Interview
2022.8.7
FabCafe編集部
SDGsという大きなテーマに対して、誰でもはじめの一歩を踏み出せるワークショッププログラム「GGJ(Global Goals Jam)」から派生した、FabCafe Tokyoのイベントシリーズ「In the Loop」。Ekolocalとのパートナーシップのもと、SDGsに結びつく取り組みをしているコラボレーターが集まり、楽しみながら循環型デザインや持続可能性を追求するポップアップコミュニティとして回を重ねるごとにその輪を広げています。
vol.3では「ヴィーガン/プラントベース」に注目。植物性の素材を使ったフード&ドリンクや、こだわりを持ったものづくりに取り組む10組のコラボレーターが集い、一日限りのマーケットを開催。コラボレーターとしてvol.3に参加したLOVEGの今井慎治さん、TOKYO VEG LIFEのNatsukiさん、そしてFabCafeのケルシー・スチュワートが今回のイベントを振り返りつつ、それぞれの活動に対する思いを語りました。
―― お二人は普段、どのような活動をされているのでしょうか。
Natsuki:2018年から「TOKYO VEG LIFE」というYouTubeチャンネルでヴィーガンのレシピやヨガ、ライフスタイルについて発信してきました。その派生プロジェクトとして2021年11月に「TOKYO VEG LIFE faux-mage」というヴィーガンチーズブランドがローンチしました。
今井:私は「LOVEG」というプラントベースフードのブランドをやっています。以前は「ORGANIC TABLE BY LAPAZ」というプラントベース/VEGANのレストランでマネージャーとして勤めていました。雰囲気のあるクラシックな建築でしたが、ビルの老朽化で取り壊しとなり、お店味を残したい、人気だった大豆ミートのから揚げをみなさんの家庭でも誰でも簡単に作ることができるプラントベースフードのブランドが始まりました。
―― FabCafeのケルシーは、このイベントにおいてどのような位置づけでしたか?
ケルシー:私の基本的な役割はキュレーションです。いろいろな方から情報をもらって、可能性のありそうなコラボレーターをリストアップし、皆さんに声掛けをしました。
今回のイベントに出店したRus Jewelryさんは、「共通のコンセプトで盛り上がった人が多くて良かった」と言ってくれました。デパートなどのポップアップとは違い、FabCafeのイベントでは同じ意識を持つお客さんに会えることに価値を感じてくれてうれしかったです。
私は、このイベントに集まる人たちに「何かしてあげたい」というより「一緒に何かできたらいいな」と思って企画しています。FabCafeの利用者にはクリエイターが多いので、さまざまな分野のクリエイターやエキスパートと面白い体験が生まれたらいいな、と。そういう実験につながる場所を作るのが私の役割です。
―― 今回のイベントで今井さんはどんなフードを提供されたのですか?
今井:大豆ミートが簡単でおいしい食材であることを伝えられる料理として、今日は麻婆豆腐を作りました。豆腐も大豆ミートも原料が大豆なので、大豆の魅力を皆さんに知ってもらえる食事にもなったと思います。
Natsuki:おいしかったです。香辛料が効いていて、食べごたえもあって。変な重さがなくて食べやすいのが良いですね。
今井:ありがとうございます。麻婆豆腐を作るにあたって、都内の有名な麻婆豆腐屋さんにも足を運びました。お肉のテクスチャーや香辛料もかなり工夫しました。プラントベースの優しさとライトな感じを残しつつ、でもスパイシーでパンチのあるものにしたいと思って一生懸命作りました。
Natsuki:すごく満足感があるのに、次の日まで胃もたれする感じはしないですね。ヴィーガンに限らず、健康的に過ごしたい人もみんな一緒に食べられるから、本当にインクルーシブで良いなと思いました。
―― Natsukiさんはいかがですか?
Natsuki:私はヴィーガンチーズを出店しました。ベジタリアンは卵や乳製品を食べますが、ヴィーガンだとそれも抜いて完全な菜食になります。ただ、ベジタリアンからヴィーガンに移行するのが難しい理由の一つとして、「チーズが止められない」という方が多いんです。
本物のチーズは発酵食品ですが、今あるヴィーガンチーズの多くは、添加物を入れてチーズっぽい味や食感にしている加工食品がほとんどです。味的にも加熱しないと食べられないものばかりで、「妥協して食べるもの」というイメージが強い。そうじゃなくて、生活を豊かにしてくれるものにしたいという思いがあったので、人工調味料を使わず、自然発酵で作っています。
今井:カシューナッツのクリーミーさとか、あとは麹、酵母の華やかな香りもあればちょっとスパイシーなものもあって、チーズとして食べるというよりは、口の中で広がる、ぎゅっと濃縮した素材の良さを楽しませてもらえました。
Natsuki:ありがとうございます。ヴィーガンチーズと言うとどうしても「チーズもどき」みたいになりがちですが、チーズからインスピレーションを得た全く新しい発酵食品になっていったら、ヴィーガンかどうかとか、アレルギーの有無とか、垣根を全部取っ払って「おいしいもの、健康的なもの」としてより多くの方に楽しんでもらえるのかなと思っています。
今井:LOVEGもそう。もともとあるものに比べられることが多いけれども、僕らとしては全く違う道を作りたい。その思いは一緒だなと感じました。
Natsuki:同じですね。分かりやすいからヴィーガンチーズと呼んでいますが、ゆくゆくは「faux-mage」という一つの新しいカテゴリーになるといいなと思います。
―― いろいろな食材や料理がある中、お二人がヴィーガンチーズやプラントベースフードを手掛けるようになったきっかけは何だったのでしょうか。
Natsuki:長年やっているヨガの影響で、菜食に少しずつ転向していったのがきっかけです。当時はヴィーガンどころか、ベジタリアンにも選択肢が少なくて、情報源も英語のサイトばかりでした。だから自分が学んでいく過程を情報として皆さんに提供できたら助かる人もいるかなと思って「TOKYO VEG LIFE」というYouTubeチャンネルを始めました。
最初はコンテンツの提供が主でしたが、何か有形のものを「TOKYO VEG LIFE」のエッセンスが詰まった形でお届けできたらいいなと思って、それで始めたのがヴィーガンチーズです。
今井:LOVEGの始まりについては先ほど述べたとおりですが、そういう活動をするのは、新しいライフスタイルにつながって、そこからIn the Loopのような新しいコミュニティに入っていくことで同じベクトルの人たちと出会って、そういう動きが増えていくと世界が良い方向に向かっていくんじゃないかと思っているからです。
大豆ミートは昔からある食材です。でもお家で料理に使われることが少なかったりしていて、レシピや使い方がわかれば、手に取ってくれる人も増えるとおもいました。実際使ってみると簡単に調理することができて、しかもタンパク質も豊富な健康的な食材なんです。
それに、大豆ミートを選ぶことはサステナブルのアクションにもなります。僕も普段、お肉を食べることがありますが、お肉を使って料理をするとすごく洗剤を使います。でも大豆ミートを使うとまな板が汚れないので、洗剤を使う量がぐんと減るんです。家庭から汚れた油の水が出ないということは、地球にも優しいですよね。
―― お二人のお話や活動を伺っていると、いわゆる「ヴィーガン(ヴィーガニズム)」とは少し違ったスタンスなのかな、と感じます。ヴィーガンに対する捉え方、スタンスについて伺えますか?
今井:例えば、友達と食事をする時に「お肉をたべれないからみんなと食事に行けない」と悩まれていたとしても、ヴィーガンメニューであればみんなで一緒にテーブルを囲み食事を楽しむことが出来ます。LOVEGの大豆ミートを使えば様々なヴィーガン料理を簡単に作ることができるので、みんなで一緒に食事ができるヴィーガンの食材として提案しています。
ケルシー:In the Loopには、こういうコミュニケーションデザインの要素もあるんじゃないかなと思っています。伝えたいコンセプトがあるから一つ一つの言葉に気を付けるというのは大切ですよね。
海外ではベジタリアンとヴィーガニズムの中にいくつものレベルがあって、中には偏見が含まれる場合もあります。でも言葉や表現のデザインがあれば、なぜこういう使い方をしているのか、ちゃんと議論ができます。ヴィーガンはもちろん、「プラントベース」という言葉を選ぶことも尊重したいと思いました。
Natsuki:私はいろいろな命に対して優しい選択をしたいと思って突き詰めた結果、ヴィーガンになりました。でもみんなをヴィーガンにしたいわけではありません。考え方も生活スタイルも人それぞれあるので、自分で考えて自分で選択してほしいと思っています。別にヴィーガンでも、自分をヴィーガンと呼びたくなければ呼ばなくていいと思うし。
でもさっきおっしゃっていたように、「ヴィーガンです」と言うとお互い通じるんですよね。だから、私も自分が100%ヴィーガンとは思わないですが「ヴィーガン」という言葉を使っています。多様性を尊重しながら、楽しく一つの食卓を囲めたらいいなと思います。
ケルシー:選択肢が増えることを前向きに捉えられれば、それでいいと思います。バイオダイバーシティが下がるとか、20年後にシロクマがいなくなるとか、そういうディストピア的な話がよく挙がるけれど、それはインスピレーションにはならない。
今井:実際、ヴィーガンの食事をいただくようになって、僕は良い意味で考えが変わりました。今日みたいにいろいろな人に食べてもらえるのがすごく幸せ。そういう意味ではヴィーガンを知って良かったと思うから、今日のイベントがヴィーガンにトライするきっかけになっていたらいいなと思います。
―― In the Loopのようなイベントや普段の活動を通じて、お二人が目指す社会とはどのようなものですか?
Natsuki:ヴィーガンが食べられるものを増やしてくれというより、選択肢を当たり前に選択できる世の中になってほしいんです。ヴィーガンに限らず、あらゆるマイノリティの方が胸を張って、それぞれの生き方ができる。そういう社会に微力ながらも何か貢献できたらなという思いがあります。そのためにも、YouTubeチャンネルを通じて新しい世界を垣間見るきっかけを作っていきたいですね。
今井:僕らも、プラントベースフードを通じて社会に影響を与えることをしていきたいです。働く人の問題や、地域、農家の方々のサポートになったり、食べる人にとってもコミュニティにLOVEGがあることで少しずつグッドバイブスが伝わっていくといいなと考えています。
Natsuki:「サステナビリティ」「SDGs」と聞くとごみを捨てないようにするとか、プラスチックという連想をしがちですが、SDGsの中にはエコ以外にも貧困を減らす、マイノリティが言いたいことを言える社会にする、さまざまなゴールがあるんですよね。だから、ヴィーガンの考え方を通して、本当に持続可能な社会を推進していけたらいいですね。
―― 最後に、このIn the Loopという活動についてのビジョンがあれば聞かせてください。
ケルシー:FabCafeはバンコクや台湾、バルセロナ、メキシコシティにもあって、それぞれの土地がフードの伝統や歴史を持っています。たとえばNatsukiさんのチーズをバンコクに持って行って、バンコクのシェフとコラボレーションする計画を考えるのは面白そうですよね。あるいはLOVEGのプロダクトを使って台湾で麻婆豆腐、メキシコシティではタコスとか。そういうエクスチェンジができたら最高かなって思っています。
また、国内でも、日本できびや大豆を扱うメーカーとコラボして、さっきNatsukiさんが言っていたように、このようなフードがもっと一般的になればいいなと思っています。大人でも子どもでも、裕福でない人でも、あらゆる社会のレベルに選択肢が増えたらいいなと思います。
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