優秀賞受賞。

    映像と建築の共生をテーマにプロダクトデザインや空間設計などを行う。建築の映像性やメディア性に興味があり、設計業務で学んだ環境と人の関係を調整する建築的手法を軸に、映像に接続するための構法の実験や映像のための小さなスケールの建築・インテリアデザインを展開してきた。本レジデンシーでは、人間を環境化する存在としてAIを捉え、制作に取り組む。第27回空間デザイン・コンペティション最優秀賞受賞。

FabCafe Tokyo Creative Residency vol.3 参加アーティスト募集

デジタルとアナログを横断しながら、既存のジャンルにとらわれない表現に挑戦するアーティストを支援する「FabCafe Tokyo Creative Residency」第4回目のプログラムに参加するアーティストを募集。「AI-ダダ」をテーマに、多彩なコミュニティとの交流やデジタルファブリケーションを通して、新たな表現を探究する場を提供します。
https://fabcafe.com/jp/events/tokyo/fabcafe-Creative-residency-4/

提出期限は2026年6月1日23時59分です。
エントリーはこちらから
https://awrd.com/award/fabcafe-ai-dada-04

Author

  • FabCafe編集部

    FabCafe PRチームを中心に作成した記事です。

    この記事に関するご意見やご感想は、ぜひお気軽にこちらからお寄せください。
    お問い合わせフォーム

    FabCafe PRチームを中心に作成した記事です。

    この記事に関するご意見やご感想は、ぜひお気軽にこちらからお寄せください。
    お問い合わせフォーム

FabCafe Newsletter

新しいTechとクリエイティブのトレンド、
FabCafeで開催されるイベントの情報をお伝えします。

FabCafeのビジネスサービス

企業の枠をこえて商品・サービスをともに作り上げていく
FabCafeのオープンイノベーション